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2025年8月1日金曜日

映画 「潮騒(山口百恵版)」

 1975年  日本。




『宮田初江』(山口百恵)は、こう見えてもお嬢様。(一見、田舎娘にしか見えないが)


伊勢湾に浮かぶ《歌島》(現在の神島)の有力者・『宮田照吉』(中村竹弥(たけや))の娘なのだ。


宮田家には跡取り息子がいたのだが、とうに亡くなってしまい、何人かいた姉たちも結婚して嫁いでしまっていた。


使用人たちはいても、たった一人きりになってしまった宮田照吉。


昔、養女に出されていた初江は、照吉の世話の為、最近になって島に呼び戻されたのである。(島の若い衆たちも、アイドル百恵に色めき立つ)



『久保新治』(三浦友和)は、若い漁師。

貧しいボロ家に住んでいて、働き者の母親『とみ』(初井言榮)と小学生の弟『広』との3人暮らしである。


若いのに真面目で一生懸命働く『新治』は、親方『大山』(花沢徳衛)たちの信頼も厚い。



こんな新治と初江は、最初からお互いに運命的なものを感じていた。


初江が重い水桶をひっくり返してしまった時には、そこを偶然、新治が通りかかる。(親切な新治はそれを手助けする)


新治が給料袋を無くした際には、わざわざ初江が見つけて自宅まで届けに行ったりもする。




そうして、ある嵐の日、島の《監的哨跡(かんてきしょうあと)》(旧陸軍が大砲の試射弾の観測をした施設跡地)で新治が雨宿りをしながらウトウト寝ていると、そこへ後からずぶ濡れになった初江もやって来た。

そうして ……


《↑現在も残る監的哨跡》


あの有名なシーン


「目ぇ、開けたらいかん!目ぇ、開けたらいかん!」



自分が全裸で雨に濡れた洋服を乾かしているので、新治にも全裸になる事を強要する初江。(最後の一枚、《ふんどし》さえも初江は絶対に許さない。「まだ、残っておる!」と厳しい目つきの百恵ちゃん)


そんなのを気にせず『新治』(三浦友和)がホイホイ脱いでいき、全裸になると、またもや無茶ぶりする初江。


「その火を飛び越えてこい!」



そんなのも軽くクリアした新治は、真っ裸の姿で、初江に一目散に迫ってくる。(目の前に真っ裸の百恵ちゃん、もう堪らん!ってなものだ)



「いかん!うち、あんたの嫁さんになると決めたんや。嫁入り前の娘がこんな事、したらいかん!」


すんでのところで、とんだお預けを食らう『新治』(友和)。

わけのわからない事を散々させておいて、ギリギリ操(みさお)を守った『初江』(百恵ちゃん)。


『新治』(友和)は、渋々、我慢してこらえた。(今観ると蛇の生殺しシーンだな、コレ(笑))


だが、狭い島の中、二人の噂は一気に広がっていき ………




映画『潮騒』というと、この際どいシーンばかりがクローズ・アップされていて、ほとんど記憶になかったのだが、大人になって観ると、その印象もガラリと変わってしまう。


百恵・友和以外の出演者たち(《歌島》に住む者たち)が皆、性根の優しい人ばかりでカラッとした気性として描いているのだ。




特に『新治』(三浦友和)の漁船仲間、『大山』(花沢徳衛)と『竜次』(川口厚)は名コンビ。

あらぬ噂を立てられカンカンに激怒した『宮田照吉』(中村竹弥)は、娘・初江に「当分、家から出るな!」なんて外出禁止令を出すものだから、相思相愛の二人は会えずじまい。


そんな二人の橋渡し役を引き受けてくれるのが、このコンビなのだ。(もっぱら若い竜次が目印の壺の下に手紙を隠しておく係ね)



そんな折、新治に長い航海で大型漁船・《日の出丸》に乗り込む話が入ってくる。



母親の『とみ』(初井言榮)は息子の身を案じて大反対!


