1978年 カナダ。
気がつけばエリオット・グールドの出演作を追い求めて、たま~に観てみる私。
不思議な人だ。
長~い顔に、さらに長~いアゴを持つエリオット・グールド。
濃い髭そり跡に、モジャモジャの黒々した髪の毛で、こんな見た目のグールドは、お世辞にもハンサムとはいえない顔立ちだ。(失礼だけど)
それじゃ演技の方はどうかというと、これも、ごくごく普通な感じがする。
こんな《普通の人》であるエリオット・グールドの主演する映画が「大ヒットした!」なんて話を聞いたこともないのだけど、不思議と主演作や出演作は途切れない。
で、今日に至るのだ。
派手なハリウッドの世界で、エリオット・グールドは《すき間産業》を地でいくような、お人なのである。(こんな《普通さ》が、かえって逆に目立つのかもね)
そんな《普通の人》エリオット・グールドは、この映画では、これまた、ごくごく普通の銀行員役🏦。(一応、主任だけど)
真面目が服を着ているような『マイルズ・カレン』(エリオット・グールド)なんだけど、取りあえずは同じ銀行で働く意中の女性『ジュリー』(スザンナ・ヨーク)がいたりもする。
でも、相手には見向きもされないけど。(目下、ジュリーは銀行の支店長と不倫中)
家に帰れば、趣味で集めた水槽の熱帯魚をボ~ッと眺めるだけの味気ない日々。(熱帯魚集めが趣味とは……とことん地味である)
マイルズの勤める銀行は、いくつものテナントがならぶ、巨大なショッピング・モールの中にある。
もうすぐクリスマス🎄が近づいていて、プレゼントを買い求める客たちで、店内は埋め尽くされている。
そんな状況なので、モールの中にある銀行も大繁盛。
金を預ける人や引き出す人の群れで、連日ごった返しているのだ。(まだ、ATMなんてのが無い時代ですから)
そんな折、マイルズは銀行の閉店間際、捨てられた小切手用紙に、指でなぞられた奇妙な文字を見つけてしまう。
『銃を持ってるぞ!金を全部出せ!!🔫』
(何だ?こりゃ?!誰かのイタズラか?!…)
特徴のある羽上がった《G》のアルファベットの文字は……はて?この文字をどこかで見た覚えがあるぞ………
そうだ!思い出した!!
エレベーターの側にいつも立っているサンタクロース🎅の扮装をした男が持っていたプラカードだ!!
あの《G》の文字にそっくりなのだ。
(それじゃ、あのサンタクロースの格好をした男が、目の前にある、うちの銀行を襲うつもりなんだろうか?………)
見た目は普通に見えても、機転がきくマイルズは、その日から、そのサンタクロース🎅にジッと目を光らせはじめた。
そうして、とうとう、ある日、あのサンタクロースの男が、用紙を片手に銀行の窓口にやって来たのだ。
それもマイルズいる窓口に!
そっと差し出した用紙には、案の定『銃を持ってるぞ!金を全部出せ!』の文字が書かれている。
サンタの男は、右手をポケットにつっこんでいて(銃を握りしめているぞ!🔫)とマイルズに合図してきた。
マイルズは店内にいる他の客たちに気づかれないように、札束を取り出すとサンタは、それを慌ててポケットにしまいこむ。
「下にある金もよこせ」
小声でサンタがマイルズに耳打ちすると、マイルズは受け付け下のドル札の一枚を、そっと抜き取った。
それと同時に、赤い警報ランプ🚨が点滅する。
警備員が気がついて、「強盗だー!!」と叫びだした。
驚いたサンタは、目くら滅法に発砲すると、人混みをかぎ分けて、一目散に走り去っていった。
その夜、サンタクロース強盗のニュースは、瞬く間に世間に広がり、大々的に放送された。
「恐ろしかったでしょう?大丈夫でしたか?」
「えぇ、まぁ……」
襲われたマイルズの顔がテレビ画面に映し出され、《サンタ強盗が盗んでいった4万ドルの行方は、今、いずこへ?》なんてアナウンスが流れている。
大勢の人々が、そんなマイルズ・カレンに同情的になるのであった。
ただ、一人をのぞいては……
「冗談じゃない!俺が掴まされたのは、はした金だ! あの野郎が俺に罪をきせて、上乗せした大金をネコババしやがったんだ!!」
もう、怒りまくりのサンタ強盗=『ハリー・レイクル』(クリストファー・プラマー)。
そう、強盗ハリーの推理どおり、マイルズは銀行強盗の騒ぎを利用して、4万ドルの金をチャッカリと自分の懐に着服したのだった。
それを自分の働いている銀行の貸金庫に隠すと、今度は金庫の鍵を、自宅の冷蔵庫のジャムの瓶の中へと、ポトン!(まぁ、気が利いてるし、用心深いことよ)
(俺にこんな大胆な事が出来るなんて……)
すっかり変な自信?がついたマイルズは、心なしか他の事でも積極的になり、ジュリーにも大胆にアプローチしはじめてくる。
「あなた、なんだか雰囲気が変わったわ」
そんなマイルズに、とうのジュリーの方も満更イヤではなさそうな様子である。(不倫中なのに簡単になびいてくる、この女もいかがなものか?)
