2022年3月30日水曜日

映画 「時をかける少女」

 1983年  日本。




もはや説明も要らないくらい有名な『時をかける少女』である。



今回、久しぶりに観てみる。



数十年ぶりに観る『時をかける少女』は、主人公『芳山和子』(原田知世)のように、《タイム・ループ(時間跳躍)》でもしてるような不思議な気分。


長〜い40年近い年月を、一気に飛び越えて、遠い過去に戻るような奇妙な感覚である。 



変わらないのは映画の登場人物たちや原田知世の可愛らしさ。


変わったのはオッサンになった自分と、この映画に対する評価である。




なるほど〜 …… 


オッサンになってみて、やっと分かった気がする。



この映画は傑作だし、当時の原田知世に《演技力》なんてのは不要なのが、ようやく分かった。(少し下手だと思ってました)


16歳の原田知世は、ただ、可愛いいだけで、そこに存在していれば良いのである。


それにしても本当に可愛らしいことよ)



当時の角川春樹が原田知世にベタ惚れだったらしく、この『時をかける少女』に関しては、全制作費の一億円以上を、ポ〜ン!と自身のポケットマネーで捻出したそうな。(よっ、太っ腹!)



「とにかく『原田知世』で主演映画を!!」(スゲ~、熱の入れようよ)



そして、ソレに白羽の矢が立ったのが大林宣彦監督なのだけど …… 大林宣彦も原田知世の魅力に一瞬で、ポワワワ~ン♥️🤩(もう虜状態である)



「映画がヒットしようがしまいが関係ない!今、この日、この時の16歳の『原田知世』を、記念としてスクリーンにおさめたい!」(これも、ややドン引きしてしまうほどの熱量である)




何が、こんなオッサンたち二人を夢中にさせたのか。



オッサンになった自分も、今なら、ようやっと分かる。



この時の原田知世が、まるで世のオッサンたちが思い描き、理想とするような《完璧な聖少女》なのだ。


まだ、化粧も慣れていないような、素のままでも充分に可愛らしい、汚れなき乙女。



こんな純粋無垢そうで可憐な乙女に、あんなドロドロした変な映画『伊賀忍法帖』なんて角川春樹もやらせるはずがないのだ(笑)。



大林宣彦と角川春樹は充分に話し合って、知世にピッタリの舞台、美しい風景画のような場所『尾道(おのみち)』を提案した。



古い家屋がひしめき合うように建っていて、いくつもの石階段で彩られた場所『尾道』。(実際、ココに住むとなれば大変だろうが、なんだか水彩画にしてもよいような風情のある場所である)



そんな場所では、そこに住む人間たちの精神状態も健全そのもの。


ギスギスした人間関係なんてのは、全くもって存在しないのだ。





醤油屋の跡取り息子『吾朗ちゃん』(尾美としのり)は、学校では「腹減った〜、腹減った〜」が口癖でも、家に帰ればちゃんと家業の手伝いをする立派な子。



しっかり者の委員長『神谷さん』(津田ゆかり)は、そんな吾朗ちゃんの事が気になる様子。(和子と吾朗ちゃんが一緒にいると)


でも妙な嫉妬心でメラメラ燃えたりは決してしないのだ。(この辺りのサラッとした描き方、大林宣彦監督は流石だなぁ~)




和子の担任の根岸季衣(ねぎしとしえ)や国語教師、岸部一徳も、ノホホ〜ンとしながらも生徒たちを信頼していて暖かく見守ってくれている。(多少の痴話喧嘩はあっても。でも二人とも、やっぱ若いわ)




そんな場所へ、未来人『深町一夫(仮名)』(高柳良一)が、未来では絶滅した植物を求めてやって来るのだけど ………



2660年の遠い未来から1983年に時間移動してくる『深町一夫』。




でも、なぜ?《1983年の尾道》だったのか?!




今、現在2020年を過ぎて、存在している自分には、分かりすぎるくらい理解できた。



インターネットが普及し、携帯電話が発達して、誰でもどこでも情報が得られるような便利な世の中になっても、皆が下を向きながら常に飢餓状態。

心は全く満たされない現代社会。


世界はコロナが蔓延していて、先行き不安な想いを常に抱えている。



こんな2020年代に《タイム・ループ》したいはずがない。



やっぱり《1983年》で大正解なのだ。



キラキラと輝いていた、あの時代 ……… 人も、町も、夢だっていくつも持てた時代 ……



そうして、なにより、この時代には16歳の完璧な乙女、原田知世が存在してるのだから …… (この映画のエンディングの可愛さったら異常。半端ない!こりゃ、人気がでるはずだわ!!)



