1975年 日本。
『宮田初江』(山口百恵)は、こう見えてもお嬢様。(一見、田舎娘にしか見えないが)
伊勢湾に浮かぶ《歌島》(現在の神島)に住んでいる村の有力者・『宮田照吉』(中村竹弥(たけや))の一人娘なのだ。
宮田家には跡取り息子がいたのだが亡くなってしまい、何人かいた姉たちも結婚して、とうに嫁いでしまっていた。
最近になって、昔、養女に出されていた初江が島に呼び戻されたのである。(島の若い衆たちも、アイドル百恵に色めき立つ)
『久保新治』(三浦友和)は、若い漁師。
貧しい家に働き者の母親『とみ』(初井言榮)と小学生の弟『広』との3人暮らしである。
若いのに真面目で一生懸命働く『新治』は、親方『大山』(花沢徳衛)たちの信頼も厚い。
こんな新治と初江は、最初からお互いに運命的なものを感じていた。
初江が重い水桶をひっくり返してしまった時には、そこを偶然、新治が通りかかる。(親切な新治はそれを手助けする)
新治が給料袋を無くした際には、わざわざ初江が見つけて自宅まで届けに行ったりもする。
そうして、嵐の日、島の《監的哨跡(かんてきしょうあと)》(旧陸軍が大砲の試射弾の観測をした施設跡地)で二人が雨宿りをしていると ……
あの有名なシーン
「目ぇ、開けたらいかん!目ぇ、開けたらいかん!」
自分が全裸で雨に濡れた洋服を乾かしているので、新治にも全裸になる事を強要する初江。(最後の一枚、《ふんどし》さえも初江は絶対に許さない。「まだ、残っておる!」と厳しい目つきの百恵ちゃん)
そんなのを気にせず『新治』(三浦友和)が全裸になると、またもや無茶ぶりする初江。
「その火を飛び越えてこい!」
そんなのも軽くクリアした新治は、真っ裸で初江に迫ってくる。
「いかん!うち、あんたの嫁さんになると決めたんや。嫁入り前の娘がこんな事、したらいかん!」
すんでのところで、とんだお預けを食う『新治』(友和)。
ギリギリ操(みさお)を守った『初江』(百恵ちゃん)。
『新治』(友和)は、男ながら、よく我慢して堪えたよ。(今観ると蛇の生殺しシーンだな、コレ(笑))
だが、狭い島の中、二人の噂は一気に広がって ………
映画『潮騒』というと、この際どいシーンばかりがクローズ・アップされていて、ほとんど記憶になかったのだが、大人になって観ると、その印象もガラリと変わってしまう。
百恵・友和以外の出演者たち(《歌島》に住む者たち)が皆、性根の優しい人ばかりでカラッとした気性として描いているのだ。