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2023年7月21日金曜日

ドラマ 「白い闇」

 1980年 12月。(土曜ワイド劇場より~)




『小関信子』(音無美紀子)は、夫・『精一』(津川雅彦)、精一の母『初子』(賀原夏子)との3人暮らし。


もっとも精一の方は、不動産の仕事をしており、日本全国を忙しく飛びまわっていて、年中留守がち。


普段は、少々愚痴っぽい姑・初子と2人でいるのがほとんどである。


そんな精一がたまたま帰ってくると、従弟の『高瀬俊吉』(速水亮)を呼び寄せた。

「コイツに不動産のパンフレット作りを手伝ってもらうんだ!」


従弟とはいえ、俊吉には一見、何の得もない仕事だ。 

それでも俊吉には断れない事情がある。


なぜなら、

俊吉は、精一の妻・信子に横恋慕しているのだから!


こんな俊吉の様子は、鈍感そうな精一も重々承知しているし、信子の方もハンサムな俊吉が自分に好意的なのも分かっている感じだ。(俊吉にしたら《蛇の生殺し》状態だろうよ)


その夜、小関家に泊まった俊吉。

2階の夫婦部屋からは、妙な吐息がダダ漏れて、聴こえてくる。(これこそ、《生き地獄》だ(笑))


「もう、これ以上は堪えられない!」と、俊吉は家を抜け出し、馴染みのBARへ行って、やけ酒をかっくらった。


そこへ俊吉に気がある女がノコノコやって来る。(この女が、ドラマでは《いつも報われない女》の代表・池波志乃さんなので、やっぱり俊吉には歯牙にもかけられない、という悲惨さ(笑))


その頃、小関家では …… 精一が信子に対してトンデモない提案を言いだしていた。


「俺は見てのとおり、ガサツで学の無い男だ。仕事で留守がちにすることも多い。お前も …… その …… 寂しかったら《浮気》くらいしてもいいんだぞ」

「何をバカな事を!」

夫の真意が分からない信子は返答のしようがなかった。



次の日、精一は、またもや遠い北海道まで出張である。

駅まで見送りに来た信子は、今まで精一にずっと黙っていた秘密を、こっそり打ち明けた。


「私、《赤ちゃん》ができたのよ」

てっきり喜んでくれるかと思いきや、急に青ざめる精一。


「そうか …… よかった」

なんとかそれだけ言うと、精一は逃げるように列車に乗り込んで行ってしまった。


だが …… 

よもや、これが夫の姿を見た《最後》になろうとは ……



それから何週間経っても夫・精一は帰ってこないし、連絡さえも全くないのだ。


心労で気を揉んでいる信子を見かねて、俊吉はとうとう精一の《秘密》を打ち明ける事にした。

「精一さんには他に 女がいるんですよ!それも秋田に。もしかしたら、そこにいるのかも」

「あの人に女が …… 」


大ショックの信子。

だが、こんな事実を知ってしまえば、もはやジッとしているはずもなく、信子は早速秋田へ直行。


浮気相手のアパートを訪ねると、出てきたのは『田所常子』(横山リエ)という、陰気そうな女である。(精一の姿はなかった)


だが、この田所常子、開口一番、いきなり、こんな風に切り出してきたのだ。


「あの人と離婚してくださらない? 私の人生、今まで1つも良い事なんてなかったのよ。私は絶対に精一さんと別れませんから! それに貴女には《俊吉さん》がいるでしょ? あの人に聞いて知っているんだから。 奥さんの方も満更でもなさそうだって!!」

もう、信子は常子の一方的な迫力に押されっぱなし。


結局、夫の手がかりも得られないまま、帰ってくるしかなかったのだった。


そうして帰ってき早々、流産


嫁の流産やを、息子の失踪、信子と俊吉の態度でイライラ気味の姑・初子は、とうとう怒りを爆発させた。


「あんたら、二人して何をコソコソやってるのよ!」(俊吉にしたら、「全てはオマエのとこのバカ息子のせいなのに!」って気持ちだろうに)


もう、これ以上は隠し通せないと思った俊吉は全てを初子に話す。(初子、唖然呆然!(⁠´⁠⊙⁠ω⁠⊙⁠`⁠)⁠!)