星☆☆☆☆☆。(超オススメ)


※この映画を観て、

「あ〜、自分にも《タイム・ループ能力》があればなぁ~、あの日あの時に戻れればなぁ~」と、ついつい思ってしまう今日この頃。(オッサンの哀しき郷愁)

2022年3月21日月曜日

映画 「伊賀忍法帖」

 1982年  日本。




この映画に関しては、昔からあんまり良い評判を滅多に聞かない。


『伊賀忍法帖』のタイトルでも、原作があの『魔界転生』と同じ山田風太郎ですもん。


マトモなアクションを楽しむような忍者活劇じゃないのだ。(相当グロい内容に、現代においては、ちとドン引きする)


オマケに、当時の角川映画の悪趣味な部分が出過ぎている感じだ。(角川映画といえば、横溝正史の金田一シリーズのように、首が●●●。今では美保純渡辺典子には、かなり汚点といえる作品かも)


私も最近の真田広之熱で、再度観直してみたが、評価は、やっぱり変わらず ……… あまり楽しめなかった。(『里見八犬伝』や『忍者武芸帖 百地三太夫』のように多少の《痛快さ》や《爽快さ》があればねぇ〜)


それでも、この映画に関しては別のエピソードがあるので、そこを書いておこうと思い、今回は取り上げた次第である。





で、この御方が出てくる。


皆さん、ご存知の有名な方、原田知世である。(まぁ、可愛らしいこと)


こんな可愛いい(≧∇≦)原田知世は、当時、熱烈な 真田広之の大フアン!♥ だったのだ。


「あ〜、憧れの真田広之様に会いたい〜!」


少女、原田知世が考えるのは寝ても覚めても、その事ばかり。(みんなフアンっておんなじ気持ちなのね)


とうとう中学3年生になった原田知世は、大胆にも行動にまで移してしまう。


なんと!自ら、《角川映画の新人募集》に応募してしまうのだ。


「グランプリが取れれば、憧れの真田広之と共演できる!毎日、真田広之の近くにいられる!」

ただ、それだけの理由で。(こんだけ愛される真田広之って、いったい …… 男冥利に尽きるだろうよ)



でも、ときに神様は残酷なモノである。



「今回のグランプリは渡辺典子さんに決定しました!!」


原田知世、大ショック!😭(ガビ〜ン!)


原田知世は結局、次点となり、審査員から特別賞が与えられたのだが、本人にしてみれば、

「んなこたぁ~、ハッキリ言ってど~でもいい」事なのだ。


かなり(ドヨヨ〜ン)落ち込んだはずの原田知世。


だが、それでも気持ちを切り替えて、立て直すことにする。


(この仕事を続けていれば、いつか真田広之様と共演できるかも …… )と。(今となっては、そんな日が来ないのを、我々は知ってるけどねぇ~(笑))


見事、グランプリに輝いた渡辺典子には、真田広之との共演、ヒロインの座が約束されていた。


それが、この映画『伊賀忍法帖』なのである。(これが渡辺典子のデビュー作なのだ)


とにかく、内容は冒頭に書いたように散々でも、ヒロイン役らしく渡辺典子は真田広之と終始イチャイチャしてる。(エンディングでは二人の長いキスシーンまである)



この映画を原田知世は、当時観ただろうか。


観ていたなら、きっとこんな気持ちだったのかも。


(あそこにいたのは、もしかしたら私だったのかもしれないのに ……… )



壁に爪をあてて、相当悔しがっていたのかも。(コレ、あくまでも私の勝手な想像ですので)



でもねぇ〜、新進女優のスタートとしては、この映画、渡辺典子にとってはラッキーだったのかしらん?(後年を知る自分としては、とても良いとは思えない)


最初からドギツイ映画に出てしまった渡辺典子の、次に与えられた役は、あの問題作の映画化『積み木くずし』である。(テレビ版の高部知子が例の事件で干されてしまった為、急遽、そのお鉢が渡辺典子にまわってきたのだ)