「新治、騙されちゃいかんぞ!《日の出丸》は宮田の照爺のとこの船じゃ。お前と初江の仲を引き裂くために、あの照爺が、わざと企んだことなんじゃ。絶対騙されちゃーいかんぞ!!」





こんな母親『とみ』の涙の懇願にも動じず、新治は《日の出丸》に乗り込む事を決めた!


そうして、同じ《日の出丸》に乗る事になったのが、村のボンクラ息子で、同じように初江の事を狙っている『安夫』(中島久之)である。


《↑なぜか長い航海に出るというのに場違いなスーツ姿の『安夫』(中島久之)。ダメだ、こいつ(笑)『新治』のライバルにもならんわ》



それをじっと見送る『初江』(百恵ちゃん)。




(新治さん …… あなたが無事に帰ってこれるように …… 私、祈ってます …… )←『安夫』(中島久之)の事は最初から、まるで眼中にない『初江』(百恵ちゃん)(笑)。









厳しい嵐を無事乗り切って帰ってきた『新治』(三浦友和)を島の長・宮田照吉もようやく認めてくれた。

「男は気力が一番なんじゃ!」

 

百恵、友和の映画にしては、珍しくのハッピー・エンド。


私、このコンビでは、この映画が一番好きかもしれない。

オススメしとく。


それにしても、神島、八代神社、監的哨跡など絵になるような名所がいっぱいだ 。(いつか行ってみたいなぁ〜)






2025年6月12日木曜日

映画 「伊豆の踊子(山口百恵版)」

 1974年  日本。





山口百恵主演映画第一作目。


可哀想に、今じゃ考えられないが百恵ちゃんのデビュー曲『としごろ』は、さっぱり売れなかった。(37位が最高位でした。)

2曲目の『青い果実』で大きく挽回したものの(最高9位)、3曲目、4曲目はトップテン外。


当時のホリプロ社長・堀威夫(ほり たけお)氏は、「ならば百恵は《役者》で売り出そう!」と決心し、昔ながらの知り合いである西河克己監督に相談する。

こうして川端康成の名作『伊豆の踊子』が撮られる事になるのだが …… 問題は《相手役》!


大々的に新聞広告まで出して、相手役オーディションを行い、現役東大生の素人が決まるのだが、監督の西河克己が、ど〜にも気に入らない。


《↑西河克己監督》


西河克己監督は、たまたま探し出してきた新人・三浦友和をひと目で気に入り、面接をして、周囲の猛反対をねじ伏せると、強引にキャスティングしてしまったのである。



でも、こうして並んでみても、やっぱりお似合いの二人。


三浦友和が眩しいくらいの超イケメンで、演じている百恵ちゃんのドキドキ感♥️が観ているこちら側にも伝わってくるくらい。



そもそも映画のクレジットでは百恵が主役でも、この『伊豆の踊子』という原作自体が、川端康成が若い時に体験した数日間の旅日記みたいな小説。


映画のナレーションを名優・宇野重吉さんがつとめ、若い頃の川端康成の《回想》という形でドラマは始まってゆく。(原作では《私》という記載しかなく名無しだったが、映画では三浦友和の役には《川島》という名前が与えられている)


つまり、本当の影の主役は『川島』(三浦友和)なのである。


全て、川島の目線で《旅芸人たちの差別》や《若い踊子・『かおる』(山口百恵)の可愛らしさ》を観客たちは体感する事になるのだ。







男は三浦友和になった気持ちで、百恵ちゃんを《愛おしく》思い、

女は百恵ちゃんになった気持ちで、三浦友和を《白馬の王子様》のように思う。(なんせ70年代は少女漫画の全盛期ですもんね)




だからこそ、相手役選びには慎重だったのだろう。


見た目も良くて演技もできる三浦友和。(まぁ、一般公募とはいえ素人には難しい役だろうな)


三浦友和を選んだ西河監督は、まさに彗眼だったのだ。




こんな『川島』(三浦友和)は、旅芸人一座と同行しながらも、踊子『かおる』(山口百恵)にドンドン惹かれていく。

そうして、『かおる』も ……



書生・『川島』と『かおる』が《活動写真(映画)》を観に行く約束をするも、旅芸人の長(おさ)『のぶ』(一の宮あつ子)は、大反対!


