1973年 アメリカ。
《ロリ・マドンナ》って何だ?
《ロリコン》?で《マドンナ》って事?
驚くなかれ、これ名前らしい。
「お前が『ロリ・マドンナ』なんだろう?!」
乗り継ぎの為に、人気のないバス停で降りて、次のバスを待っていた『ルーニー』(スーザン・ヒューブリー)は、目の前に停まったおんぼろトラックから降りてきた男二人組に、突然拉致された。
拉致したのは、フェザー家の長男『スラッシュ』(スコット・ウィルソン)と、禿げていてザンバラ髪の気持ち悪そうな弟の『ホーク』(エド・ローター)。
男たちは有無を言わさず、自分達の家までルーニーを連れてきたのだ。
今、ルーニーの目の前にいるのが、男たちの父親で、これまた禿げてる上に、でっぷり肥っていて貫禄充分の『レイバン・フェザー』(ロッド・スタイガー)。
そのレイバンが、こうして威圧的に質問しているのである。
「人違いよ!私は『ルーニー』よ!!役所に電話して問い合わせればいいわ!!」
「嘘だ!!それにうちには電話なんてない!」(どんな家だ!)
ルーニーが見渡せば、今いるこの家もボロボロ朽ち果てた状態で(なるほど…)電話なんてないのも、妙に納得してしまう。
ルーニーを取り囲むように、先程ルーニーを拉致してきた男たち以外にも、何人か同じような年頃の男たちがいて、台所では老けたおばあさんのような容姿の女性もいた。
(あれが母親で、これ、全部がこの人の息子たちなのかしら?)
その中で、一人だけハンサムで、この場に場違いそうな青年の姿がルーニーの目に留まった。
『ザック・フェザー』(ジェフ・ブリッジス)である。
(この人は、なんかマトモそうだわ……)
そんなルーニーの前で、レイバンの執拗な質問は、まだまだ続いており、目の前に手紙が差し出された。
「これはお前が書いた手紙だろう?!」
文面には、ルーディーなる人物に宛てて、「朝、8時のバスで着くわ。《ロリ・マドンナ》より」なんて言葉が書かれていた。
「これは私の筆跡じゃないし、なんなら目の前で書いて見せましょうか?」
「筆跡なんて、いくらでも変えられる!!」
もう、何を言っても聞く耳無しの頑固オヤジ!!
いったい何なの?!この人たち?!
それにしても、私は、この手紙の人物《ロリ・マドンナ》に間違えられて、ここに連れて来られたんだわ……いったい、この《ルーディー》とか、《ロリ・マドンナ》って誰なの?……
そのルーディーとは、フェザー家の近隣に住んでいる《ガットシャル家》の息子だった。
元々、この広大な土地一帯はフェザー家が所有していたモノだったのだが、税金滞納で、その半分を《ガットシャル家》が買い取り、数年前に越してきたのだ。
だが、自ら招いた事とはいえ、それを認めたくないフェザー家の家長レイバンは、「ここから出ていけ!」だの、あくまでも強気な姿勢を崩さない。
ガットシャル家はガットシャル家で、正当な権利として、この土地を買い取ったのだ。
それに文句を言われる筋合いでもなく、いつまでも土地の牧草地を明け渡さないレイバン・フェザーに向かっ腹を立てている。
ガットシャル家の家長である『パップ・ガットシャル』(ロバート・ライアン)や子供たちの怒りも、もはや頂点!(先日、飼ってたブタがフェザーの連中に盗まれたばかりなのだ)
そんな時、息子のルーディーが思いついたのだ。
「俺が、架空の婚約者《ロリ・マドンナ》を創作して、彼女が『バスで会いに来る』なんて嘘の手紙を出すんだ!
アイツらバカで単細胞だから、こんな罠にも気づかないでノコノコ手紙を盗みにやって来るさ。
そして誰も来ないバス停で待ち続ければいいんだ!その隙に蒸留所に繋いであるブタを取り返す!」
はたして、ルーディーの予測通りにフェザー家は、ニセの手紙を盗み読むと、おめおめとバス停にやって来た。
ただ、誤算だったのは、誰も降りないはずのバス停に、運悪くルーニーが現れた事だったのだ。
ブタをなんとか一匹だけ取り戻し、ついでにフェザー家の蒸留所をメチャクチャに破壊して、清々した気持ちで帰ってきた息子たちから、勘違いで連れていかれたルーニーの話を聞いたパップ・ガットシャルは青ざめた。
全く関係ない女の子を巻き込んでしまったのだ!
