2019年2月2日土曜日

映画 「ラッキーナンバー7」

2006年 アメリカ。






空港の待合所は閑散としていて、ズラリ並んだベンチには、居眠りしている黒人の女性しかいない。


そこに、若い男がやってきて腰かけた。


ボーッとしていると、いつの間にか男の側には車椅子の中年男(ブルース・ウィリス)がいて、話しかけてくる。



「《カンザス・シティー・シャッフル》を知っているかね?」


若い男がキョトンとしているのもお構い無しに、ずっと話してくる中年男。…… 20年前の話を。




―  20年前のニューヨーク。


《興奮剤》を注射して(八百長?)絶対に勝つという競走馬の話があった。


そんな噂は、一般人のマックスの耳まで入ってきた。



妻と息子がいて、ごくごく普通〜の暮らしをしていたマックスだったが、やっぱり一攫千金を夢見てしまう。(止めときゃいいのに)



ノミ屋から大金2万ドルを借りると、マックスは、絶対に勝つという馬《7(スレヴン)》に全財産を賭けた。




そうして、レース当日。


大観衆が見守る中、《7》は快走をみせ、誰もが優勝すると思っていたのだが ……… ゴール前で、いきなり転倒。



その瞬間、マックスの一攫千金の夢は全てパァーになった。


それどころか、借金していたマックスは、案の定マフィアに拉致されてしまう。


妻と息子は暗殺されて、自身も椅子に縛りあげられると、頭からビニール袋をかぶされて苦しみ悶えながら、マックス自身も窒息死させられたのである ……




「ひでぇー話だ」

若い男がつぶやくと、いつの間にか目の前で話をしていた中年男の姿がない。



その中年男は、若い男の後ろに【立っていた!】のだ。


そして、首を一瞬のうちにねじったかと思うと、あっという間に若い男は即死させられたのである。





―  場面は変わり、あるニューヨークのアパートの一室。

男がシャワーを浴びている。


鏡を見ながら怪我した鼻を気にしていると、突然チャイムが鳴った。



ドアを開けると、目の前に知らない女が立っている。


「あなた、いったい誰?」


目の前の素っ裸で腰にタオルを巻いただけの若い男に動じる事なく、女はスタスタと部屋に入り込んできた。



「ニックはどこなの? 私、向かいの部屋に住んでいて、ちょっとお砂糖を借りたいのよ」

知らない女、『リンジー』(ルーシー・リュー)は、自己紹介もそこそこに勝手にうろつきまわっている。


「あぁ、ニックは居ない。ぼくはスレヴン(??先程の競走馬と同じ名前?!)。ニックの知り合いで、来てみると部屋が空いてたもんでね …… 」


『スレヴン』(ジョシュ・ハートネット)は、突然の訪問者リンジーに、とまどいながらも淡々と答える。


変な女リンジーは、好奇心旺盛でスレヴンの事を根掘り葉掘りと聞いてきた。



スレヴンは、気取る風もなくここへ来た理由を話しだした。



失業して、家に帰ると《白蟻が異常発生?》していて立ち入り禁止。


おまけに彼女の家を訪ねていくと、浮気現場に遭遇してしまう。


ニューヨークの親友・ニックを頼って、ここへ向かう途中、強盗に財布から身分証まで盗まれて、鼻まで殴られてしまったのだと言う。



ここへなんとかたどり着いてみれば、鍵も開いてたまま。

ニックの姿はなく、勝手に風呂を拝借していたのである。



「散々で変な話ね …… 」

リンジーは、おざなりに同情してみせるが、スレヴンの方は「悪いことは続くものさ」と、どこまでも軽~いノリ。



リンジーとの会話は楽しく、しばらく話すと、笑いながら彼女は出ていった。

夜にまた会う約束をして。



そして、またまたチャイムが鳴った。


リンジーの再度の訪問かと思いきや、ドアを開けてみると、今度はガラの悪そうな二人組が現れた。


「ニックだな?」


「いや …… 僕はニックじゃないけど」


「嘘をいうな!ボスがお呼びなんだ!」


「だから、僕はニックじゃ … 」

言うが前にスレヴンの顔面には(ボッコリ!)パンチ!