「旅芸人の娘と書生では《身分》が違いすぎる!傷つくのは『かおる』なんだよ!」


川島の気性を気に入っている『かおる』の兄『栄吉』(中山仁)が援護するも言い合いになっている。


それをたまたま運悪く聴いてしまった『かおる』。



「すみません …… 《活動写真》行けなくなりました …… 」

「…… 僕の方もあなたに言いたいことがある …… そろそろ学校に戻らなければならなくなったんだ …… 」

ショックでその場にしゃがみこみ、泣き崩れる『かおる』(百恵ちゃん)。(😭ああ〜、可哀想な百恵ちゃん)


川島の方も身を切られるような気持ちなのだ。



翌日、港に見送りに来ていた『かおる』に

「 … ずっと言おうと思っていたんですが … その簪(かんざし)、僕にくれませんか?」とねだる川島。


そうして、だまってソレを差し出す『かおる』。






「さよ〜なら〜!さよ〜なら〜!」




遠ざかっていく船に、いつまでも、いつまでも手を振り続けている踊子。


可哀想な二人の姿にしんみりする。



(こんな薄幸な踊子『かおる』(山口百恵)に安息な日々はやってくるのだろうか …… )と気をもんでいると、映画は、さらに冷や水をかけられるようなラスト。


いつものようにお座敷に出て踊る『かおる』に、なんと!酔っ払いの入れ墨をいれた中年男が絡んできて抱きついてくるのだ。




キィーーッ!💢と腹が煮えたぐる思いと、「百恵ちゃん、さっさと逃げてぇー!」と思いが交差して、映画は幕となるのである。



子供の頃にこれを観た日には、なんとも後味の悪い思いがして、(百恵ちゃんと友和が何とか幸せになれればいいのになぁ〜 …… )と願ったものだ。


そう思ったのは自分だけでなく、日本全国の人たちが、こんな虚構の世界を飛び越えて、二人の行く末を見守っていたのだった。(二人が結婚したから良かったものの、これが互いに別の相手と結婚していたら、どうなっていたのだろう?)

日本全国、大発狂していたに違いない。



まんまと日本人全員が、西河監督の演出マジックに、してやられた感じだ。


そうして、この映画は試写でも評判が良く、正月映画に持ち越される。

幾多の洋画を抑えて、その年の《3位》に食い込むくらいに大健闘したのだった。



驚いたのは東宝やホリプロだけじゃない。


他の芸能プロも躍起になりだした。

「我々も《百恵・友和コンビ》に続け!」とばかりに、自社のアイドルたちを使って映画に売り込むも …… そうそう上手くいくはずがない。皆がコケた(笑)。


ここから、映画でもドラマでも、この《百恵・友和コンビ》が怒涛の伝説を創り上げてゆくのである。《おしまい》





※《追記》

尚、映画の舞台となった静岡県にある《湯ヶ野温泉 福田家》は、令和7年の今も健在である。


《伊豆の踊子》に感銘をうけた方は訪ねてみるのも、また良いかもしれない。

《↑湯ヶ野温泉 福田家》

2025年3月25日火曜日

ライブ 「山口百恵の《伝説から神話へ - BUDOKAN … AT - LAST - 》」

 1980年11月。




決して、上の写真は『カトリーナ陽子』ではございません(笑)。(この令和に百恵ちゃんのものまねタレントが現れるなんてね)


正真正銘、山口百恵の引退コンサートの様子である。


山口百恵といえば70年代に活躍したスーパー・アイドル。80年に入ると結婚して、とっとと引退してしまったのは日本人なら誰でも知るところ。


もちろん、芸能生活はわずか7年間でも、その間に何度かコンサートを行っているはずなのだが、山口百恵のコンサート・ライブを観ることができるのは、この《伝説から神話へ》の武道館引退コンサートだけ。


なぜなら、山口百恵の活躍時期が《70年代》だったからなのだ。


70年代といえば、まだ日本ではビデオなどが、大変 高価✨ な時代。


ビデオ・デッキも相当なお金持ちしか所有できないくらいの超高級品だった。(1964年にソニーによって開発された《CV2000》というビデオ・デッキが当時の価格で198,000円。この頃の大卒初任給が、わずか20,000円くらいの時代にですぞ!)


