ラベル 俳優:ノーントン・ウェイン&ベイジル・ラドフォード の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 俳優:ノーントン・ウェイン&ベイジル・ラドフォード の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2021年11月3日水曜日

映画 「夢の中の恐怖」

 1945年  イギリス。





建築家の『ウォルター・クレイグ』(マーヴィン・ジョンズ)は、ある屋敷の改装工事を頼まれた。


そして打ち合わせを兼ねて、初めて訪れた屋敷は、どこか見覚えのある場所。


さらに、出迎えてくれたフォークナー家の子息に案内されて屋敷の中に入って行くと、大広間に集まっている客たちにも全て見覚えがあるのだ。


「思い出した!私は夢の中で、この屋敷や貴方たち全員に会っているのです!」


「そんな馬鹿な!」


何人かは口々にそんな言葉を吐いたが、一人が「そういえば……私もクレイグさんのような不思議な体験をした事ありますよ」と言い出した。


「私もあるわ」と更に次の声も。


客の精神科医は、そんな話をまるで一介にしないのだが、他の者たちは、クレイグの夢の話に刺激されてか、それぞれ自分の身に起きた《不思議体験》を語りだすのだった………





こんな感じで始まる『夢の中の恐怖』である。


客たちの話が全部で5本……そう、コレも5話を繋げたオムニバス・ホラー映画となっております。


オムニバス自体、苦手なジャンルなので、当然つまづきながら観るだろうな、と思っていたら、1話1話が数分で終わる小話なので、思いの外サクサクっと観終われました。(ホッ)


第1話『死の運転手』。

負傷したレーサーの命拾いした不気味な体験談。(ラストは当時としては、けっこう大掛かり)


第2話『クリスマス・パーティー』。

ある広い屋敷のパーティーで、大勢集まった子供たちが隠れんぼして遊んでいると……隠れた部屋には見知らぬ男の子の姿が……。


第3話『お化け鏡』。

骨董品店で見つけた中古だが立派な鏡。女性は愛する恋人にプレゼントするのだが、……その鏡には見知らぬ情景が映し出される。

やがて、恋人の様子もドンドン変わっていき……いわく付きの鏡には御用心ってお話。



そうして、ジャジャアァ〜ン!




第4話『ゴルフ狂物語』。


あの『バルカン超特急』や『ミュンヘンへの夜行列車』で活躍した凸凹コンビ、ノーントン・ウェインベイジル・ラドフォードが、満を持して登場する。(このコンビ、私、大好きである。それにしても↑写真右のベイジルは、オッサンのくせに、なんか乙女チックで、この画像だけでも笑えてくる)


『ジョージ・パラット』(ベイジル)と『ラリー・ポッター』(ノーントン)は、二人とも美女の『メアリー・リー』にメロメロ。


メアリーの方も、どちらにも好意を持っていて一人に決められない様子だ。


「こうなりゃ、《ゴルフ》で決着をつけようじゃないか!勝った方がメアリーと結婚する!恨みっこなしだ!」


お互い同意して、結婚を賭けたゴルフ対決が始まるのだが………さて、軍配はどちらに挙がったのか?


勝ったのは『ジョージ』(ベイジル)の方。(ズルをして)


それを知らない『ラリー』(ノーントン)の方は(ガ~ン)大ショック!

ゴルフ場の沼に、そのまま入水自殺する。(ちょっと可哀想過ぎる)



さぁ、これで邪魔者はいなくなった。


晴れてジョージはメアリーと付き合いはじめ、ウキウキ気分だが………そこへ、なんと!幽霊の姿でラリーが、ひょっこり現れたのだ。(ゲゲッ!)


「何だ?お前は死んだはずだろう!今頃何の用なんだ?!」


「うるさい!天国に行って分かったんだ!お前ズルして勝っただろう?メアリーの事は諦めろ!じゃないと、こうやってお前の周りで一生まとわりついてやる!!」


「冗談じゃない!さっさと消えてくれ!!」


幽霊と人間の押し問答は延々続き、とうとうジョージも根負けしてきた。


「分かったよ、メアリーの事は諦める。だから、さっさと目の前から消えてくれ」


「最初から、そう素直ならいいんだ。じゃあな!」

ラリーは、後ろを向くと腕で十字をきったり、なんやかんや、妙なジェスチャーをしはじめた。


そして、「おっかしいなぁ~、こうだったっけか?」とブツブツ独り言を言っている。


「お前何をブツクサ言ってるんだ?」


「ヤバい!天国で教えてもらった《消え方》のジェスチャーを忘れてもうたぁーー!」


ぬあぁ〜にぃ〜?!


