2019年11月10日日曜日

映画 「太陽に向って走れ」

1956年 アメリカ。






遥々、ニューヨークからメキシコまで、チャーター機でやってきた『ケイティ・コナーズ』(ジェーン・グリア)。



降り立った町は、アカプルコの漁村の近くだった。


(こんなところに……あの『マイク・ラティマー』がいるのかしら……?)


ニューヨークの『サイト誌』で女性記者をしているケイティは、上司の命令で、有名な冒険小説家ラティマーを探しにやってきたのだ。


それに、ケイティ自身がラティマーの小説の愛読者だったのも、それを後押しした。



寂れたホテルにチェックインすると、ケイティは、ホテルマンに聞いた。

「ここにラティマーさんはいらっしゃるかしら?」

「ええ、住んでますよ。この時間なら釣りに行ってるはずです。」



波止場に行くと、大きなカジキマグロを釣り上げて、作家とは思えないほど日焼けして、薄汚れた格好の『ラティマー』(リチャード・ウィドマーク)が、ご機嫌で帰ってきた。


それをケイティは、そっと写真におさめた。(盗撮だ)


道すがら、すれ違うケイティの姿を見たラティマーは、およそ場違いなケイティに驚いた様子だったが、そのままホテルへと帰っていった。




そして、ホテルでの夕食時間。


異国のスペイン語に四苦八苦して、料理の注文しているケイティに、ラティマーが、向こうから近づいてきて流暢なスペイン語で助け船をだしてきた。


「やぁ、あなたのような方が、どうしてこんな所へ?」


テーブルに、ラティマーの著書を置いているのを見つけると、

「この本は最悪だ」と自身の本を酷評した。


「そうかしら?素晴らしいわ。あたくしは好きです」


ラティマーの経歴や小説を本人を前にして絶賛するケイティ。


そこへ、「ラティマーさん、伝言です。明日の朝も釣りに行きますか?」


「あなたがラティマーさん?」空々しく驚くふりをするケイティ。


「あたくしをからかって、さぞ楽しかったでしょうね?」


「何を言ってるんだ、俺の事を最初から知っていたくせに」(ケイティの芝居もバレバレ。)




明日も釣りに行くために船を出す事を、ホテルマンに言うラティマー。

「あなたも、明日、俺と釣りに行くんだ!」

「あたくしが?!」



強引なラティマーは、ケイティを海に引っ張っていった。


何もかも、ラティマーのペースに振り回されるケイティ。


だが、そんな子供のようにはしゃぐラティマーに、いつしかケイティは惹かれていく……。



ラティマーは、前妻が親友と不倫して裏切られたショックを、ずっと引きずっていたのだ。

筆を進ませようにも、全く小説を完成することができない。



そんな苦悩するラティマーの様子を見て、ケイティは、ここを離れる決心をする。


(あたしには出来ない……上司の命令とはいえ、これ以上、マイクに小説を書かせるよう無理強いする事は……)




そして、旅立ちの時。



「どうしても行くのか?なぜなんだ?!」

ラティマーもケイティを気に入りはじめ、離れがたい気持ちなのか……



「俺がメキシコ・シティまで送っていく」と自ら名乗り出てくれた。



チャーター機に乗り込む二人。



二人の飛行機は、上空に浮かびあがり、燦々と降り注ぐ太陽をうけて、順調に進んでいた。



真下には鬱蒼した密林のジャングルが見えて、それは、どこまでも続いている。




その時!突然、操縦席の計器が狂いはじめた。(原因はケイティの手帳の磁石である)






「マイク、あそこ!!」ケイティが指差す場所は、ちょうど密林が途切れていて、何とかチャーター機が不時着出来そうだ。


「つかまってろ!」


飛行機は何とか着地し、スリップしながらも雑木林に突っ込んで、そして止まった。




気を失っていたのか……

しばらくしてケイティは目が覚めた。隣では頭をぶつけたマイクが、まだ失神している。



(ここはどこなの………?、でも何とか助かったのね………)


安堵するケイティ。


だが、ここからがマイクとケイティ、二人の地獄のはじまりだった……。






『六番目の男』に続くリチャード・ウィドマークの映画である。



この1956年には、『六番目の男』、『太陽に向かって走れ』、『襲われた幌馬車』と3本立て続けに主演しているリチャード・ウィドマーク。


その2本目を今回、偶然観る事が叶った。


これはハラハラ、ドキドキの逃亡ミステリーとしては、隠れた名作であり、大傑作である。






二人が降り立った密林には、ナチの残党が、こっそり隠れ住んでいたのだ。


口封じで殺されそうになっちゃう二人は、すんでのところで脱出。


密林の広大なジャングルの中を逃げ回りながら、右往左往するのである。


果たして二人は無事に脱出して、生還できるのか?………





とにかくリチャード・ウィドマークが超カッコイイねぇ~!



何なんだろう……この当時のリチャード・ウィドマークの野生的で精悍な様子は。


男から見ても魅力的だし、それが映画を観る人の気持ちを、グイグイ引っ張っていく。




今回の相手役ジェーン・グリアさんも、美しいことよ!



この時代の女優さんの《気品さ》は、別格。


現代で、このほどの《気品さ》や《気高さ》を身につけている女優さんを、最近は全く目にしなくなった。


このジャングルの撮影は、肉体的にも精神的にも相当大変だったみたいで(高熱にみまわれたり)、この映画以降は完全に休業状態に入ってしまったらしいが。(そりゃ、そうだろうな……水浸しや泥まみれ、埃まみれで、並の女優なら、とっとと逃げ出すよ。こんな上品な女優さんがよく立派に務めあげたよ。)



それでも、その苦労のかいがあって、スタジオじゃない、実際の樹海のような密林でのロケは、も~、迫力満点である。




この映画は偶然、ネットでお見かけして観る事が叶ったのだが、出来れば画像の良い、DVDかBlu-rayでじっくり観てみたいものだ。(メーカー様お願いします)



星☆☆☆☆☆である。


埋もれた傑作は、まだまだ、あるのであ~る。



※後日、なんと!DVD化されました。

クリアーな画面は超嬉しい!

ありがとうございま~す!