2020年3月26日木曜日

映画 「自殺への契約書」

1959年 フランス。






『マランバール』(ポール・フランクール)は、車を走らせながら、夜の町を急いでいた。



(すっかり遅れてしまった……)


目指すピカール邸に、やっと到着すると、集まった10人は既に会食を終えていた。




マランバールを入れて、15年ぶりに集まった11人の仲間たちだった。


そんな男たちばかりの集まりに、紅一点、クールな顔立ちの女性が、一人いる。



『マリー・オクトーブル』(ダニエル・ダリュー)………。


15年ぶりに見た彼女だったが、やはり凛とした佇まいと、美貌は変わらずに健在。


今は、この邸の主人『ピカール』の出資で洋裁店を経営しているという。




戦争中、彼らはフランスの抵抗運動の為に、共に闘った同士だった。


だが、目的を果たす、解放の数日前、リーダーの『カステーユ』が、会合をしている時、いきなり、ドイツ兵の襲撃にあい、射殺されたのだ。



今日は、そのカステーユの命日。



リーダーの命を弔い、集まった仲間たちなのである。



皆が集まった事を確認すると、ホールにいるそれぞれの顔を見渡し、マリーが話し出した。


「みんなに集まってもらったのは、他に別の理由があるのよ。実はカステーユの死の真相について、最近、分かった事があるの。」


マリーの突然の話に、途端に、ざわつき始める男たち。


そんなマリーのそばには、加勢をするように、すぐそばで、出資者ピカールが立っている。




マリーの話によると、洋裁店にドイツ貿易商が現れて、話してくれたと言う。


「あのカステーユの襲撃には《 密告者 》がいた!」のだと。


貿易商は、その密告者の名前は忘れていたが、それがここにいる《 仲間のうちの誰か 》なのだというのだ。


「それが本当なら、そいつは許せない!」

「誰だ?!いったい!?」口々に叫ぶ者やら、押し黙っている者もいる。




それをピカールは制すと、

「そいつを見つけ出す為に、こうして集まってもらったんだ」と言い放った。




そうして、テーブルに紙とペンを置く。


「密告者には、自分の罪を自白して書いてもらう。そして、このピストルで自ら自殺してもらうつもりだ!」


テーブルに、再び、置かれるピストルが異様なにぶい光を放っている。



《 密告者 》をあぶり出す為、それぞれの長い夜が始まろうとしていた………。



名匠ジュリアン・デュヴィヴィエ監督の1本である。




このblogで、以前取り上げた『わが青春のマリアンヌ』や『殺意の瞬間』のデュヴィヴィエなのだが、私が最初にデュヴィヴィエにふれた映画は、実は、この『自殺への契約書』が、はじめだった。



やはり、変わった邦題に惹かれて。



『自殺への契約書』って何じゃろ?



誰だって、ひとめで疑問に思ったり、関心をもつようなタイトルである。(デュヴィヴィエ作品には、こんな素晴らしい邦題がついているので、ことさら注目してしまうのだが)




この映画を観たのは20歳くらい。



それも遥か、遠い昔の記憶なので、ここに書いた筋書きと多少は違うかもしれないが、大体は合っていると思うのでご勘弁を。


と、いうのも、この『自殺への契約書』も、またもや、Blu-rayにもDVDにもなっていない為である。



そう、VHS時代に観た記憶だけで、ツラツラ書いてるのだ。




でも、デュヴィヴィエといえば、なぜか、この映画が印象的。



この後には、邸の中で繰り広げられる『犯人』をあぶり出すためのディスカッションが、「あ~でもない」、「こ~でもない」と繰り広げられるのだ。



まるで舞台を観ているような感覚になるのは、ほぼ屋敷から出ない為。



11人の言葉の羅列だけで魅せるのは、法廷劇『12人の怒れる男』にも似ているかもしれない。





その中の登場人物たちも、当時としては、中々、豪華な面々が集められている。




『悪魔のような女』で高圧的な夫ミシェル役だった『ポール・ムーリス』もいれば、

『死刑台のエレベーター』や『現金に手を出すな』など、ギャング映画で名をはせた『リノ・ヴァンチェラ』もいる。(鼻が特徴的)


『レ・ミゼラブル』でジャン・バルジャンを追い詰める嫌な警部役をした、『ベルナール・ブリエ』なんて姿も。





あの顔も、どの顔も、「アララ、この人、どこかの映画で、お見かけしたような人たちだわ……」なんて思うくらいだ。(まぁ、単に自分がオッサン俳優に精通してるって事もあるだろうけど(笑))





そして、この映画には、冷酷な結末が待っている。



「決して、『犯人』は見逃せない!」と、いう冷酷で無情な裁きが………。





紅一点のダニエル・ダリューが、また良い顔をしている。


弓なりの眉に、固く結んだ小さな口は、1度決めたらやり抜こうとする、意志の強さを感じさせる。(「裏切り者は絶対に許さんぜよ!」なのだ)



これも早く、DVDでもBlu-rayでもしておくれ~!!


傑作なんだからさ。

星☆☆☆☆☆。