かくしてメアリーにこんな状況を説明できないジョージであるからして、結婚話はあれよあれよという間に、トントン拍子で進んでいく。


そうして、ジョージの横には、ジョージにしか見えない幽霊のラリーが、消える事もできず、常にチョロチョロしているのだった………。



ある意味、この4話が一番の異色作かも。


ノーントン・ウェインベイジル・ラドフォードの力もあるだろうが、笑える幽霊話なんてのを、ぶっこんでくるのも、また珍しい。(他の話が全部「怖がらせよう!怖がらせよう!」とするモノばかりなんですもん。俄然目立ってしまう)


贔屓かもしれないが、5話の内で私は一番コレが好きである。



そして、この映画『夢の中の恐怖』で、1番評価が高いのが、次の5話目。



第5話『腹話術の腹話術』。


『フレル』(マイケル・レッドグレーヴ)は、大人気の腹話術師。

人形『ヒューゴ』を操って、その人形のあまりにも巧みな話術は、連夜、観客たちを賑わせていた。


そんな同業者である『キー』が、たまたま舞台を観ていると、人形の『ヒューゴ』に気に入られて楽屋を訪ねる事に。


だが、操っていた『フレル』の方はというと、完全に無愛想な態度。


どっちも同じフレルの意志のはずなのに、訳のわからないキーは、とっとと追い出されてしまう。


フレルは二重人格なのか?


だが、操る人形の部分がしまいには肥大化していくと、最後には………



マイケル・レッドグレーヴの名演技で、とっても不気味な印象を残す一編である。


同じような腹話術師の映画『マジック』(1978年 / 主演アンソニー・ホプキンス)の方を先に観ていたせいか、何となく結末も予想していたら、やっぱりその通りでした。(こっちの方が年代的には先なので、『マジック』の方が、だいぶ影響をうけてるはずである)



こんな風に、客たちが奇妙な話を全て語り終えると、舞台はフォークナー家の広間に戻る。


だが、突然に広間は暗闇に包まれて、とんでもない結末へと流れこんでいく。


まるでメビウスの迷宮にのまれていくような……(けっこうインパクトのある結末なので、ここはボカしておこうと思う)



それにしても、それぞれ監督が違うのに、よくまとめてあるよ。


脚本がしっかりしているのか……まるで最後までブレる事もないんだから。(『ワンダとダイヤと優しい奴ら』で有名なチャールズ・クライトン監督も参加しておりますよ)



見た目で驚かすアメリカ映画とは、やっぱりひと味違う。


ホラー映画にしても、イギリス映画は、緻密な脚本、緻密な構成、緻密な計算で成り立っているのだ。(完璧で、少しのスキもない)


日本人も充分に几帳面なんだけど、ともすれば目移りして流されやすいのが日本人。


イギリス映画を観る時は、やはり襟を正せねば!ウン!


星☆☆☆☆。


2021年9月25日土曜日

人物 「『ノーントン・ウェイン』&『ベイジル・ラドフォード』」





ノーントン・ウェイン(左側)(1901年〜1970年 (69歳没) )

ベイジル・ラドフォード(右側)(1897年〜1952年 (55歳没) )



多分、この二人をピック・アップして書いたものなど、あまりないかもしれない。(書こうとさえ誰も思わないかも)



現代では、知る人も少ないかもしれない。



なんせ活躍していた時期が、30年代末〜50年代くらい。

自分なんて、まだまだ産まれてもいないような、遠い昔に存在していた二人なのである。



それでも、この二人は、長い映画史の中でも、稀に特異な位置づけにある存在だと思う。



お笑いコンビでもないのに、お互いに俳優同士の二人は、元々仲が良かったのか?ウマがあったのか?