そうして、初子、信子、俊吉の3人は話し合いの末、警察へ失踪届を出す事に決めたのだが ……



松本清張の同名短編小説のドラマ化で、現在(2023年)までに計8回ドラマ化されていて、コレは6回目のドラマ化である。


それだけ松本清張の原作の中でも人気な部類に入るので、このドラマのあらすじ自体は、かなり知っている人が多いかも。


古くは乙羽信子さんや吉永小百合さん、大竹しのぶさんなども演じていたヒロイン《小関信子》役。


このドラマでは、若き日の音無美紀子さんが、そのヒロインを演じているのだが …… なんせ天下の《土曜ワイド劇場》。

淫靡な匂いがプンプンである。


↑夫役の津川雅彦とのこんなシーンも




↑とうとう一線を超えてしまった速水亮さんとも(まぁ、失踪前に旦那が「浮気OK!」って言ってるし(笑))


想像をかきたてられるシーン続出である。(《畳にわざわざお布団》ってのが昭和のエロチシズム)



で、このドラマを観ながら段々と思い出してきた事もあった。


私、この当時の 津川雅彦が「大嫌い!」だったのだ!(全面的に)



真っ白な肌に、多少小太り気味の身体つき。

青々とした髭剃り跡に、対比したような 朱色の唇。


オマケに変な形の銀縁色眼鏡をいつも着用。

ファッションセンスなんてゼロに等しいような奇抜過ぎる服装。(こんな背広、当時も今も着ている人、見た事ないわ(笑))


そのインチキ臭い見た目だけで、こんな不動産屋には絶対に関わりたくない(笑)。


後、この人の癖なんだろうか …… 誰でも彼でも↑こうやって無意識に 人を指差すような悪い癖。


このドラマでも序盤しか登場はないものの、音無美紀子さんや速水亮さんを何度か指差してる。

《無礼》、《偉そう》、…… 本当に嫌いでした。(晩年はその印象も180度変わるのだが)



後半は、この人の登場で、ドラマの様相が一気に変わってくる。


下川辰平さん …… 真面目、誠実、勤勉さを絵に描いたようなお人である。


なんたって、『太陽にほえろ』では真面目な熱血刑事・長さん。

『スクール・ウォーズ』では不良にさえ愛情をそそぐ校長先生役で有名ですもの。

悪いイメージなんかは、ほとんど無い。(津川雅彦と違って(笑))



しばらくして、『田所常子』が秋田県・十和田湖の近くの雑木林の中で変死体として見つかった。(遺体からは青酸性の毒物が発見される)


その一報を聞いた信子と俊吉は、急いで警察へとかけつける。

そこにいたのが、田所常子の実兄である『白木純三』(下川辰平)。(奔放な妹は、昔、家を飛び出して苗字も変えていたらしい)


元宮城県警に勤めていたという白木純三は、パッと見、勤勉で本当に真面目そうである。

「妹は昔から男運がない女でした …… それが不憫で ……不憫で …… 」


真面目そうな白木に、信子も俊吉も、口うるさい初子さえも同情的になるものの …… ん?この白木さん、どっかおかしいぞ~!


あくまでも、元刑事 で、今は《一般人》なのに、わざわざ信子たちの家にまでやって来たり。

池波志乃のBARにまで信子を引っ張っていって、俊吉の悪い噂を教えてやったりして ……


それもそのはず、真犯人はこの《白木純三》なのでありました!(やっぱり!)


『精一』(津川雅彦)は十和田湖に呼び出されて、とっくに銃殺。

深い湖の底で眠っているのでした。(自殺した妹の復讐で)


そんな十和田湖への誘いに、まんまと引っかかってしまった信子と俊吉。

二人に全ての罪をなすりつけて殺すのが、白木純三の計画なのである。


《殺人犯》は、一度成功した手口を同じように繰り返す。


白い霧の中、広い湖のボートの上で絶体絶命の大ピンチ。


果たして二人の運命は …… (まぁ、ご想像どおりハッピーエンドなんだけどね(笑))



今回、最後までネタバレ的な書き方をしてみたけど、ま、いいか。(この原作、何度もドラマ化されているし)


音無美紀子さんの妖艶な演技や、速水亮さんのイケメン具合。(なんせ仮面ライダー出身)

善良なイメージを逆手にとった珍しい悪役の下川辰平さん。

当時、イヤ〜なイメージ通り(だいぶ私の偏見が入ってるが(笑))の津川雅彦の死。


キャスティングの素晴らしさで、中々の良作に仕上がってるんじゃないかな、このドラマ。

星☆☆☆☆。


※尚、この原作(1957年)が発表されてから、他の小説家たちも《十和田湖》を舞台にした小説を、続々書きだした。


笹沢左保西村京太郎内田康夫などなど ……

いずれも何本かはドラマ化されているモノもあるようで。


今や、十和田湖は《ミステリーの聖地》なのだ!


