1952年 アメリカ。
10時35分、丘の上に人相の悪そうな3人のガンマンたちが集まってきた。
3人は、集まると、ハドリーヴィルの町中を進んでいく。
その姿をみつけて、ざわつく町の人々。
ある者は、仕事を放り出して家に逃げ込み、道を通りすぎる老婆は、胸で十字をきる。
床屋は窓越しに、見える3人に震えあがる。
3人は、町外れの駅に向かった。
今日、3人の仲間で、一番の悪党であるフランクが釈放されて、正午の列車でやって来るのだ。
(見ていろよ……兄貴のフランクが戻ってきたら、町中で大暴れしてやる!)
フランクの弟、ベン・ミラーはニヤリと笑った。
ちょうどその頃、町の保安官『ウィル・ケーン』(ゲーリー・クーパー)は『エイミー・ファウラー』(グレース・ケリー)と、皆に祝福されて結婚式をあげていた。
保安官の任務も今日で終わり。いずれは、別の保安官がやって来てお役御免だ。
そこへ駅舎が駆け込んできた。
「フランク・ミラーが釈放されたぞ!」
その言葉にざわつく人々。
「それだけじゃないんだ!駅にフランクの弟のベン・ミラーと仲間たちがいるんだ! フランクが乗る列車が、12時に着くのを待っているんだ!」
駅舎は震えあがっている。
5年前にウィル・ケーンが逮捕した極悪人フランク・ミラー。
そのフランクが、なぜ釈放されたのだ?
当然、死刑になるはずだったのに………。
そして、帰ってきたフランクは、きっとウィルに復讐するつもりだろう。
「君たち二人は早く町を出るんだ!」
町の連中は、ウィルの身を案じて、結婚したばかりのエイミーと一緒に、追いたてるようにして、馬車で送り出した。
でも………。
(本当に、これでいいんだろうか)
ウィルは馬車を引き返した。
そして保安官事務所に帰ってくる。
「どうしたのよ?」エイミーは気が気じゃない。
「この町の人々を見殺しにできない」
納得できないエイミーは、懸命に説得するが、ウィルは頑として首を振らない。
たまらず、エイミーは、事務所を飛び出した。
(きっと、町の仲間たちが力を貸してくれて、皆で力を合わせれば、無法者たちを追い払える………)
ウィルは、そう思いこんでいるのだが……事は簡単には進まなかった。
極悪人を乗せた列車の到着まで、後、数分………。
監督はフレッド・ジンネマン。
劇中で流れる「ハイヌーン(原題)のテーマ」は心地よく響く。
アカデミー歌曲賞を受賞した。
そして、主演のゲーリー・クーパー(この時51歳)も見事、この作品で、2度目のアカデミー賞主演男優賞に輝いた。
ゲーリー・クーパー ……身長は190cmの長身で若い頃(映画モロッコなど)は、超ハンサムだった。
さすがに50を過ぎて、少し枯れているが、眼光は鋭く渋みを増している。
ゲーリー・クーパーが演じたウィル・ケーンは、多少は頑固だが、情けなさもあり、時折《弱気》もみえるような中年の保安官だ。
そんなウィルの『弱気がみえる』のが、次のシーンである。
助っ人を当てにして戻ってきたウィルの願いは簡単に打ち砕かれた。
やはり世間は甘くなかった。
みんなが、みんな、「俺たちは関係ない!」を決めこんで知らぬ顔なのだ。
みんなが、みんな、「俺たちは関係ない!」を決めこんで知らぬ顔なのだ。
それほど、悪漢フランクの脅威は凄まじかったのだ。
判事は早々に町を逃げ出した。(バイバイ~後、ヨロシク!)
保安官助手にも。
知り合いを頼っていけば居留守扱い。(誰も居ませんよ~)
教会にまで乗りこんでいって、助っ人を募るが、集まった人たちは文句タラタラ。
あーだ、こーだ、逃げ口上ばかりである。
結局、誰一人味方を探せなかったのだったウィル。(やっぱりね、でもこのウィルも、いい歳をして考えが浅いというか)
ひとり淋しく、保安官事務所に帰ってきたウィルは遺書なんてのを書きはじめた。(あらら……そこまで?)
大の大人なのに、皆に見棄てられて、もう、今にも泣きそうである。(え~っ?泣くの?泣くの?クーパーが?でも、ウルウルしてます)
でも、でも、
「行かなければ!」
男の意地と、ありったけのかき集めた勇気で、人っ子ひとり居ない町中に出ていくウィル。
そこには、フランクを交えた悪党たち4人の姿が。
ボロボロになりながらの撃ち合い!
なんとか一人倒し、二人倒し……。
馬屋での銃撃戦の後、肩を撃たれて、絶体絶命のウィル。
そこへ助けに戻ってきたエイミー。
(見捨てられるものですか!)
そうして、あと一人、フランク・ミラーだけが残った。
フランクは隙をついてエイミーを人質にとる。
「出てこい!ウィル・ケーン!」
殺されると分かっていながらも、フランクの前に現れたウィル。
その時エイミーは、フランクの腕を咄嗟の機転で振りほどいた。
ウィルの銃は、その機を逃さずフランクを一発で仕留めたのだった!(カッコイイ!!)
極悪人たちが、全員倒されると、隠れていた人々が通りに出てきた。
「やったな、ウィル!」
「さすがだな、保安官!」
そんな群衆に厳しい目を向けるウィル。(こいつら、今頃ノコノコ出てきやがって……)
エイミーを抱えると、胸の保安官バッジを投げ捨てる。
そうして二人は、馬車に乗り込むと町を去って行くのだった……。(こんな町に2度と戻ってくるかー!)
で、映画は終わるのである。
この《弱気》をみせるシーンが、それまでの完全無欠のヒーロー像とは違って、どこにでもいる等身大のオジサンとして映り、我々、庶民にも親しみやすく感じたのだった。
アカデミー賞も納得の演技である。
それにしても、この最後のシーンに似た映画を思い出さないかな?
そう、『ダーティハリー』…。
ハリーが、最後、スコルピオン仕留めて、警察バッジを捨てるのは、この映画のオマージュである。
このように、この映画は、後年、様々な映画や俳優たちに、影響を与えたのだった。(特にクリント・イーストウッド)
そして、他にも探してみれば、似ている映画が見つかるかもしれない。
星☆☆☆☆☆です。