《↑CV2000のビデオ・デッキ》



だから、テレビ局にしても、ドラマなんか一回放送してしまえば、その上に何度も重ね撮りしてしまい、以前のモノは残っていないモノが、ほとんどなのだ。(そのくらいビデオ・テープも超高額だったのである)


近年、山口百恵の《夜のヒットスタジオ》DVDなんかも発売されたりもしたが、コレも完全版ではない。


百恵ちゃんのデビューは1973年の『としごろ』だったのだが、テレビ局にさえ、その頃の映像は、もはや残っていないのだ。(《夜ヒット》には1975年以降、9曲目の『夏ひらく青春』からの映像が収められている)

沢田研二にしても、西城秀樹にしても、また、しかりである。(1975年以降で収録されている)


だからこそ、この引退ライブの映像が、とても希少なモノなのだと分かってもらえると思う。


そうして、百恵ちゃんが引退し、80年代の半ばになった頃、やっと一般家庭にもビデオ・デッキが普及しはじめた。(うちにもビデオ・デッキがやってきた)


近所にはレンタルビデオ店が並びはじめ、そこには山口百恵の引退コンサート《伝説から神話へ …… 》のビデオが置かれているのを見つけたのだった。(昔は音楽ビデオのレンタルも平気で並んでいた。今じゃ版権や著作権でうるさいだろうけど)


ラインナップはこんな感じ。


1∶This Is My Trial(私の試練)

2∶夢先案内人

3∶横須賀ストーリー

4∶(メドレー)ひと夏の経験〜冬の色〜青い果実

5∶いい日旅立ち

6∶曼珠沙華

7∶秋桜

8∶不死鳥伝説

9∶歌い継がれてゆく歌のように

10∶さよならの向う側

11∶This Is My Trial(instrumental)


全部で、たった11曲。

これを見て、(おっかしいなぁ~、引退コンサートにしてはあまりにも短すぎるし、『プレイバック Part 2』や『ロックンロール・ウィドウ』など他のヒット曲も歌わなかったんだろうか …… )と思っていたものだが、同じVHSビデオでも《ロング・ヴァージョン》なるモノが1983年に発売されて、既に存在していたのでした。


こちらは上記のモノに6曲が足されて全17曲である。(これで約120分近く)



そうして、DVDの時代になってくると、またまた《完全リミックス版》なるモノが発売される始末。(さらに数曲が足されて楽曲は23曲(数曲のメドレーは、まとめて【1】とカウントする)+特典Single Discography)


このDVDは買い求めて、何度も観て楽しんでいたものだが、しばらくすると、またもや驚愕の事実を知ってしまう。


謝肉祭という曲が一つだけ抜け落ちていたのである!(どこが?《完全版》なんじゃー?!💢)


なんでも『謝肉祭』の中で歌われている「♪ジプシー、ジプシー♪」というワードが《差別用語になっている!》とかどうとか …… (今じゃ《ジプシー》の事を《ロマ》というのが正しいんだとか)


……… でもねぇ~、それを言うなら中森明菜が平気で歌っている『ジプシー・クイーン』なんて曲はどうなんだ!って話よ!(もろ、タイトルも《ジプシー》じゃん!)


