2008年 イギリス、アメリカ合作。
名家ウィルハーン家の当主ラルフは、使用人のクララを、ほんの火遊びで妊娠させてしまった。
だが、ラルフにしたら相手は只の使用人の娘。
罪の意識さえ無く、別の女性と結婚してしまう。
悲観したクララは身籠ったまま、可哀想に自殺してしまった。
だが、不倫の代償は高くつく。
これに怒ったのは、当然クララの母親。
しかも!なんと!彼女は『魔女』だったのだ。
「次にウィルハーン家に産まれてくる娘は《豚の顔》になれ!」と呪いまでかけてしまった。
ただし、呪いを解くには彼女を本当に愛する事ができる名家との結婚だけ………こんな条件をつけて。(変わった呪いだこと)
だが、魔女の呪いも、そうそう巧くいかない。
この後にウィルハーン家に産まれてくる子は、幾代も全て男の子ばかりだったのだ。(この辺り、魔女にとっては、「キーッ、なんでじゃ~?!」の心境だろう)
そして、時は流れて ―
『フランクリン・ウィルハーン』と『キャロル』(キャサリン・オハラ)の間に、待望の娘が誕生したのだ。
豚の耳に豚の鼻をもった娘が。(魔女も、やっと「ヤッター!」の歓喜の声)
産まれた我が子を見て、「ギャアアーーーーッ!」と卒倒してしまうキャロル。
整形手術も医者に、「不可」と言われて途方にくれる両親。
だが、どんな子でも自分が産んだ子で可愛くないわけがない。
その日から、母キャロルの、命がけの闘いの日々が始まるのだった。
外敵から、娘のペネロピを守る為には何だってする。
名家の娘の写真を一目でも撮ろうと、マスコミは常に待ち構えているのだから。
化粧棚に、こっそり隠れるほど小さな『レモン』なんてのがいるくらいなのだから本当に油断できない。
「こうなりゃ、もう、娘が死んだ事にするしかない」と嘘の葬式まであげてしまう始末。
こうして、幼いペネロピは家から一歩も出られず、外界から完全に遮断されて成長していった。
そして、18歳を過ぎると、秘書のワンダが雇われて本格的に花婿探しが始まる。
何人も何人も…。
だが、『ペネロピ』(クリスティーナ・リッチ)の顔を見た途端に、
「豚人間だぁぁーーー!!」
と叫びながら逃げていく。
それを執事のジェイクが、全速力で追いかけて連れ戻し「他言無用」の誓約書を書かせる。
今日も、2部屋の間にマジックミラーの鏡をはさんでお見合いが始まった。
名家の息子『エドワード』(サイモン・ウッズ)が、部屋に通される。
しばらくは順調だが、隣の部屋からペネロピがヒョッコリ現れると、いつものように「豚人間だぁぁぁー!」と叫びながら逃げていった。
ペネロピは(またか……)と思い、もう慣れっこになっているのか、とっとと引き揚げる。
執事のジェイクが全速力で追いかけるが、思ったより、このエドワードの逃げ足が速くて取り逃がしてしまった。
「ハァハァ……奥さま、すみません」
ジェイクの言葉に、(キィーーッ!)ヒステリーをおこしたキャロルは、秘書のワンダを連れて飛び出すようにエドワード捕獲に向かった。
だが、時、既に遅く。
エドワードは一目散に、あろうことか警察署へかけ込んでいたのだった。
「刑事さん!あのウィルハーン家の豚人間を、即刻逮捕してください!!」
「あんた、一体何言ってんの?その人が何か罪でも犯したの?」
「だって顔が、豚人間なんですよ!!」
「顔が、まずくて逮捕するなら、ニューヨーク中の人を逮捕せにゃならんよ」(おっしゃる通り)
変人扱いされたのは、むしろエドワードで、「おい!こいつを一晩留置しておけ!」と引っ張られていった。
だが、それを、あの記者である『レモン』が嗅ぎつけた。
「やっぱり!娘が死んだなんてウソなんだ!」
恨みがあるレモンは、エドワードから事情を聞くと、ギャンブル依存の売れないピアニスト、『ジョニー』(ジェイムズ・マカヴォイ)をスパイとして送り込む計画を立てた。
『マックス』と名乗らせて、次の集団お見合いへと送り込むのだ。
そうして、またもや始まったお見合い会。
今回は、キャロルの「数撃ちゃ当たるだろう!」考えで候補者たちが大勢並んでいる。
もう、ペネロピは面倒くさくて、直ぐ様、顔を出した。
案の定、男たちは叫びながら逃げていった。
「ヤレヤレ…………」
誰もいなくなったと思い、立ち去ろうとしていた瞬間、隣の部屋のソファーの陰から、スックと立ち上がる男の影。
そう、ペネロピの顔を、まだ見ていないジョニー゛マックス゛だけが、一人だけ残っていたのだった………
ファンタジー、コメディ、ラブロマンスありの贅沢な映画。
逆バージョン『美女と野獣』といったところか。
とにかく豚鼻のクリスティーナ・リッチが可愛らしいです。
ペネロピとジョニーは思いのほか、意気投合する。
マジックミラー越しの会話も弾んでいき、初めてペネロピも、
(この人なら……私を見ても驚いて逃げたりしないかも……)なんて期待をよせてしまう。
意を決して、ジョニー゛マックス゛の前に姿を現す決心をしたペネロピ。
だが、結果は………
やっぱり玉砕!
それでも、諦めきれないペネロピは、自ら初めて、
「結婚して、マックス!」と懇願するのだが、名家の息子ではなくペネロピを騙して付き合っていたジョニーは、自分では呪いを解けないと思って、渋々立ち去ってゆく。
憐れ、一人取り残された可哀想なペネロピ。
階段に座り込み、手すりごしに悲嘆の涙をポツリと流す。(たとえ豚鼻でも、このシーンの胸を切り裂かれるような悲しみよ!こっちまでジンジン悲しみが伝わってくる。この映画の名シーンである)
事は、《美女と野獣》のように、キスをして元の姿に戻り、ハッピー・エンドになるほど簡単ではないのだ。
ペネロピは失恋を乗りきり、自力で呪いを解くために街へと出ていくのである。
初めて見る街並み、初めての親友(リース・ウィザスプーン)、始めて飲むビールなどなど………
そして、卑下していた姿を、自らさらけだす。
その勇気にマスコミや人々も感銘をうけ、ドンドン好意的になっていく。
そうして………
「今の自分が好きなの!」
と、全てを受け入れて叫ぶ時、やっと呪いは解けるのである。(呪いをかけた魔女も、コレにはビックリする!)
勿論、呪いが解けたペネロピも可愛いのだが、母親のキャロルは、
「これでもっと鼻を高く整形できるわね」
と、空気の読めない余計な一言をポツリ。(終始、この映画のキャサリン・オハラは笑えます)
豚の鼻をマフラーで隠して、キラキラした冬の街並みを散歩するペネロピ。
冬の、この時期にはピッタリの映画だと思います。
星☆☆☆☆。
※たまには、こんな映画を、地上波でクリスマスに放映すればいいのにね……。