これまた、ドギツイ化粧に荒れた不良姿の渡辺典子に、アイドル的な人気が出るはずもない。



グランプリまでとった彼女に、角川側も「このままじゃ、いかんだろう …… 」と、やっと本腰を入れ始める。


等身大の役を与えようと、赤川次郎の原作映画をあてがって、主題歌を歌わせるシステムに切り替えるも、完全に出遅れた感じ。



その間、原田知世は『時をかける少女』のヒットで、薬師丸ひろ子の二番手になっていたのだから。


角川三人娘の序列は、薬師丸ひろ子原田知世渡辺典子の順番で、世間的には認知されていたはずである。



それにしても、この後に真田広之は薬師丸ひろ子とも共演している。(『里見八犬伝』や『病院へ行こう』でも)


こうして渡辺典子とも共演していて、唯一、共演していないのは、角川三人娘の中では原田知世だけなのだ。



こんなに真田広之を慕っていた原田知世なのに ……(トホホ可哀想)


そう考えると、真田広之も罪作りな男よのぉ~。(もう、今じゃ、とっととハリウッドに行ってしまったし)



原田知世は、この後、『早春物語』でオッサン林隆三相手にキスシーンがまわってくるのだが、「とてもイヤでした」と、どっかでコメントしてるのを聞いた覚えがある。(けっこう、根はハッキリした性格なのかも、原田知世って人も)



(あ〜、これが憧れの真田広之ならなぁ~ …… )

なんていう、原田知世の心の声が聞こえてきそうだ。



この『伊賀忍法帖』は、そんな二人の女優、原田知世渡辺典子の明暗を分けた映画として、記憶にとどめておくのもいいかもしれない。(映画は散々な出来でもね)


長々、お粗末さま。これにて。


2022年3月13日日曜日

映画 「吼えろ鉄拳」

 1981年  日本。




忍者武芸帖 百地三太夫(1980年)』は、今観ても大傑作だと思うし、とても面白かった。


それでも、当時はヒットしなかったそうな。(コレがヒットしない理由が、よ~分からん。当時の人は見る目がないのか?)



監督の鈴木則文さんは、それゆえにとっても心残り。


真田広之に心底惚れこんでいた鈴木監督は、「なんとしても真田広之を《スター》に!」してあげたかったそうな。


東映に直談判までして、リベンジのつもりで撮りあげたのが、この『吼えろ鉄拳』だという。(脚本にも参加してる)


そのかいあってか、この『吼えろ鉄拳』は、当時、そこそこヒットしたらしいのだ。



こんな情報を事前に知ると、観る前から期待値もググ〜ン!と上昇するというもの。



で、観た感想 ……… 


こんなにバカバカしい映画は滅多にお目にかかれません(笑)。(しかもチョー、ダサ過ぎる!)




ある日、

アメリカはテキサスで育った『響譲次(ひびき じょうじ)』(真田広之)は、病床の父親『鉄心』(石橋雅史)からトンデモない話を打ち明けられた。




「許してくれ!オマエは私の本当の息子じゃないんだ!」


ガ~ン!(゚∀゚)


「オマエは、日本にいるお金持ちの日野原家から私が《誘拐》してきた子なのだ!」


ガガ~ン!(*﹏*;)


オマケにオマケに、譲次には双子の兄弟『日野原透(とおる)』(真田広之・二役)がいて、目下、行方不明中。(冒頭で、とっくに殺されてますけど)


盲目の姉『千尋(ちひろ)』(志穂美悦子)までいるという。



それだけ言い残すと、嘘の父親・鉄心は(コトリッ)息絶えた。(まるで死に逃げじゃん(笑))


譲次は鉄心を埋葬すると、日本へやって来た。


(自分の兄弟は、いったい今どうしているのか ………)


それだけを知るために ………




この後、

アメリカから日本にやってきた譲次を待ち構えるのは、スリの常習犯(大木こだま(チッチキチ~))や、その仲間のチンピラ(黒崎輝)たち。


オッパイポロリのビキニ・ギャルやら、あのアブドラ・ザ・ブッチャーまでもが、わんさと登場するのだ。(いずれも、只の賑(にぎ)やかし屋たち。本筋には全く影響ない)