「これは何とかしないと……」
そんな父親の心配をよそに、子供たちは「ほっとけばいいんじゃねぇの~」とノンキに構えている。
そして、蒸留所をメチャクチャにされたフェザー家は、またもやカンカン!
両家の争いは、徐々にヒート・アップしていくのであった………。
映画評論家の町山智浩さんが紹介している、これも《トラウマ映画》の1本である。
このblogでも、《トラウマ映画》のいくつか観てきて、「これは傑作!」ってのもあれば、「これは、DVD化されなくて当たり前だろうなぁ~」なんてのもあり、自分の評価は五分五分。
この『ロリ・マドンナ戦争』にしても、あんまり期待もしていないで、「まぁ、とりあえず観てみるか…」くらいの軽い気持ちでした。
そして、………なんとも「ヘンテコな映画だなぁ~」ってのが率直な感想。
あんまり話としては、救いようもない凄惨な話なんだけど、何度か観てみると、不思議と笑いどころもあるのに気がついたりして………
噛めば噛むほど、味がしてくるようなスルメみたいな映画ってところでしょうか?(この表現もどうなんだろ?)
それに、この映画、けっこう有名どころの俳優たちが出ていて一見の価値はありかも。
ロッド・スタイガー(夜の大捜査線)やらロバート・ライアン(特攻大作戦)やら……
若いジェフ・ブリッジスやらも出てるし、ゲイリー・ビジーなんてのも。(ガットシャル家の息子のひとり)
そんな中で、私が、この映画でも、ひときわ目をひいたのは、エド・ローターなのでした。
エド・ローターといえば、イヤな悪役、汚れ役を専門にやってる俳優なんだけど(チャールズ・ブロンソンの『デス・ハント』もご覧あれ)、この映画では、その汚れ役も群を抜いて強烈なインパクトである。
禿げてるだけでもインパクト大なのに、残ってる後ろ毛は、ザンバラ縮れ状態。
痩せてガリガリで、肉がなくて細い足。
これじゃ、見た目、《エガちゃん》じゃないですか!!(笑)
こんなエガちゃんじゃない!エド・ローターはキモさも大爆発。
妄想がいっぱいに膨らむと、頭の中に人々の声援や喝采の声が聴こえてきて、蒸留所でブタ相手に、ひとりコンサート。(キモ~)
素っ裸になると、女モノのブラジャーをつけて、ショーツを穿いて、おてもやんの化粧をやりだす『ホーク』(エド・ローター)。(オエ~)
そこへ通りかかった兄の『スラッシュ』(スコット・ウィルソン)とふざけあうと、その格好のまま、二人抱き合って、グルグル転げまわる。(何?この絵面………もう、書きながら自分でも段々気持ち悪くなってきた (笑) )
そんな場所へ、ガットシャル家の末娘『シスター・E』(ジョーン・グッドフェロー)が、運悪く現れた。
二人の野獣の本能はメラメラで、二人がかりで襲いかかってくる。
「イャアーーーッ!!」
だが、押さえつけながらのスラッシュのキスを段々、自ら、せがむように受け入れてしまうシスター・E。(?)
そんな二人に、「俺も」とばかりに、ホークが覆い被さろうとした瞬間、
「イャアーーーッ!!『あなただけは』絶対にイャアーーーッ!!」
と大絶叫するシスター・Eなのだった。
……………………《イケ面》ならよくても《キモ面》はお断り。(このシーンに複雑な女心をかい間見てしまう私である)
結果、娘を傷物にされたパップ・ガットシャルの怒りは猛烈になり、この後は、両家が血で血を洗うような凄惨な抗争に発展していくんだけど ………
こんな中で、『ルーニー』と『ザック』(ジェフ・ブリッジス)は相思相愛になる展開もあるのだが、観終わってみれば、エド・ローターの《キモさ》だけが印象的に残る映画。
これをトラウマと呼ぶのなら、ある意味、本当にトラウマかも (笑) 。
今回は星での評価はご勘弁を。
これを誰にでもオススメしていいものやら……。
《キモさ》の扉の奥を、少しだけ覗いてみたい方は、ご覧あれ。(ただし責任は持てませんけど (笑) )
お粗末さま!