世間や周りは、二人を勝手に《コンビ》として認知してしまい、名だたる有名監督の作品や様々なジャンルの映画を二人して渡り歩いていくという………



そう、映画史でも珍しい《コンビ俳優》の二人なのである。



もちろん、この二人を初めて観たのは、アルフレッド・ヒッチコック監督の『バルカン超特急』から。(ベイジル・ラドフォードの方は、それ以前の、ヒッチコックの『第3逃亡者』にも出演していたらしいが、とんと覚えてない。機会があれば観直してみたいと思う)



雪の為に、出発できない列車。


たった一つあるホテルに駆け込むものの、空いているのは、狭いタコ部屋みたいなメイド部屋。


ブツブツ文句を言うものの、二人仲良く狭いベッドに落ちついていると、言葉の分からないメイドがやって来て、笑いながら平気で生着替えを始めるもんだから、二人はビックリして度肝を抜かれる。(このシーンの面白いことよ)



今度は英国でのクリケットの試合の行方が気になる二人は、ホテルの受付にたまたま掛かってきた電話に勝手に出る。


「そっちはイギリスだよな? どうなった試合は?! ナニ? 全然興味がない?!お前はそれでも英国人か?!」


知らない相手は、なぜ怒鳴られているのか意味が分からず、要件を伝える暇さえない。


勝手に出た電話に、勝手に怒って切っちゃう(ガチャン!)勝手なベイジルさん。


「全くどうなってるんだ……」と、またもやブツクサが止まらない二人は、そのままフロントをシレ〜として離れていく。



それからも列車で事件が起きようが、二人はクリケットの試合の事で盛り上がっていて、あくまでもマイペース。(最後は協力して、一応大活躍するのだが)



そんなこんなで、映画のラスト、なんとか無事に英国に辿り着いてみると、



《試合は大雨の為、中止になりました》の無情な張り紙が。


あれほど楽しみにしていた二人は、呆気にとられて、トホホ…の顔。



こんな調子で『バルカン超特急』は幕切れとなる。



サスペンス映画なのに、こんなフザけたシーンが盛り沢山入っているんですもん。


主役のマイケル・レッドグレーヴとマーガレット・ロックウッド以外の、こんな脇役の二人にまで、陰ながらスポットが当てられて、オチまでついている。


これが『バルカン超特急』が名作といわれる所以なのである。


こんな『バルカン超特急』を若い時に楽しんで、今でもたま〜に、忘れた頃に観返す時があるが、やっぱり面白い。(オモチャ箱をひっくり返したような楽しさがあるのだ)




そして、数年前に《姉妹編》としてうたわれている『ミュンヘンへの夜行列車』の存在を知って、ごく最近観れたわけだけど、二人の様子は相変わらずだ。(映画の出来は、監督がキャロル・リードなので「ん〜ん……」満点まではやれないのだけど、そこそこ面白い)



第二次世界大戦が勃発しても、二人の心配は別にある。


「ベルリンの友人に貸してあるゴルフクラブ、返ってくるだろうか?あのクラブは凄い飛距離がでるのに……」

ベイジルはそればかりが気がかり。


「郵送してもらうように電話してみればいいじゃないか?」ノーントンは何でもないように言ってのける。


で、公衆電話を探すも、ナチスが割り込んできて、「この電話は使えないぞ!あっちへいけ!シッシッ!!」と邪険に追い払われる二人。


駅の構内にいても、「邪魔!邪魔!」と言われ、やっと座った指定席さえも、「ここは我々が使う!とっとと出ていけ!」とナチス兵に追い出されて、一般席に追いやられる二人なのである。(もう、いつでも踏んだり蹴ったりの二人)


久しぶりに観たノーントン・ウェインとベイジル・ラドフォードのコンビに、なんだか懐かしさを感じて、この『ミュンヘンへの夜行列車』も、それなりに楽しんだ私なのだった。



こんなコンビの面白さに久方ぶりに触れてみると、またもや、とことん調べたくなるのが、私の性格。



そうしたら、出てくる!出てくる!


まだまだ、あるじゃないですか!


二人がコンビで映画に出ている作品が!!(そう、こんなモノじゃなかったのだ!当時の二人の人気は、本国イギリスでも地味〜に浸透していたのであった)



1941年には、ノーントン・ウェイン&ベイジル・ラドフォードの二人が主演で、『Crook's Tour』(クルックのツアー)なんて映画が作られてしまう。(日本未公開、未DVD化、未Blu-ray化)


今度は、このコンビは中東にひょっこり現れて、ドタバタスパイ合戦に巻き込まれるというものらしい。


サウジアラビア、バグダッド、イスタンブールなどなどを旅しながら、『バルカン超特急』並のスパイ戦を繰り広げるというのだから俄然期待が膨らんでしまう。(なぜ?これをDVD化しない?是非、是非お願いしたい!)




