広告代理店の社長『ロジャー・ソーンヒル』(ケーリー・グラント)は、偶然立ち寄ったホテルで、不審な2人組に銃口を突きつけられた。
「ジョージ・キャプランだな?一緒に来てもらおうか」
「ジョージ・キャプランだな?一緒に来てもらおうか」
どうも『キャプラン』なる人物と間違われたロジャー、………それにしても、いきなり銃口を突きつけてくるとは…。
不審な二人組は、ロジャーに有無も言わせず車に押し込めると、そのまま車は、どこかへと向かって走りだした。
そして着いたのは豪華な邸宅。
ドジな部下が連れてきたロジャーを疑いもせずに、はなから『キャプラン』だと決めてかかっている。
「キャプラン君、我々の計画に協力してほしいのだよ」
面識のない男から、訳の分からない提案をされても、当のロジャーには、「???」なのだ。
(もう、勝手にどうにでもしてくれ!)
ヤケクソ気味のロジャーの気持ちを、協力に否定的だと勘違いしたタウンゼントは、
「君も強情な男だね、キャプラン君」
と、言い捨てると部屋から出ていった。
タウンゼントと入れ替わりに、さっきの2人組が戻ってくる。
そして、ロジャーを押さえつけると、今度はしこたま酒を口に流し込んできた。
必死に抵抗するも、大量の酒に朦朧としてくるロジャー。
運転する車は、断崖絶壁の道路をフラフラと進んでいく。(どうも飲酒運転による事故死を狙ったようだが、相手のやり口が、なんだか、とことんマヌケいうか……)
案の定、ロジャーは助かり警察に無事に保護された。(それ見たことか!)
次の日、母親が身元引き受け人になって罰金を払うと、なんとか釈放されたロジャー。
「畜生!昨日はあんな目に合わせやがって!文句の1つも言わなきゃ気がすまない!」
母親を伴い、昨日のタウンゼント邸やって来ると、出迎えたのはタウンゼントの妻を名乗る女性だった。
「どなた?主人は国連本部へ出掛けてますけど……」
家に入れてもらうと、昨日、棚にあった大量の酒は、全部本棚に変わっている。
狐につままれたような顔のロジャーに、一緒についてきた母親も困惑している。(この子、本当に大丈夫かしら?)
それでも、諦めきれないロジャーは、今度は、昨日、勘違いされたホテルへとやってきた。
「『ジョージ・キャプラン』だが、部屋の鍵をくれないか?」
受付の女性はロジャーを疑いもせずに、「どうぞ、キャプラン様」と鍵を渡してくれた。
(なるほど、『ジョージ・キャプラン』なる人物は、本当に実在していて部屋を借りていたようだ……)
エレベーターで上がると、キャプランなる人物が借りていた部屋へと入ってみる。
閑散とした部屋のクローゼットには、キャプランの物かと思われるスーツが掛けられている。
ズボンをあててみると、だいぶ裾が短い。
「こんなチンチクリンの小男に、自分は間違えられたのか………トホホ……」
おもわず「プッ!」と、吹き出してしまう母親。
(いったいジョージ・キャプランとは何者なのだ……?)
