1995年 7月~9月。
「人間というものがいる限り、この世界から悪意が消滅することはあり得ない。そして悪意は、目に見えないものとは限らない……」
大層な言葉で始まる、このドラマなんだけど、裏を返せば「人の悪意は目に見える!」って事を言いたいだけ。
んな事は、毎日流れているニュースで、世界中が知ってる事だし、あらためて言われなくてもねぇ~。
1991年に『羊たちの沈黙』が公開されて大ヒットし、アカデミー賞を総なめにすると、猟奇殺人犯やら犯罪プロファイリングやらの映画が、後を追いかけるように、この時期、ジャンジャン量産されていた。
そうして、この手のモノが、とうとう日本のドラマでも作られてしまう。
それが、この『沙粧妙子 最後の事件』。
IQが高い天才『梶浦圭吾』(升毅(ますたけし))は、恋人『沙粧妙子』(浅野温子)、それに同期の『池波壮一』(佐野史郎)、他にも何人かのメンバーを加えて、《犯罪プロファイリング・チーム》を結成した。
だが、犯罪者のデータをとりながら、接見するうちに、リーダー梶浦は犯罪の魅力に、どっぷり取りつかれてしまう。(ミイラ取りがミイラになってしまう)
とうとう、犯罪プロファイリングのメンバーを殺害して梶浦は(スタコラ)逃亡した。
そして、自ら犯罪を犯すだけじゃあきたらず、マインド・コントロールを駆使して、犯罪者になれる素養のある者を探しだしては、その育成に乗り出したのだ。
そんな梶浦が作り出した犯罪者たちを追いかけながらも、かつて恋人だった沙粧妙子は、刑事課に移動して、梶浦の足取りを探そうとするのだが………。
こんなのが、『沙粧妙子…』の基本のあらすじ。
たまたま、このドラマの第1話にチャンネルを合わせてしまったので、当時はズルズルと最後まで観てしまったのだけど ……… 扱う素材はシリアスでも、ワタクシ、このドラマを全然、真面目な気持ちで最後まで観れなかったのでした。
それというのも、なんせ、主役が浅野温子さん。
ワタクシ、この人を勝手に命名して、
『オーバー・リアクション・アクトレス』と呼んでいるのです。(笑)
この人の、お芝居を昔から観ているけど、何を演じても常にオーバー・リアクション。
明るい役では作り声でハイテンション!
周りがドン引きするくらい大はしゃぎしてみせたりする。(『あぶない刑事』、『サザエさん』)
良い女風の役では、背中を向けていきなり立ち止まると、突然、長いワンレングスの髪の毛をブルン!🌀ブルン!🌀と振りまわしながら、まるで歌舞伎のような大見得をきったりする。(『101回目のプロポーズ』)
こんな人間を現実には見かけないし、街中でこんな人に遭遇したりすれば、
「ちょっとヤバイんじゃないのか?…… 」
とか、
「なるべく近づかないで、ソッとしときましょ …… 」と思って、普通の人なら、そそくさとその場から離れて遠目で警戒してしまう。
でも、そんな演技をしてしまうのが《浅野温子》さんなのだ。(それはそれで面白いんだけど)
ゆえに、この人の芝居は、いつも周囲から浮きっぱなし。
一人だけコントをやっているように、自分には昔から見えてしまうのである。(失礼なんだけど (笑))
そうして、この『沙粧妙子 … 』でも、そんな浅野温子さんのオーバー・リアクション・演技は、「我が道を行く!」が如く、全開で突き進み続ける。
犯人や相手役とは、もう、距離を縮める限り縮めて、首元や、頬っぺたがくっつくような距離で低音で凄んでみせる。(ソーシャル・ディスタンスなんか無視。コロナ渦の現代とは、まるで反したような芝居である)
でも、こんな浅野温子さん、いつもなら一人だけ浮きっぱなしになるのだが、このドラマに限っては珍しくそうはならなかったのだ。
なぜなら、浅野温子さんをのぞく、他の出演者たちが揃いも揃ってアクの強い《強者》(つわもの)ばかりだったのである。
さらに上をいくような個性派俳優たちが、
「主役がこんな演技をするのなら …… 」とエンジン全開で挑んできたのである。
柳葉敏郎は、見ているだけでクソマジメな暑苦しい芝居をするし。(熱血~)
佐野史郎は、抑揚のない一本調子で早口でまくし立てる。
香取慎吾は魚の腐ったような目つき。(素がこんな感じに見えるけど)
そして、とどめは、あの蟹江敬三さん!
沙粧妙子の上司の刑事役なのだが、もう「こんな刑事が本当にいるのか?」ってな具合の、結果、マッド・サイエンティストな刑事になってしまったのである。
突然、「ナハハハハーッ!」と大声で笑ってみせたり、
沙粧に小馬鹿にされたら、「ちきしょう!この野郎!!💢」と、当の沙粧妙子に当たらないで、腹いせに他の部下の刑事を殴ったり蹴ったりする!(もう八つ当たりの度を越えてる。こんな刑事は即、解雇だろう (笑) )
『高坂警部』(蟹江敬三)は、そんな沙粧を見て、「可哀想な女だよ、お前は!頭が良すぎるんだよ!ハハハッー」と、笑いを浮かべて皮肉たっぷりに言ってみせるが、相手の方が一枚上手。
『沙粧妙子』(浅野温子)は、そんな高坂警部をジーッ!と凝視してみせる。
そんな沙粧の反応にたまらず、
「何だ?!言いたい事があるならハッキリ言え!!」と荒々しく声をあげると、
「怖い顔 …… 」の一言。
小馬鹿にされて、高坂警部の血圧は一気に急上昇。
カーッ!💢となって、またもや、そこらじゅうのモノに当たり散らしはじめるのだ。(もう、まるで、お約束のコントを見ているようである)
こんなアクの強い俳優たちが、アクを全開で、「誰に合わせようと知ったことか!」で、それぞれの芝居をやり始めるんですもの、マトモな普通の芝居をしようとする者は、めっきり霞んでしまうというもの。
妙子の妹役の墨谷友香なんて、まぁ悲惨なモノでした。(あまりにも普通過ぎて)
こんな感じの出演者で物語を動かしていくので、シリアスになればなるほど妙な苦笑いが漏れてしまう。(ドラマは、できるだけ真面目に、マジメ~に進行したいのにね)
このドラマを本気で「恐ろしい~」だの言う人の気がしれない。
私には、全てが現実離れして見えてしまって、これは、平成の歴史に残された珍ドラマとして、深く記憶に刻まれたのでございました。(DVD化されております。)
未見の方にオススメしておきます。
星☆☆☆。
※そうして、一番上部に貼ってみた浅野さんの三白眼の顔、今観てもやっぱりオモシロ怖くて、私の考察もあながち「ハズレではない!」と思いますけどね。(笑)