1945年の『夢の中の恐怖』は、オカルト・ホラーで5本のオムニバス映画。(これはDVD化されております)


『バルカン超特急』のマイケル・レッドグレーヴも出演していて、もちろん、このコンビもオムニバスの1本に出ているとか。(でも《オカルト映画》に、この二人が出ていてどんな出来なのか想像つかない。いつか観てみたいが)



1946年の『A girl in a million』(百万の少女)。(日本未公開、未DVD化、未Blu-ray化)


英国コメディらしい。(二人はまたもやクリケットに夢中な英国人役)



1948年の『四重奏』はサマーセット・モーム原作の、これまた4本で成り立っているオムニバス映画。(DVD化されております)


これもコンビで出演している。(文芸作品かな?)



まだ全てを把握出来てないが、出てくる!出てくる!二人のコンビで出演している映画。(ミュージカル映画もあるとか。歌うの?この二人が?!)



でも、この二人が、当時、なんでこんなに起用されたのかだけど……なんとなく分かるような気がする。



戦争中でも、ドラマティックな事件が起きても、その中でも《普通の人々》は普通に存在しているのだ。



ゴルフが好きで、クリケットに夢中なり、旅行好き……

ごくごく普通な一般人の二人。



この二人が、画面にひょっこり顔を出すだけで、観ている人々は、妙な《安心感》や、緊迫した場面でも《息抜き》が出来たのかもしれない。(私がそうだ)



それにしても、二人の生年月日を調べてみると、改めて妙に老けていることに驚く。



『バルカン超特急』の頃、ノーントンなんて、まだ38歳、ベイジルの方も42歳くらいなのだ。(ゲゲッ!今の自分よりもオッサンに見える!)



2つの世界大戦の苦労や経験が、二人を実年齢よりも急激に老けさせたのか………



こんな安穏とした自分には想像すらつかないような、とても過酷な時代だったのだろうが、そんな中でも、人々を楽しませる為に《普通っぽさ》を演じた二人は、今の時代、もっと再評価されてもいいんじゃないのかな?



とりあえず、二人が残した作品を、今、楽しめるのは至福の幸せである。



長々、お粗末でございました。(さてと、手元にある『バルカン超特急』と『ミュンヘンへの夜行列車』を再視聴しましょうかね)


2021年9月21日火曜日

映画 「ミュンヘンへの夜行列車」

 1940年  イギリス。




第二次世界大戦前夜。


ヒトラーの指揮下にあるドイツ軍が、チェコスロバキア、プラハの上空から、

「ボマーシュ博士を引き渡せ!」のビラを一斉にばら撒いた。


チェコで特別な装甲板の開発に勤しむ天才科学者『ボマーシュ博士』。


ボマーシュの研究はドイツにしてみれば喉から手が出るほど手に入れたいものなのだ。


博士は、身の危険を感じて、娘の『アンナ』(マーガレット・ロックウッド)と一緒に英国に亡命しようとするのだが、時すでに遅し。


娘アンナはドイツ軍に捕まって、あっけなく強制収容所送りとなってしまう。


無理矢理チャーター機に押し込まれたボマーシュ博士は、心残りのまま一人、英国へと向けて旅立っていった。



そして、強制収容所………


ヒトラーの思想に逆らって、ドイツ兵にボコボコにされている人々の中に、『カール・マルセン』(ポール・ヘンリード)という若者がいた。


元教師であるマルセンは、ドイツ語教育を拒否した為に収容所送りになったのだという。


そんなマルセンに同情していくうち、アンナはすっかり打ち解けて親しくなっていく。


ある日、鉄柵越しにマルセンがアンナに話しかけてきた。


「見ろ!あの見張りは昔、知り合いだった男だ。もしかしたら脱走に協力してくれるかもしれない」


「でも、上手くいくかしら……」 


そんなアンナの不安をよそに、マルセンの手引きで、二人は見事に収容所から脱走した。


「やったー!」喜ぶ二人は船に乗り、無事にイギリスへと辿り着く。



だが、あまりにも簡単すぎやしないか?