当時、悪役プロレスラーで、日本でも大人気だったブッチャーが、こんな映画に?出てた事に驚く。(*﹏*;)




黒崎輝なんてのはジャパン・アクション・クラブで次世代スターとして期待されてたけど、可哀想に全く人気が出なかったなぁ~(笑)。(なんせ、この《豚っ鼻》が残念)




こんな面子とドタバタ騒いでいると、譲次の顔を見た悪役の一味がビックリ驚いて、日野原家に一報を入れてきた。



「何ぃ?双子の片割れの『譲次』が生きていて、日本にいるだと?!」




譲次の両親や透までも殺して、ヤクザとつながりがある叔父『日野原一輝(いっき)』(成田三樹夫)は焦りまくり。

麻薬で巨大な金を動かしながらも政界に進出しようと企んでいたのだ。



(邪魔な譲次 ……… 今更ノコノコと …… )


その一方では、目の不自由な譲次の姉・千尋をそばに置きながらも、日野原家に伝わる伝説の秘宝《シバの女王》探しまでも行っていた一輝さん。(あ〜、悪事も忙しや〜(笑))



(この私の野望を邪魔だてする奴らは、全て皆殺しだ!たとえ甥でも ……… )



それでも、一応は「譲次を味方に引き入れてみようか …… 」と、部下に命じて屋敷に連れて来させてみる。




「本当に?あなた本当に、あの弟の譲次なの?!」


数十年ぶりに再会した『千尋』(志穂美悦子)は感無量。



「譲次君、よく無事に帰ってきてくれた。今夜は君の帰還をお祝いしてパーティーをしようじゃないか。充分にくつろいでくれたまえ!ハハハ!」(渇いた笑い)


つくり笑顔で迎える一輝と、見るからに悪そうな顔の手下たち。




そんなパーティに余興として呼ばれてきたのが、これまた見るからに怪しいマジシャン『Mr.マジック』(千葉真一)。(『Mr.マジック』って、まんまやんけ。他に名前なかったんかいな(笑))



「オイ!そこのカッペ君、気をつけなよ。君の近くには《殺人犯人》がいるぞ!」


譲次に腹話術で危険を呼びかけるMr.マジックとは、いったい何者なのか?(まぁ、演じるのが千葉真一である以上、ただのマジシャンでないのはお察しの通り)



それに慌てたのは悪党たち。

楽屋に急いで乗り込むもMr.マジックはいずこへ。既に、もぬけの殻でございました。(「チクショー!」)



そんな忠告どおり、一輝や悪党たちの企みを知ってしまう譲次。


一輝に「仲間にならないか?」の誘いを受けるも、もちろん正義の味方『譲次』(真田広之)の答えは決まってる。



「断固として『NO!』だ!!」


「殺せ!譲次を殺してしまえーー!!」(やっぱり、こうなるのね〜)


こうして、一輝たちが次々と差し向けてくる暗殺集団から逃げながら闘い続けるという、譲次の忙しい日々が始まるのである ………





変な坊さんの暗殺集団に追いかけられたり、

香港ロケがあったり、

ヘリが飛び交い、爆風やいくつもの銃弾が火を吹いたり ……



次から次に場面は変わり、決して退屈はさせないのだけど …………







それでも、この脚本は「まるで素人が書いたんじゃないか?」と思わせるくらい、 バカバカし過ぎる。こんな脚本に、どんだけ?《お金》がかかってるのやら ……… 今となっては驚くばかりである)



それを、音楽担当の羽田健太郎が作った間の抜けた曲が、さらに加勢する。(この御方、『渡る世間は鬼ばかり』などの作曲で有名なんだけど …… この映画に限っては駄曲ばかりである)




志穂美悦子なんてのは、もう散々な扱いだ。(いくら真田広之を売り出す為とはいえ可哀想)



多少、敵と応戦する場面もあれど、ヘロインを打たれてヘロヘロ。

オマケに最後は断崖絶壁で、敵の何発モノ銃弾を浴びて、海に真っ逆さま。(即死!)



