2021年3月2日火曜日

映画 「イン・ザ・ネイビー」

1996年 アメリカ。




『トーマス・ドッジ海軍少佐』(ケルシー・グラマー)は、指揮官としての素養は認められていても、その破天荒な性格ゆえ、何度も艦長になるチャンスを棒にふってきた。


そんなドッジにも、ようやっとチャンスが巡ってくる。


艦長への就任。


「やったー!これで俺も念願の潜水艦の艦長だーー!!」

ルンルン気分のドッジだったが、世の中、そんなに甘くない。



ドッジが大嫌いで、嫌味な『グラハム提督』(ブルース・ダーン)は、したり顔で、こう続けた。


「ただし、原子力潜水艦じゃなくて、ディーゼル潜水艦の艦長だがな」


ゲゲーッ!ディーゼルといえば、ひと昔前の骨董品じゃないか!!

冗談じゃない!!



プンプン怒りのドッジは、本部のウィンズロー提督の元へ出向いて直談判した。


そんなドッジをなだめるようにウィンズロー提督は話をはじめる。


「今、ロシアが旧ソ連時代の古いディーゼル潜水艦をイランや他の国に叩き売りしてるのが分かったのだ。この先、我々アメリカはディーゼル潜水艦を相手に戦(いくさ)をせねばならない事態がくるやもしれない。そこでだ!実際にディーゼル潜水艦相手に戦闘をする《模擬練習》が必要になってくるわけだ」


「で、そのディーゼル潜水艦の艦長を私にしろと?」


目的は《ディーゼル潜水艦がどこまで闘えるか》を知ること。

予定の演習ルートを通りながら、見事にダミー船を撃沈させる……それがドッジに与えられた使命だった。



見事任務を成功させれば、ドッジは晴れて原子力潜水艦の艦長に任命。

だが、この話を断れば一生デスク・ワークか、はたまた海軍を辞職せねばならない。


(こんなの、もはやヤルしかない選択じゃないか!……もう、こうなったらやってやるわい!!撃沈させればいいんだろう!!)



ヤケクソ気味で了承したドッジだったが、いざ乗り込む潜水艦を目にすると、テンションはドヨヨ~ンと下がる。


錆びだらけのオンボロ潜水艦……

こんなの博物館行きか、とっくに廃棄だろうに……トホホ……。



そして、オンボロ潜水艦に集められた乗組員たちといえば、これまたはみ出し者の問題児たちばかり。


一応、見た目礼儀正しいが心の中では(こんなオンボロ艦に何でエリートの私が?)と不満タラタラの『マーティ副艦』(ロブ・シュナイダー)。


元バスケットボール選手で博打好きな『ジャクソン』(デュアン・マーティン)


命令無視で、やる気なしのウィンズロー提督のドラ息子、『ステパナック』(ブラッドフォード・テイタム)


感電する事に快感を覚えるソナー員やら、肥満体の炊事係やら……変わり者ぞろい。



そして、極めつけは、初の女性乗組員『エミリー・レイク大尉』(ローレン・ホリー)まで着任してくる。


「こんな男所帯に、何であなたみたいな人が?」


「これも任務ですから、ヨロシクお願いします、ドッジ艦長!!」

ヤレヤレ……この先どうなるのやら……



不安や不満を隠して、ドッジは、まずディーゼル潜水艦の錆び落とし、ペンキ塗り、内部の整備などを命令した。(そんな任務も、この面々ですもん。グズクズ、モタモタ……)


それでも何とか見た目、綺麗に仕上がった潜水艦。


さぁ、いざ出港!!………。




こんな冒頭で始まる『イン・ザ・ネイビー』。


ブルース・ダーンやら、ローレン・ホリーは懐かしいなぁ~。


さぞや、腹を抱えて大笑いできるんじゃないか、と期待して観たのだが……ぶっちゃけ、私には、あんまり……。


潜水艦モノなら、ケーリー・グラントとトニー・カーティスの『ペティ・コート作戦』を観ているせいもあるが(これは傑作!)、これは、それまでに及ばない気がする。


有名無名関係なく、せっかく面白くなりそうな俳優たちの個性が、なんだか最後まで中途半端に思えたのだ。


これが脚本のせいなのか、演出のせいなのか……


それとも自分の《笑い》に対するハードルが高すぎるのか……。


笑いのメーターが100まであるなら、せいぜい50止まりくらい。


そこまで振りきれていない感じがするのだ。


全編、「このくらいで抑えておこうか……」というのが、私にはチョイチョイ見え隠れしてしまう。



《はみ出し者》や《変わり者》といっても、私から観れば、逆に、潜水艦の乗組員、皆が優等生に見えてしまった。



私が、この映画で、一番馴染めなかったのは、主人公の『ドッジ』(ケルシー・グラマー)の性格。


破天荒さや不真面目だという人物設定が、艦長になった途端に影を潜めて消えてしまい、最初から、ごくごく常識的で立派な艦長。


これに、一番の違和感を感じてしまったのかも。(だったら最初から、『真面目なのに今まで運がなくて、たまたま艦長になれなかった』でも、よかったのにね)


ドッジの《破天荒さ》や《不真面目さ》が、はみ出し者たち乗組員の、上をいくくらいの勢いで、ハチャメチャにかき乱すのを、おおいに期待していただけに、これにはガックリ。


なんだか肩透かしをくらった気がしたのだ。



映画は、予測通り、嫌味なグラハム提督の鼻をあかして、ディーゼル潜水艦の勝利で終わる。(これはこれでハッピー・エンドで終わるし、爽快感はあるのだけどね)



それにしても、《人を笑わせる》って本当に大変だし、困難な作業だなぁ~。



特に、コメディー映画ともなれば、監督一人だけの力を越えた何か……《プラスα》みたいなモノが必要になってくる気がする。


《誰》と《誰》の相性が合うか、合わないか……それらは運みたいなモノで、それが特別な化学反応を産み出して、笑いに変えていく。

近頃は、そんな気がするのだ。



先日、観た宇宙コメディー『ギャラクシー・クエスト』がまさにそう。


ティム・アレンが大袈裟にふるまえば、アラン・リックマンがジト~ッ!とした目付きをする。


特別な事はしていないのに、お互いの間合いや空気感に、私たちは《笑い》を観いだすのだ。



なんか、こんな風に《笑い》の分析をするのも野暮なような気もするのだが…。


それでも、この『イン・ザ・ネイビー』を観てみて、そんな事を、ふと考えてしまった私なのである。(この映画を「面白い」という人にはごめんなさい)


星☆☆。

※ヴィレッジ・ピープルの歌う有名な曲『イン・ザ・ネイビー』がエンディングで流れるのは良かったです。(これ大ヒットしたもんね。私世代にはチョー懐かしい曲でした)