そう、このカール・マルセンという男はナチス・ドイツの手先だったのだ!(ゲゲッ!騙したのね!)



「いいか!娘に、新聞で尋ね人の広告を載せさせるんだ!きっと向こうからコンタクトをとってくるはずだ」


「分かりました」


アンナの信用を得て、博士の居処を突き止める作戦なのである。

そんなマルセンに、だまされてるとも知らずに、すっかり信用しきっているアンナ。


アンナが広告を出して、しばらくすると、滞在するホテルに謎の男から電話がかかってきた。


「港町の演芸場へ行け!そこで『ガス・ベネット』を探すんだ!」


訳の分からないアンナ………

でも、(父に会えるのなら………)という思いで誘い文句にのると、次の日、見知らぬ男『ガス・ベネット』を探してまわる。


そんなアンナに目を光らせているマルセンがいるとも知らずに………。




以前、アルフレッド・ヒッチコック監督がイギリス時代に撮った映画『バルカン超特急』を、このblogでも取り上げて、猛烈に褒めちぎった事があった。


とにかく古い映画(1938年)なのだけど、テンポはいいし、大勢いる出演者たちのキャラクターたちも、それぞれ立ってる。


それにミステリーなのに、全編にユーモアが散りばめられていて、徹底した娯楽作品に仕上がっているのだ。(これぞ!まさにエンターテイメント!って感じ)


だから、監督は違えど、姉妹編と噂されていた、この映画『ミュンヘンへの夜行列車』も観る前から、期待値は相当上昇していたのである。



なぜ?この両作は《姉妹編》なんて扱いで呼ばれているのか?



1、作られた年代が共に近いこと。(『バルカン超特急』1938年、『ミュンヘンへの夜行列車』1940年)


2、《列車》を取り扱っていること。


3、共に両作のヒロインを、マーガレット・ロックウッドが演じていること。(私、この人が大好きである)


4、そして、共に、ノーントン・ウェインベイジル・ラドフォードのコンビ俳優が、同じような乗客役で出演していること。



これだけ共通点があるのだから、比べられるのも仕方ないというものである。




で、やっとこさ念願叶って観れた『ミュンヘンへの夜行列車』だったのだけど………



ちょっとばかし、ハードルを上げすぎたのかもしれない。



まぁ、とにかく話が遅々として進まないのだ(笑)(「いったい、いつになったら列車の旅になるんだ?!」って感じ)



この後、やっと探し当てた『ガス・ベネット』もとい、本名『ディッキー・ランドール』(レックス・ハリソン)のおかげで、やっと親子は再会する。(『ベネット』、『ランドール』……呼び名が多すぎて、このあたりは頭がこんがらがってくる)



それでも、またもやナチスに裏をかかれて、今度は親子共々、ナチスにさらわれてしまう始末。(またかよ)



そうして、今度は、この『ランドール』が自身の汚名返上とばかりに、逆にナチスの将校に変装して、アンナとボマーシュ博士の奪還に乗り出すのである。(ここまでで映画の半分が経過している)



「もう、いつになったら列車に乗るんだよ!」なんて次第にイライラしはじめていたら、終盤になってやっと駅の場面。



「娘と博士をミュンヘンへ連れてこい!」と、ナチスの上層部より命令がくだされて、駅に連れて来られる親子。


「娘は私を信頼しています!私も同行します!」とナチス将校に扮した『ランドール』も乗り込んでくるのだが、それに疑惑の眼差しを向けるのが、あのカール・マルセン。


そんなナチだらけが占拠する列車に、あの!『バルカン超特急』でも活躍した迷コンビが、やっと乗客として乗り込んでくるのである。(oh! 懐かしい!)

ノーントン・ウェインベイジル・ラドフォードの迷コンビ。(水玉模様の蝶ネクタイがベイジルの方)



変装しているランドールに見覚えある『カルディコット』(ノーントン・ウェイン)が、


「アイツは英国人だぞ!クリケットの名人だった奴だ。なんでナチなんかに変装してるんだ?!」


と気づいて、『チャータース』(ベイジル・ラドフォード)にそっと耳打ちする。(なんと!『バルカン超特急』と同じ役名)


やがて、事情を知った二人はランドールに協力して、アンナと博士奪回の為に人肌脱ぐのである。(二人ともナチスに変装する)