こんな声が届いたのか、どうなのか、2006年発売の《Momoe Live Premium》で、ようやっと、『謝肉祭』も収録されて、本当の完全版になる。(なんだかここまでくると、何度も《完全版詐欺》にあってるような気もしてくるが …… )


そうして、音声や色彩まで補正が加わった現在のBlu-rayの形に落ち着くのである。(これで150分近くである)



さすがにぶっ通しで観ると「2時間半は長いなぁ〜」と思うし、「衣装チェンジ少な!」(4回しか着替えてない)とも思うけど、百恵ちゃんの歌唱はブレる事もないし、最後まで全く衰えない。


むしろ「本当に同じ人間か?」と思われるほど驚異的な体力である。


合間合間のトークもお客さんたちを飽きさせないように楽しませて笑わせて …… 

これが当時、若干20歳の女の子だったのだから、今更ながらに恐れ入る。


やはり、山口百恵という人は《別格》なのだ。


そうして、これは私が昔から勝手に思っている事だが、成人式にはどんな祝辞の言葉よりも、このライブビデオを是非見せるべきだと思う。


少しでも、しっかりした大人になれるように ……

山口百恵に近づけるように … ね



※《蛇足》

最初に書いた『カトリーナ陽子』さんについてだが、化粧や仕草は似せられても歌唱の方は、まだまだ。(なんせ、あの低音は女性には難しい)


それに、百恵ちゃんは、一人称の《ワタシ》と《アタシ》を上手に使い分けて歌っている。


ワタシに該当するのが、『いい日旅立ち』や『秋桜』など。


激しい曲では、いつもアタシと歌ったりしている。


「♪交差点では隣りの車がミラー擦(こす)ったと~。怒鳴っているから、アタシもついつい大声になるぅ~」(プレイバック Part 2


「♪心の貧しい女だわ~、あ〜あ〜アタシ」(愛の嵐


「♪いい加減にして!アタシ、あなたのママじゃ〜ない」(ロックンロール・ウィドウ


顔は無表情を装(よそお)ってても、腹から自然に沸き立つような感情の声を響かせる。


これができれば完璧である!(笑)

完全なる百恵への道のりは、まだまだ遠い ……(おしまい)


2022年1月9日日曜日

ドラマ 「北国から来た女」

 1979年 4月25日。





これは『日本の女シリーズ』と銘打った平岩弓枝の名作ドラマの一本で、今回運良く視聴できました。


主演はもちろん、山口百恵ちゃん。




幼い頃に父を亡くし、病床の母も亡くなってしまった『宮川あずさ』(山口百恵)は、天涯孤独の身の上。


東北は青森から、はるばる上京してきた『あずさ』は、しばらく住み込みの店で働くことになった。


そこは、気の良い夫婦(小鹿番、野村昭子)が経営していて、従業員はあづさの他に『照子』という若い女性がいるだけの、下町の小さなラーメン店🍜


そんなラーメン店でも、愚痴一つこぼさずに、クルクルと働く『あずさ』(百恵ちゃん)である。(こんな可愛い店員が世の中にいる?(笑) )



今日も店はテンヤワンヤの忙しさ。(百恵ちゃん効果なのか)


外は大雨で、出前から帰ってきた照子が全身びしょ濡れで帰ってきた。


「ちょっと、あずさ!この集金してきたお金、レジに入れておいてちょうだいね!」


カウンターに封筒をポン!と置き、それだけ言うと照子は、そそくさと奥の座敷に着替えに行ってしまった。


「あ、ハイ!」と生返事するも、お客の接客でてんてこ舞いの『あずさ』は、いつしかそれも忘れてしまい …… しばらくすると、


無い!無いわ!集金してきた3万5千円が!」


着替えを済ませて、店に戻ってきた照子が大騒ぎしだしたのだ。


「なんで、あんたそんな所に置いたのよ?」カウンター奥から店主夫婦もやって来て、大金が消えた事に、店内は騒然としだした。


「あんたのせいよ!どうしてくれるのよ?!」

執拗に責める照子に、あずさが下を向きはじめると ……


若い男性客の一人が、スックと立ち上がって、胸元から3万5千円を取り出したのだ。


「あの、コレ、よかったら使って!」


あずさの手の平に、それを押し付けて持たせる。


突然の出来事にあずさはビックリ!