女必殺拳』を、最近観たばかりのせいもあるけど、「あんまりやろ~!」と、叫ばずにはいられない。



それでも、この姉『千尋』(志穂美悦子)の死が、主人公『譲次』(真田広之)の怒り💢の原動力になると思えば、コレはコレで良いのかな?(3度目の視聴で、やっと、この域に収まった感じである)




1度目の視聴では、「こんなにバカバカしい話は無い!」と呆れ返り、



2度目の視聴では、「あっ、こんな人や、あんな人も、まだいた!」と発見する。(安岡力也や、プロレスラーのグレート小鹿まで出演していた)




3度目の視聴では、「クサイ台詞をいちいち吐く千葉真一や、真田広之の命がけのスタントを楽しもう!」と、割り切ることに決めました。




悪役の重鎮、成田三樹夫さんも、よくもまぁ〜こんな変な映画を引き受けてくれたよ。(この御方は「インテリ・ヤクザをやらせたら右に出ない」とまで言われた名優ですぞ)




厳めしい表情をつくりながらも、何度か観直すうちに、所々で(ププッ!)笑いをコラえているように見えるのは私だけ?(笑)(演じる方も平静じゃいられないだろうよ、この脚本と演出じゃ)




とにもかくにも、この映画はヒットして、なんとか真田広之は上手くスター街道にのれたそうな。(結局、格好いい真田広之が出てれば何でも良かったのかしらん?)




真田広之の歌う主題歌『青春の嵐(せいしゅん ハリケーン)』が、ところどころで流れる度に、またもや笑いを誘ってくる。(コレも珍曲である)



本人は、今現在、この映画を真顔で直視出来るのかな?

出来ないだろうなぁ~(チョーダサいし、あまりにも恥ずかし過ぎる)




危険なスタントやアクションだけじゃない。



《恥ずかしさ》を乗り越えた、その先にこそ、真のスター街道は開けるのだ。



そう思わせてくれた一編なのでございました。(アッパレ!真田広之!!)

青春ハリケ〜ン〜(ヤバい、いつの間にかクセになってるわ(笑))

2022年3月3日木曜日

映画 「女必殺拳」

 1974年  日本。




その昔、

人気絶頂のアイドルだった石野真子長渕剛が結婚したが、しばらくすると、即、離婚した。


離婚の原因は長渕剛のDVとか、当時は言われたものだ。


その後、しばらくして、ドラマと映画の共演で、長渕剛はあろうことか、あの!志穂美悦子と結婚する。


で、案の定、カッ!となると、タチの悪い長渕剛は、志穂美悦子との夫婦喧嘩で同じように手を上げようとするのだが ………


今度ばかりは相手が悪すぎた!


殺気を感じた志穂美悦子は、うまくかわすと、長渕剛の頭部に思いっきり、鮮やかな回し蹴りを叩き込んだのだ!


白目をむいて、その場にぶっ倒れる長渕剛。


青ざめた志穂美悦子は、泣きながら師匠である千葉真一に電話してきたという。


「どうしよう …… 長渕を殺しちゃった …… 」(笑)


もちろん、長渕剛は死んでなかったのだが。(笑)


「女なんて、力づくで従わせればいい!」

という、おバカさんな長渕剛の考え方はガラガラ …… と、もろく崩れ去る。(その後、マッチョに鍛えはじめた長渕剛は、この出来事の反動なのか?)



このエピソード、超有名らしくて、あちこちで見かけるのだが、ほぼ事実なんだろう。


それにしても、彼も結婚するなら相手の過去を多少なりとも調べておくべき。


この映画、『女必殺拳』の志穂美悦子を観れば、並の男なら、ヘタな喧嘩を仕掛けるなんて絶対に思わないはずなのだから ……… 。



ストーリーの方は至って簡単。(今観ると、やや陳腐かな)


香港警察・麻薬Gメン『李万青(り まんせい)』(宮内洋)は、日本は横浜にある、キナ臭い会社《セントラル貿易》に単独で潜入捜査をしていたのだが、ある日を境にプッツリ!連絡が途絶えてしまった。


妹の『李紅竜(り こうりゅう)』(志穂美悦子)は、兄と同じように少林寺拳法の使い手だ。


あらたに香港警察より命(めい)を受けて、日本へとやって来たのだ。


「兄さんは必ず私が探し出してみせるわ!」

そんな紅竜の前に次々と現れる 敵!敵!敵!!


