2019年10月10日木曜日

映画 「船乗りシンドバッドの冒険」

1946年 アメリカ。






※タイトルが『シンドバッド』だが、正確には『シンバッド』と発音する。(劇中でも主人公はシンバッドと呼ばれているし)




『シンバッド』(ダグラス・フェアバンクス・jr.)は、ある町中で、集まった人々相手に、それまでの7つの航海の冒険譚を気持ちよく演説していた。


中には、(もう、その話何度も聞いたよ……)なんて、ウンザリした顔の者もいたが、構うものか!


喉元に剣を突きつけて、無理矢理、自慢話を聞かせるシンバッド。



それでも、聞いている聴衆たちのテンションは、段々と下がってきていた。



(何とかせねば……)

状況に気づいたシンバッドは、自らの首に掛けている大きなメダルを見て、ふと思い出した。



「お前らに『デリアバー』の話を聞かせてやろう!」

「『デリアバー』?何だそりゃ?聞いた事ねぇぞ!」聴衆たちも興味をもったようだ。




それを見てホクホク顔のシンバッドは、語りだした。



「これから話す事は8つ目の航海の話だ………それは………」





こんな風に始まるシンバッドの冒険。


『アレキサンダー大王の秘宝』を求めて、いざ!航海に出るシンバッド。


この主人公、シンバッドを演じているのが、以前、このblogで紹介した、『絶壁の彼方に』に主演していた『ダグラス・フェアバンクス・jr.』なのである。




『絶壁の彼方に』しか観た事のない自分だったが、この『船乗りシンドバッドの冒険』では、180度、ガラリと違う印象にビックリ。



頭に金のターバンを巻いて、耳には金のイヤリング。

口髭、アゴ髭をたくわえて、胸もあらわな海賊の衣装に身を包んでいる。



瞳は、空の青さを思わせるようなブルー・アイズ。




そんなダグラス・フェアバンクス・jr.に、


「男なのに何なんだ?この色気は!?」


と思ってしまった。





まるで、往年の沢田研二のような、全身から醸し出すような色気なのである。






しかも、船上をピョンピョンと飛び回り、跳ね回る身軽さにも驚嘆してしまう。



船から降りる時も、クルンと1回転して着地。

そこからピョン!と跳ねたかと思ったら、窓辺にストン!と腰かける。




まるで体操選手並の身体能力なのだ。(本当に何者なのだ?この人!)






ヒロイン役のモーリン・オハラも綺麗。



その昔、映画『わが谷は緑なりき』を観ていて、久しぶりに観た気がした。


秘宝の手がかりを知る『シューリン姫』を演じているが、テクニカラーで撮られた、この映画ではオハラの赤毛が鮮やかに際立つ。


薄い透けるようなヴェールを羽織り、色とりどりの豪華な衣装に身を包んでいて、それだけでも観ている者を楽しませてくれる。





そして、そして、驚いたのは敵の王子役に、あの!映画『道』で有名なアンソニー・クインが出ている事なのだ。



若いアンソニー・クインは、シワがなくてツルンとした顔。(1915年生まれで、この時30を少し越えたばかりだしね。)



でも、野太い弓なりのマユゲは健在で、「若い時は悪役も仕方ないか~」って感じである。

歳とともに熟した『男の渋み』を身に付けるまでは、まだまだ道のりは遠い。




映画の最期、シンバッドの船から何発も撃ち込まれる火の玉で、哀れ絶命してしまうのだが。(いかにも悪漢らしい最期である)






映画の出来は、現代の我々から見ればお世辞にも素晴らしいとはいえない。


お話も少々陳腐だし、テクニカラーも、ややボヤけてくすんでいる。





でも、当時は画期的だったんだろう。


長い戦争が終わって、人々はきらびやかな物、華やかな物に飢えていた時代。

ダグラス・フェアバンクス・jr.のシンバッドが、大袈裟に身ぶり手振りで演じているのを、当時の人々はおもいっきり楽しんだはずだ。




「さぁ、戦争は終った!観客は我と一緒にこの冒険に身を委ねようじゃないか!」



フェアバンクスが、画面いっぱいに跳び跳ねる姿を観ながら、こんな風に呼びかけているように見えてしまう。





こんな映画なれど、人々を元気つけて映画は公開当時ヒットした。


ダグラス・フェアバンクス・jr.もアメリカ人として、後に、初めて『サー』の称号をイギリスから与えられる。




決して簡単にバカバカしいと切り捨てられない映画。


ん~、星☆☆☆なのであ~る。