原作は『伊賀野カバ丸』の亜月裕。
なぜか少女誌マーガレットに連載されていたこの『伊賀野カバ丸』といい、『あかぬけ一番』といい、当時、夢中で読んでいた自分。
と、いうのも普通の『夢』や『恋愛』を語る少女漫画の中で、亜月裕の書く漫画は超異質だったからだ。
主人公が男なのもだが、そのキャラクターが、また型破り。
『伊賀野カバ丸』の主人公カバ丸は、伊賀の里から『金玉学園』(『きんぎょくがくえん』と呼ぶ。なんてネーミングなのだ!)に転校してくる。
忍者として抜群の運動神経を発揮するし、学園の孫娘との恋愛もあるのだが、そんなものよりも、まず食い気先攻の主人公。
特に、『焼きそば』にかける情熱は桁外れ。
顔のデッサンなんか多少崩しても、口一杯にズル~ズル~と、焼きそばをむさぼり頬張るカバ丸に、(これ、本当に少女漫画?)と思いながらも見ていた。
そんな『カバ丸』は少女漫画の枠を越えて、男性読者も呼びこみ大ヒット。
アニメにもなったし、(アニメは残念ながら24話の短命に終わったが……)
実写映画にもなった。
カバ丸を、当時若手で期待されていた黒崎輝がコミカルに演じ、真田広之やら志穂美悦子、野際陽子などが脇をかためて出ていたっけ。(ヒロインは武田久美子)
そんな『伊賀野カバ丸』を描いた漫画家、亜月裕を、つい最近まで、すっかり男だと思いこんでいた自分。
(失礼!)女性でした。
そして、その鬼才、亜月裕が次に繰り出したのが、この『昭和アホ草紙あかぬけ一番』なのである。
主人公は、北海道の田舎から出てきた高校生、『丹嶺幸次郎』。
もちろん、アホで調子がよくて、「都会の女子高生のパンツを覗きこみたい!」を、目標にしているような変態高校生。(こんな主人公を、よくもまぁ、少女漫画誌で掲載したものである)
そんな幸次郎が、都会の東京にやって来て、偶然知り合った宇宙人『レル』からミラクルベルトなるものを譲り受ける。
「これをお前にやるダニ!」(なんでも語尾に『ダニ』をつけて喋る変わった4歳の宇宙人レル)
「何なんだ?これ?」
幸次郎がベルトを腰に巻いて中央のボタンを押すと、光が回りだす。
そうして、あっという間に、赤いスーツに身を包んだ『ミラクルヒーロー』に変身した。
このミラクルヒーローになると、常人と比べてパワーが100倍になるらしい。
高く飛び、速く走れる!
力だって100倍パワー!
でも根がアホの幸次郎は、その力を全然正義には利用しない。
「やったぜー!こりゃ、色々利用できるぜー!」
なんて、言いながら、ミラクルベルトの力で、同級生の『一の瀬雪華(ゆか)』の部屋に忍び込み、100倍パワーで、目をギンギンに凝らして、透視しようとするのだった。(全ては雪華のパンティーを見るためだけ。でも普通の思春期の男子高校生なんて、こんなもんですよ)
こんなアホタリ?の幸次郎や、学園の変わり者たちが織り成すハチャメチャ学園コメディーなのだが………。
これでも充分だと思うのだが、原作者の亜月裕は、我々の想像を越えて更に上をいく。
それは幸次郎と一緒に北海道からやって来た愛馬の『ヒカリキン』。
雄の白馬でなぜか?たて髪だけは赤い馬なのだが…………
なんと!この馬、『人語』を喋るのだ!!
幸次郎が「キン公!」と呼べば、
「なぁに?コウちゃん!」と答える。(馬が喋る?そんなバカな?!)
それだけじゃなく雄馬なのに、心は乙女。
そう、オカマの馬なのだ!(スゲェー設定!)
しかも、しかも、立ち上がって二足歩行も出来るし、前足の蹄鉄が入った足で、愛する幸次郎の為に料理まで作ってしまう。(どうやれば箸やフライパンがふれるのか、全く分からないが……)
そして、二足歩行で立ち上がると、股間部分には、当然モザイク処理がはいるのである。(中高生対象の少女誌でいいのか?これ(笑))
一の瀬雪華を追い回す幸次郎を見れば、物陰からハンカチをくわえて、
「キィーッ!あの女ぁー!」
と、嫉妬のジェラシーをメラメラ燃やす『ヒカリキン』なのである。(オカマの馬のくせにねぇ~)
アニメでは、このヒカリキンを声優の玄田哲章さんが演じていて、超おかしかった。
なんたって玄田哲章さんていえば、あのアーノルド・シュワルツネッガーの吹き替えで有名な方。
それが、オネェ言葉で、しかも馬なんですもん!(笑)
こんな『昭和アホ草紙あかぬけ一番』も、当時、毎回楽しく観ていたが、残念!これも僅か22話で終わってしまった。
こんなに面白いのにねぇ~、何でだろ。
たまに今でも、ネット動画で見ても、あの時の面白さは変わらない。
亜月裕は、少女誌の中で異質に光るキラ星。
天才である。
星☆☆☆☆。