2015年、2017年 インド。
巨大な水流が流れ込む滝。
その、はるか下の岩場を、矢で射られた女性が、産まれたばかりの赤子を抱えながら命からがら逃げている。
だが、足を滑らせて赤子ごと川に落ちてしまう女性。
頭まで水にのまれながらも、最期の力をふりしぼり、
『どうか、この子の命だけは…』
と水面に片手を振り上げて、赤子を持ち上げながら、女性は息絶えた。
翌朝、近くの村人たちが通りかかると、川から突き出た手にギョ!と驚く。(異様な光景だ)
村人によって赤子はなんとか救い出されたが、死んだ女性は、その直後に川下へと流されていった。
村人たちは、「子供を滝の上に返したほうがいい!」と言うのだが、村長の妻サンガは聞き入れない。
「子供がいない自分に神が授けてくれた!」と言い張るのだ
そうして、滝の頂上につながっているという、洞窟の洞穴までもふさいでしまう。
サンガはその子供に「シヴドゥ」と名付け育てる事にした。
―――― そうして、時は過ぎて25年。
「シヴドゥ」(プラバース)は、立派に成長した。
身体は筋骨粒々でムッキムキ。
顔は真ん丸で、黒々した太い眉と太い口髭。(とても25歳に見えない(笑))
そんなシヴドゥは、最近、滝の上が気になってしょうがない。
滝に登っては落ちて、それでも登っては落ちてを度々繰り返していた。
母のサンガは気が気じゃない。
村の守り神の石像に、「どうか、あの子の滝のぼりを辞めさせてください!」と水かけの願掛けをすることにした。(日本のお百度参りみたいなものか)
シヴドゥはシヴドゥで、こんな荒行をはじめた母が心配。
今度は母の願掛けを辞めさせる為に、例の重い石像を担ぎ上げはじめた。
皆が呆気に取られる中、それを担いだまま川へとドボン!
滝の下に石像を持っていってしまったシヴドゥ。
「これで守り神は、一日中、水に不自由しないさ!」(願掛け終了である)
そんなシヴドゥの足元に1つの《仮面》が上流から流されてきた。
滝登りをやめて願掛けが成功したと喜ぶサンガだったが、シヴドゥはその日から仮面に夢中。
ずっと飽きもせずに仮面ばかりを見ては、ひとり物想いにふけっている。
そしてある日、神のイタズラなのか ……
砂の上においた仮面を持ち上げると、仮面を型どった女性の顔が浮かび上がってきた。
シヴドゥは、型どった砂の顔に沿って指で長い髪を描いてみる。
そこへ目もマツゲも足してみる …………
そうして、表れ出たその顔に、胸が ズッキューン!ドッキューン!撃ち抜かれたのだ!
仮面の下に出てきた幻の顔に、たちまち恋してしまったシヴドゥ♥️。
「この顔の女に会いたいぃぃー!滝の上にあがれば、この女がいるはずだぁー!」
思いついたら即、、行動!
早速、滝登りをはじめたシヴドゥに、幻想のまだ見ぬ女が微笑みかけてくる。(フフッ、いらっしゃいシヴドゥ …… )
ターザンばりに岩をジャンプして、枝をつかみ、岩場をよじ登り、蔦から蔦へとジャンプしていくシヴドゥ。
バケモノなみの驚異的身体能力を発揮して、みるみる登っていく。(ホント人間じゃねぇよ、コイツ)
そうして、やっと滝の頂上にあがると、目の前には、一面に広がる雪景色。
そこに居た!
あの《顔》の女が!
でも剣を片手に大勢の敵と戦闘中。
並みいる敵をバッサ、バッサと切りつけている。
「死体は見つからないよう、始末しておけ!」
部下に冷たく命じるその女に、ポカーン顔のシヴドゥなのだった。
やっと評判の「バーフバリ」を観たが、観ているこっちも、ポカーン状態。
本当、スゲ~よ!インド映画!!
好きな女(アヴァンティカ)が水辺で休んで寝ている隙に、水の中からそっと近づいていくシヴドゥ。
腕にタトゥーの絵柄をササッ!描いては去っていく。(どんな愛情表現なんだろ(笑))
「誰だ?こんなイタズラをしたのは?」
私の周りに、誰か見知らぬ 変態 がいる!(そう、まさに変態である)
アヴァンティカは囮の女性を水辺に寝かせる事にした。
その現場を矢で射ろうと、木の上で待ち構えている。
そんなアヴァンティカの作戦などお見通しのシヴドゥは気配を消して、すでにアヴァンティカの頭上にいる。
シヴドゥは《ヘビ》を放った。
それはゆっくりとアヴァンティカの射る矢の先までと進んできた。
(う、動けない ……… )
そんな隙に、またもや、ササッ!と肩にタトゥーを描いていくシヴドゥ。(究極の変態だ!)