だが、こんな状況に、あの強盗犯ハリーが黙っているはずもなく……
この映画、とんだ拾いモノだったが、まぁまぁ面白かった。
面白かったんだけど、当時ヒットしたのかな?これ?(今まで知らなかったけど)
最初に書いたように、エリオット・グールドはハンサムな顔立ちでもないし、普通なんだけど、この映画のエリオット・グールドは、なぜか?超モテモテである。
最初はなびかなかった『ジュリー』(スザンナ・ヨーク)にも急に好かれるようになるし、
金の在りかを聞き出す為に、強盗犯ハリーが送り込んだ情婦でスパイの女性『エレイン』(セリーヌ・ロメス)さえも、ミイラ取りがミイラになってしまって、マイルズの魅力にメロメロ状態になってしまう💖。
そんなエレインなんか、「気をつけて!」なんて言いながら逆にマイルズの方へ寝返っちゃう始末。
おまけに、金は頂いてしまうは、機転が利いていて頭は良いわ………
ちょっと、あんまり「エリオット・グールドを持ち上げすぎなんじゃないの?」ってツッコミを入れたくなるほどである。
片や、この映画では準主役のクリストファープラマーはというと…
この人の顔こそハンサムと言っていいほど、整った顔をしてるんじゃないのかな。
金髪で彫りの深い顔立ちで。
つい最近、ダニエル・クレイグ主演の『ナイブズ・アウト』で富豪の小説家役をしていたプラマーも、その後亡くなってしまったけど(合掌)、若い時のプラマーは、中々のイケメンさんで、マイケル・ケインにも似た感じがする。(なんたって『サウンド・オブ・ミュージック』ではトラップ大佐役ですもんね)
この映画『サイレント・パートナー』で、それまでのイメージを払拭したかった、という事だけれど……結果、これが良いイメージ・チェンジになったのか、どうか…。
なんせ、この『ハリー・レイクル』という役が、まるでダメダメ最低人間なんですもん。
イライラして、鬱憤が溜まると平気で女に暴力をふるったり、足で女性の顔を踏んづけたり👣もする最低男。(ゲゲッ!)
おまけに、情婦のエレインなんかは、むごたらしく殺してしまうし。(まるでダリオ・アルジェントの映画みたい)
強盗犯で、DV男、それに殺人犯……。
これで知能犯として、少しでも頭さえ良ければいいのだが、この『ハリー』は、根っからの《トンマ》で《お馬鹿さん》ときてる。
実際、この強盗の計画も、最初からマイルズに気づかれるようなドジをふんでいるし、そもそも計画自体がお粗末。
単独で変装して、「銃を持ってるぞ!金を出せ!」ってやり方も、素人目にみても「アホか」って話なのだ。
こんなハリーは、まるで学習能力がないのか…最後は女装して、もう1度同じ手口で銀行強盗に入るのだが、今度は警備員に撃たれて、あっけなく死亡。
醜い最期をさらして死んでいくのである。
悪役が、卑劣でも残忍でもいいけど、
《お馬鹿さん》だけは、いくらなんでもいただけないかも (笑) 。
でもクリストファー・プラマー本人は、この最低ダメ人間を演じてみて、その後の俳優人生に、ひとすじの光明でも見つける事ができたのだろうか。
今となっては知るよしもないが……。
この映画を観ると、俳優たちにとって、生まれた時代ってのは大事なんだ、とつくづく思ってしまう。
エリオット・グールド、クリストファー・プラマー、もし、この二人が、あと20年くらい早く産まれていたとしたら……
ハンサムでもないエリオット・グールドは、間違いなく主役にはなれないだろうし、
クリストファー・プラマーのイケメンぶりは、スターシステムが健在だったハリウッドの力で、グレゴリー・ペックやゲーリー・クーパーみたいな扱いになっていたかもしれない。(もちろん、こんなゲテモノみたいな役をするはずもない)
その時代の人々の趣向や価値観などが、俳優たちの配役や人生をも、大きく左右する。
そんな風な事を考えてしまった『サイレント・パートナー』なのでございました。
長々とお粗末さま!
星☆☆☆。
※この長~い顔も、見慣れてくると味わい深くなってくるから、ホント不思議だ。