1971年 『テリー』(ジェイソン・ステイサム)は、妻と子供に恵まれ、中古車販売をしていた。
そこへ現れた、見るからに人相の悪いゴロツキの二人組。
鉄パイプを取り出すと、テリーが販売している車のフロントガラスを叩き割りだした。
「いきなり来て何をしやがるんだ?!」
「うるせー!さっさと借りた金を返せ!」と言っては、ゴロツキ供は、次々と、中古車のガラスを割っていく。
テリーは経営不振の為に、悪徳業者から多額の借金をしていたのだ。
ゴロツキ共は散々暴れて去っていった。
メチャクチャにされた車の残骸を見ながら溜め息がでるテリー。(あ~あ)
そこへ1台の車がまた、やってきた。
「テリー、お困りのようね。いい話があるんだけど今夜会わない?」
それは昔馴染みの『マルティーヌ』だった。
そして、その夜、マルティーヌがいるクラブにやって来たテリー。
テリーが向かいの席に座ると、マルティーヌは、いきなり、とんでもない提案をしてきた。
ここで、少し時をさかのぼる。
公民権活動家を名乗っているが、中身は、好き放題にふるまっているテロリストだ。
今日も、白人のブラウン氏の事務所にやってくると、首輪をつけて、引きずりまわすという暴挙にでて暴れ放題。
でも、マイケルXは決して有罪にならない。(なんで?)
実はマイケルは王室のスキャンダル写真を隠し持ち、政府を脅迫して、様々な罪を逃れていたのだ。
政府も、やりたい放題のマイケルに手をだせない。
でも、このままじゃ奴の思う壺だ、何とかせねば。
とうとう政府はMI5の『ティム』に依頼する。
マイケルが、スキャンダル写真を隠していると思われるベイカーストリートの《ロイズ銀行》。
「いいか?ティム、なんとしても銀行から写真を取り戻さなければならないのだ。」
政府高官が言うと、何か考えがあるのか、ティムは、「ええ、お任せを」と、あっさりと頷くのだった。
それから、しばらくして、モロッコからの旅行で空港に着いたマルティーヌ。
ゲートを出ようとすると、
「スミマセンがこちらへ来てください」
と警備に呼び止められた。
「何なの?」
怪訝な顔のマルティーヌは、強引に引っ張られて行き、入念なボディーチェックや荷物検査をうける。
「ありました!」
と、ひとりの警備がマルティーヌの荷物から、ヘロインを見つけた。
「そんな……知らないわ」動揺するマルティーヌ。
マルティーヌは、知り合いのティムに、すぐさま助けの電話をかけた。
「ティム、助けてよ!」マルティーヌが電話口で叫ぶと、電話の向こう側で、ティムは、ある提案してきた。
「マルティーヌ、君を救うには、ある仕事をして我々のために働いてもらうよ。その仕事とは……」
「テリー、狙うのはロイズ銀行よ」
マルティーヌが、テリーに持ちかけたのは、自分を無罪放免にする為に、テリーに銀行強盗をさせることだった。(嫌な仕事を、上から順番に押し付けあって、最後にたどり着いたのがテリーだったわけだ)
「テリー、あなたは、大きな仕事ができる人なのよ。銀行には大金がある。大勝負してみない?」(よく言うよ)
自分の目的を言わず、悪女マルティーヌはテリーを説得し続ける。
銀行は警報装置の交換の為に、1週間は警備が手薄になる。
その間に、隣の建物を借りて、地下から銀行までのトンネルを掘る計画なのだ。
「とても一人じゃ無理だ、仲間を最低5人は集めないと…」
テリーも具体的な計画に真剣に考え始めた。
それに………
(妻と娘の為にも、この借金地獄から抜け出せるなら…)
そう思うテリーは決心した。
そして、ここに、もう一人の怪しい男がいる。
政府の高官たち相手に、隠れ家の売春宿で、毎日荒稼ぎだ。
「もっと強く縛ってくれ!」
お偉いさんが裸で、SMの女王様に鞭打たれる姿を、マジックミラーで写真におさめさせる。
(こういうお堅い仕事の連中に変態が多いのは、昔からだが……)
変態写真、裏帳簿、全てはロイズ銀行の金庫へ。
もちろん、友人マイケルXへの助言を、したのも、この男ヴォーゲルだった。
「ロイズ銀行なら安全だ!」
ヴォーゲルは安心していたし、それを聞いているマイケルXも、安心しきっていた。
様々な人々の思惑が集約していく『ロイズ銀行』。
いつもの画面一杯大暴れする、ジェイソン・ステイサムを期待しないでください。
拳銃の撃ち合いも、そんなにないし、多少は殴りあいもあるが、ジェイソン・ステイサムの映画にしては、かなりおとなしい。
それまでのステイサム映画の中では、この映画は、特殊な位置付けだと考えてる。
でも、でも、面白かったー!!
最初観たとき、まるで、ルパン三世のような話だと思った。
銀行襲撃のために地下トンネルを掘るサスペンスも見物だが、それより、なにより、『マルティーヌ』!
マルティーヌ役のサフロン・バロウズの小悪魔的な魅力は、まるで峰不二子。
美人でテリーを手玉にとり、仕事をやらせるとこなんざ、不二子その者じゃないか!
他の集められるメンバーも良かったが、とにかく女優サフロン・バロウズが輝く映画なのである。(ステイサムの映画で女性が、こんなに印象的なのも珍しいくらいだ)
そして、そして、悪漢のヴォーゲル役のデヴィド・スーシェ(ポワロ役の彼がこんな役で…最初、まったく気づかなかった)
私利私欲のためなら、どんな悪事もやる悪党。
やはり名優らしく、小憎らしいヴォーゲルが非常に上手かった!
そして、これらの俳優たちとも、上手く調和していて演技しているステイサムも、大変珍しかった。
そんなにステイサムばかりが、でしゃばりすぎず、全体のバランスがとてもいいのだ。
アメリカ映画じゃなくて、イギリス映画だから?(失礼(笑))
サターン賞にもノミネートまで、されちゃってる。
今のところ、ステイサムの一番の傑作といえる作品じゃないだろうか、と思っているのです。
それにしても、映画の終盤。
ステイサムがスーシェの襟首を掴んで、腹に一発!
道路に倒して、何度も蹴りあげるシーン。
(ステイサムよ~、歳なスーシェ相手にそこまでしなくても……どうか、少し手加減してやってよ!)と、庇いたくなってしまった。(笑)