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2019年4月24日水曜日

映画 「4匹の蝿」

1971年 イタリア。







ダリオ・アルジェントの《動物シリーズの三部作》の最終作。




デビュー作『歓びの毒牙』は、原題名は『水晶の羽を持つ』。


第2作目『わたしは目撃者』の原題名は、『九尾の』。


そして、この『4匹の蝿(ハエ)』で動物シリーズの三部作となるのである。



まぁ、単にタイトルに動物の名前が入っているだけで深い意味はないなのだが。(それがアルジェント映画)





人気バンドのドラマー、『ロベルト』(マイケル・ブランドン)は、最近ずっと奇妙な視線を感じていた。


町を歩いていても、車に乗っていても…

ずっと後をつけられている。




ある日、車のフロントミラーにその姿が映った。

黒いスーツ姿に黒いサングラスをかけた、中年の男の姿が。



夜半、いつものようにバンドの練習を終えたロベルト。


仲間と別れて、帰宅の暗がりの通りを歩いていると、またしても、あの男がつけている。


ロベルトが、無人の劇場に逃げ込めば、案の定、男も後をつけてやって来た。


振り向き様、ロベルトは、いきなり男に詰め寄った。男はビックリしたようだ。


「おい!どういうつもりなんだ?!毎日毎日俺をつけまわしやがって!!」

ロベルトの激しい剣幕に男は、後ずさりしながら、「何の事だ?変な言いがかりはやめてもらいたい」と言いながら逃げようとする。



それをロベルトが掴むと、男は懐から突然ナイフを取り出した。


二人は揉み合いになり、取り上げようとしたナイフは、男の胸に偶然つき刺さってしまう。


叫び声をあげながら、崩れ落ちる男。



呆然としているロベルトに、その時、まぶしいばかりのライトが照らし出された。


頭上の客席から照らし出されるライトのそばには、奇妙な仮面(忍者ハットリくん?)をつけた人物がいて、ロベルトの方を見ながらカメラのシャッターを夢中できっている。



(誰なんだ?…… )


まぶしいライトに目を細めながら、ロベルトは、それを、なんとか確認しようとするのだが …


ライトは突然消されて、劇場は再び暗闇に包まれた。


ロベルトは説明しがたい、この突然の出来事に困惑した。

そして、夢中でこの劇場から逃げるように走り出していた。




この後、妻の『ニーナ』(ミムジー・ファーマー)のいる家になんとか帰りつくロベルト。


だが、それからは無言電話や殺された男のパスポートが送りつけられてきたり、写真が送られてきたりと、次々と妙な脅迫を受け続ける。



ある夜、人の気配を感じたロベルトは、ニーナと寝ている寝室をそっと抜け出した。



(誰かがいる …… )

暗闇の中、手探りで進むロベルトの背後から、突然、首にロープがかけられた。



もがくロベルトに、「今は殺さない …… だが、いつでも殺せるんだぞ」と、あの仮面(ハットリくん)の人物が囁く。



気を失ったロベルト。しばらくして目が覚めると不審な人物は消え失せていた。


妻のニーナにも、もう黙っておけない。



事情を説明して、例の写真やパスポートを見せようとするとなくなっている。


(奴が持ち去ったのか?)

「ロベルト、私怖いわ」震えるニーナを抱きしめながら、ロベルトが次にとった行動とは ………






ここまでは、どこにでも見かけるような普通のサスペンス映画。




だが、これがダリオ・アルジェントの映画だと、全然、予想だにしないトンチンカンな展開となっていくから不思議である。(それゆえマニアックなフアンは大喜びするのだが)




ロベルトは、川辺のほったて小屋に住んでいる髭モジャの世捨て人《神様》(アダ名)に、全てを話して相談するのだ。(ドラマーとホームレス、どんな関係なの?)