そうして、なんとかナチスの裏をかいて、ミュンヘン行きへの列車から脱出した御一行は、車でスイスへ行くロープウェイまで到着。(騙されたと知るカール・マルセンとナチスたちも「逃してたまるかー!」の勢いで、後を追いかけてくる)


博士とアンナ、コンビ二人を先にロープウェイに乗せると、一人残った『ランドール』(レックス・ハリソン)は、ナチスの集団相手に、激しい銃撃戦がはじまる。



さぁ、ナチスの猛攻撃を振り切って、ランドールは、アンナたちのいるロープウェイの向こう側まで無事にたどり着けるのか………



こんな話が『ミュンヘンへの夜行列車』の主なあらすじである。(ほぼネタバレになってしまったかも)


観終わってみれば、これはこれで、中々面白かったって思えるんだけど。(列車の場面って、「コレだけ?」と、ちと拍子抜け)



ほぼ、後半はレックス・ハリソンが一人活躍する。



なんだか顔の幅が狭くて、長〜い顔が独特のレックス・ハリソン。


これで6回も結婚して、愛人がわんさといたプレイボーイだったというから、人の好みは、よ〜分からん。(愛人が自殺したり、その後も離婚した相手も自殺したりして、次から次に波瀾万丈の人生。プレイボーイというよりは《魔性の男》かも)


この映画では、まだデビューして間もない頃じゃないかな。(後に、オードリー・ヘプバーンとの『マイ・フェア・レディ』やジーン・ティアニーとの『幽霊と未亡人』で、光る演技力を見せつけるハリソンさんなのだけどね)




ヒロイン役のマーガレット・ロックウッドは、さすがに綺麗で、モノクロながらも色々な衣装で(目の保養)楽しませてくれている。


でも、不満も少々ある。


この映画での扱いが、父親のボマーシュ博士と一緒で、まるで《記号》みたいな印象しか受けなかったのである。


ヒッチコックの『バルカン超特急』では、怒ったり、動揺したり、笑ったり、はしゃいだりしていて、色々な表情を見せてくれていたのに。(敵相手にキックもした)



この映画でのアンナ役は、自分の意志に関係なく、どこか、その境遇に流されるがまま。


ちょっと物足りなさを感じてしまった。(もっと、ハッチャケたマーガレットが見たかった)




ノーントン・ウェイン&ベイジル・ラドフォードのコンビは、この映画でも大活躍する。


この二人が出てきた後半から、この映画は、やっとエンジンがかかって面白さを増し、怒涛のラストまで牽引してくれている。(この二人は流石である)




この映画の監督は、キャロル・リード



以前『第三の男』でも書いたのだが、この映画でも同じように、場面場面では、惚れ惚れするような構図で、綺麗なモノクロを撮りあげている。


ただ、この人の場合、物語の進行としては、少しばかり不出来な部分もある感じがする。



昭和の時代に、あれほど持ち上げられていた『第三の男』も、平成を過ぎて、令和になると、その評価は、もはや持続出来ていない事に最近になってビックリした。(今じゃ、キャロル・リードのランキングでも『第三の男』は5位なのだ)



それに、この『ミュンヘンへの夜行列車』と『バルカン超特急』を比べてみても、ハッキリと分かるのは、《ユーモア》の足りなさ。



騙し騙されの掛け合いは、あまりにも続けば、少々《しつこさ》を感じてしまった。


それゆえに前半は少し退屈、後半はノーントン・ウェイン&ベイジル・ラドフォードのおかげで最高でございました。



1940年の戦争真っ只中ゆえ、仕方ない事なのかもしれないけど、それでも『バルカン超特急』を痛快な娯楽作に仕上げた、監督のヒッチコックと脚本家のシドニー・ギリアットの力量は並々ならぬモノがあると思う。(おかげで80年以上経っても楽しんでおります)



でも、この《ユーモア・センス》ばかりは、昨日今日で、誰でも身につくものでもないしねぇ〜。(それぞれの監督の資質の違い。生来持ち得るモノって感じですかね)



《姉妹編》なんて呼び名も、監督同士の力量を秤にかけるようで、なんだかキャロル・リードには、ちと残酷な事なのかもしれない。



この映画はこの映画で、充分に佳作と呼べるのだから、良しとしときましょうかね。


星☆☆☆。


※でも『バルカン超特急』は数倍楽しい事を請け負っておく。(あっ、また言っちゃった (笑) )