殴られた。



そうして、二人組に捕まれると、裸にバスタオル一枚のまま、外の車に放り込まれた。



車はしばらく走ると、ニューヨークの高層ビルの前へ。


二人組の男に挟まれたまま、エレベーターに乗りこむと、最上階まで一気に上がっていく。



豪華な広い応接間。



防弾ガラスの窓際には、歳をとった黒人が立っていてスレヴンを見るなり、「ニック・フィッシャー君だな?」と囁いてくる。


この部下にして、このボスあり。


『ボス』(モーガン・フリーマン)にしても、スレヴンの言い訳には耳も貸さず、はなからニックと決めてかかっている。


「君はノミ屋に借金が2万ドルある。で、そのボスは私だ。君には私の命令を聞いてもらおう」


ボスの依頼は、ライバルのマフィアで、向かいのビルに住んでいるという『ラビ』という男の息子を暗殺する事だった。



数日前、自分の息子を狙撃されて殺されたので怒り心頭。

恨みもあって、その復讐をスレヴンにやらせるつもりなのだ。



スレヴンがいくら、

「自分はニックじゃない!人違いだ!!」

と言っても、ボスには、まるで逃げ口上にしか聞こえない。



マフィアならではのドスのきいた脅しで、

「君に選択権はない!断れば《死》あるのみだ!」

と有無を言わさない。



それだけ言うと、ボスは部下と共にスレヴンを下がらせた。




家に返されたスレヴンだったが、暗殺の期限は3日間。


人違いからとんだ事になったものである。




しばらくうなだれていると、ノックと共に、さっきのリンジーが、ひょっこり入ってきた。



そして、裸にバスタオル一枚のスレヴンを見ると、あきれ顔で、


「まだ、洋服着てないの?」

と言うのだった ……








この映画でも、既に十数年前なのか ……



この映画、前半はこんな感じで、やや緩いコメディー調に進んでいくのだが、

後半になるとガラリと様相が変わって、緊迫した雰囲気が一挙に漂ってゆく。(↑上記の絵面のように)



『ボス』(モーガン・フリーマン)の依頼を受けながらも、ターゲットである『ラビ』(ベン・キングスレー)の方からも、逆に殺しの依頼を強要されたりするスレヴン。




二人のマフィア同士の殺人依頼に挟まれて、さぞや右往左往ジタバタするのかと思いきや……そんな風にならないのが、この映画の面白いところ。



予測外の、とってもハードな復讐劇が待っているのである。(あ~、これ以上はネタバレになるしなぁ~、でも言いたいなぁ~)




私は、この映画を気に入ってる。



前半に散りばめられた伏線が、後半、キチンと回収されていく様はお見事!


謎解き好きの自分には、「ほぉーっ …… 」と膝をたたくほど感心した。




この監督ポール・マクギガン、最近はとんと見かけないが、同じジョシュ・ハートネット主演で『ホワイト・ライズ』という映画も撮っていて、それも良く出来たサスペンスでした。




それにしても、このジョシュ・ハートネット

この映画以降、とんと姿を見なくなったが、しばらく休業していたらしいのだ。


なんでも、映画スターの生活に、すっかり疲れてしまい、本人曰く普通の生活がしたかったらしい。(その間、『スーパーマン』やら、なんやら、オファーがあったが全て断り続けたらしいが←(正解!『スーパーマン』なんて引き受けなくて良かったよ))



最近、ようやく復活して、2017年『マイナス21℃』なる映画に出演している。(まぁ、スターも大変だ。しかもこんだけイケメンだしね)



ブルース・ウィリスが寡黙な殺し屋役で、主役ではなく2番手にまわっているが、これも中々良い感じ。


ルーシー・リューは …… まぁ、とにかく頑張ってます(笑)。(好きな人は好きなんでしょうね )




映画は星☆☆☆☆です。


賭け事は、負ける事を考えてホドホドに。

それと、《人違い》には充分気をつけましょうね。