《神様》いわく「私立探偵を雇え!」と、あっさり助言。



《神様》の所から帰ってくると、家のそばを男が歩いている。


郵便配達人を不審な人物と勘違いして棍棒で殴りかかるロベルト。


配達人は「ヒェー!お助けをー!」と大絶叫する。(なんじゃ、この展開は?どんどん変になっていくロベルトに、前半の恐怖さえ薄らいでゆく)





その間に殺されていく、お話にはまるで何の関係もない女性たち。(このシーン必要なのか?)






ロベルトが訪ねたのはホモの中年探偵だった。(よりによって)


「あたし、3年間、事件をまったく解決したことないのよ。でも、あたーしに任せてちょうだいね!」



ごついオッサンにウインクされるロベルト(もう、ここまでくるとコメディーとしか思えない)



こんなコメディー展開の連続の中で、妻のニーナは恐怖を感じて家を出ていく。(アホな日常なのに、これもなぜ?)



でも、ロベルトの家には、ニーナと入れ替わりに美人の従姉、黒髪の『ダリア』(フランシーヌ・ラセット)が慰めにやって来てくれた。



「まずは、お風呂に入って!、リラックスできるから」(えっ?なんで?)


ダリアに言われるままに、素っ裸で浴槽につかるロベルト。

ダリアはそんなロベルトの肩を色気ムンムンで、マッサージしていく。


そんなダリアの胸元が気になりはじめるロベルトは、人差し指が伸びていき、その先端のスイッチをチョン!


「いやん!やめてよ、ロベルト!」でもダリアは嬉しそう。(嫌よ嫌よも好きよ内)


もう一度、スイッチをチョン!と押せば、もう完全にムラムラ・スイッチは点火状態。



次の瞬間、浴槽の中で絡み合いながら、「あは~ん、うふ~ん」(犯人の事やら、殺人の事やら、もう遠い昔の出来事のようである)





映画はこの後もドンドン変な展開へとなだれ込んでいくのだが、これ以上は語るまい。(本当に初めて観た時は、あまりの予想を裏切り続ける展開に、唖然、呆然で、最後まで口あんぐり状態。観ていない人の為にも、これ以上のネタバレは止めておきましょう)




この映画をどう思うかって?



大好きですよ。



こんなヘンテコな映画、アルジェントじゃなきゃ撮れないでしょ!



サスペンス、コメディー、エロティック、変態、トンデモ科学捜査が混合していて、コレは映画史に残る傑作(いや、異色作)なんじゃないだろうか。


両手を挙げて、「恐れ入りました!」と私は降伏します。


星☆☆☆☆☆。

ヘンテコもここまで極めれば御立派なもんです。(なんて褒め方だ (笑) )

2019年3月24日日曜日

映画 「サスペリア (1977)」

1977年 イタリア。






初見である。

もちろん昔から内容も知っていたし、評判も聞いていた。



これ以降のダリオ・アルジェントの変化も知っていたし、間違いなくこの『サスペリア』がターニング・ポイントになったのだと思う。



だが、近年リメイクもあり、それならば(1度観てもいいか)ぐらいの気持ちにもなってきたのである。



そうして観たのだけど………




ん〜 ……… あまり大騒ぎするほどじゃないような。(ゴメンナサイ)



前作の『サスペリア2(紅い深淵)』が面白過ぎて、あれがピークだったんじゃなかろうか。(前作なのに 《2》とは、ややこしい。全ては映画配給会社の下手な邦題のせい)





ドイツのバレエ学校に転入してきた主人公『スージー・バニヨン』(ジェシカ・ハーパー)の周りでおこる陰惨な事件は、全て学校を根城にしている《魔女》の仕業でした。

チャン、チャン!



