2019年1月27日日曜日

映画 「最強のふたり」

2011年 フランス。





夜半のパリ街を車が猛スピードで、走っている。

前の車の間をすり抜けながらも、加速し続けて、メーターの針は、180キロを越えた。




案の定、パトカーに追われ車は停止した。

「手をあげろ!」取り囲んだ警察が、車から出た黒人のドリス(オマール・シー)を車のボンネットに押さえ込む。


「助手席の男も出るんだ!」警察が叫ぶが、助手席の髭面の男は、微動だにせず、荒い息を吐いている。


「その人は障害者だ!、車にはステッカーも貼ってあるし、車椅子だって積んでいる。雇い主が発作を起こしたんだ」ドリスが叫ぶ。




警察が助手席の男を見ると、荒い息使いはひどくなり、口から泡を吹きはじめた。

「その人が死んだらあんたらのせいだぞ!!」

警察は、オロオロしはじめ、「よし!我々が救急病院まで先導します」と言い、ドリスも解放され、車に乗り込んだ。



助手席の男フィリップ(フランソワ・クリュゼ)は、ケロッとしている。


二人は笑い会うと車は、パトカーの先導で、再び走り出した。


車の中では、アース・ウィンド&ファイヤーの「セプテンバー」が大音量、ノリノリの二人は夜半のハイウェイを進んでいく……。






大富豪フィリップと介護人ドリスの、生まれも育った環境も違う二人の友情物語。



実話をベースに映画が作られ、瞬く間にヒットした。




でも、これをコメディのジャンルに入れていいのか、いささか疑問である。

多少は、笑いところがあっても、取り扱っている内容は切実だからだ。





主人公ドリスは、移民で、狭い団地の住宅に、母親と沢山の兄弟たちとひしめき合って暮らしている。(いつも思うのだが、なぜ?貧乏なのに子供をたくさん作るのだろうか)


そんな暮らしに耐えられず半年くらい、フラッといなくなったり帰ってきたり。(母親も「出ていけ!」と追い出しにかかる)




宝石泥棒で前科もある。

現在は失業保険で暮らしているが、給付期間がそろそろ終わりそう。

その前に、引き続き貰えるよう、3ヵ所の雇い主からのサインを貰いたいだけ。

「こんな、無学で、黒人で、移民の自分を受け入れて雇ってくれるところなんて、どこにもない」とはなから諦めている。



このシビアーな背景は、いくらドリスが、「クール&ギャング」や「アース・ウィンド&ファイヤー」の音楽が好きでも笑えない。




ドリスは、たまたま富豪のフィリップのきまぐれで世話係で雇われたが、他の兄弟や同じ様な仲間たちは、仕事もなく希望もなく、いずれは犯罪者に身を落としていくと思うのだから……。


フランスに限らず、他国の者が、移民としてやってきて、他の国で職を求める事の難しさ、困難さ………。





障害者のフィリップにも同情するが、大富豪ゆえに、それも、ドリスの暮らしてきた境遇と比べるとあまりにも恵まれすぎていている。




このフィリップという男、妻が死んだ後も、ひとり娘を省みず、事故で四肢麻痺になってからも、秘書に文通相手の手紙を書かせたりしていて、自分の事ばかり優先させていて、なぜか好きになれなかった。




人生は良い事ばかりじゃない。


人が羨む贅沢な暮らしには、いつか、必ず、それにあった代償を払う時が、きっとやってくる。


貧乏人のひがみに思えるだろうが、自分は、そう思っている。




映画のラストも余りにも出来すぎていて、自分には気に入らなかった。
(まだ見ぬ文通相手とフィリップを引き合わせるドリスなど……。)




それよりも、娘との関係の修復や、今まで、自分を支えてくれた周りの人々の優しさに気づいて、変化してほしかった。




ドリスの為といって、ドリスを解雇した後、来てくれた看護人たちに対するフィリップの態度をみれば、分かると思うが、彼自身は、何も心の成長が見られないのは明らかだからだ。



具合が悪くても、新しい介護人に、心を開かず追い払い、苦しみに耐える姿は、一見可哀想にもみえるが、只のへそを曲げた子供のようにも見えて、ガッカリしてしまった。



結局、使用人がドリスを呼び戻してしまう。



自分の意識が変わらなければ、周りも変わらない。


ドリスの介護を受けている間、フィリップはいったい何を学んでいたのだろう…。



映画は星☆☆です。

この映画が好きな方には、ごめんなさい。