2019年11月10日日曜日

映画 「デス・トラップ / 死の罠」

1982年 アメリカ。



劇作家『シドニー・ブリュール』(マイケル・ケイン)の舞台、『殺しはフェア』の初日が開いた。


客は、充分に入っているがまだらな拍手。


たまらないシドニーは、barに行って、やけ酒を、あおらずにはいられない。


「大丈夫ですよ、まだ初日なんですから」

バーテンダーが慰めの言葉をかけるが、テレビをつければ、酷評の嵐。



家に帰りつけば、妻の『マイラ』(ダイアン・キャノン)が、開口一番、

「アァーーーーーーーーッ!アァーーーーーーーー!!」耳をつんざく叫び声。

(心臓が悪い妻らしいが、よくもまあ、こんなに甲高い声が、四六時中、出せるものだ。完全に林家パー子の意味のない叫び芸と一緒である)


シドニーの精神状態は、もうギリギリどころか限界点を越えていた。



追い討ちをかけるように、以前、講義をした学生が、初めて書いたという脚本のコピーを送りつけてくる。


タイトル『死の罠』……。


(ふん!タイトルだけは、まぁまぁ、だが、所詮、素人の書いたものだろ)


だが、読んでみると文句なしの傑作だった。

(ガーン!)


その時、シドニーに悪魔の声が囁く。

(何とかこの脚本を奪えないだろうか?、そう、相手を殺してでも!)


シドニーの本気か冗談かの言葉に、怯えるマイラ。

「アァーーーーーーーー!!、アァーーーーーーーー!!」(ほんと、うるさい!)




シドニーは、脚本を書いた学生のアンダーソンを早速呼び寄せた。

書いた脚本の現物を持ってくるように、と言って。



そして、夜半現れた、『クリフォード・アンダーソン』(クリストファー・リーヴ)。


「お招き、ありがとうございます。」

精悍で美青年のアンダーソンは、あこがれのシドニーの自宅に呼ばれて嬉しそうだ。


シドニーの邸宅には、ミステリーの劇作家らしく、珍しいコレクションとして、ピストルや剣、斧、手錠などの収集品が壁に飾られている。


それを、自慢しながら紹介しているシドニーの異様な目付きに、妻のマイラはビクビクしている。

「クリフ君は、私と二人で話をしたいと思ってるんだがね。」



シドニーが、マイラに、さりげなく退室をお願いするのだが、マイラは出ていこうとはしない。


(もしかして、さっきの言葉は本気かもしれない。………夫はアンダーソンを殺して、脚本を奪うつもりかもしれない)


そう思いこんだマイラは、何を言われても、ここを離れられない。





そして、アンダーソンも、なんだか居心地の悪さを感じてきたようだった。



「この手錠なんか凄くよく出来てますね」

コレクションの棚に目を向けながら、観ていると、


「じゃあ、はめてごらん」

と言うと、いきなりシドニーは、アンダーソンの両手に手錠をかけてしまった。


「外れません、ほんとに頑丈そうだ」

アンダーソンの笑顔もどこか強ばっている。




「コツがあるんだよ!思いっきり引けば簡単に外れるのだがね。」

シドニーの様子に、アンダーソンもマイラも、怯えはじめている。


「………僕には外せそうもないです」

「確か……鍵があったはずなんだがね……えっと……どこだったかな?」

あちこち探しまわりながら、シドニーの手が棚のピストルに手が触れると、アンダーソンもマイラも息をのんだ。



その時、「ほら、あったよ鍵だ!」


シドニーが鍵をさしあげた。

とたんに、ホッと、安堵する二人。


「なんだい?君たち二人は、私を疑っていたのかい?、私が殺そうとしているとでも?」

明るくいい放つシドニーに、緊張がとけた二人も、笑顔で応える。

「さぁ、外すよ」



その時だった!



アンダーソンの後ろにまわりこんだシドニーは、隠し持っていた鎖をアンダーソンの首に巻きつけたのだ。

咄嗟のシドニーの行動に、防御すらとれなかったアンダーソンは倒れこむ。


「アァーーーーーーーー!!、アァーーーーーーーー!!」

マイラの絶叫が部屋中を響きわたる。



シドニーは、渾身の力をこめて、倒れこんだアンダーソンの首を、これでもか!というくらいに締め上げた。


バタバタ抵抗するアンダーソンも、やがて白眼を剥いて、力尽き、動かなくなった。

「アァーーーーーーーー!!、アァーーーーーーーー!!」


マイラは、部屋中を走り回りながらも、まだ叫び続けている。


「いつまで騒いでいるんだ!遺体を外へ運び出すんだ!」

シドニーは、そう言うと、マイラに手伝わせて、アンダーソンを持ち上げた。




「フゥ~、痩せた奴で良かった。」

冷静なシドニーと泣きじゃくるマイラは、夜の暗闇の中、遺体と一緒に家から出ていくのだった。







監督はシドニー・ルメット。



見終わって観れば、あまりにもダイアン・キャノンの強烈な、耳をつんざく叫び声が、印象に残ってしまいすぎて、かなり損していると思う。(ゴールデン・ラズベリー賞受賞も納得)


『シーラ号の謎』にも、この方、でてらっしゃるけど、やはり、どこか頭カラッポ(失礼)な役どころだった。


顔立ちや髪形は、その時代に流行った、ファラ・フォーセット・メジャーズやゴールデン・ホーンに似ていて、充分に可愛いんだけどね。(なんせ、元ケーリー・グラントの奧さまですもん)




マイケル・ケインは、さすがなのだが、ローレンスオリヴィエと共演した『探偵 / スルース』には、ちと及ばない。(この時期あまりにも、スリラーもの、サスペンスものに出過ぎていて、いささか食傷ぎみ)






だが、この映画には、あの、クリストファー・リーヴがでている。


『スーパーマン』じゃないリーヴは、どうなのか?というと、なかなか演技派じゃないか。

若いし、精悍なハンサムさんで、だれにでも好かれる好青年と、したたかな野心家の二面性を、うまく演じていると思う。



これより、数年後のリーヴの落馬事故を思えば、この時期の姿を観ると、なんともいえないような気持ちになるが………。


リーヴは、落馬事故に遭う前に、もう一本、マイケル・ケインと共演している。

(1992年の『カーテンコール ただいま舞台は戦闘状態』だ。ビデオ時代に観た記憶があるが、こちらも舞台裏を俳優たちが駆けずり回るコメディだった。残念ながらDVD化は、されてない様子)




シドニー・ルメットも同年に『評決』を撮っているが、一年に二作も映画を撮ってお疲れだったのだろうか……。





話の筋書きを、もっとスッキリさせてほしかった気がします。




とにかく、「アッ!」と驚く『どんでん返し』も、これだけ連続で続くと、やや食傷気味。

もはや、後半のどんでん返しになると、完全に麻痺してしまって、(またかよ…)と思うほどで、驚きも何もなくなってしまったような感じでした。




映画は星☆☆☆とさせて頂きます。


それにしてもダイアン・キャノンがうるさすぎる(笑)