1985年、4月に、そのドラマは突然、我々の前に現れた。
たまたま、偶然、合わせたチャンネルに映っていたのは、テレビシリーズ、『スケバン刑事』の第1話だった。
まだ、この第1話では、主人公の麻宮サキが、違う高校の、事件解決の為に潜入捜査中。
左手にヨーヨーを回しながら、ゆっくりと理事長室に近づくと、おもむろにドアを開ける。
「何だ?お前は?!」
「うるせぇー!」
サキは、左手のヨーヨーを、思いっきり振りかぶると、サイドスローで、相手に向けて投げた。(!)
いかにも当たれば痛そうな重合金製のヨーヨーが、理事長室に飾られていた石像を、粉々に打ち砕いた。(!!)
そして、サキの手元に帰ってくるヨーヨー(!!!)
「2年●組、麻宮サキ、またの名は『スケバン刑事』!」
そしてヨーヨーの片面の蓋が開くと、そこには、
「桜の大門!」
敵がビックリして、おもわず声に出す。(プッ!)
「スケバンまで張った、この麻宮サキが、何の因果か落ちぶれて、今じゃマッポ(警察)の手先……笑いたければ笑えばいいさ。だがな!、てめぇらみたいな悪党を許しちゃおけねぇんだ!!」
サキのヨーヨーが、理事長室にあるものを、すべて打ち砕く。壁を(ボコッ!)、テレビを(ボコッ!)
逃げ惑う理事長と校長。
ひと暴れしたサキは、ヨーヨーを投げると、そのヨーヨーのチェーンは、二人をとらえ、二人の腕に、幾重にも巻きつけたのである。(このチェーン、いったい何メートルあるのか……今でも謎である)
お縄にした悪党たちは、とうとう観念し、ヨーヨーを手にしたサキは、部屋を去るのだった…………。
この第1話をたまたま、偶然、観ていた自分。
「とんでもないドラマが始まったものだ!!」
見終わった感想が、まさにそれだった。
そして、絶対に、「このドラマは大ヒットする!」と、一瞬で確信した。
それくらい、何もかもが画期的だったのだ。
それまで、ただの遊びとしてのヨーヨーが、こんな使い方をされるなんて……。
投げる→相手を痛めつける→そして、また自分の手のひらに帰ってくる。
何度でも使用可能になる武器。(チェーンの長さだけは謎だが…)
そして、警察手帳の代わりに、ヨーヨーの蓋を開くとのぞかせる『桜の大門』。
そして、そして、インパクトのある『決め台詞』。
それを、デビューしたばかりのアイドル、『斉藤由貴』に叫ばせるアンバランスさ。
目がクリッとして大きな斉藤由貴は、すでに、その眼力で、CMデビューすると、瞬く間に視聴者を虜にした。
デビュー曲、『卒業』も、大ヒットするという異例づくしの新人。
この魔法のような眼力が、ドラマの世界でも通用しないわけがない。
たちまち、それは、自分はおろか大勢の視聴者を魅了し、ブラウン官の前に釘付けにしたのだった♥。
そして番組の中盤になると、これまた、とんでもないキャラクターたちが登場する。
海槌(みづち)三姉妹である。
「アーハァーハハハァーッ!アーハァーハハハァーッ!」白眼をひんむいて、高らかにバカ笑いしながら鞭を振り回している、二女の海槌亜悠巳(遠藤康子)。
点々眉毛に、糸のような目をした、みるからに性悪そうな……でも、ピアニストを目指しているという三女、海槌久巳(浅野なつみ)。
「サキィィ~!!」の低音ボイスで、唸ったかと思ったら、
「敗北者の為に流す涙などあるものですか! サキ!!、私が涙を流すときはね、世界を自分のこの手に入れた時だけよ!! ハァーッハハハー!!」
なんて、心に響く?台詞もある。
「私のような優秀な人間だけが、国民に夢と美しいビジョンを与えられるのよ!!」
(本当に麗巳様の言葉は、いつまでも心に響くなぁ~(笑))
これらのインパクトで、番組は大盛り上がり!
次々、仲間たちが倒されていく中で、最後に残された、サキと麗巳の一騎討ちへと物語は進んでいく…。
そうして、爆破と共に二人の生死は不明となった……。(えっ?なぜ?どうなったの?!)
サキはいつか、帰ってくるかもしれない……
サキの机に飾られた一輪挿しを見ながら、涙する同級生たち。
それまで、サヨナラ……スケバン刑事、サキ………。
エンディングの斉藤由貴の『白い炎』が流れると、それをボンヤリ見ている自分。
あ~あ、終わっちゃったかぁ~、(ガックリ)何か、他に番組やってないかなぁ~
チャンネルを変えようする時、次の番組の予告が、サラッと流れた。
『スケバン刑事 Ⅱ 少女鉄仮面伝説』
なぁにぃ~?!
斉藤由貴の変わりの、この主人公は誰なんだぁ?!
それに鉄仮面って何だ?!
来週も、また当然のように、同じ時間にチャンネルを合わせた自分だったのである。
星☆☆☆☆☆。