「ウォオオーリャアーー!!」


日本での仲間たちの力を借りて、紅竜の必殺拳が極悪非道な敵たちを血祭りにあげていく ………




簡単に説明するとこんな感じである。


もちろん、師匠である千葉真一も『紅竜』(志穂美悦子)の強力な助っ人として参戦している。


「俺も万青くんの行方を探してるんだ」


兄、万青の盟友で、少林寺拳法・東京道院の有段者『響征一』(千葉真一)は、紅竜に協力を約束してくれた。(この東京道院の門下生たち、白い道着に《卍(まんじ)》のマークが入っててるという、なんとも珍妙な集団である(笑))



「紅竜さん、私も協力するわ!私、万青さんに憧れて少林寺拳法を習いはじめたのよ」


響征一と同じ東京道院の『早川絵美』(早川絵美)も参戦。(早川絵美さんは、『秘密戦隊ゴレンジャー』のアカレンジャー役で有名な誠直也さんの現奥さまである。自身も特撮ヒーロー『カゲスター』のヒロイン役『ベルスター』で大活躍なさいました)



悪の巣窟《セントラル貿易》は、見るからに人相の悪い奴らばかり。


麻薬ばかりか、バラエティー豊かな暗殺集団を束ねている。(この風体だけで生ぬるい潜入捜査無しに、一斉検挙できそうだが(笑))



おや? の画像の、一番左側の男の顔 ……

この顔つき、どこかで ………



大葉健二さんじゃございませんか!!


この大葉健二さんも特撮ヒーローで大活躍した御方である。(『宇宙刑事ギャバン』のギャバン役、『電子戦隊デンジマン』のデンジブルー役などなど …… )


映画にはクレジットさえされないような端役だが、このインパクトのある顔は忘れようったって忘れられませんがな。


でも、端役ゆえ、『紅竜』(志穂美悦子)にアッサリ倒されちゃうけど(笑)。



それにしても、往年の特撮ヒーローフアンには、たまらないような面子がジャンジャン揃っている。


今となっては稀少価値のある映画なのかもしれない。


宮内洋さんは、『ゴレンジャー』のアオレンジャー役や『仮面ライダーV3』で超有名だし、

主演の志穂美悦子にしたって、『キカイダー01』のビジンダー役してますもんね。




そして、やっぱり主役である志穂美悦子

その闘い方は、今観てもモノ凄い!


やっと巡り会った兄、『万青』(宮内洋)が、ズタボロで殺されてしまうと、とてつもない怒り💢を爆発させる!



《回し蹴り》や《飛び蹴り》は当たり前。


倒れた敵には、硬い拳で 連続パンチ👊の猛スピード・ラッシュ!!


「ダダダダダダダダ、ダーーーッ!」(ヒィーーーッ!どんだけ打ち込むの?!)



トドメには、全体重をかけながら相手を容赦なく 何度も 踏みつける🦶。(ダン!ダン!ダダダダーーーンッ!)



もう、後は実際に観てちょうだいませ。(エグい闘い方は、確実に鳥肌モノですから😱




こんな風に、女ながらも男たちをバッサバッサと倒してゆく志穂美悦子は、たちまち大人気。


男受けは少々悪くても(だろうな)、当時の女性たちをスカッ!とさせては、憧れの眼差しをおくられていたそうな。



その後、『女必殺拳』はシリーズ化される。


『女必殺拳 危機一髪』、『帰ってきた女必殺拳』、『女必殺五段拳』と4作が作られた。(ストーリーは行方不明になった《兄》が《高校の親友》になったりしていて、ほぼ一作目と変わらない)


それでも、「どんな風に面白くしようか?」という、当時の熱気が伝わってきて、面白さは充分。


超オススメしとく。

星☆☆☆☆☆。


※尚、結婚と同時に引退していた志穂美悦子だが、子育ても終わった今、フラワー・アレンジメントの分野で、ごく最近メディアに現れはじめた。


今じゃ、空手を習いだしてムキムキになった長渕剛相手に負けてしまうだろうと思うが、トンデモない!


見よ!このお姿を!!



花に真剣に取り組む姿は、フラワー・アレンジメントというよりは、《フラワー拳法》なるモノに挑んでいるみたい。(笑)


今でも、太い首、頑健な肩、立派な腰周りは健在だ。


コリャ、喧嘩になれば今でも志穂美悦子の完全勝利?かな?


そんな期待を抱かせてくれる、ある日の《ひとコマ》なのである。