2019年4月26日金曜日

映画 「真夜中の処刑ゲーム」

1982年 カナダ。






その昔、日曜洋画劇場では、淀川長治先生が、興奮して、大絶賛して解説してました。



「まぁ、怖いね、怖いね。皆さん今日は怖い映画『真夜中の処刑ゲーム』をお送りしますよ。」

(何故か?2度繰り返す淀川先生の解説に視聴者は引き込まれたものである。)




「監督はポール・ドノヴァン、ポール・ドノヴァンですよ。この監督は、映画を良く勉強してるねぇ~。偉いねぇ、偉いねぇ~。」

(カナダの無名の監督なんて、誰も知らないのに、何故か引き込まれる名解説)




「男が殺人を、殺人を目撃してアパートに逃げ込むんですよ! 逃げろ!逃げろ! そこには男女5人がいました。でもギャングたちが命を狙おうとやってくる。怖いねぇ、怖いねぇ~。」

(???)



「さぁ、皆さんご覧なさい!また後でお会いしましょうね。」




全然訳の分からないまま、始まる映画。

でも淀川先生の熱意や絶賛する気持ちが、ブラウン菅から、観ているこちら側にも伝わってくるから不思議であった。






1981年、カナダでは、警察官が賃上げストライキにはいり、町という町は無法状態と化していた。



取り締まる警官がいない町では、暴走族たちが暴れまわり、店という店も閉まっている。

町中は異様な静けさで、人っ子一人歩いていない。



だが、夜のゲイバーだけは開いていて、その手の人々が集まり慰めあっていた。(こんな時は家でじっとしてなさいよ (笑) )




そこに、こん棒を握りしめた悪い輩の団体が、突然乗り込んできた。

「俺たちは自警団だ!俺たちが、今夜から法律よ!オ●マども、思い知らせてやる!!」

笑いながら、やりたい放題で暴れまわり、男たちはバーテンダーをいたぶった。




「やめてくれ!やめてくれ!」

叫ぶバーテンに容赦などせず、獣のようにいたぶり続ける男たち。(※警察がストライキ中だからといって、いきなりこんな輩が現れて、好き勝手に暴力や破壊の限りをするなんて……どれだけ治安の悪い町なんだろう…)


やがて、ピクリとも動かなくなったバーテンダー。


裏返すと背中には、割れたグラスが突き刺さり死んでいた。



「お前ら、とんでもない事をしてくれたな……」

暴れまわった男たちの後ろから、ボスらしき男が現れる。




「こうなりゃ、ここにいる全員を口封じの為に始末するしかないな」

冷静なボスのケイブは、サイレンサー式の銃をとりだし、一人一人を縛り上げ、次々と関係のない店にいる客たちを、頭にクッションを押しあてながら殺しはじめた。(なんて極端な!)



だが、その中で一人の男が、縛りをほどき、立ち上がると、夢中で店を飛び出した。




「待てー!みんな追うんだ!!」

ギャングの自警団たちは、逃げた男、ダニエルを追って暗闇の町へ出ていく。




ダニエルは逃げた。必死で無我夢中で。

どこをどう向かって走っているのか……ダニエルはあるアパートに逃げ込んだ。


「助けてくれ!殺される!助けてくれ!!」


必死の形相でドアを叩くと、中から、一人の男が引き入れてくれた。



男の名は『ホレイショ』。

そこには、彼女の『バーバラ』(禁煙中で、いつもイライラ、ヒステリー気味)。

バーバラの弟で盲目の『パトリック』(とにかく目が見えない分、耳の感覚が優れていて、遠くの声や音も察知できる)。


パトリックの友達で、これまた盲目の太った『スティーブ』。

アパートの住人で、サバイバル術に長けた『チェスター』(この人の存在が大きい)の5人がいた。



「おい!開けろ!その男は麻薬中毒患者なんだ!」

外からは、アパートのドアをドンドン叩く音が響きわたる。

「ウソだ!頼む、開けないでくれ!開ければ、みんな殺される!」

ダニエルは、ガタガタ震えている。



ホレイショは、ダニエルを信じた。


ダニエルやバーバラたちを階段の上の部屋に行かせると、ホレイショはゆっくりドアを開けた。


ドアの外では、さっきの無法者たちが、顔首そろえて、立っている。



「さあ、早く引き渡してくれ」




男の一人が中に入ろうとすると、ホレイショが、そっとライフルを向けた。


「人を甘く見るなよ、とっとと消え失せろ!」


男たちは、鼻先にあるライフルに、後ずさりすると、「あとで吠えづらかく事になるからな……礼はたっぷりするぜ!」と言いながら出ていった。




男が出ていくと、急いで鍵をかけるホレイショ。


バーバラは、2階で電話をするが、電話口からは「警察はただいまスト中で…」のアナウンスが、淡々と流れている。


「何なの?いったい、どうすればいいのよ?」

バーバラは、突然の出来事に恐怖し、ヒステリー気味だ。



ギャングたちは、銃をかまえて、アパート全体を取り囲みはじめた。



アパートに籠城したホレイショたちと、ギャングの悪党たちの、命をかけた、長い長い夜が始まったのだった………。





映画は、ほんとに俳優たちも、監督も無名で、低予算のB級的な雰囲気プンプンである。(ゲイってだけで、殺されるってのも、あんまり酷すぎる気がする)




でも、ほんとに面白い!



敵の侵入を防ぐ為、ドアに電流を流したり、スプレーで火炎放射器をつくったり、ロケット花火を作って向かいのビルの敵に放ったりと、素人ながらも、様々なアイディアを駆使して、攻防戦を繰り広げる。




現代でも、カルト的な人気は続いていて、それも頷けるのだ。


久方ぶりに観ても、あの頃の時代や記憶が、鮮明によみがえってきた。
(ただ、大騒ぎばかりして、ヒステリーばかり起こすバーバラには辟易するが……)



後、せめて、主役のホレイショだけでも有名どころの俳優さんが、演じていたならだいぶ良かったかもしれない。(少し主人公のキャラの印象弱いかな)


まぁ、淀川先生には、申し訳ないが、面白いんだけど、さすがに星☆☆☆ってところで……。






「いかがでしたか皆さん? 怖かったね、怖かったねぇ~。今日は怖くて良い映画をたっぷりご覧になりましたね? じゃ、またお会いしましょうね。 サヨナラ…サヨナラ…サヨナラ……」

(「サヨナラ」だけは3回言う、淀川長治先生の不思議。今でもこんな声が、聞こえてくるようである)