店主夫婦も照子も呆然としている。


そうして、男は飛び出すように、雨の外へ走り去っていった。


「ちょっと何なのよ~、アレ …… 」(『家政婦は見た』の大家さん役、野村昭子の声で再生ください  (笑) )


こんな見ず知らずの人からのお金なんて、到底手をつけられるはずもない。(まぁ、不気味だしね)


生真面目なあずさは、「私のお給金で必ず、お支払いしますから!」と店主に約束する。



そうして、それからも、いつにもまして懸命に働くあずさ。

店には、そんなあずさに感心して、目をとめる年配の夫人(乙羽信子)の姿があった。



夫人は店主夫婦の所へ行くと、「あの〜今、出前に行かれたお嬢さん、アルバイトか、なにか?」と話しかけてくる。


「いえね、ウチの若いモンに1週間ばかり休みをやっちまったもんで、その間だけね。ウチの照子っていう従業員の幼なじみなもんで置いてやってるんですよ」


「あら、じゃあ~、ウチに来ていただけないかしら?」

店主夫婦は突然の申し出にビックリ。


「ウチもお手伝いの子が結婚して辞めてしまったものでしてね …… 主人と二人で寂しい想いをしていたんですよ。是非お願いしたいわ!」



こうして棚からぼた餅。


夫人の住む『宗方家』に《住み込みお手伝いさん》として働く事になったあずさ。


ただ、気がかりなのは、あの《3万5千円》の男のこと ……




「もし、あの人が、また、この店に来たら私が宗方家の屋敷で働いていること伝えてもらえませんか?どうしても、あのお金をお返ししたくて …… 」


「あぁ、安心しな!伝えとくよ!」


立派なお屋敷『宗方家』へ向けて。


あずさの新生活がはじまる!





やっぱり、ラーメン屋の店員は、百恵ちゃんには合わない!(泉ピン子にさせとけばよい (笑) )



それにしても、お手伝いさん姿の、この百恵ちゃん、『めぞん一刻』の音無響子にそっくりだ。(髪を結んだ百恵、エプロン姿の百恵ちゃんも珍しい)


こっちの方が断然可愛らしいです、ハイ。




以前、このblogでも取り上げた東芝日曜劇場美しい橋』にしても、このフジテレビの平岩弓枝ドラマシリーズ『北国から来た女』にしてもだけど、わずか1時間で完結するようなドラマ枠に、百恵ちゃんが出演できたのは、今思うと幸運だったかもしれない。



そのくらい、こういった単発、短時間ドラマには、名作が揃い踏みなのだ。



とにかく1時間で完結するドラマなので、物語の起・承・転・結を見せる為には、練りに練られた高度な脚本作りが求められる。



たった1時間の間で、主人公や登場人物たちの性格や背景を描いてみせて、山場、着地点まで持っていかなくてはならないのだから、脚本家にしても相当の筆力を要されて、鍛え上げられただろうなぁ~、と思うのだ。(ある意味、精鋭たちの実力が試される場所だったかもしれない)



演出家にしても、その見せ方で大いに悩んで試行錯誤があったはず。

良作が揃うはずである。




もちろん、俳優陣たちも同じで、飛び抜けた個性や演技が求められる。




ラーメン屋の店主夫婦はさすがの安定感だ。


ごく最近、荒木由美子さん主演の『燃えろ!アタック』を観ていて、主人公『小鹿ジュン』(荒木由美子)が居候する酒屋の主人を演じていた小鹿番さん。


小鹿番さんは、ここでも好演。




チャキチャキのラーメン店主を演じている。(こんな俳優さん、最近見かけなくなったなぁ~)



野村昭子さんは、昔も今も、まるで時が止まっているかのように全然変わらない容姿と演技。(ある意味凄い!「化け物か!」と思うくらい)







あずさが世話になる宗方家の夫婦も重鎮が揃う。




宗方家の旦那様を中村翫右衛門(なかむら かんえもん)

