2019年1月12日土曜日

映画 「三人の妻への手紙」

1949年 アメリカ。






仲良しの3人の女たちは、婦人クラブのピクニック(近所の子供たちの世話)のため、遊覧船がでる船着き場まで、それぞれ集まってきた。



ブラウンヘアの『デボラ』(ジーン・クレイン)は、農家の出だが、戦争中に海軍に入って、そこでブラッド・ビショップと出会い結婚して、3年前に、この町にやってきた。


だが、上流社会の人間たちが多いこの町では、なかなか馴染めない日々をおくっている。




ブロンドの『リタ』(アン・サザーン)は、そんなデボラを放っておけず、うまく近所に溶け込めるように、なにかと世話してくれる。


リタは、教師の『ジョージ』(カーク・ダグラス)と結婚して、双子の子持ちだが、ラジオドラマの脚本家としてバリバリ働き、ジョージの収入を遥かに上まわっている。


それゆえに、ジョージも家では、リタに頭があがらない。





そして、最後にブルーネットの『ローラ』(リンダ・ダーネル)。

太った母親と生意気な妹、それにあちこちの家で家政婦をしている間借り人で母親の友人『セイディ』(セルマ・リッター)の四人暮らし。

線路脇の家は、列車が通り過ぎるたびに、酷い揺れに悩まされていた。


ローラは、いくつものデパートを経営している社長の『ポーター』の下で働き、同時に付き合ってもいた。


でも、なかなか結婚に踏みきれないポーターを、色仕掛けで落とそうとするが失敗する。(ストッキングを破いて脚を見せたり)


だが、いざローラと別れると、ポーターは、いてもたってもいられずに家に乗り込んで求婚したのだった。(そして、いきなり大金持ちの妻)





そんな、背景をそれぞれもつ3人の妻たち。

いざ、ピクニックの為の乗船をしようという時、自転車に乗った郵便配達人が、3人宛に手紙を持ってきた。



差出人は『アディ』だ。


アディ……町一番美しく、全ての男たちを虜にしてきたアディ……。


そんなアディが今頃何の用?




3人が手紙を開く。


『デボラ、リタ、ローラ、私はこの町を去ります。 でも一人じゃない。あなたたち3人の夫の内の1人と……。』



「何なのこれ?」

「馬鹿馬鹿しい」

「冗談でしょ?ふざけてるのよ!」

口々に言う3人。



やがて乗船して船が岸を離れた。


でも3人は岸辺の公衆電話をずっと見つめている。(今すぐ電話をして夫の所在を確かめたいのだ)




デボラは、ブラッドとアディが昔付き合っていた事を知っている。『相手はブラッドなの?』


リタは、ジョージをないがしろにしてきた。そんなジョージの誕生日にアディから、レコードの贈り物が届いてきたのを知っている。『ジョージかしら?』


ローラは、ポーターが以前アディと付き合い額に入れた写真を飾っていたのを知っている。『相手はポーター?』




3人の妻たちは、ピクニックの最中も気もそぞろ。


それぞれに、今までの出来事を振り返り反芻してみるのであった……。







監督は、あの『イヴの総て』、『探偵スルース』のジョセフ・L・マンキーウィッツ



この作品もアカデミー賞作品賞、監督賞を受賞している。


次の年の『イヴの総て』と2年連続してアカデミー賞を獲った監督は、マンキーウィッツだけ。(まさにこの時期、絶好調。向かうところ敵なしだ)



そして、はじめて、この『三人の妻への手紙』を観たのだが、………さすが上手い!


やっぱりチョー面白かった!



この映画は、

「アディが『誰の夫』と駆け落ちしたのか?」

の謎解きミステリーでもある。
(人は誰も死ななくてもこれも立派なミステリーだ)




そして、恋愛映画でもあり、笑い所もちゃんと用意されている。




中でも、ローラの自宅で、母親とセイディがポーカーをしてると、電車が通る度に、振動で家中が、ガタガタ揺れて、冷蔵庫の扉がパカーンと開くシーンは、笑わせてくれる。



そんな酷い家に、ローラを訪ねてポーターがやって来ると、お決まりのように電車がガタガタ通り、またもや振動で、家中が揺れるのだが、皆が慣れたもので、シレーッとしているのに、一人ビックリ顔のポーターが可笑しい。





そして、この映画にもあの《セルマ・リッター》が出ている。(ヒッチコックの『裏窓』では看護師、『イヴの総て』のベティ・デイヴィスの世話係)



アメリカの山岡久乃みたいな名脇役のような人だ。


彼女が脇役として、出演する映画にハズレなしなのだ。



後、どんな映画に出ていたっけ?……


そのうち探して、それも、もちろん観てみるつもりである。

星☆☆☆☆☆。