簡単に要約すれば、これで終わる話なのだ。




それに《魔女》が、なぜに?自分の学校の女生徒たちを次から次に殺してしまうのか …… (この部分が特に理解不能だ)



生徒が次々と死んだり、行方不明になれば、当然父兄たちが大騒ぎするはずだし、マスコミも黙っちゃいないはず。


警察だって駆けつけてくるだろうに。(普通なら学校は閉鎖でしょうよ)



こんな疑問で悶々としている時に、映画で流れるゴブリンの音楽は、まぁ、うるさい事よ。


怖い効果を得るどころか興ざめしてしまう。




赤や青のド派手な色彩演出も、なんだかねぇ〜。(コレがイタリアン・ホラーの持ち味なんだろうけど)




それまでのアルジェント映画のドギツイ場面だけを並べたてたような映画。



まだ、恋人たちの変なイチャイチャするシーンや、くだらないアホなシーンがあった方がよっぽどいい。




前作の映画で知り合い、公私共にパートナーとなったダリア・ニコロディの助言により、魔女を題材にして、この映画を完成させたらしいが、ホラーのジャンルは、この人にそもそも合っているのかな?





真面目に演出すればするほど、溢れ漏れてくるおかしさ。


それがアルジェント映画の持ち味だと思うのに。(怖さは一切期待してない)





と、グチグチ言うのはここまで。



この映画でも、多少良かったところを、ここからは書いておきたいと思う。





良かったのは、それぞれの出演者たち。



●スージー・バニヨン(ジェシカ・ハーパー)…華奢な体つきがバレリーナにピッタリ。


ほんとうに踊れるのなら、一応バレエの発表会なんてシーンもあってもよかったかも。

それまでのアルジェントのヒロインに比べて、いかにも少女で可愛かった。




●ブランク夫人(ジョーン・ベネット)… 副校長。




校長(魔女)がいない学校をこの人が仕切るのだから、事実上、この学校の絶対的権力者。


堂々とした威厳のある恰幅のいいオバサンである。


若い時のベネットは格別綺麗で、代表作『飾り窓の女』は、1度観てみたい作品だ。


ただ、最後、何かもう少しアクションがあれば、とホトホト残念。




●ミス・タナー(アリダ・ヴァリ)… バレエ学校の教師で、ブランク夫人の右腕的存在。



この映画では、この人が一番よかったかもしれない。


高圧的で威張っていて、本当に嫌な役がピッタリなのだ。(変な褒め方だが実際そうなのだ)





バレエのレッスン中のスージーに副校長のブランク夫人が近づいてくる。


「スージー、さっき部屋が空いたので学校の寮に移りなさい」


それまで、女性徒のオルガと別のアパートでシェアをしていたスージーは、ブランク夫人の言葉に逆らう。


「それは規則ですか!」


「一応、寮生の登録をしているので。でも、あなたの好きにしていいのよ」と、理解のある風を装おうブランク夫人。




その後に、恐ろしい顔の『ミス・タナー』(アリダ・ヴァリ)がツカツカやって来るのだが、

「人一倍意志が強いのね、1度決めた事は決して変えようとしない。立派ですよ」とチクリと嫌味を言うのを忘れない。


そして、またツカツカと去っていく。




その後に始まったバレエのレッスン。


「なんだかおかしいわ……」スージーに突然異変がおこる。


躍りながら、フラフラとめまいが。(こりゃ、何か一服盛られたか?)


ホールに倒れこんで、スージーは 鼻血ブー!




そして、さっきブランク夫人が言っていた空き部屋へとっとと担ぎ込まれてしまう。



「さぁ、これを全部飲んで!!」

スージーを押さえつけて、デカイ花瓶一杯の水を、グイグイ強引に飲ませるミス・タナー。(なんて無茶な介抱なんだ!)



むせこむスージーには一切お構い無し。(さっきのスージーの生意気な態度に対するお返しとばかりに見える)


「さぁ、飲んで!鼻血で失った血を早く補給しないとね。そうですよね?先生?!」(どんなヤブ医者の処方だ。かえって具合が悪くなるようにも見えるが)