この方、歌舞伎役者でいて、昔から数々のドラマに出ております。(今じゃ、もう知る人も少ないだろうな。けっこう時代劇にも出ておりました)


飄々とした演技で、乙羽信子演じる奥さまの尻に敷かれる、人の良い旦那様を演じております。(「あっ、そう …… 」が口癖)




そうして、乙羽信子さん。



それなりに苦労をしてきて、人の痛みも分かるし、『あずさ』(百恵)を可愛がりながらも、旦那様(中村翫右衛門)を気遣う優しさを持つ、品の良い夫人役である。




でも、こんなのはセリフのどこにも書いてない事なのだが、ソレを、その《雰囲気》だけで、一瞬で視聴者に感じさせなければならないのだ。


特に1時間の完結ドラマでは、そのハードルは、ものすごく高くなる。


名優じゃなければ、とても務まらない仕事ぶりである。




そんな面々に最後に加わるのが、夫人の甥っ子で、ヘラヘラした男『山本伊勢(いせ)』(中島久之)。(『あずさ』に「痴漢よぉーー!」と間違われる始末)



土曜になれば、子供のいない寂しい宗方夫婦の元へ訪ねてくる心優しい男なのだけど……



(でも、なんでこんなにヘラヘラしてるのかしら? …… いつもニヤニヤしていて、イヤな感じ)

と、全くあずさにはウケが悪い。




「あんたが変な金縁メガネなんてかけてるから、痴漢に間違われるんだよ!」と夫人に言われても、

「酷いなぁ~、似合うと思ったんだけどなぁ~」と、やっぱりヘラヘラ笑ってる。



こんな感じで、あまり印象が良くない『伊勢』なのだけど、段々と好印象に …… (『赤いシリーズ』じゃ損な役回りだったけど、このドラマでは役得の中島久之さん)




夫人に、あずさの事を紹介したのは、そもそも『伊勢』だったのだ。(ラーメン店の常連だったらしい)



それに《3万5千円の男》と偶然再会して、知ってしまう男の正体。(そもそも盗んだ金を、ただ返しただけだったのである。ゲゲッ!なんじゃ、そりゃ!)




「俺は見ていたんだからな!正直に白状しろ!」

あずさの目の前で、いつもはヘラヘラしている『伊勢』は、その男をとっちめるのだ。(もう、株は一気に急上昇する!)



(この人、見かけによらず、ちゃんとした人なのかも …… )と思いはじめた『あずさ』(百恵ちゃん)。



そうして、宗方家に帰ってきて、皆で一家団欒を楽しんでいると、突然、地震が!



「みんな、テーブルの下に隠れるんだー!」





テーブル下で、いつしか伊勢の腕につかまり、ガタガタ震えているあずさに、伊勢がドサクサにまぎれて、一世一代の告白をする。


「なぁ、俺のとこに嫁さんに来いよ …… 」と。



戸惑う顔のあずさの表情で《終わり》。

ドラマは幕となるのである。





この後、あずさが承知したのか、どうかは視聴者に想像をゆだねるのだが ……




このドラマの中島久之さんも、例に及ばず、《百恵フアン》からは、クソミソだったそうな。(このラスト、ヘラヘラしながら百恵ちゃんを口説いて、肩を抱くシーンが、いけませんわな  (笑) )



「こんな男は百恵ちゃんにふさわしくないぃぃーーー!」


ドラマと現実の境界線も分からなくなったフアンが大激怒。


このドラマはドラマで、こうして時が過ぎれば良作だと思うのだが ……… それにしても、国民的なスター『山口百恵』の相手役を務めるのも、本当に当時は難儀なハードルである。



《国民の誰もが納得する百恵ちゃんの相手役》……… そんな超高いようなハードルをとび越えて、共演を重ねることができた三浦友和さんは、もっと称賛されても良いのかも。



「その火を飛び越えてこい!」


なんだか、映画『潮騒』の百恵ちゃんのセリフを、ふと思い出しちゃった (笑)

星☆☆☆☆。