2021年2月28日日曜日

映画 「ギャラクシー・クエスト」

1999年 アメリカ。




昔、伝説のSFドラマ『ギャラクシー・クエスト』に出演した面々たちは、ウンザリした日々を送っている。


番組が大ヒットしたばかりに、すっかり、そのキャラクターのイメージが定着してしまい、番組が終了して数十年経った今でも、その時のキャラクターの扮装をして、数あるイベントをこなす毎日なのだ。



「私はイギリスの舞台でリチャード3世を演じたほどの名優だぞ!」


たまたま出演した『ギャラクシー・クエスト』で、トカゲ頭のかつらをつけて《ドクター・ラザラス役》をやったばかりに、ずっとそればかりをやらされ続ける『アレクサンダー・ディーン』(アラン・リックマン)の不満は止まらない。


「あなたなんて、まだマシな方よ。私なんて役の事なんか聞かれないでスリー・サイズの事ばっかりなんだから」


『ギャラクシー・クエスト』の紅一点《マディソン中尉役》の『グエン』(シガニー・ウィーバー)も渋々なのだ。



そんな二人とは対称的に、不満もあるのか、ないのか?変わり者の《技術主任チェン軍曹役》の『フレッド』(トニー・シャルーブ)は、ニッコニコとおとなしい。(この人が一番人が良さそう)


番組開始時、ギャラクシー号の《操縦士ラレド少年役》の『トニー』(ダリル・ミッチェル)は、すっかり辛辣な口を叩く大人になっていた。


「ねぇ、アイツはまだ来ないの?!」



そして、最後に、調子の良いだけの男、ギャラクシー号の《タガート艦長役》の『ジェイソン・ネズミズ』(ティム・アレン)が登場。


テンション高く、「やぁ、みんな遅れてごめん、ごめん!」と別に悪びれてもいない様子で現れた。



ズラリと並んだイベント客のために淡々とサインする面々の中で、ジェイソンだけが、やっぱり愛想よく調子が良い。


(なんせ、俺は主役だったし番組が終わっても、この大人気だしな……ウシシ……)



だが、たまたま入ったトイレの中で、ジェイソンはフアンたちの本音を聞いてしまう。


「ダガート艦長役のアレ何なんだ?オワコンで笑い者にされてるのに、全く気づきもしないでさ」


「全くさ!よ~やるよ、あのジェイソンさんもね」


「どうでもいいさ、早くギャラクシー・ダンサーのダンス見に行こうぜ」



ガーン!!( ̄▽ ̄;)


俺の時代は、もうとっくに終わっていたのか……



調子の良さから、いきなり奈落の底へ。

その夜、家に帰ると、しこたまヤケ酒を煽るジェイソンなのだった。



次の日、ジェイソンの邸宅のガラスを「コン!コン!」叩く人物たち。


二日酔いで朦朧としているジェイソンが、やっと目を開くと、灰色の宇宙スーツを着込んで、メイクをした何人かの人物たちが、ズラ~リと並んで笑顔で立っている。



「お迎えに参りました、ダガート艦長!」


(随分、熱狂的なフアンがいたもんだ……朝も早くから、こんな仮装までして、オマケに家まで押しかけてくるなんて……)



「ダガート艦長、私たちに是非、お力を貸して頂きたいのです」


自分たちはサーミアンという宇宙人で、宇宙の悪党サリスと宇宙戦争をしていると、どこから考えたストーリーなのか、そんな話を連中は、ベラベラと話し始めた。


(なんだ、また新しいイベントのお誘いか……でも、よくも、まぁ、こんな話を思いつくよ)


迎えのリムジンに疑いもせずに乗り込んだジェイソン。



だが、そのリムジンは、しばらく走ると、道路上から忽然と消える。



そう、《転送》されたのだ!


一瞬にして宇宙空間にある《宇宙船》へと。



ジェイソンを迎えに来たのは、


なんと!本物の宇宙人たち!!



そして、彼らは彼らで、ジェイソンたちを、


本当に実在する『ギャラクシー号』の乗組員たちだと、信じて疑わない


厄介な宇宙人たちなのであった………。




SF映画が苦手な私が、久しぶりに観て、珍しく大笑いした映画。



この映画は本当に面白かったし、当たりだったかも。



誰でも、SFドラマ『ギャラクシー・クエスト』が、『スター・トレック』のオマージュなのは、一目で分かるだろう。


それを演じた役者たちが、実際に宇宙に行って役名そのままに、本物の宇宙戦争に巻き込まれる。



この映画は、何重ものメタ的な構造になっているのだ。



ジェイソンにつられて、他の面々たちも宇宙に連れて来られて……


最初はアタフタ、右往左往で、おっかなビックリ。


それが、次第に役名を地でいくような活躍になっていくところに、この映画の面白さはある。



トカゲ頭のアラン・リックマンが、また良いねぇ~(このビジュアルじゃ、本物の宇宙人が信用するのも納得か)



シガニー・ウィーバーは、この映画では本当にチャーミング。


コンピューターの言葉を復唱するだけで、

「とにかく、それが私の出来る唯一の仕事なんだから!」とブチギレるシガニーが可笑しい。(本当に初めて、この映画でシガニー・ウィーバーを《可愛い》と思ってしまった)



主役のティム・アレンは、ほどよい調子の良さだけの、中年代表って感じである。(なぜか?どこでも無駄な前転をしまくるティム・アレン)


トニー・シャルーブは、これ以降、ドラマ『名探偵モンク』で大ブレークする。(宇宙人の女性になぜか愛されちゃったりもする。(これも役得?(笑) )



『ギャラクシー・クエスト』の81話で殺される端役の男、『ガイ』(サム・ロックウェル)は役名すらないのに、ジェイソンたちの宇宙戦争に巻き込まれてしまう。


「俺は役と一緒で、すぐに殺される運命なんだぁー!!」が口癖。(こういう奴に限って絶対に死なねぇーって)


最近のSF映画が苦手になってきたのは、あまりにも、SFに《リアルさ》や《真剣さ》、《説教臭さ》を持ち込んできた為。


宇宙空間は広大なのに、観ていると妙な息の詰まるような《閉塞感》を感じてしまうのだ。



《いい加減さ》、《馬鹿馬鹿しさ》、《くだらなさ》……そして《笑い》………こんなモノに、私は妙に惹かれる。


それはSF映画だけに限らないんだけどね。


映画は星☆☆☆☆☆。


真面目過ぎて、肩が凝るようなSFだけはご勘弁。

もっと元気に、《ふざけて》、《はっちゃけて》いこうぜ!SF映画!