ヤブ医者も「そのとおりです」なんてアホな返事。




と、まぁ、万事こんな具合のミス・タナーなのである。





このミス・タナーを見て、映画『レベッカ』のダンヴァース夫人を思い出してしまった。



ブランク夫人を尊敬していて、それに逆らう者には、徹底して高圧的でイビリまくるとこなんざ、ダンヴァース夫人にソックリ。




思えば以前、『第三の男』でアリダ・ヴァリの事をケチョン、ケチョンに書いたものだった。


二人の男たちが、このアリダ・ヴァリを好きで、葛藤や苦悩をするのに、何故か、違和感を感じずにはいられなかったのだ。





アリダ・ヴァリの顔は骨格がしっかりしていて、ホームベース型で、むしろ男顔なのだ。



そして意志が強そうな、一見恐ろしい顔をしている。

二人の男がとりあうような美人にはとても見えない。




でも、この『サスペリア』では逆にそれがハマリ役となり、生き生きしているのである。



後年になって、やっとアリダ・ヴァリも自分の資質に合う役に出会えたと思うのだ。




だからこそ、この『サスペリア』の出来には少々ガッカリしたのかも。



ドギつさよりは、心理的な駆け引きや、謎となる《魔女》の正体、真の目的などに重点をおかれていたなら、良質なゴシック・ホラーになっていただろうに。



私の評価は星☆☆☆。


アリダ・ヴァリの頑張り+主人公スージーの可愛らしさ+そしてオマケ点である。

2019年3月17日日曜日

映画 「歓びの毒牙」

1969年 イタリア、西ドイツ合作。






アメリカ人作家『サム・ダルマス』(トニー・ムサンテ)は、親友のカルロを頼り、イタリアに来て2年。


作家としてのスランプを乗り越えて、鳥類学の本も出版され、その評判も上々で浮かれていた。(とてもそんな小難しい本を書くような作家さんに見えないのだが…)



私生活も美人モデルの『ジュリア』(スージー・ケンドール)と付き合っているし、まさに絶好調。(鳥類学の作家とモデル?どこで知り合ったのだろうか?)


もうすぐジュリアを連れて、NYに帰国する予定である。



最近、この街では、若い女性ばかりが襲われる『通り魔殺人』が横行しているが、サムにはどこ吹く風。


本の小切手を無事受け取ると、カルロと別れて、スキップでもするように自宅に向けて歩きだした。



日が沈み、街は暗くなり始めている。




自宅へ向かう通りを歩くサムの目に、反対道路に、暗闇の中で、煌々と明るい、広い全面ガラス張りの画廊が映った。


道路に面したガラスは2重になっていて、玄関と、玄関ホールに、それぞれ自動ドアが設置されている。


その奥は、白い大理石の大ホールになっていて、幾つかのオブジェも飾られている。


ホールの横には2階に上がる階段がある。


それは道路にいるサムからも、ハッキリ見えていた。




その2階に、黒ずくめのコートを着た人物と女が揉み合いになっているのが見えている。


(何をしているんだろう…?)


サムが通りを渡って画廊に近付くと、コートの人物は階段をかけ下りて、1階の階段横の非常口から逃げるように出ていった。



その後、2階から女が腹をおさえながら、階段をゆっくりフラフラと下りてくる。



サムは、おもわず、自動ドアを抜けて画廊に入っていった。

が、次のドアを抜ける瞬間、自動ロックがかかり、完全に玄関の小ホールに閉じ込められてしまった。


女は腹を刺されたのか、おさえている腹からは血が滲みだしている。



「助け…て…」



ガラス張りの玄関ホールに閉じ込められたサムにも、その声は聞こえるようだった。


だが、施錠されて、ホールにも入れないし、外の通りに出ることもできない。


(どうすりゃいいんだ…)


その時、道路を歩く通行人の姿が、あった。



必死のジェスチャーでサムが呼び止めると、通行人の男も近づいてきた。


「警察を呼んでくれ!」

外の男にも、サムの必死の様子や倒れている女の姿が見えたのか、男は慌てて警察を呼びに一目散に走っていった。


(後は待つだけか……)

