2019年1月11日金曜日

映画 「激流」

1994年 アメリカ。







ボストンの運河を、女性が一人ボートを漕いでいる。



元川下りのガイドをしていた、『ゲイル』(メリル・ストリープ)だ。


ゲイルは、設計士の夫『トム・ハートマン』(デヴィッド・ストラザーン)、息子のローク、小さな娘のウィラ、愛犬のマギーと、何不自由ない普通の暮らしをしていた。



ただし、夫のトムが根っからの仕事人間で、クリスマス以外は、ほとんど家に居ない母子家庭状態だが……



でも、(今度の休暇は、息子のロークの誕生日。故郷のアイダホで、思う存分に川下りを体験させてあげるのだ。あの人もきっと一緒に来てくれるはず……)と気持ちを立て直す。




だが、そう思惑どおりにいくのか?




―  その夜。


「悪い急に仕事が入ってしまって……」



ゲイルは、わずかな期待を裏切られて、ガッカリ。




結局、トム抜きで家族は、ゲイルの両親がいるアイダホへとやってきた。



もはや、離婚の2文字が頭にチラチラと浮かぶゲイルは、母親に相談するのだが、


「何を甘いことを言ってるのよ!私達の時代には離婚なんて考えられなかったわよ!」

と、猛烈に叱咤される。(そりゃ、昔の人はねぇ〜)




それでも川下りの日、夫のトムが、なんとか、仕事の都合をやり繰りして、やってきてくれた。



「ありがとう、あなた!」素直に感激して感謝するゲイル。


だが、息子のロークは、まだ、そこまで喜べない様子である。




両親に幼い娘ウィラを預けると、ゲイルとトム、ロークと愛犬のマギーを乗せた大型のゴムボートは、勢いよく川を滑り出していった。




流石に元ガイドだけあって、ゲイルの操るボートは、オールさばきなど手慣れたもの。


大自然の中、初めての川下りにロークは感激して、はしゃいでいる。




トムの方は、ここまで来ても仕事の事が気がかりなのか、どこか上の空だが………




しばらく進むと、同じように川下りをしている3人の男たちに遭遇した。


『ウェイド』(ケヴィン・ベーコン)、『テリー』(ジョン・C・ライリー)、そしてガイド役の『フランク』たちだ。



中でも、気さくなウェイドに、ロークは、すっかり打ち解けてしまう。



先に川を進んでいくウェイドたち。



だが、翌朝、ゲイルたちが通りかかると、ガイド役の姿がいない様子だ。


「俺たちを放り出して逃げやがったんだ!」

川下りに素人同然のウェイドとテリーは、途方にくれている。




プロのゲイルは、放っておけず先導役をかってでた。


だが、トムは、どこか不信な顔だ。




ゲイルも一緒に川下りをするうちに、ウェイドたちの、ただならぬ雰囲気を徐々に感じはじめてくる。


「なんか、あの二人はキナ臭い匂いがする」

「あの二人を置いて、こっそりと家族で出発しましょうよ」


トムとゲイルは相談して、いざ出発しようとしてる時……



二人の異変に感づいたウェイドは、ゲイルたちに、突然ピストルを突きつけてきたのだ。



そう、ウェイドとテリーは強盗犯だったのである。



金を詰め込んだバックをボートに乗せて、川下りで逃亡しようと計画していたのだ。



そして、ガイド役のフランクは、ウェイドたちによって、とっくに殺されていたのだった。




ゲイルの腕前をかったウェイドは、逃亡の手助けをするように命令する。



「あんたには、俺たちを無事にボートで運んでもらうぜ!」


銃口を突きつけられ、逃げ場のない家族は、もはや従うしかない。




そして、家族と強盗犯たちは、激流の渦の中、命がけの川下りに、トライするのだが……






たまに、思い出して観たくなる映画。



監督は、カーティス・ハンソン

あの『L・A・コンフィデンシャル』の監督さんである。




この映画でも、25年近く前か、……。




メリル・ストリープがこの時、45歳。

ケヴィン・ベーコンが36歳。



時は、4半世紀たったが、二人の姿が奇跡的に、あまりにも、変わらないので、そんなに昔にも思えないくらいなのだが、そう考えると、恐ろしい映画である。(陰で、もちろん努力しているだろうが)



この映画の最大の面白さは、《ガントレット》と呼ばれる激流の川下りの場面だ。




主人公のゲイルが若い時に、1度だけ成功しているが、あまりの難所の為、今では禁止区域になっている場所。




そこをウェイドたち悪党は、うまく抜けるように、ゲイルに命令するのだ。




この渦巻く激流を下る撮影が、本当に凄い。


いったいどうやって撮影したのか……


観ている我々も、ゲイルたちと一緒に、この《ガントレット》の激流を下っているような錯覚を起こさせてくれるくらいの迫力あるシーンである。




そして、この激流下りで、それまでイキがっていたウェイドとテリー、ゲイルの立場が入れ替わるのが、また面白い。




た、助けてくれ〜!(ウェイド&テリー)


もっと漕ぐのよ漕いで!漕いで!!


左にターンよ!、なにグズグズしてるの?!、次バックに漕いで!急いで!!



「さあ、これからが本番よ!いい?なにしてるの?漕ぐのよ!行くわよぉーーー!」(ゲイルは笑いながら男たちを叱咤する)



滝を直角に水面に落ちるゴムボートは、いくつもの渦の水流で、まともにオールさえも漕げない。



男たちは、ヒェーーッ!と叫び声をあげる中で、ゲイルだけは一人ケラケラと笑いながら、楽しそうなのだ。




この役を、やりきったメリル・ストリープの体力とド根性も凄いと思い、今更ながら称賛してしまう。



25年近くたっても全然古くないし、今、観ても面白い。


これも名作だと思います。

星☆☆☆☆☆