1976年 カナダ、フランス、アメリカ合作。
丘の上に建つ白い家で、13歳の少女リンが、たった独り、自分の生活を守る為に、周囲の大人たちを向こうにまわして闘うサスペンス映画。
リンを演じたのが、当時、13歳~14歳くらいのジョディ・フォスターだった。
この、子供の時の顔と、『羊たちの沈黙』のジョディ・フォスターが、自分の中では、全然合致しなくて、「あ~、あれ同一人物だったんだ…」と、だいぶ経ってから知るという。(なんせ女性は変わりますからね (笑) )
この映画も、昔、日曜洋画劇場などで、よく放送されていた。
近年、その時の吹き替えが収録されたDVDが発売され、再見する事ができたのだが、リンの吹き替えをしていたのが、あの女優の、仙道敦子(せんどうのぶこ)だと知って、また驚いた。
放送当時、中学生でリンに近い歳だった自分は、大人相手に一歩もひるまず立ち向かう姿に、
「やっぱりアメリカ人は強い。幼い日本人に比べて、精神的にも大人なんだ」
と素直に感動した記憶がある。
リンの母親は、リンが幼い頃に、よその男と駆け落ちして家を出ていった。
その後、作家の父親と二人で暮らしていたが、その父親も、とうとう癌になる。
死期が近づいた父親は、ニューイングランドの閑散とした、丘の上に建つ白い家を、3年契約(前払い)で借りると、リンと共に引っ越してきた。
父親は、同年代と比べて早熟で聡明に育った娘を見て、「この子は、世間の狭苦しい型にはめては、とても生きていけない。」と思い、「自分が死んだ後、どうすればいいか……」と計画を練り始める。
リンにそれを、徹底的にレクチャーした後、いよいよ死を予感した父親は、自分の遺体が簡単に砂浜にうちあげられないよう、満ち潮を計算して海に身投げをした。
もしも母親が訪ねてきたら、「この白い粉をコーヒーに入れなさい」と言い残して…。
父親の予言どおり、しばらくすると母親がやってきた。
奔放で好き勝手してきた母親は、昔とちっとも変わってなかった。
リンは父親の遺言に従い、コーヒーに白い粉を入れて、母親にふるまった。
母親は、「アーモンドの味がする」と言うと、即、息絶えた。リンも知らなかった白い粉の正体は《青酸カリ》だったのだ。
そして遺体を地下の貯蔵室に隠すと、その上にマットを敷き、テーブルを置いて、リンの平穏な隠匿生活が始まったのだった……。
だが、これだけ念入りに練った計画だったのだが、父親の唯一の誤算は家主の素性を調べなかった事。
それくらい、この家主は酷すぎる。(もっとマシな家主の家もあっただろうに……)
●フランク・ハレット(マーティン・シーン)……家主ハレット夫人の息子。
結婚して子供がいるのに、13歳のリンに欲情して近づいてくる変態小児愛者。
残酷さも持ち合わせていて、リンのペットのハムスターを籠から取り出すと、煙草を押しつけて、なぶり殺す救いようのない根っからのイカれ野郎。
●コーラ・ハレット(アレクシス・スミス)……変態フランクの母親で、鬼のような形相をしたクソババア。
勝手にやって来て、庭の果物をもいで、どんどん籠の中に詰め込んだかと思えば、ノックもせずにズカズカ家に上がりこんできて、やりたい放題する。(こんな家ヤダ。絶対に借り手がつかないだろう)
「このテーブルは、ここなの!!」
「これは、ここから動かさないでちょうだい!!」
ちゃんと家賃を払っているのに、少しのズレも許さず、高圧的な凄い剣幕でがなりたてるクソババア。
「ここは私の家よ!」リンが叫ぶと、
「生意気な子ね!あなた学校は?!今度の教育委員会で問題にしなくてはいけないわね!」
「一体何の御用ですか?」
「あたしが、用事もなしにノコノコやってきたと思ってるの!!地下の瓶を取りにきたのよ!」
瓶が置いてある地下室の蓋に、マットとテーブルを置いてあるのを見ると、剣幕はエスカレートして、さらにヒートアップ。
「邪魔なこのテーブルをどかしなさいよ!!」
リンが黙っていると、
「何て子なんだろう!この子は!覚えておきなさい!!」ドアをバタン!と閉めて出ていった。
だが、これで終わらない。
初めは下手にでていたリンも、あまりの傍若無人のクソババアの振舞いに、いい加減、頭にきていた。
「ここへ私の息子が来たらしいわね!なんて言ってたの?!」
「息子さん、私の髪がキレイって褒めてくれたわ」
「他にはなんて言ってたの?!」
「警察が、『あの男に注意するように』言ってたわ」
「あの警察官はなんにも、分かってないのよ。あんたの生意気なその言い方は、何なの?!」
「息子さんが、そんなに心配なら紐でも縛って監禁しておくべきなんだわ」
バチンッ!とハレット夫人の平手打ちが、リンの顔面に炸裂する。だが、泣きもしないリンに、クソババアの頭から湯気が出る。
「出ていけー!この家から出ていけー!!」
「ここは私の家よ!」リンも負けずに応戦するが、クソババアは、馬鹿力でテーブルとマットを、勝手に持ち上げだした。
「やめてー、やめて!」リンの制止も聞かず、勝手に地下室の蓋を持ち上げて、支え棒を咬ませると、地下に入っていく。
そして、地下から、「ギャアーッ!」の金切り声の悲鳴がきこえた。
クソババアは地下で何を見たのか、慌てて階段を上がってくるが、その時、支え棒が外れて、重い蓋が頭に、ガツンと直撃。
しばらくして、リンが蓋を開けて地下を、そーっと覗いて見ると、血まみれで、カッ!と目を見開いて死んでいるクソババァの姿が、そこにはあったのだった……。
こんな家主と変態息子の家を借家だろうが、家賃が安かろうが、自分なら絶対に借りない。
それくらい、この二人のインパクトが、強すぎて、この映画といえば……クソババアと変態息子ってイメージだった。
もちろん、リンの味方の警官や、手助けをしてくれる優しいマリオもいるにはいるのだけど…。
「白い綺麗な家」には、「邪悪な黒い家主」が付きものなのか。
もし引っ越しする場合は下調べは念入りに。そしてご注意を。
星☆☆☆☆。