1974年 アメリカ。
設計士『ポール・カージー』(チャールズ・ブロンソン)は、愛する妻『ジョアンナ』とハワイで休暇をとっていた。
海辺でイチャイチャしながら、笑いあう中年夫婦。
― そうして、場所は変わってニューヨーク。
犯罪事件が後を経たない治安の悪さを連日ニュースは流している。
ハワイから帰省したジョアンナと、娘の『キャロル』は、近くのスーパーマーケットに買い物に行っていた。
気味の悪い3人組につけられているとも知らずに ……
二人が家に帰りつくと、すぐに鳴り出すインターホーン。
「スイマセン、お届け物です」
何の気なしにドアを開けると悪党どもがいきなり乗り込んできた。
「やめてー!」キャロルの叫びも虚しく、悪党たちは力ずくで服を裂き、事が済むと笑いながら出て行った。(ケダモノ三人衆)
そんな事になっているとは、つゆ知らないポールは会社で黙々と仕事中。
娘婿のジャックから電話が掛かってくる。
「お義父さん、大変です!お義母さんとキャロルが …… !!」
「なんだとーー?!」
慌てて病院に駆け付けると、妻は酷い有様で既に亡くなっていた。
娘のキャロルも、レイプのショックで精神はボロボロ。
「ど、どうして?どうしてこんな事に …… 」
その後、娘のキャロルは退院したが、レイプの後遺症は続いている。
娘婿のジャックが献身的に介護するものの回復の兆しは見られない状態だった。
ポールの絶望は、時間と共に怒りに変わったが、そんな気持ちをどこへぶつけてよいのやら、それをもてあます毎日 ………
そんな折、上司の粋な計らいで、アリゾナの田舎町ツーソンへの出張を命じられるポール。
《ツーソン》……自然に囲まれて犯罪も殆んどない町 ……
広大な敷地に、人が心穏やかに住めるようなニュー・タウン計画の設計をポールは依頼されたのだ。
ひと目でポールを気に入ったエイムズは、町の西部劇のショーに連れて行く。
「ここじゃ、昔の開拓時代のように皆が拳銃を携帯している。だが不思議に犯罪事件も少ないんだ」エイムズは言う。
夜間、ポールが事務所で設計をしていると、エイムズが、またもやぶらりと現れた。
「どうだい?気分転換にガン・クラブに行ってみないか?」
と誘い出したのだ。
朝鮮戦争の時、医療部にいたポールだが、死んだ父親がガンマニアという事もあって、それなりの手ほどきを受けていた。
エイムズに渡された銃を受け取ると、標的の的を射ぬくように狙うポールの目。
見事に一発で命中させると、エイムズはしこたまビックリする。
「今度はコルトを貸してくれないか?」
とポールが進んで言い出した。
次々に正確無比な射撃をみせるポール。
チャールズ・ブロンソンの傑作と言われている『狼よさらば』、久し振りに観ました。
原題は「Death Wish」。
デス・ウィッシュ=死を願う、だ。
ブロンソンの当たり役になったポール・カージーのシリーズは、その後も作られ続けて全部で5作。
近年は、ブルース・ウィリス主演でリメイクされてもいる。(こちらは設計士から外科医に変更されているが)
果たして、観ていないのでリメイクの方は成功したのかどうか ……(最近、やや落ち目のブルース・ウィリス)
70年代のニューヨークは治安の悪さが社会問題になっていた。
強盗、殺人、レイプなどは日常茶飯事。
路地裏や地下鉄では、それが毎日繰り返されていた。(近年は至るところに監視カメラができて少しは減少してきたが …… それでも【ニューヨークの地下鉄】=【恐ろしい】のイメージは今でも残っている)
そんな時代背景があったからこそ、警察ではなく、普通の人ポール・カージーが自ら悪を裁くスタイルはすんなりと大衆に受け入れられたのかな?と推察する。
「悪党は俺が裁く!狼よさらばだ!」
なるほど、ブロンソンの全盛期では、中々カッコいい台詞を吐いている。
でも、この映画にはおおいに不満もある。
てっきり銃を手にとったポール・カージーが、妻を殺して、娘をレイプした犯人3人組を探し出して、血祭りにする【復讐劇】になるかと思いきや、全くそんな展開にはならないのだ!(アレレ? …… この冒頭の「これでもか?これでもか?」の悲劇はいったい何だったの?)
ただ、自ら世直しの為に、夜にたむろするような別のチンピラたちを無差別に殺すだけなのである。(???)
コレじゃ、ダメでしょ!
今、観れば、拳銃を撃つ快感を覚えたポールがストレス解消に、ただ殺しを楽しんでいるようにも見えてしまう。
悪党たちを殺すのも、普通の人ポール・カージーなら、ちゃんとした《復讐》という理由づけがほしいところ。
でも、日本では、当時のブロンソン人気と、上手い邦題のつけ方で今まで奇跡的に残っているような稀な映画なのである。
まぁ、その後も脈々と続いてゆくシリーズの第一作目として見るなら、大負けに負けて及第点。
星☆☆☆ってとこにしとくかな。(甘いか?)