※タイトルが『シンドバッド』だが、正確には『シンバッド』と発音する。(劇中でも主人公はシンバッドと呼ばれているし)
『シンバッド』(ダグラス・フェアバンクス・jr.)は、ある町中で、集まった人々相手に、それまでの7つの航海の冒険譚を気持ちよく演説していた。
中には、(もう、その話何度も聞いたよ……)なんて、ウンザリした顔の者もいたが、構うものか!
喉元に剣を突きつけて、無理矢理、自慢話を聞かせるシンバッド。
それでも、聞いている聴衆たちのテンションは、段々と下がってきていた。
(何とかせねば……)
状況に気づいたシンバッドは、自らの首に掛けている大きなメダルを見て、ふと思い出した。
「お前らに『デリアバー』の話を聞かせてやろう!」
「『デリアバー』?何だそりゃ?聞いた事ねぇぞ!」聴衆たちも興味をもったようだ。
それを見てホクホク顔のシンバッドは、語りだした。
「これから話す事は8つ目の航海の話だ………それは………」
こんな風に始まるシンバッドの冒険。
『アレキサンダー大王の秘宝』を求めて、いざ!航海に出るシンバッド。
『絶壁の彼方に』しか観た事のない自分だったが、この『船乗りシンドバッドの冒険』では、180度、ガラリと違う印象にビックリ。
頭に金のターバンを巻いて、耳には金のイヤリング。
口髭、アゴ髭をたくわえて、胸もあらわな海賊の衣装に身を包んでいる。
瞳は、空の青さを思わせるようなブルー・アイズ。
そんなダグラス・フェアバンクス・jr.に、
「男なのに何なんだ?この色気は!?」
と思ってしまった。
まるで、往年の沢田研二のような、全身から醸し出すような色気なのである。
しかも、船上をピョンピョンと飛び回り、跳ね回る身軽さにも驚嘆してしまう。
船から降りる時も、クルンと1回転して着地。
そこからピョン!と跳ねたかと思ったら、窓辺にストン!と腰かける。
そこからピョン!と跳ねたかと思ったら、窓辺にストン!と腰かける。
まるで体操選手並の身体能力なのだ。(本当に何者なのだ?この人!)
ヒロイン役のモーリン・オハラも綺麗。
その昔、映画『わが谷は緑なりき』を観ていて、久しぶりに観た気がした。
秘宝の手がかりを知る『シューリン姫』を演じているが、テクニカラーで撮られた、この映画ではオハラの赤毛が鮮やかに際立つ。
薄い透けるようなヴェールを羽織り、色とりどりの豪華な衣装に身を包んでいて、それだけでも観ている者を楽しませてくれる。
そして、そして、驚いたのは敵の王子役に、あの!映画『道』で有名なアンソニー・クインが出ている事なのだ。
若いアンソニー・クインは、シワがなくてツルンとした顔。(1915年生まれで、この時30を少し越えたばかりだしね。)
でも、野太い弓なりのマユゲは健在で、「若い時は悪役も仕方ないか~」って感じである。
歳とともに熟した『男の渋み』を身に付けるまでは、まだまだ道のりは遠い。
映画の最期、シンバッドの船から何発も撃ち込まれる火の玉で、哀れ絶命してしまうのだが。(いかにも悪漢らしい最期である)
映画の出来は、現代の我々から見ればお世辞にも素晴らしいとはいえない。
お話も少々陳腐だし、テクニカラーも、ややボヤけてくすんでいる。
でも、当時は画期的だったんだろう。
長い戦争が終わって、人々はきらびやかな物、華やかな物に飢えていた時代。
ダグラス・フェアバンクス・jr.のシンバッドが、大袈裟に身ぶり手振りで演じているのを、当時の人々はおもいっきり楽しんだはずだ。
「さぁ、戦争は終った!観客は我と一緒にこの冒険に身を委ねようじゃないか!」
フェアバンクスが、画面いっぱいに跳び跳ねる姿を観ながら、こんな風に呼びかけているように見えてしまう。
こんな映画なれど、人々を元気つけて映画は公開当時ヒットした。
ダグラス・フェアバンクス・jr.もアメリカ人として、後に、初めて『サー』の称号をイギリスから与えられる。
決して簡単にバカバカしいと切り捨てられない映画。
ん~、星☆☆☆なのであ~る。