2019年3月28日木曜日

映画 「美しき冒険旅行」

1971年 イギリス。






一言でいうと、とっても変テコな映画。




父親と14歳の娘、それに6歳の弟の3人がオーストラリアの砂漠に旅行に来るんだけど ……



突然、父親がおかしくなって幼い息子にピストルを向けて、発砲する!


「お父さんが狂った!!」

姉は弟を引っ張って砂漠の中を逃げまどう。




親父はピストルを撃ちまくり、「ハハハッ!出てこい!!」と叫びながら、ガソリンをかぶって焼身自殺🔥。(ハァ?意味が分からない。本当に狂ってる?)


炎上する車の煙を遠くから見ている姉と弟。



「ねぇ、パパのところに戻らないの?」

訳がわからない弟はグズる。(観ているこっちも訳がわからないよ)


「とにかく逃げるのよ!」という少女。




次の日も、次の日も二人は砂漠を歩き続けて、もうクタクタ。

食糧はつき、喉はカラカラ。


それに追い打ちをかけるように、太陽はギラギラ🏜️と二人を照りつける。

汗すらも、もう出てこない。






そのうち弟も歩けなくなり、少女がおんぶして進んでいるが、その足どりも、だんだんと重くなってきている。



(神様…助けて………)

薄く目を開いても、ユラユラ揺れる陽炎の地平線が見えるだけだ。



いや!、まて!、その先に動くものが見える!



そして、それはどんどん、こちらに近づいてくる。

それは『人間』だ!

長い棒を持った黒い肌の少年だ。



腰布だけをまとい、棒を突いて獲物の動物を追いかけている。


そして、それを見事に仕留めると、向こうも、こちらに気がついたようだ。


少女のそばまで来ると、少年が原住民の言葉で話しかけてきた。

もちろん少女に少年の言葉は分からないが、少年の言葉はこうだった。



『ウォーク アバウトの途中だ!、どうしたんだい?』と。


言葉が理解できなくても、姉と弟は、少年の優しさを肌で感じた。

少年は二人に水を飲ませたり、狩りをして、食糧を与えてくれた。


原住民の少年がどこへ行くのか分からない…二人はついていくしかないのだ。



3人はオーストラリアの平原を旅していく ……




なんとも不思議な映画である。

説明なんて、全くありゃしない。




冒頭、何で父親が狂って弟にピストルを向けて殺そうとしたのか、そして自分も自殺したのか。



そもそも、この旅行は何の為にやってきたのか、まるで説明がない。


「理由は勝手に想像してください」って事なんだろうか?




この映画の原題が『WALK ABOUT』。


『ウォーク・アバウト』とは、オーストラリアの原住民の古くからある習わし。


男は16歳になれば、部族を、いったん離れて自立し、一人で生活しなければならない。

いわゆる成人するための通過儀式のようなものである。




それに、たまたま遭遇した姉弟。




そして、そして、原住民の知恵を侮るなかれ。

ピョンピョン跳び跳ねるカンガルーを、一発で仕留め、丸焼きにするなんざ、そんじょそこらの芸当ではできませんよ。(カンガルーの肉なんて、どんな味がするんだろう。 固そうに思えるが)



そして原住民の少年は、旅していくうちに、イギリス少女に恋してしまった。(16歳と14歳、人種や言葉は違えど、やはり男と女だものね)



やがて、3人は廃家を見つけて、そこに住み着いた。

少女と弟は家を守り、原住民の少年は狩りに行く。


しばらくはそんな暮らしの生活。




「でも、もう我慢できない!」

原住民の少年は、この「恋する気持ち♥️を、少女に伝えたい!」と思ってしまった。



少年は体中に白い複雑な模様を描き、廃家にも入らず、一晩中、外で踊り続ける。



これは原住民の求婚の踊りなのだが、それを知らない少女には、悲しいかな、ただ恐ろしいだけなのだ。←(まぁ、この化粧ですもん。本当に不気味)


それでも少年は、

(この俺の気持ちを分かってくれ!気持ちを受けとめてくれ!)とばかりに、益々、踊りに熱が入っていく。



少年の踊りが激しくなればなるほど、少女は恐ろしいものでも見るように、硬くドアを閉じて出てこなくなった。



言葉と人種の壁は、やはり取り払われなかったのだ。


次の朝、少女が外に出てみると、少年は近くの木に首をひっかけて、《首吊り自殺》をしていた。(ゲゲッ!)


振られたと思って絶望したのである。(男って奴は、なんて純なのだ。このシーンを観ると、そう思わずにはいられない。可哀想な少年の最初で最後の初恋だったのだ。)



この後、ようやっと民家までたどり着いた少女と弟は、無事にイギリスに帰ることができた。




そうして数年後、少女は大人になり、結婚し、普通の主婦になっている。

夫の帰宅を待ちながら料理をしていると、ふと、昔のあの旅行を思い出している。


あの原住民の少年との不思議な出会いを ………







監督のニコラス・ローグの映画を初めて観たのだが、観終わってからも、しばらくは ボワワァ~ン と夢の中にいるような気分。




残酷な場面もあるのに、「何なんでしょ?」 この妙な後味の残る感覚は。


こうやって文章におこしても、上手く説明しにくい感じである。




こんなのも、カルト映画っていうのかな?



まぁ、とにかく観終わった後も、ズルズルと、強い印象が残るような、一風変わった映画なのは確かである。



ニコラス・ローグの映画で有名なのは、ミステリー映画、『赤い影』なのだが、こちらも風変わりな噂が。
(主演ドナルド・サザーランド。本国イギリスではベスト100の中で1位をとるくらい、この映画はイギリス人に好かれているらしい)




後、蛇足だが、この原住民の少年を演じた独特なお顔のデヴィッド・ガルピリル

数年後、ある有名な映画で、再びおめにかかれることになる。


そう、それこそ、オーストラリア映画として大ヒットした『クロコダイル・ダンディー』なのである。


星☆☆☆。