そんな十和田湖に「いつかは行ってみたいなぁ~」と思いをはせながら、長い話を終わりにしておく。



2022年8月21日日曜日

ドラマ 「書道教授」

 1982年  1月。





『川上克次』(近藤正臣)は、銀行員務め。


明るい性格の妻『保子(やすこ)』(生田悦子)と結婚しているのだが、この保子が大金持ちの一人娘なのである。


二人は、保子の両親が住んでいる広い敷地内に家を建てて、本宅としょっちゅう行き来。

間借りするようなカタチで住んでいるのだ。(まぁ、克次としちゃ、完全に『サザエさん』のマスオさん状態である)



保子には、多少お金にだらしない兄もいたりして(カツオか?(笑))、それもあってか、両親は克次に信頼をよせている。


「克次くんはしっかりしてるなぁ~」


倹約家で仕事も真面目。書道が趣味なんていう克次は、なにかと褒めちぎられているのだ。




でも ……… 世の中、そんな品行方正な真人間がいるのか?(ムムッ)



克次には大きな秘密があったのだ!



銀行員という立場を利用して、顧客の預金を郵便局の口座に振り込んでは、その莫大な預金につく利息でお金を増やしていく。(いかにもバブル期のやり方だ。今や銀行も郵便局も利息なんてのは「屁!」でもない時代ですもんね)



それと並行して、土曜の昼になれば、《女》のアパートを訪ねていく。


多少の小遣いを与えながら、バーのホステス『文子』(風吹ジュン)と真っ昼間からの逢瀬、肉体関係。


そう、克次は愛人を囲っていたのだった!



「ねぇ〜、あんた〜、たまには店にも顔を出してよね。あたし売り上げが上がらないと困るんだからねぇ~」


「あ〜、そのうち行くよ」

こんな会話をしながらも克次は頭の隅で別の事を考えている。


銀行では来月、克次に《転勤》の話が出ているのだ。

いわゆる出世の為の《栄転》なのである。


(そうなれば、この女ともオサラバ。でも、すんなり別れてくれればいいんだが …… )




こんな克次の考えを女の勘でなんとなく察知したのか ……  


文子は克次の銀行に電話をかけてきて、

「あたし、貰うもの貰わないと絶対に別れないからね。100万円頂くわ!」と逆に脅迫してきたのだった。(エスパーか?(笑))



それからも「金をよこせ!金をよこせ!」と執拗に克次を追い回してくる文子。


そんな文子に辟易しながら、たまたま目に入った《書道教室》の看板に「俺、ここに用事があるから …… 」とアタフタと逃げ込んでいく克次。(文子は「ハァ?書道教室?」ってな具合である)


こうして、成り行きで、浮かない顔の未亡人『勝村久子』(加藤治子)に必死に頼み込んで、書道を習うことになってしまった克次。



真面目に指導を受けて通う日々が始まるのだが …… 


でも、この書道教室はどこか オカシイぞ?!



生徒は克次一人だけで、いつも久子とのマンツーマン授業。


オマケに、近所の古本屋の女主人(池波志乃)が中年男を連れ立ってきては、見つからないように二階の階段を駆け上がって、そそくさと消えていく。



他にも男女のアベックたちが来ては同じようにして。



外には毎日、クリーニング店の車が停まっているし ……… (女の一人住まいで、こんなに大量に洗濯物が普通でるのか?)



もしかして、ココは、書道教室とは名ばかりで、モグリの連れ込み宿なんじゃないのか?!


こんな変な勘繰りをしてしまう克次。



その間も、愛人文子の要求は更にエスカレートしていき、ドンドン手に負えなくなってくる始末。

一度は手切れ金50万円で承知したのに、克次の通帳に貯まっている1000万円以上の預金口座を見てしまい(ビックリ)驚愕。更に欲をかきはじめる。


「アンタ金持ちじゃん!こんなはした金じゃ納得できないわ!絶対に 500万円以上 頂くわよ!」


「これは顧客の金で、銀行に戻さなきゃならない金なんだ!無理だよ!」

仕方なくカラクリを話してもみても、文子はギャンギャンわめくばかり。全く納得する様子じゃない。


それどころか、銀行に突然現われてみたり、自宅にまで押しかけてきては、克次をハラハラさせてしまう。



(こうなったら …… あの女を殺すしかない …… でも、どうやって ……… ?)



こんな考えを克次がめぐらしていると、ある日、トンデモない事件がおこった。



あの、古本屋の女主人(池波志乃)が、湖で《絞殺死体》として発見されたのだ。



どうも、警察は遺体現場は湖じゃなく、どこか他の場所で殺害されて運ばれてきたと推理しているようである。


その真実を克次だけが知っている。


きっと、あの古本屋の女主人は 書道教室の二階で殺されたのだ!


おそらく痴情のもつれか、何か。


いつも一緒にいた、あの男が二階で殺した後、『久子』(加藤治子)が偶然発見したのだ。

そうして、クリーニング屋と結託して遺体の後始末を手伝わせたのだ。


モグリで《連れ込み宿》をやってるのがバレないように ……



ならば、この状況を上手く利用できないだろうか?



