2021年2月18日木曜日

映画 「空中ぶらんこ」

1956年 アメリカ。





ごく最近、このblogでバート・ランカスターの大活劇『真紅の盗賊』を挙げてから、しばらく経った後、こんな画像を偶然に見つけた。


そう、これはバート・ランカスターと相棒のニック・クラヴァットが、サーカスにいた時に、鉄棒で大車輪をしている様子を写したものらしいが……


それにしても、スゴイ画像!


この画像を見るだけでも、二人の並外れた身体能力が伺いしれるというものである。



そうして、話は変わるが、だいぶ前に、このblogで、映画『マーティ(1955)』を取りあげた事があった。


アーネスト・ボーグナイン演じるモテない男マーティが、奮起して彼女をゲットするまでのお話。


テレビドラマの『マーティ』を映画化する際、制作に関わったのは他でもない、このバート・ランカスターだったのだ。


「こんな醜男の恋愛話なんてヒットするはずもない…」と誰もが期待していなかった。



だが、そんなモノは裏切られて、結果は各国で絶賛されて大ヒット!!


アカデミー賞では主演男優賞、作品賞、監督賞、脚色賞の4部門を制覇し、カンヌ国際映画祭ではパルム・ドールまでも受賞する偉業を成し遂げたのだった。




先見の明があるのか、それとも、元々アタマが良い人なのだろうか……


とにかく、運動神経が良いだけのバート・ランカスターじゃなかったのは確かである。(こんな風に後年、知れば知るほどバート・ランカスターにドハマリしていく私。若い時に『泳ぐ人』で見切るなんて、本当にバカバカ!)



そして、『マーティ 』がヒットすれば、制作に関わったランカスターにも、それなりにガッポガッポと入ってくる。(やな言い方だけど)


「この収益を元手に、自分の経験を生かしたサーカスの映画を作ろう!」


そうして、出来た映画が、この『空中ぶらんこ』なのである。




空中ぶらんこ乗りの花形スター『マイク』(バート・ランカスター)は、演技中、落下して、思わぬ事故にあってしまう。


それきり、杖をつきながら、何とか歩けるものの不自由な生活。


かつての栄光はどこへやら。

今じゃ、サーカスの道具係にまで落ちぶれてしまったマイクなのである。



そんなマイクの元へ昔の相棒の息子である『ティノ』(トニー・カーティス)が弟子入り志願にやってきた。


「俺に、あんたの十八番の《3回転》を教えてくれ! 《空中ぶらんこ》を習うなら、あんたに教われ!と言われて来たんだ!!」


目の前の若い青年は希望に燃えている。まだ、空中ぶらんこの危険や人生の苦渋さえも知らない、この青年……


マイクの返事は、「NO!断る!」だった。


だが、何度断っても食らいついて諦めないティノに、マイクもとうとう根負けして、二人はペアを組んで空中ぶらんこに挑戦する事になる。



(でも、俺にもう一度出来るだろうか…)


不安な足の問題を抱えて、それでも再起にむけて練習をはじめたマイク。



そんなマイクとティノの練習風景を横目で見ながら、アクロバットの美女『ローラ』(ジーナ・ロロブリジーダ)の目がキラリと光る。


(あの二人の《空中ぶらんこ》に、私も混ぜてもらえれば有名になれる! これは絶好のチャンスだわ!!……)


サーカスの団長に取り入ると、ローラは無骨な男マイクを、たらしこもうと、これまた色仕掛けで接近してきた。


だが、軽~く、マイクにあしらわれて失敗するローラ。(「もぅ、なんて男なのよ!プンプン!」ってな感じ)



ならば、と相棒の若い青年ティノに近づくローラ。(これは簡単だった。たちまちティノはローラにメロメロ。夢中になる)



団長とティノを上手くたらしこんだローラは、翌日から《空中ぶらんこ》の練習を、勝手にはじめていた。


その光景を見て激怒するマイクだったが、団長にねじ伏せられて、渋々、3人トリオの空中ぶらんこを受け入れる事になる。


男二人に美女が一人……


さぁ、ドロドロの三角関係の男女が、《空中ぶらんこ》を上手く成功させる事が出来るのか?…………



巨大な広場に、巨大なテント……昔は、子供の頃、自分の町にもサーカスがしょっちゅうやって来ては、楽しませてくれた。


平成に入ってからは、とんと、その存在すらも見かけなくなったが。(どっかの抗議団体のせい?)



サーカスの映画というと、チャールトン・ヘストンの『地上最大のショウ』が有名だが、私、この映画の事は全く知らなかった。


調べてみると、監督は、あの『第三の男』で有名なキャロル・リードじゃございませんか!(本当になぜ?長らくビデオにもDVDにもならなかったんだろう? 権利関係?)


監督がキャロル・リードと知ってみると、この映画の主題《男女の三角関係》も納得かも。(『第三の男』も男二人に女一人の三角関係ですもんね)



トニー・カーティスも若くてカッコイイです。(やっぱり、この時代のカーティスは別格)


ジーナ・ロロブリジーダは、この特長ある名前で聞いた事はあっても、映画で観るのは初めてだったかも。


キリッ!とした弓なり眉毛で、ハッキリした顔立ちの彼女。


スタイルも、ボン!キュッ!ボン!で妖艶な雰囲気をムンムン醸し出しております。


それに女性ながらも、立派な二の腕の筋肉。

やっぱり、この映画の為に、トレーニングして身体を仕上げたのか。


トニー・カーティスも均整のとれた身体を維持している。(後年、これがブクブク太って、だらしなくなるとは、誰が予想できたろうか)



もちろん、この二人はサーカスのプロじゃない。


危険なシーンでは代役を立てただろうし、合成シーンもあるだろうが、それでも二人供、身体をちゃんと作り込んでいて、そこは、「ホ~ゥ!」と素直に感心してしまった。



そして、バート・ランカスター。


もう、《空中ぶらんこ》なんて、ランカスターが、水を得た魚のような題材である。


冒頭の大車輪の画像を見てくれれば、その凄さは、お分かりになると思う。


この《空中ぶらんこ》では、ランカスターだけが、ほぼスタントなし。


自ら挑んでいるのは、どのシーンを観ても分かるし、素晴らしい身体能力。


あいかわらず、凡庸な自分は、『真紅の盗賊』と同じように、「スゲーッ!!」、「ヒェーッ!!」の声しか出てこないのである。



当時も、こんな映画が評価されないわけがない。


またもや、ベルリン映画祭で銀熊賞(男優賞)を受賞してしまうバート・ランカスター。


もう、この人の、華麗な経歴を調べれば調べるほど、改めて「本当に凄い俳優だったんだなぁ~」と感心しきりなのである。



映画は、星☆☆☆☆。


稀な俳優、ランカスターの妙技を堪能するには、もってこいの1本だと自信を持ってオススメしておきます。