2020年4月1日水曜日

ドラマ 「横溝正史シリーズ」①

(Ⅰ)1977年 4月~10月。(Ⅱ)1978年 4月~10月。







1975年に、映画『犬神家の一族』が公開されると、瞬く間に大ヒット。



それは、それまでマイナーだった角川を、上昇気流に乗せて、一躍『超一流会社』として押し上げてくれた。



波にノリまくりの角川春樹




そうして…………、

「こうなれば、次は小説を売って、売って、売りまくるんだーー!」


角川は、次々と正史の本を角川文庫として売り出し始めた。



すると、それも増刷につぐ、増刷で大ヒット!


出す本、出す本が、面白いようにバカ売れした時代だった。(本当に、毎日が、ウホウホ状態だっただろう。今の時代のように、不景気で全く本が売れない時代とは、まるで違うのだ)





そうして、次の戦略として打ち出したのがドラマ化。




2時間強には収まりきれないような『横溝正史』の世界を、たっぷりの尺をとって完全映像化するという、今じゃ考えられないようなトンデモない企画だった。



あらゆる演技派の俳優、女優陣をそろえて、それぞれの原作にあったロケ地を探して、長期の撮影期間。


それは、さぞかし莫大な予算だったろうと思うのだが、そんなのにも、まるでビクともしない。



当時の角川春樹には、それを遥かに上回るくらいの財力があったのだ。





で、満を持して始まった『横溝正史シリーズ』の第1回は、やはりこれでしょう!ってな感じで、『犬神家の一族』。




古いビルの2階に住むのは、我らが名探偵、『金田一耕助』(古谷一行)。



下の階から呼びつける下宿のオバサン、『かね』(野村昭子)のけたたましい声。


「オオーイ!金田一さんよー!、電話だよ!何かさぁ〜、仕事の依頼だってよーー!」(この人、昔も現在もちっとも容姿が変わってなくて、何か不思議な感じ)


ビルの屋上で逆立ちをしていた金田一は、いきなりの、けたたましい声にひっくり返る。


「うるさいなぁ~………」と、言いながら、むくりと起き上がり、長髪の頭をポリポリ。




ドラマは、こんな金田一の日常から始まるのである。




この頃の古谷一行を見て思ったこと………。


(線の細い石坂浩二とは違って、随分、骨太の金田一だなぁ~………)ってのが、最初の印象だった。


しかも、口角をあげて豪快に笑い、妙に人懐っこい。



でも、しばらくドラマを観ていると………


(あ~なるほど。こんな気性の金田一ならアリかも……)なんて、すぐに思ってしまった。




知らない土地に行っては、事件に関わり、容疑者たちの警戒心を解いては、その懐にもぐりこんでいく。


それには、こんな金田一の気性は、ピッタリかもしれない。


この『犬神家の一族』は毎週5回の放送だったが、終わる頃には、自分の中では、《 金田一 》=《 古谷一行 》が完全に根付いていた。(
石坂浩二よりも好きかも)





何たって、この古谷一行は『声』が、格別に良い。




安定感があって、説得力があり、それでいて場を和ませるような『声』。


「ぼく、金田一耕助です………」

の、ナレーションで、古谷一行が喋り出すと、画面を振り向かずにはいられないのだ。





この、古谷一行の金田一耕助に、すっかりドハマリした私。



でも、その頃、私まだ純な小学生。


こんな、オドロオドロしい、大人の世界をうっかり覗いてしまったのだ。



大人の男女の情念が、哀しい悲劇を産むという物語に一旦のめり込んでしまうと、もう一足飛びに、まるで自分が大人になったような気がしていた。



こんなドラマを観ていたせいか、……もう、同じ歳の同級生たちとは、話や趣味が合うはずもない。(コレはコレで今考えると問題な気がする)




それでも、『犬神家の一族』が終わり、間髪入れずに、次の週に始まった『本陣殺人事件』、『三つ首塔』………と、観続けた自分。



こんな体験が、今の自分を作り上げたかと思うと、これで良かったのかどうか………(あんまり他の人にはオススメできないが)



この『横溝正史シリーズ』に関しては、とても1回だけじゃ語れない。


ひとまず、次回②へ続くとしておきます。