久子を半端強引に説得しながら、ある晩、克次は愛人の文子を連れ立ってやってきた。



そうして、二階の一室におさまった二人。

「アンタ、よくこんな場所を知ってたわね。他の誰かとよく来てるんじゃないの?」


「ハハッ、なにを馬鹿な事を …… 」


そうして文子が、油断して後ろを向いた時、浴衣の帯を両手に握りしめた克次が、そっと近づいてゆくのだった ………





このドラマの正式名称は『松本清張の書道教授  消えた死体』。



《松本清張の …… 》なんて《ワード》を見つけてしまったら、もう観ないでは済まされますか(笑)。



松本清張熱が復活している今の自分には、もってこいの作品。(たまたま見つけた)


そうして、やっぱりコレも傑作で「面白かったー!」のでした。(毎回言ってるなぁ~)




このドラマ、キャスト選びが、中々どうして、上手くいってると思う。



今や立派な役者さんになられた近藤正臣も、若い頃は、こんなにイケメンでケーハクな役がピッタリなのでした。(褒め言葉)




風吹ジュンも、今では、人の良いお婆ちゃん役なんてのをしてるが、この頃は、まだイケイケ。


しかも、いつも、《夜の女》みたいな役ばかりをしていたのを、すっかり思い出した。(なんたって、このボリューミーな髪型。まるで「欧陽菲菲か?」って感じですもんね(笑))






加藤治子さんの起用だけは、やや意外だった。



こんなサスペンス・ドラマに出ている加藤治子は、とにかく希少かも。(なんたって加藤治子さんといえば『寺内貫太郎一家』や向田邦子作品の常連役者)


「こんな品のある人の書道教室が裏では …… ゴニョゴニョ …… 」

それゆえ、このドラマでも、その加藤治子さんの異色さだけが、一人際立っているのだけどね。



池波志乃さんは、毎度安定の《殺され役》。(この人が、どんなドラマに出ていても「きっと殺されるんだろうなぁ~ …… 」と思っていたら案の定。今回も全く期待を裏切りません(笑))




他にも、明るくサッパリした性格の生田悦子さんも出てれば、後半、刑事役で佐野浅夫さんもご出演。(3代目水戸黄門様ね)

このキャストだけでも、グイグイとドラマの世界へ惹き込まれてしまう。



見事、文子の絞殺に成功して、書道教室をトンズラした克次。

(遺体の処理は久子が上手くやってくれるだろうさ …… )と、たかを括(くく)って。


そうして、予想どおり、文子の遺体は現場から消えて、書道教室は翌日閉店。久子もどこかへと引っ越してしまっていた。


全てが平和になり、元通りの生活。


ただ、克次が知らなかった事が、まだ、あの《書道教室》には隠されていたのだ!


それも克次が予想だにしないような、壮大な《秘密》が ……


運命のイタズラなのか、なんなのか …… 今度は、克次の妻・保子(生田悦子)がソレに巻き込まれてしまい ……



こうなって、あ〜なって ……

こんな風にあらすじを書きながらも、「原作者・松本清張のアタマの中はど~なってるんだろう?」と、ひたすら感心する。


まだ、まだ松本清張の作品は未見がいっぱい。

そんなモノを探して、50代のワタクシは、遅ればせながらスタート・ラインに立ったばかりである。

今回も楽しませて頂きました。星☆☆☆☆☆でございます。


※《追記》

近藤正臣風吹ジュンの組み合わせ、ごく最近どこかで見た気がしていたが、やっと思い出した!


朝の連続テレビ小説『あさが来た』だった!


ケーハク浮気男と、殺されてしまうようなホステス女が、数十年も経てば仲良しの夫婦(めおと)役。


俳優も女優も続けていれば、こんな稀有な再会もあるのだ。

ちょいと感激したのでした。

2022年8月9日火曜日

ドラマ 「鉢植えを買う女」

 2011年  11月。





2011年のテレビ東京で放送したという、このドラマ。

私が観る事ができたのは、2020年代に入ってから、ずっと後の放送だった。


とにかく、このドラマの主人公である余 貴美子(よ きみこ)さんのやさぐれ感半端なく最高(≧▽≦)過ぎて、いつしか食い入るように観てしまったのだ。



『上浜楢江(ならえ)』(余貴美子)は、精密機械メーカーの会社に勤続30年以上勤める独身OL。

もはや《恋》だの《愛》だのに、とっくに見切りもつけている御立派な年齢を迎えている。(52歳だもんね)


それなのに、時たま、田舎から出てきて見合い写真を押し付けてくる母親(佐々木すみ江)には、もうウンザリ。


「どうせ、子持ちの冴えない中年男でしょ」

そう言いながらも、一応写真を見てみると案の定。(ガックリ!やっぱりオッサンじゃん)



