2025年8月1日金曜日

映画 「潮騒(山口百恵版)」

 1975年  日本。




『宮田初江』(山口百恵)は、こう見えてもお嬢様。(一見、田舎娘にしか見えないが)


伊勢湾に浮かぶ《歌島》(現在の神島)に住んでいる村の有力者・『宮田照吉』(中村竹弥(たけや))の一人娘なのだ。


宮田家には跡取り息子がいたのだが亡くなってしまい、何人かいた姉たちも結婚して、とうに嫁いでしまっていた。

最近になって、昔、養女に出されていた初江が島に呼び戻されたのである。(島の若い衆たちも、アイドル百恵に色めき立つ)



『久保新治』(三浦友和)は、若い漁師。

貧しい家に働き者の母親『とみ』(初井言榮)と小学生の弟『広』との3人暮らしである。


若いのに真面目で一生懸命働く『新治』は、親方『大山』(花沢徳衛)たちの信頼も厚い。



こんな新治と初江は、最初からお互いに運命的なものを感じていた。


初江が重い水桶をひっくり返してしまった時には、そこを偶然、新治が通りかかる。(親切な新治はそれを手助けする)


新治が給料袋を無くした際には、わざわざ初江が見つけて自宅まで届けに行ったりもする。




そうして、嵐の日、島の《監的哨跡(かんてきしょうあと)》(旧陸軍が大砲の試射弾の観測をした施設跡地)で二人が雨宿りをしていると ……


《↑現在も残る監的哨跡》


あの有名なシーン


「目ぇ、開けたらいかん!目ぇ、開けたらいかん!」



自分が全裸で雨に濡れた洋服を乾かしているので、新治にも全裸になる事を強要する初江。(最後の一枚、《ふんどし》さえも初江は絶対に許さない。「まだ、残っておる!」と厳しい目つきの百恵ちゃん)


そんなのを気にせず『新治』(三浦友和)が全裸になると、またもや無茶ぶりする初江。


「その火を飛び越えてこい!」



そんなのも軽くクリアした新治は、真っ裸で初江に迫ってくる。



「いかん!うち、あんたの嫁さんになると決めたんや。嫁入り前の娘がこんな事、したらいかん!」


すんでのところで、とんだお預けを食う『新治』(友和)。

ギリギリ操(みさお)を守った『初江』(百恵ちゃん)。


『新治』(友和)は、男ながら、よく我慢して堪えたよ。(今観ると蛇の生殺しシーンだな、コレ(笑))


だが、狭い島の中、二人の噂は一気に広がって ………




映画『潮騒』というと、この際どいシーンばかりがクローズ・アップされていて、ほとんど記憶になかったのだが、大人になって観ると、その印象もガラリと変わってしまう。


百恵・友和以外の出演者たち(《歌島》に住む者たち)が皆、性根の優しい人ばかりでカラッとした気性として描いているのだ。



特に『新治』(三浦友和)の漁船仲間、『大山』(花沢徳衛)と『竜次』(川口厚)は名コンビ。

あらぬ噂を立てられカンカンに激怒した『宮田照吉』(中村竹弥)は、娘・初江に「当分、家から出るな!」なんて外出禁止令を出すものだから、相思相愛の二人は会えずじまい。


そんな二人の橋渡し役を引き受けてくれるのが、このコンビなのだ。(もっぱら若い竜次が目印の壺の下に手紙を隠しておく係ね)



そんな折、新治に長い航海で大型漁船・《日の出丸》に乗り込む話が入ってくる。



母親の『とみ』(初井言榮)は息子の身を案じて大反対!


「新治、騙されちゃいかんぞ!《日の出丸》は宮田の照爺のとこの船じゃ。お前と初江の仲を引き裂くために、あの照爺が、わざと企んだことなんじゃ。絶対騙されちゃーいかんぞ!!」





こんな母親『とみ』の涙の懇願にも動じず、新治は《日の出丸》に乗り込む事を決めた!


同じ《日の出丸》に乗る事になったのが、村のボンクラ息子で、同じように初江の事を狙っている『安夫』(中島久之)である。


《↑なぜか長い航海に出るというのに場違いなスーツ姿の『安夫』(中島久之)。ダメだ、こいつ(笑)『新治』のライバルにもならんわ》



それをじっと見送る『初江』(百恵ちゃん)。




(新治さん …… あなたが無事に帰ってこれるように …… 私、祈ってます …… )










百恵、友和にしては、珍しくのハッピー・エンド映画である。


私、このコンビでは、この映画が一番好きかもしれない。(それにしても、神島、八代神社、監的哨跡 …… いつか行ってみたいなぁ〜)