2019年4月2日火曜日

映画 「バルカン超特急」

1938年 イギリス。







ヨーロッパのパンドリカ(架空の国)は、雪山に囲まれた場所にある。


そこへ列車が入ってきたが、突然の雪崩で明日まで出発できなくなった。




近くのホテルには、一晩の宿を求めて、大勢の客が押し寄せてくる。



「部屋を一つ頼む!」


イギリス人の男2人組『チャータース』(ベイジル・ラドフォード)と『カルディコット』(ノーントン・ウェイン)は、フロントに掛け合うのだが、


「スミマセン、あいにくと、どこも満杯でして……」と言われて、やっと通されたのは狭いメイド部屋。(トホホ…)



そこへ、メイドが入ってきて、二人の前で知らぬ顔して、いきなり服を脱ぎ始めたのだから、二人はビックリしてドギマギ。


言葉の通じないメイドは着替えがすむと、アッケラカンと笑いながら出ていった。



残された二人は狭いベッドでポカ~ン。





一方、金持ちの女性『アイリス』(マーガレット・ロックウッド)は、最上級の広い部屋で、親友二人と優雅なひとときを過ごしている。



「アイリス、本当に結婚するの?」親友の一人が訊ねた。



「やりたいことは全てやりつくしたもの!後は結婚だけよ」アイリスはケロリとした様子で答えた。




若くて、美人で、金持ちのアイリス。

何不自由ない暮らしをしてきて、今は少々退屈ぎみ。




(これが独身最後の旅。イギリスに帰れば結婚して、また、ワクワクするような新しい生活が待っているわ)



金持ちのアイリスの結婚する理由なんてのは、こんなものである。(ちょっとワガママお嬢様過ぎるぞ (笑) )




友人たちが帰っていくと、広い部屋に一人きりになったアイリス。


「それにしても上の階がうるさいわね」




アイリスの真上、2階の部屋では音楽家の『ギルバート』(マイケル・レッドグレーヴ)が『農民の歌』なるものを大音量で演奏中。



食堂から帰ってきた老婦人『ミス・フロイ』(メイ・ウィッティ)は自分の部屋の窓際で、外で歌っている男の美声に聞き惚れていたが、ギルバートのドタバタするような民族舞踊の音に、イライラして、たまらずに廊下に出てきた。



そこへ、同じように出てきたアイリスと鉢合わせする。


「うるさいわね」

「ええ、ほんとうに」

ギルバートの騒音に意気投合した二人は、明日の列車で、一緒に落ち合う約束をした。




「わたしが追い出してやるわ!」アイリスはミス・フロイに、キッパリ言うと、自分の部屋から支配人を呼び出した。


「これで、2階の男をさっさと追い出して!」と財布の中から、大量の札束をとりだして見せびらかす。



目の色が変わった支配人は「おまかせを!」と言うと、素早く出ていった。




途端に音は鳴り止んだ。


(ホッ!これで静かになった。やっと眠れるわ)

安心して床に就いたアイリス。




だが、それも束の間、2階のギルバートが自分の荷物を持って、アイリスの部屋にズカズカと乗り込んできたのだ。



「ちょいとお邪魔するよ」

「何なの?あなた、今すぐ出ていって!!」

アイリスは驚いて叫ぶが、ギルバートは平然としていて、自分の荷物をほどきはじめた。



「部屋を追い出されたんで、一晩お世話になるよ」


「どういうつもりなの?」


「嫌なら君が廊下で寝てくれてもいいんだよ」


「大声で叫ぶわよ!」


「構わないさ、周りには君に誘われたって言うから」ギルバートはそう言うと、歌いながら、隣のバスルームに入っていった。



(こんな図々しい男、見たことない!)