こんなイライラ💢する気持ちは、会社でウサばらし。

仕事の出来ないような新人たちに激しく当たり散らす楢江。(上司もそんな楢江が恐いのか、注意すら出来なくてビクビクしてる)


みんなが楢江を嫌っている。

でも、一方では、そんな楢江を《頼りにもしている》という異常な状況。


なぜなら、楢江は会社で金貸し業をやっているからなのだ。(非合法で)


昼食は毎日、ステンレスの弁当箱に詰めた《自家製焼きそば》だけ。

そんなモノで辛抱して、30年間楢江はコツコツ金を貯め込んできたのだ。


それを今度はどうにかして、さらに増やしていきたい。

そこで、社員相手に利子付きで《金貸し業》を始めたのだ。


こんな噂は、口コミで、あっという間に社内中に伝わり、今日もある社員が、楢江が一人きりになるタイミングを見計らっては、こっそりと近づいてくる。


「あの〜上浜さん、また少しばかり都合つけてほしいんだけど …… 今度、子供が産まれるもので …… 」


「名刺だして!」



社員が差し出した名刺の裏に、《借りた日付》、《金額》、《返済日》などを書かせる楢江。その目は射抜くように真剣そのものだ。


個人の名前が書かれた名刺は、いわば借用書がわりなのだ。


その名刺を受け取ると、代わりの金を渡す。


「ちゃんと期日には返して貰うわよ!もちろん、それなりの利子も頂くわ!!」

社員は金を受け取ると、楢江に深々と頭を下げていってしまった。


これが今の楢江の信念。


(《金》は決して私を裏切らない!信用できるのは《金》だけよ。それをもっと増やしていって、いつか郊外に私だけの夢の城(アパート)を …… )


そんな、ある日、会計課の『杉浦淳一』(田中哲司)という男がやって来て、楢江から金を借りていった。

ギャンブル狂の杉浦に金を貸したのは初めてだったが、楢江はあくまでも強気。


「ちゃんと返してよ!」


でも、返済当日が来ても杉浦の態度は、まるで呆れたもの。


「明日、本命のレースがあるんだ!今はこれだけしか返せない」


「冗談じゃないわ!約束よ!返してよ!キチンと今すぐ返しなさいよ!!」

ギャンギャン喚き散らす楢江。


そんな楢江を黙らせようと、杉浦は口を塞ぎ、抱き寄せ、慣れた手つきで、スカートの中に手をもぐり込ませてきた。


「何するのよーー!」

すんでのところで、杉浦を振り切り、やっとこさ逃げ去る楢江。


この歳で《強姦》されかかった …… 

一周りも歳下の男に ……



楢江にとってはショックな出来事。

でも、この出来事が、諦めかけていた楢江の女性としての《本能》を目覚めさせ、今までの自信を徐々にグラつかせてゆく ………




こういう『楢江』のように、強気の仮面をかぶって《金》にだけ執着している女は、昔も今も存在するし、自分の間近にもいたりする。


『杉浦』のように、ギャンブル癖があり、女ったらしの男も、また然りだ。


どこにでも見かけるような登場人物たち。

そんな人物たちを上手く絡めて、物語に織り込んでいくサマは流石である。


「誰の原作か?」と思いきや、やっぱりコレもミステリー作家・松本清張さまでございました。


鉢植えを買う女』は、1961年に発表された短編集の中のほんの一編。

こんな短編でさえ、その昔から何度も映像化されているのだという。(『鉢植えを買う女』は、コレを入れて4度目のドラマ化である)



思えば、この日本で、古今東西『ミステリー作家ナンバー1』を選ぶとするなら皆、誰を挙げるんだろうか?


江戸川乱歩?横溝正史?

赤川次郎?西村京太郎?山村美紗?

それとも最近の作家じゃ東野圭吾なのか?


映像化するクリエーターたちは、もはやその答えを、とっくに出している。


この日本では、松本清張こそが、不動の『ナンバー1』なのだ。



たとえ、名探偵などのシリーズ・キャラクターを持たなくても問題なし。


長編、短編の原作関係なく、コレだけ多くの作品が、半世紀以上前から〜現在に至るまで、何度も何度も映像化されては、その都度、話題になる。

しかも、それらのほとんどが高視聴率を叩き出してる。


時代が移り変わっても、松本清張の作品だけは色褪せる事がない。

常にどの時代でも求められているのだから。



俳優や女優たちにしても、松本清張の原作ドラマに出演するともなると、他のドラマとはまるで普通とは意気込みが違うし、最初っから襟を正すような気構えである。


特に女優たちの方が、そんな想いが格別に強いように思える。


「この作品が女優としての真価をとわれる!」とか、

「これが成功すれば女優として一歩前に抜きん出る事ができる!」

なんてのをビンビンと感じさせてくる。(最近じゃ米倉涼子武井咲なんてのが、それに当てはまるだろうか)


表向きには人当たりが良かったり強気の仮面を被っていても、裏ではドロドロしたモノや弱さを抱えていたりして、苦悩している男と女。


そんな人物たちが間近にいて、知り合ってしまうと、どうなってしまうのか?