サムはガラス張りの閉じ込められたホールにしゃがみこんだ。




しばらくして警察がやってきて現場は騒然としている。

サムもやっと解放された。



「モニカ!モニカ、大丈夫か!?」

夫のラニエリが、血だらけで担架に載せられている女の側に駆け寄る。


女は救急車で運ばれたが、なんとか命はとりとめたようだ。



「全部話してくれ」警部の『モロシーニ』が目撃者のサムに質問する。


「何か…変だった…でもそれが何か思い出せない…」



次の日からサムの目撃証言の事情聴取が行われる。NY行きは事件解決まで取り止めだ。


否応なしにサムも事件に巻き込まれていくのだが……。





ダリオ・アルジェント初監督作品。


いろいろなアルジェント作品を観た後に、この最初の第1作目を観ると驚く。



破綻も少なく(多少は変なところもあるが)、まだまだ、まともな犯人探しミステリーなのだ。



モロシーニ警部や警察の捜査もスゴクまともだ。(当たり前の事なのだが、これ以降、どんどん変になっていくアルジェント映画では珍しい)



サムが、犯人が出ていったドアを迂闊に触ろうとすれば、「指紋があるかもしれない!」とモロシーニが厳しく制止する。


犯人とおぼしき人物を何人か並べては、サムに目撃者として面通しさせたりもする。



オカマの女装した男が並べば、モロシーニ警部が「下がれ!」と、いの一番に、はねのけるのだが。(「もお~失礼しちゃうわね」プンプンしながら出ていくオカマちゃんには笑える)



ちゃんと科捜研なんてモノまであるのには、ビックリしてしまう。(この時代にですよ)


「犯人が落としていった手袋からは、夫人の血痕の他に葉巻の灰が付着していました。調べたところ、バハマ産の高級葉巻です。、後、手袋の中からイギリス産のカシミヤの繊維も出ました」


当時としては、ちゃんとした捜査のやり方に「へぇ~」なんて言いながら、素直に感心してしまった。



もちろん、サムと恋人のジュリアのベッドシーンもある。(アルジェント作品にはお色気シーンはお約束)



だが、それよりも、主人公サムが鳥類学の本を書いているという設定が事件を紐解く鍵として、ちゃんと活かされている事に驚いてしまう。



多少の遊びもあり、ハラハラ、ドキドキもあり………これは、二時間サスペンスドラマのお手本みたいじゃないだろうか。



アルジェント作品とは思えないくらい、ホントに、まともな映画。(変な褒め方だ)



こんなに、まともなアルジェント映画なんて……。



これが後に、恐怖を超えた爆笑映画作りに変遷していくとは、この時は誰も予想していないはずだ。(決して馬鹿にしてませんよ!アルジェント大好きなんですから(笑))



初々しいデビュー作、星☆☆☆☆でございます。



2019年3月11日月曜日

映画 「わたしは目撃者」

1971年 イタリア、フランス合作。






元新聞記者で、現在は盲目の老人『アルノ』(カール・マルデン)は、孫娘の幼い『ローリー』と二人暮らしだ。


まだ、7、8歳くらいだろうか……それでもローリーは、目の見えないアルノを介助して、あれこれと気づかいのできる優しい女の子である。


アルノも、盲目とはいえ他の感覚は研ぎ澄まされていて、大抵の事は自分でもできるし。




そんな二人はある夜、散歩に出かけた。(子供を夜に連れ出してはいけません (笑) )



二人がしばらく歩くと、アルノは近くの車の中で、誰かが言い争う声を耳にする。


ローリーに「ちょっと見てきなさい」というアルノ老人。(危ないんじゃねぇ?)



ローリーは、車のそばを通ると、即座に戻ってきた。


「一人は男の人だったけど、もう一人は分からなかったわ」


(なんて事はない、ただの痴話喧嘩かもしれないな……)


アルノの好奇心が一旦おさまると、二人はその場所を立ち去っていった。




その後、その側の研究所には、強盗が入り込んで、警備員を襲うという、ちょっとした事件が起こった。


《人の染色体を研究している》という特殊な、この施設では、責任者の『テルジ博士』が警察の職務質問をうけていた。


「特に取られたものはないようだが……」


他の研究員たちも、やっぱり同じ返事。(この辺り、誰が誰だか区別しにくい)