あきらめて、部屋を後にしたロジャーと母親は、エレベーターに乗り込んだ。
そこへ、昨日の拉致した、あの2人組が、他の客たちと一緒に乗り込んできたのだった。
ロジャーは隣の母親に、ボソボソ声でそれを教えると、
「あなたがた、ほんとうに息子を殺しにきたの?」と声に出してしまう母親。
殺し屋たちが笑い出した。
他の客たちも笑い出した。
母親も笑い出した。(困った時は、「とりあえず笑って誤魔化せ!」ってのは万国共通なのか)
「この馬鹿笑いの隙に……」エレベーターの扉が開くとロジャーは飛び出した。母親には後で電話すると言い残して。
ロジャーはタクシーを拾うと、今度は『国連本部へ』と運転手に命じた。
― そして国連本部。
その場所に、レスター・タウンゼントはいた。
だが、目の前の男は、昨日の男とは似ても似つかない男で、「誰?」ってな具合、全くの別人であった。
「あの~失礼ですが、本当にタウンゼントさんですか? 奥さんに聞いてやってきたのですが…」
「何を言ってるのかね君は? 私には妻はいないが」
「そんな……」唖然とするロジャー。
その時、物陰からタウンゼントの背中めがけて飛んできたナイフ。
タウンゼントは絶命して倒れこみ、それを支えながら、おもわずナイフを引き抜いてしまったロジャー。
異変に気がついたホールの人々が、叫び声をあげた。
「キャアアーーー!!」
ホールにいたカメラマンたちが、ナイフを手に取るロジャーに向けて、一斉にシャッターをきる。
つくづく、間の悪い男、ロジャー。(厄年なのか?)
こうして殺人の汚名をかぶり、ロジャーはその場から、スタコラサッサ。
こうして殺人の汚名をかぶり、ロジャーはその場から、スタコラサッサ。
《間違えられた男》が身に覚えのない罪をきせられて、逃亡しながらも自身の潔白をはらすために奔走する。
よほど、このテーマが好きなんでしょうね~
何度も何度も、この手の映画を作っています。
何度も何度も、この手の映画を作っています。
そして、この『北北西に進路をとれ』は、その集大成。
上映時間も2時間を越える137分という長さだ。
でも、最初に言っておくが、この映画には真面目さなんてものを求めちゃいけません。
場面展開が、とにかくクルクル変わり早いので、それを楽しむ事。
ケーリー・グラント演じるロジャーの気持ちになって、逃亡の旅を素直に楽しみましょう!
この後も、
国連本部の逃亡から→列車→トウモロコシ畑を複葉機で追われる→南ダコタ・ラピットシティの大統領の巨大な顔の彫刻………なんて感じで、次々と場面が変わっていく。
まるで、観光案内のような映画なのである。
国連本部の逃亡から→列車→トウモロコシ畑を複葉機で追われる→南ダコタ・ラピットシティの大統領の巨大な顔の彫刻………なんて感じで、次々と場面が変わっていく。
まるで、観光案内のような映画なのである。
ただ、当の主人公ケーリー・グラントは大変だったらしいが。
めまぐるしく変わる場面、もう気持ちが追い付かずに、映画中盤まで訳が分からず演じていたというのだから。(それでも、ちゃんと演じてるんだからエライよ、あんた!)
列車で出会う美女は、エヴァ・マリー・セイント。
こんな汚名をきせられて、あたふたしていても、美女とは余裕で恋愛しちゃうロジャー。(現実では、こんな夢みたいな事がおきるはずもない。逃亡犯と恋愛する美女なんてね)
敵役には、名優ジェームズ・メイソン、マーティン・ランドー。
敵としては、だいぶ、おマヌケな悪党たち。(ヒッチコックがスパイ映画を撮ると、敵は、ど~しても《お馬鹿さん》になってしまうのは、もはや定石。ご愛敬として観てやってください)
ロジャーは危険な目にあっても死なないし、全く怪我なんてのもしない。
ロジャーは危険な目にあっても死なないし、全く怪我なんてのもしない。
ちゃんと逃げ道が用意されてるし、安心して観ていられます。
冒頭に少し書いてみたモノを読んでもお分かりのように、これは、ある意味、本当にご都合主義だらけの映画なのである。
でも、それでいいのだ。
これは夢物語。
でも、それでいいのだ。
これは夢物語。
ヒッチコックが思い描く夢なのだから。
いつだってヒーローは、最後には無罪を勝ち取り、美女の愛も手に入れる。
いつだってヒーローは、最後には無罪を勝ち取り、美女の愛も手に入れる。
観る側は、ただ、それを思う存分、茶化して楽しめばいいのだ。
贅沢な娯楽に徹した、現実ではありえないような物語。
私は、それなりに楽しめました。