松本清張の小説には、大がかりなトリックは無くても、そんな男女の《化学反応》的な面白さがある。


それを皆が分かっているのだ。




楢江はあれ以来、杉浦の事が気になってどうしようもない様子。

しまいには、用もないのに会計課に行っては杉浦の姿をちょくちょく探してしまう日々。


そうして、借金を返しに楢江の家を訪ねてきた杉浦に誘われ、拒まれず、とうとう関係を結んでしまうのだ。(「嫌よ嫌よも好きのうち」を地でいく楢江)



でも、その日から楢江の気持ちは180℃反転。


顧客名簿からは杉浦の名前は消されて、すっかり杉浦の彼女気分。

いきなり「淳ちゃーん♥」になってしまうのだ。(この変わり様よ(笑))


杉浦の為に尽くしはじめ、オシャレをしはじめ、ケチケチした焼きそば弁当をヤメて、多少の贅沢(会社の社員食堂で昼食)をしたりもする楢江さん。


そんな楢江に水を差すような事を言って近づいてくるのが、イヤな食堂の賄いババァ(泉ピン子)。


「あんた、あの男と付き合ってるのかい?あの男ギャンブルだけでなく、若い女にも金を注ぎ込んでいるって噂だよ」(要らぬことを)


「そんな …… 」


幸せの絶頂から、いきなり奈落へ真っ逆さま。

今度はドス黒い疑惑と嫉妬心に支配される楢江。



これぞ不可思議な男女の《化学反応》。

当然、この先、楢江と杉浦には悲惨な末路が待っているのである ……



暇な時間に面白いドラマや映画を探すなら、松本清張を頭の隅に入れておくのもいいかもしれない。

なんせ、ハズレ無し。


このドラマも印象深く残っている一編なのでございます。星☆☆☆☆。

(それにしても、泉ピン子は最後までイヤなババァだ(笑))


2019年1月1日火曜日

映画 「霧の旗」(山口百恵版)

1977年 日本。






――  北九州の片田舎。


『柳田正夫』(関口宏)と妹の『桐子(きりこ)』(山口百恵)は、幼い時に両親を亡くし、たった二人で支えあい生きてきた。



兄の正夫は、小学校の教師をしていたのだが、ある日修学旅行の積立金を全額落とし無くしてしまう。(なんてドジな)


仕方なく、高利貸しの老婆に高額な利息で借金をしてしまう正夫。(なんせ、キャッシングもクレジットもない時代なので)




だが、その老婆が殺されてしまった。


たまたま、「借金の返済を待ってくれ!」と直談判に行った正夫は、殺された老婆に遭遇してしまう。


そうして、(魔がさしてしまい)自分の借用書だけを持ち帰ってしまった正夫。




だが、これを怪しんだ警察は、正夫を、桐子の目の敵で逮捕した。



「待ってください!、兄は無実です!」

連行していくパトカーを追いかけながら、桐子は叫ぶ。(借用書を盗んだのに? (笑) )




その後、留置所に面会に行くと、

「待っていて!お兄ちゃんは絶対に私が助けるから!」と励ます桐子。




国選弁護人は頼りにならない。

有名な弁護士に頼もう。そうだ!東京の弁護士がいい!


桐子は夜行列車に乗りこみ、ひとり東京を目指した。





―― そして東京。



敏腕弁護士と名高い『大塚欽三』(三國連太郎)の事務所に乗り込んで行く桐子。


そこには、雑誌記者の『阿倍啓一』(三浦友和)が、たまたま取材で来ていた。



(あんな若い子が、こんな所に?……)




だが、はるばる訪ねていった大塚弁護士の態度は案の定、《無慈悲》なものだった。


貧乏な桐子が高額な弁護料を払えないと分かると、態度を変えて、冷酷に(とっとと)追い返したのだ。




桐子が肩をおとしながら事務所を出ていくのを、なぜか?阿倍は追いかけた。



(だが、この子になんて言葉をかけたらいい?………)


追いついても上手い言葉ひとつ思いつかないでモジモジしている阿倍に、桐子は、


「きっと、兄は死刑になります。でも見殺しにしたのは大塚弁護士だわ!」と言ってのけた。




激しい憎悪で立ち去っていく桐子に阿倍は言葉を無くした。



その後、桐子のあの表情が忘れられない阿倍は、柳田正夫の事件が気になり、こっそり調べてみると………



柳田正夫は第一審で死刑の判決をうけたのだった。



そして、刑が執行される前に、哀れ正夫は獄中で死んでしまう。



(あの子は、今、どうしているだろうか……たった一人で……)


阿倍は、遠い北九州にいる桐子に思いをはせた。(惚れたな? (笑) )





――――  それから数カ月後。



阿倍は、たまたま夜の銀座のクラブに来ていた。



そこには、あの桐子の姿が!