だが、その中で、研究員の一人『カラブレジ博士』だけが、なにやら様子がおかしいそうだ。




次の日、そのカラブレジは、恋人に会った後、他の誰かと待ち合わせなのか、駅のホームへとやってきた。



お目当ての人物がいないのか……ホームの人混みをキョロキョロと見渡している。



そんなホームへ、列車が入ってきた。


その時、誰かの手が、カラブレジを線路へ突き飛ばした。


そこへ偶然居合わせた新聞社のカメラマン。(ホント、偶然すぎやしないか?)



カラブレジが線路に落ちて、列車に轢かれる、まさに!決定的な瞬間を、カメラは連続でシャッターにおさめたのだった。(なんて悪趣味な)



あわれ、カラブレジは無惨な姿で轢死体なのだが、カメラマンは《特ダネ》をおさえて、嬉々としている。





翌朝には、その事件の記事が、大きな見出しで、写真と供に、ドドーン!と新聞に掲載されていたのだった。



その新聞を、あの幼い女の子『ローリー』が盲人の『アルノ』に読み聴かせている。



すると、ローリーが突然、叫んだのだ。


「あの男の人だわ!」

「昨日、車の中で言い争っていた人よ!」


「えっ?」


(偶然だろうか?昨日の男が無惨な死をとげたのは……)


元新聞記者だったアルノの好奇心が、ムクムクとアタマをもちあげはじめたのだった。





早速、アルノは幼いローリーを伴って、記事が書かれたという新聞社へとやってきた。


人の良さそうな担当者『ジョルダーニ』(ジェームズ・フランシスカス)は、アルノの話を聞くと、がぜん興味をもったようである。


「もしかすると…」

ジョルダーニは、新聞に掲載するときに、写真をサイズカットする事に気づいて、「ネガの中に《何か》が写りこんでいるかもしれない!」と言い出したのだ。



早速、カメラマンに電話してネガを確認してもらうと、


「写ってるぞ、確かに誰かの手がハッキリと!犯人が突き落としたんだ!」の好返事。


してやったり!



「今から、そこへ取りにいくから待っててくれ!」



だが、その時、自宅の現像室でカメラマンが、ネガを写真にやいているのを、不気味な目が、淡々と覗いていた。


そして、背後から近づくと、いきなり首を絞めあげて、鋭利なモノで切りつけてきたのだった。



そうして去っていく犯人。(まったく、どうやって犯人はカメラマンの住所まで調べあげたのかね……謎である)



ジョルダーニがやってくると、案の定、カメラマンは殺されていて、肝心のネガは奪われていた。


「やられたー!」

だが、もはや諦めきれないジョルダーニは、アルノ&ローリーと供に、真犯人を探そうとして行動はじめる。


(殺されたのは研究員の博士だ……あの研究所には何かあるのかも………)


どんどん事件の深みへとはまっていくのだが……






ダリオ・アルジェントの監督作品2作目である。



『サスペリアPART2』でも書いたが、皆様、お願いだからハードルを下げて、温かい目で観てやってほしい。(「何でやねん!」とツッコミをいれながら、観るのがアルジェント映画なのだから)



例によって突っ込みどころ満載の犯人の行動や殺し方に、怖さなんて微塵も感じないし、笑いさえ浮かんでくるのは不謹慎だろうか?(笑)



1作目の『歓びの毒牙』が上手くいって、「よし!2作目も!」と勢いこんで取り組んだアルジェント。


本格ミステリー映画を、本人は撮りたかったはずなのだ。



でも、どうしてこうなってしまうのか。



出だしは快調でも、この映画はドンドンおかしな方向へと流れてしまうのである。



本筋をそれて、どうでもいいようなシーンに時間をさいてしまうアルジェントの悪いクセが、モロに出てしまっているのだ。




その結果、真犯人が最後に現れても、


「誰だっけ?この人?!」になってしまったのである。(ありゃりゃ~、最悪)



(しまった!色々入れすぎて、犯人の描写を描くのを、すっかり忘れてしまっていた!)


