2019年8月6日火曜日

映画 「夢だと云って」

1998年 フランス。








フランスの片田舎で農場を営む両親、頑固なおばあちゃん、歳の近い弟ヤニックと妹マリオンに囲まれて、ごくごく普通の生活をおくる『ジュリアン』は、19歳。



ただ …… 少し …… 発達障害がある。



そんなジュリアンを寛大に見守りながらも一家は、なんとか暮らしてきたが、ここ最近、ジュリアンの様子がどうもおかしい。


牧場で飼っている牛のジュリエンヌに、ジュリアンが話しかける。


「なぁ、俺もキスしたい。ジュリエンヌ、お前もキスしたいか?」

頭の中は子供でも、体は成人と変わらないのだ …… どんどんと性欲的なモノは増してくる。



そのアンバランスさで、ジュリアンの奇行は、日増しに酷くなってきていた。



果ては、弟ヤニックの彼女を追いかけ回して、

「キスさせろ!キスさせろ!」と言う始末。(相当アブナイ)


近所や警察からも苦情が殺到している。




やがて、弟の彼女を強姦魔のように押し倒して、無理矢理キスしてしまったジュリアン。(これは、もう犯罪でしょ)



弟ヤニックはカンカンに怒りながら、「お前なんか死んじまえぇ~!」と飛びかかってきた。(当たり前だ)





それを両親が引き離すと、ジュリアンは泣きながら自暴自棄になって、自分の腹を自分で切りつけたのだった。(ヒェー!)


さいわい、傷は浅くたいした事はなかったが、もう、こんなジュリアンをここに置いておくことはできない。



警察の説得に父親も、これ以上は無理だと判断したのか、とうとう「施設へ入れよう」と言い出した。


「イヤ……イヤよ」母親はオロオロしながら、挙動不審。



そんな母親を侮蔑するように見つめるヤニック。


妹マリオンは黙っている。(もう、しょうがないと半端諦めているのか …… )




そこへ、一家の大黒柱、おばあちゃんがきりだした。


「施設へ入れるのは反対だよ!」


そして、「 ……… もう、すでに一人入っているし」。


「えっ?!」


ジュリアンもヤニックもマリオンも唖然。


父親は目を伏せ、母親は目線が定まらない挙動不審が激しくなる。


「嘘よ、何の事を言ってるの、おばあちゃん ……… 私の子供たちは、皆、全員ここにいるわよ …… 」

母親の笑顔はひきつりぎみだ。



「もう、真実を言うべきだよ!」

そう言うと、おばあちゃんは語りだした。



ジュリアンより、ひとつ上の兄がいるのだが、その子は産まれた時から【重度の障害児】で、医者も「この子はきっと育たない。施設にいれた方がいい」と匙を投げるくらいだったのだ。



だが、その子は行き長らえた。



重度の障害なれど医学の進歩か、はたまた奇跡か。

20歳になった今も、生きて施設で暮らしているという。


「俺に兄貴がいるの?」ジュリアンや弟、妹たちの興奮をよそに、いよいよ母親は錯乱しはじめた。


「何を言ってるの?おばあちゃん ……… 私の子供たちは皆ここにいるわよ。」

「やめて、やめてちょうだい!お願い!私から子供を取り上げないでぇー!」

そう絶叫すると母親は暴れだした。(どうも、障害者が産まれるのは、この母親の血統のような気がしてならない)


医者が来て、母親には鎮静剤をあたえられた。



それから、しばらくして、ジュリアンはバイクの後ろに荷台を結びつけると、そこにおばあちゃんを乗せて、いざ出発した。


まだ、見ぬ兄のいる施設へ向けて ………






この映画を観たのも、もう20年近く前か……。


まったく無名の監督、俳優(ほとんどが素人)の、この映画を何の知識なしで、偶然のように観たのだが、これも印象に残っている。



当時、これを観た時も思ったのだが、ほんと、


「何てフランスって寛大な国なのだ!」

っていうのが正直な感想。




こんなジュリアンを、「ちょっと変わっているだけ」と受けとめて普通の生活をさせているのが、まず信じられない。



ジュリアンの所業は、もはや犯罪レベルだし、即、逮捕か、強制連行されてもおかしくない。

それなのに、警察も家族の判断に任せて、おとなしく待っていてくれる。


そして、ジュリアンを結局、施設へも入れなくて、まるでお咎め無しなのだ。(日本では考えられない)



被害者は被害届すら出さないのだろうか?

片田舎のフランスでは、こんな出来事も、どうやら大騒ぎしないらしい。




そして、この家族、こんなジュリアンにバイクまで買い与えている。


バイクに乗って自由に公道を乗り回すジュリアン。(そもそも、こんなジュリアンに免許をとれるのだろうか?無免許?それも、もはや犯罪レベルだが)




ここまで読んでみてもお分かりのように、

「この映画、何だかオカシイ」と思う人が絶対にいるはずだ。




この映画を、当時「ヒューマンドラマ」だの、「監督がドキュメント風に撮りたくて素人を採用した」のと言う人たちもいたが、とんでもない話である。




これは一種の《おとぎ話》なのだ。



障害者だってキスしたいし、恋愛したい。

バイクにだって乗りたい。



そんな夢を具現化したファンタジーなのだ。


だからこそ、画面からは現実離れしたような空気が、フワフワと漂っている。




後半、自分よりも、不具な兄がいた事を知って、

「自分は兄よりもマシで、こんな事も、あんな事もできる」と、急に自信を取り戻すジュリアン。



たまたま知り合った女性とキスまで、こぎつけてしまう。(ん〜あり得ない)




これは、やっぱり現実味のない《夢物語》なのかも。(そもそも映画のタイトルが『夢だと云って』と言ってるし)



でも、この映画が、少しでもそんな人々の支えになるなら、こんな映画も、やっぱり有りなのかなぁ~。


星☆☆☆。