だが、いまや別人のように変わり果てて、ホステスとして接待している桐子に、阿倍は愕然とするのだった……





原作は、松本清張


以前、『疑惑』をとりあげたが、本当に松本清張の作品は傑作ぞろいだ。

何を読んでも、時代が変わっても風化することなく面白い。



こんなに頻繁に映像化されて、好まれる小説家もいないんじゃなかろうか。




そして、この『霧の旗』も他の作品同様、何度も映像化されている。

1965年、倍賞千恵子主演、山田洋次監督版が、傑作といわれ有名らしいが、自分は未見である。(いつか観てみたいが)




私が観たのはこの1977年版。


そう、私が、ただ、山口百恵の大フアンだったからに他ならない!!




この時、山口百恵、若干18歳。

それにしてもスーパーアイドルに、ホステス役なんて、会社(ホリプロ)もよく許したよ (笑) 。





こんな桐子が地道にホステスを続けていると、ある時、思わぬチャンスがおとずれるのだ。



桐子の客だった男が殺されて、その殺害現場のマンションに、偶然やって来たレストラン経営者の『径子(みちこ)』(小山明子)という女性。


そこへ遅れて、『桐子』(百恵ちゃん)も目撃者として現れて……


死体の側に立っている径子は、桐子相手に、急にアタフタする。


「私は無実なのよ!私が、ここに来た時は死んでいたんだから……お願い!証人になってちょうだい!!」



こんな径子の死にものぐるいの訴えに同情するかと思いきや……

この径子が大塚弁護士の愛人だと知ると、途端に態度を豹変させる桐子。




やがて逮捕された径子の供述で、警察が桐子の所へやって来て尋問すると、


「何の事でしょうか?私、そんな女性に会った事もありませんし、そんな場所に行った覚えもありません」



どこまでも知らぬ顔。

クールな表情を崩さない桐子なのである。(すっとぼけ)



こんな桐子の豹変に慌てふためく留置所の径子と、大塚弁護士😰




これは神様が私にくれたチャンス!


全ては『大塚弁護士』(三國連太郎)を、徹底的に苦しめる為なのだ。



私が兄を亡くした苦しみを味わったように、今度は大塚弁護士が苦しむ番なのよ!



あまりの冷酷さに、『阿部』(三浦友和)が「もう、許してやれよ!」と何度も言っても、一切聞く耳なし。





この怨み、はらさでおくものですか~!🔥



無表情を装っていても桐子の腹の中ではメラメラと復讐の炎が燃えているのだ。(怖っ!)



情にも流されず、妥協もしない桐子の復讐は、こうして淡々と静かに行われていく………





この非情な桐子役、周りはイメージを考慮して反対したそうだが(でしょうね)

「どうしてもやりたい!」と百恵自身が周囲を説得したという。



10代の娘が、すごい覚悟である!


