2018年10月14日日曜日

映画 「探偵〈スルース〉」

1972年 アメリカ、イギリス合作。







監督はジョセフ・L・マンキーウィッツ

間違っても、スルース《探偵》2007年(酷いリメイク)ではないのであしからず。







世界的に有名な探偵小説家『アンドリュー・ワイク』(ローレンス・オリヴィエ)は壮大なカントリーハウスに住んでいる。



そんな場所へ、颯爽とスポーツカーでやって来たのは、美容師で、自他共にジゴロを気取っている若い『マイロ・ティンドル』(マイケル・ケイン)だった。



裏庭は、複雑な迷路に刈り込んだ庭園で、そこを抜けると、やっと屋敷がみえてくる。



マイロは手紙でワイクに呼び出されたのだ。



屋敷に入るとワイクは、マイロに、

「妻と浮気している事を知っているぞ」と、いきなり切り出した。



そして、「妻と別れてもよい」とアッサリ言い放つ。


てっきり修羅場を想像していたマイロは、こんなワイクの言葉に、ただ、ドギマギするばかり。


「だが、妻は浪費家だ。美容師の君に、あの妻を養っていく事はできまい!」


(まぁ、確かに………)


「そこで、だ……」

「この屋敷の金庫から宝石を盗んでほしいのだ! そして、その宝石には多額な保険がかけてある」


こんな、とんでもない提案にマイロもビックリ、目をパチクリさせた。


「君には宝石が手に入り、私には多額の保険金が入ってくる。私も君も得になる! どうかね?」




《 偽装盗難 》……


マイロは、一瞬躊躇したが、だが、それもほんの一瞬だった。



元々、ジゴロで遊び人のマイロ。


(今までだって危険な橋を渡ってきたんだ……こんな得になる話はないじゃないか……彼女と宝石が手に入るなら……)


この奇妙な申し出を受けるのだった。





かくして、この壮大な屋敷の中で、偽装盗難の準備がはじまる。



だが、本当に、こんなワイクの言葉を額面どおりに信じてよいものなのか。


騙し、騙されて……だがマイロも、また、ワイクの上をいくような悪知恵を披露して……



やがて、それは二人の生死をかけた心理ゲームになっていく…………



『イヴの総て』や『三人の妻への手紙』など傑作を次々ものにしてきた、ジョセフ・L・マンキーウィッツの最期の作品。



ローレンス・オリヴィエもマイケル・ケインもアカデミー賞にノミネートまでされた作品。



この映画を観たのも、そうとう昔………まだVHSの時代だ。


久しぶりに観てみたい気もするが、観れない。




なぜならblu‐rayにもdvdにもなってないからだー!(声を大にして言いたい!!)




TSUTAYAの発掘良品アンケートでもかならず、名前があがるのに。

2007年のリメイクがあるから、別にいいじゃないか、と思う方々もいるだろうが、とんでもない!!



リメイクは、80~90分たらずだが、この本編は128分もあるのだ。



それに閑散としたワイクの住まい(2007年)に比べて、1972年版のワイクの屋敷の豪華な事。


屋敷にも探偵小説家らしく、色々仕掛けがほどこされていて、それがいちいち凝っていているのだ。(美術スタッフもこれらを用意するのに相当苦労しただろうと思うのだ)


こんなワイクの屋敷の中をのぞくだけでもワクワクさせてくれる。

もう、見事としか言えない!!




それに、さすがローレンス・オリヴィエの演技。

若いマイケル・ケインの演技を上手くひきだして、牽引していると思うのだ。




最初に観た時、衝撃的だった。


128分間、登場人物が最後まで、たった二人だけ。


こんな映画があったのか、と。




たった二人だけの映画………騙し騙されて、知恵をふりしぼっての、お互いの意地とプライドをかけた演技合戦。




だから、リメイクにも充分期待していた。




期待していて、とてもガックリさせられた。

まるで足元にも及ばない。




ジュード・ロウとマイケル・ケインは素晴らしいのに、監督が、あの『ケネス・プラナー』。




ケネス・プラナーの監督した映画を、これまで、全く面白いと思った事がない自分。

もし、違う監督だったなら………少しはマシなリメイクになったのでは?




それにしても、いいかげん、Blu-rayでもDVDでもいいから発売してほしいですよ。


VHSから、dvdやblu-rayに移行するとき、こんな見捨てられた作品が、まだまだ沢山ある。



メーカーさんには、是非、是非、頑張ってほしいと願う、私のとっておきの一編なのである。


星☆☆☆☆☆。