それでも雪道の足跡をたどって、アヴァンティカは、やっと犯人を見つけだした。
(こいつなの?)
アヴァンティカが不審に思ってもお構いなし。
初対面でいきなり愛の告白をしてくるシヴドゥなのである。(もう不審者以外の何者にも見えない)
「好きなんだァァー!君が!!♥️♥️♥️」
アヴァンティカは、当然、シヴドゥに剣で切りかかってきた。(当たり前だ)
だが戦闘中に(なぜか?)突然現れる神殿みたいな場所。(雪の中に????)
切りかかるアヴァンティカをよけながら、肩の防護服を脱がしていき、髪のゴムをといていくシヴドゥ。(変態行為はさらにエスカレート!)
滝で顔を洗わせると、頭にきて追ってくるアヴァンティカに、木の実で、アイライン、口紅を塗るという早業をみせる。(ヒェー!)
最後は、アヴァンティカの腰布を引っ張りながら駒回しのようにまわしていくシヴドゥ。(アレ~お代官さまぁ~!)
そこにあらわれる赤いスカート。
そうして、滝に映る自分の姿に、
(あら、あたしってこんなに綺麗だったの?)
とウットリのアヴァンティカちゃん。
そこへ、あの仮面をもったシヴドゥが現れた。
その仮面を見てアヴァンティカも、ようやく事を察する。
「あたしのためにあの巨大な滝を上がってきたの?」
となるアヴァンティカ。
そして、お互い 好き!好き!(えっ???)
恋する二人は天候も変えてしまい、周りは急にお花畑に早変わり。(エー????)
歌い、踊り、どこから調達したのか次々と衣装チェンジを繰り返す二人。
????????????
でも、ごめんなさい、私は戦いに生きる女なの。
シヴドゥのもとを静かに立ち去っていくアヴァンティカ。
舞台は急に元の雪景色に戻り、敵に囲まれてしまう運の悪いアヴァンティカ。
そこへ、シヴドゥが颯爽登場!
重たい石を担ぎ上げて、それをぶん投げた!
その衝撃で雪崩が一気に発生。
雪崩に流されて敵たちは、みるみる転がり落ちていく。
でも雪崩が強すぎて二人も危ないぞ!
咄嗟の機転で木の皮をはいでソリをつくりだす器用なシヴドゥ。
それに乗って、無事に逃げ去った二人。(ホントになんでもありなんだな)
007なみの危機を簡単に回避したシヴドゥとアヴァンティカなのだった。
不条理な世界もここまでやってくれると、トンデモなく面白くなっていく。
今まで観たこともない世界観。
本当に特殊な映画である。(特殊すぎるわい(笑))
この後、『バラーラ ディーヴァ』が治めるという《マヒシュマティ王国》にやってくる二人。
そこには鎖で繋がれた前国王の王妃『デーヴァ セーナ王妃』がいるのだ。
そんな王妃を助けようとしているのがアヴァンティカが所属している反乱軍なのである。
これにアヴァンティカに惚れてるシヴドゥが加勢しないはずがない。
さっそく簡単に救出してしまう。
だが、助け出した王妃から聞かされたのは、シヴドゥの本当の正体。
なんと!シヴドゥこそが王妃の実の息子であり、正当な王位を次ぐ者、《バーフバリ》だったのだ!
そして物語は、今の国王に殺されていた父親の敵討ちになり、佳境の第2部へと続いていく ……
巨大な黄金像あり~の、
巨大な望遠鏡あり~の、
巨大な弓矢あり~の、
全てが巨大な連続のスペクタクル劇!
いったい、いくらの制作費をかけて、こんなコメディ史劇を作り上げたんだろう。(もはや、コメディと言い切ってしまおう)
インド映画の規模の大きさにビックリすると同時に、この脚本と演出に、ポンとお金を出してしまうスポンサーに驚愕する。(日本では絶対ムリだ)
こんなロマンチストでいて、闘いなるとめちゃ強いバーフバリ(シヴドゥの本当の名前)という主人公も斬新でございました。
見終わった後、全平民のように歓喜して叫んでみたくなる気持ちも、よく分かる。
「バーフバリ!バーフバリ!バーフバリー!」っと……
でも、根は、ご覧のように、まるっきりの変態野郎である。(笑)
星☆☆☆☆☆。(長いけどオモシロイよ)