頭にきたアイリスだったが、この男に、何を言っても通用しない。



観念してフロントに電話する。

「あの…支配人、気が変わったの。2階の部屋の人を戻してあげて………」



それを隣で聞いていたギルバートは直ぐ様、バスルームから出てきた。



「あ~、ところで俺の荷物、上に運ばせといてくれよ!」ギルバートは調子よく言うと、そのまま手ぶらで出ていった。


「何て男なの!!もう、最低!!」悪態をつくアイリス。



パンドリカの最後の夜は、こんな風に過ぎていったのだった…………。






こんな風にノホホ~ンとした調子で始まる『バルカン超特急』。


サスペンスの巨匠ヒッチコックが、イギリス時代に撮りあげた、この映画は、序盤なんとも緩やかな空気が漂う。


架空の国《パンドリカ》から~《イギリス》へ帰る前の一夜、その出来事を面白おかしく、充分に時間をかけて描いている。



でも、この場面は、観ている我々に《どんな登場人物たちがいるのか》を、事前に分かりやすく教えてくれる、ヒッチ先生最大の配慮なのだ。



決して無駄なシーンなんかじゃない。


このお陰で、この後、狭い列車の中で、誰が誰なのかを、キチンと見分けやすくなるのだから。





この映画の原作はエセル・リナ・ホワイトの『貴婦人消失』。



そう、消える!のだ。

タイトルのように跡形もなく、走る列車の中で『ミス・フロイ』と名乗る婦人が。





次の日、アイリスは、ホテルを出る前に、頭に花瓶が落ちてきて(危ねぇ~)ミス・フロイに介抱されながら、何とかイギリス行きの列車に乗り込むのだが、しばらくすると(バッタリ)気を失ってしまう。




やっと目が覚めたときには、走る列車の中。

目の前には知らない乗客たちばかり。



「あの~ミス・フロイを知りませんか?年配の婦人なんですが……一緒にこの列車に乗ったんですが……」アイリスが訊ねるが、


「知りませんよ」

「あなたは、最初から一人でしたよ」

「夢でもみたんじゃない?」

「そんな人は、最初から、この列車には乗ってませんよ」

と言われる始末。



能面のような乗客たちの言葉に、アイリスは一人、パニックになる。



昨日、メイド部屋に押し込まれたイギリス人の二人組も、面倒なことに関わりたくないので、知らぬ存ぜぬを決め込んでいる。


不倫旅行のアベックたちも同じだ。




車内を探しまわるアイリスは、

(自分は頭を打ったショックでどうにかなってしまったんだろうか?、本当にフロイは存在しないのかも………)

なんて思いながら、段々と疑心暗鬼に。




だが、そんな中でひとりだけ、アイリスの言葉に耳をかたむける人物がいた。



昨日の最悪な変わり者の男『ギルバート』である。


「『ミス・フロイ』なる人物は必ずいる!一緒に探そう!」とまで言ってくれたのだ。(昨日は、あれだけ感じが悪かったのに、よりによってこの男が!)




かくして、ギルバートとアイリスは、素人探偵よろしく、列車内を捜索するのだが……





この後は、走る列車内でギルバートとアイリスは、ミス・フロイを、あちこち探し回りながら右往左往。(それでも、チョイチョイ《笑い》を入れ込んでいくヒッチコック監督は、サービス満点!)




やっと拉致されて隠されていた『ミス・フロイ』を救いだすも、車内に潜んでいた敵国の悪党たちとの対決、壮大なスパイ合戦へとなだれ込んでいく。(ゲゲッ!こんな話だったの!(゜〇゜;))




そうして列車はストップして、最後は、他の乗客たちを巻き込んでの、敵との激しい銃撃戦。(列車の窓ガラスは、流れ弾で「バリン!バリン!」割れて、もうメチャクチャ)




命がけで列車を再び走らせようと懸命になるギルバートとアイリス、その騒動に巻き込まれた乗客たち。




はたして、皆は無事に祖国イギリスへ帰れるのか……。





80年以上前の映画でも侮れない。



ハラハラさせて、ドキドキさせて、しかも笑いも散りばめられていて……



これは、極上のエンターテイメント映画であり、一級品の傑作なのだ。


自信を持ってオススメしておく。(超面白いよ)

星☆☆☆☆☆。


《補足》尚、イギリス人のおかしな二人組(ノーントン・ウェイン & ベイジル・ラドフォード)は同じような乗客の役で、キャロル・リード監督の『ミュンヘンへの夜行列車』にも出演しているらしい。



そして、アイリス役の女優マーガレット・ロックウッドも、その映画のヒロイン役で出ているという。(この人、大好きである♥)




監督はちがえど、『バルカン超特急』の姉妹編ともいえる『ミュンヘンへの夜行列車』。


そちらも機会があれば見比べてみるのも面白いかもしれない。