完成した試写を観て、本人も即座に思ったのじゃないのかな?



ジョルダーニ役のジェームズ・フランシスカスが、研究施設のテルジ博士の養女『アンナ』(カトリーヌ・スパーク)と恋仲になったり、ベッドシーンがあったり。(これはこれで必要かも。カトリーヌの●●●●が拝めますし)


そんなシーンの連続で、映画は凸凹道を進んでしまって、肝心かなめの犯人描写を忘れてしまっていたアルジェントさん。(この映画、ちゃんと脚本はあったのだろうか? 何だか撮りながら、その場その場のノリで撮影したようにも思えてしまうのだけど)




ジェームズ・フランシスカス(新・猿の惑星)、

カール・マルデン(欲望という名の電車、助演男優賞受賞)、

カトリーヌ・スパーク(狂ったバカンス)


せっかく名優たちを集めたのに、ちと残念な仕上がりかもしれない。





だが、これがアルジェントでもあるしなぁ~。


やはり、自分は、こんな映画でも見捨てられないのだ。(分かってくだされ)


極甘の評価で、星☆☆。


けなす人が大多数だろうと思われる、この映画も《アルジェント・フアン》には、たまらなく愛しく思えるのだから、本当に稀な監督さんである。(かくいうワタクシも、その一人なのだ)


《謎解き》や《意外な犯人》なんていうミステリー映画の定石は、お願いだから期待しないでね。

2018年9月26日水曜日

映画 「サスペリア PART2 (紅い深淵)」

1975年  イタリア。






ある夜、イタリアの会場で超心理学についての講演が行われていた。


物珍しさで集まった大勢の人々。



特別ゲストとして、テレパシストの『ヘルガ・ウルマン』なんて女性が招待されている。


次々と、客たちの思っている事を言い当てるヘルガに客たちは驚いて拍手喝采。



だが、次の瞬間!


「キャアアーーー!」


ヘルガが、突然叫び声をあげて、口に含んでいた水を、《ジャー!》と吐き出した。(汚ねぇ~)




「怖い …… 怖いわ」

客席の中に、邪悪な殺人鬼の意志を察知したのである。




その殺人鬼の過去や考えが、湯水のようにヘルガの頭の中に入ってきて、ヘルガは恐ろしさのあまりパニックになったのだった。



講演が終わるとヘルガは急いでサッサと帰宅した。





その殺人鬼に後をつけられているとも知らずに ………(テレパシストなのに尾行には、全く気がつかないヘルガさん)




そんなヘルガの住むアパートの近くで、ピアニストの『マーク』(デヴィッド・ヘミングス)は、同じピアニストでアル中の『カルロ』と帰宅中だった。


「飲み過ぎだぞ、カルロ!」


マークの忠告を無視して、帰り際にも酒を煽り続けるカルロはベロンベロンで千鳥足。


「へへへ、大丈夫、大丈夫 …… 」

カルロは、ふらつきながらも、やっとこさ帰っていった。



「やれやれ …… 」呆れるマークが、自分もアパートに戻ろうとした瞬間、


「キャアアァーーーー!!」


暗い深夜の通りに、耳をつんざくような絶叫が響き渡る。





その声がどこから聞こえたのか …… 辺りをキョロキョロ見渡すマーク。



通りをはさんで建っている、もしや、あのアパートの2階なのか?


見上げれば窓ガラスに血だらけの女性の姿が映しだされている。


その背後からは、今、まさに、《斧》のようなものが、何者かによって降り下ろされたのだった!