この時代のアイドルと呼ばれていた人達は、10代でも、皆もう立派な大人なのだ。



今の歌手や俳優が、ただ「歌が好きだから」とか「有名になりたいから」、「華やかな芸能界に憧れて」、「街でスカウトされて」とかの理由じゃないのだ。



百恵に限らず、当時の歌手や俳優たちは、「親」や「兄弟」を養う為に芸能界に入ってきているのだ。



10代でも、

「自分が稼いで有名にならなければ家族を養っていけない!」

そんな悲愴な覚悟で芸能界に入ってきているのだ。



そんな覚悟が大きいほど、特別なオーラをまとう事ができるのかもしれない。





作曲家やプロデューサー、脚本家たちの目は、それを決して見逃さない。


有名になっていくのも当たり前なのだ。




100人いても1000人いても、その中で誰もが、その人だけに注目してしまうのが、本物のスター。



どんなに化粧しても、整形してもダメ。

ダンスや歌がうまくても絶対にまとえない、大スターだけが持っている輝き=覚悟。



この映画『霧の旗』でも、百恵の瞳の奥に、ユラユラ揺れる炎のような覚悟を、充分に堪能できると思うのであ〜る。

星☆☆☆☆。

2018年10月11日木曜日

映画 「疑惑」

1982年 日本。








白河酒造の当主『白河福太郎』と、その妻『球磨子(くまこ)』(桃井かおり)の乗っていた車が、深夜、猛スピードで海に飛び込んでいった。



からくも球磨子は助かったのだが ……… 夫である福太郎の方は車中に残されて、海から引き揚げた車の中で溺死。

呆気なく死んでいた。



だが、福太郎には3億円の保険金がかけられていて、受取人はもちろん妻の球磨子。


しかも球磨子には前科があって、警察にしてもマスコミにしても、真っ先に球磨子に疑いの目を向けてくる。




記者会見でも、球磨子のスタンド・プレーは止まらない。



目の前の記者(柄本明)には、

「あんたみたいなのを《ペンこ●き》っていうのよ!」

もう、言いたい放題である。(※この言葉、《こじ●》、今じゃ立派な差別用語である。)





葬儀の夜、皆が悲しむ中、そんな球磨子が、ノコノコやって来る。



年老いた福太郎の母(北林谷栄さん)が泣き叫ぶ。


「球磨子さん!!最後だから福太郎の顔をよく見てやってください!」



球磨子は棺の中の夫を覗きこむと、たまらずに、

「オエーーー!」(あんまりやろ(笑))




そんな球磨子の有り様を《毒婦》と書き立ててマスコミは、またもや大騒ぎ。




やがて、とうとう裁判にかけられてしまう球磨子。



だが、弁護士にも逃げられて、やっと引き受けてくれた国選弁護士として『佐原律子』(岩下志麻)が留置場にやってくる。




そんな状況でも、余裕をぶっかまして薄ら笑いを浮かべる『球磨子』(桃井さん)。



「嫌いだなぁ~、あんたの顔ぉ~。あたしさぁ〜弁護士要らないのぉ。一人で闘うわぁ~」




そんな球磨子に全く動じることなく、さらに下げすんだ、氷のような目を向けてくる『佐原律子』(志麻姐さん)。



「死刑になりたければ、そうすれば? あーた、アタシが嫌いなら断れば?!」

※岩下志麻姐さんは、《あなた》を《あーた》と呼ぶのが特徴。





かくして、球磨子と律子は憎み合うのか、それとも共闘する気持ちになったのか …… もはや分からないまま  …… 

波乱含みの裁判は始まるのである。






この時期、野村芳太郎監督は、次々と松本清張の映画化を成功させていた。


その中で自分が一番好きなのが、この『疑惑』である。




とにかく、この映画は、桃井かおり岩下志麻が最高!


この映画の、どこか投げやりで下品な感じの桃井かおりは、今でもやってる清水ミチコのモノマネの原点じゃないのかな?

是非、比べて観てほしい(笑)。




岩下志麻も、触れると斬られるようなカミソリみたいなド迫力があった。(今は2人とも丸くなったが)





それに、この法廷に次々と証人として呼ばれる俳優人たちが、これまた豪華絢爛だ。



小沢栄太郎(鑑定人)、

森田健作(目撃者)、

鹿賀丈史(球磨子の情夫)、

三木のり平(桃屋ですよ(笑))




なかでも特に山田五十鈴(バーのマダム)は、圧巻である!





ネチネチ弁護する『律子』(岩下志麻)に、証言台にたったマダム(山田五十鈴)が、キッ!と睨みつけると、畳み掛けるように一気にまくし立てる。



「女が男をたらしこむのは当たり前だろ!


男だってそれを承知で遊びにくるんだよ。

あたしゃねぇ、30年、この商売やってるんだよ! 

男と女の事なら、あんたよりもよっぽど泥水飲んでんだよ! 


騙すも騙されるも《紙一重》! 


そんな事も知らないで、よく弁護士なんてやってられるねぇ〜 


うちに帰って、よく亭主に聞いてごらん!  そんな調子じゃ逃げられちまうよ!!」




この長台詞を気っぷのいい江戸弁で、スラスラと言ってのけるのだ。



とっくに夫に離婚されていた『佐原律子』(岩下志麻)には、まるで胸をえぐるような御言葉(グサッ!ズキ!ドキッ!)。


これには、ひと言も言い返せず、もうタジタジ(-_-;)である。





事件は、法廷で様々な証人を呼びながら、淡々と進んでいくのだが、中々これといった決め手が見つからない。



だが、志麻姐さんの偶然の運転トラブルが、事件を紐解く鍵となるのである。





今観れば、オモシロ可笑しい場面の連続。(マトモじゃないよ、この裁判劇)



でも、よっぽど日本人に愛されているのか、その後、何度も実写化されております。




でも、桃井さん、岩下姐さんの黄金コンビをおびやかすようなキャスティングは、まだまだ、現れず仕舞いなのである。



星☆☆☆☆☆。