絶叫と共に、窓ガラスが粉々に割れる音が響き渡り、遠く離れているマークの目にも赤い鮮血🩸が見えた。





マークはいつの間にか走り出していて、そのアパートの玄関を抜けると一目散に階段を駆け上がっていった。




2階には細長く続く狭い通路。


それは、いくつかに枝分かれしていて、壁には様々な額縁の奇妙な絵が飾られていた。



辺りを見渡しながら、慎重に歩を進ませるマーク。


そうして歩いていくと、奥の部屋には血まみれで倒れている、あの、先程のヘルガの遺体があったのだった。






しばらくして警察がやってくると、現場は大勢の人々で騒然としはじめた。



もちろん、第1発見者のマークも警察に質問攻めにあっている。


「駆けつけた時、遺体の彼女以外は見なかったんですか?犯人の姿も?!」


「ええ。でも ……… 何かがおかしかった。うまくは説明できないのですが ……… 」





そこへ、いきなり、『パシャッ!』のシャッター音。


ドア口にカメラをもった新聞記者の『ジャンナ』(ダリア・ニコロディ)が乗り込んできたのだった。



「おい!誰の許可を得て入ってきたんだ!」

「いいじゃないの。ねえ、彼が第1発見者なんでしょ?教えてよ!教えてよー!」



特ダネのためならどこまでも。

キャリア志向で食らいついたら離れない、まるでスッポンのような根性のジャンヌに、マークは呆れるのだった。





そして次の日、新聞にはデカデカと写真つきでマークの記事が載せられている。

「何なんだ、これは!?」



そこへ現れたのは、あのジャンヌ。

「これで、次に犯人が狙うのはあなたよ!でも大丈夫! 二人でこの難事件を解決するのよ!」


(やれやれ、厄介な事になったものだ……。)


好奇心旺盛なジャンヌにあおられて、マークは事件に首をつっこんでいくのだが………






監督はダリオ・アルジェント




日本では先に『サスペリア』という映画が公開され大ヒットした。


それ以前につくられた映画にもかかわらず、当時の馬鹿な映画宣伝部が、勝手に『サスペリア2』なんて邦題をつけて公開してしまった。(原題は、deep red)


内容も、オカルト映画『サスペリア』とは全く関係ないサスペンス謎解きスリラーなのにである。(あ~、不運な映画)





でも、謎やスリラー的な雰囲気はあっても、この映画、あんまり怖くない。


怖さよりも、所々で笑ってしまうのだ。



でも、これが《アルジェント印》の映画なのだから、しょうがないっていえばしょうがないんだけど。(笑)



何本も映画を撮っているのに、一向に上手くならないアルジェント。



怖がらせようと一生懸命に演出するのだが、なぜか?湧き出てくるB級感。





でも、こんなヘンテコな『アルジェント映画』にフアンは熱狂的になるんだけどね。(かくいうワタクシも大好きである)




だいたい、この犯人から変わっている。



わざわざ殺しをする時に、


レコードをかけたり(♪ラ~ラ~ラ~)、

気味の悪いオモチャの人形を、カタカタと走らせたりするのだから。(この労力だけでも大変なものだ)




そうやって、充分に相手をビビらせておいてから、「いざ、殺しましょう!」って。


どんだけ悠長やねん!(笑)って話だ。






マークとジャンナの会話も本筋から外れっぱなし。



「あなた女が怖いんでしょ?」

「はぁ?、ぼくは男だぞ。女が怖いわけないだろう!」

「じゃ、腕相撲しましょうよ」(なんで?)

腕相撲でアッサリ負けてしまうマーク。


「ズルしただろう?こんなので勝って嬉しいのか!もう1回だ!」




本当に、もう、どうでもいいエピソードである。(笑)






だが、こんなズレまくっている『サスペリア2』なのだけど、この映画には、それを補うほどの特別な仕掛けが施されているのだ。




それは映像でしか、なし得ない一発勝負の《映像トリック》。



こんな事をよく思いついたものだと、初めて観た時はビックリした。


それがアルジェントだけなのだと思うと、俄然、自分の評価は高くなってしまう。




映画が終わりました。


もう一度巻き戻して、ゆっくり観てみましょう。


ほ~ら、わかりましたか?



これだけでも充分、コロンブスの卵のような映画といえると思います。



観た方はネタバレ禁止。(必須)


星☆☆☆☆☆を挙げておきます。