2020年6月18日木曜日

映画 「白い恐怖」

1945年 アメリカ。





アメリカのバーモント州にある精神病院。



1人の女性患者が、女医『コンスタンス』(イングリット・バーグマン)に当たり散らしている。



男性に対して、あちこちでは媚びをうって誘っても、本音は男性を憎んでいる、その女性のトラウマを探る心理分析を行っていたのだが………


「私を馬鹿にして!その取り澄ました顔も大嫌い!!」

淡々と質問するコンスタンスに逆ギレ。


しまいには、ヒステリーをおこして、とうとう、その女性は、看護師に連れられて、診察室を追い出された。


「やれやれだわ………」


そんなのには、もはや慣れっこになってるのか、コンスタンスはまるで動じる風ではない。


仕事ひとすじのコンスタンス……興味があるのは、患者の心理分析だけ。


同僚の男性医師たちが誘っても、全く心動かされる事もない。



(恋愛なんて、愚かな熱病みたいなモノよ……)


そう決め込んでいた。今の今までは。



だが、院長『マーチソン』が退職し、その後釜としてやってきた『エドワーズ医師』(グレゴリー・ペック)をひと目見た瞬間、ビビビッ!!



(何これ?何なの?!この変な気持ちは??)


キューピッドの矢に胸を射ぬかれたように、もう、彼から、一瞬たりとも目がはなせないコンスタンス。


電撃を受けたような衝撃。


これが《 恋 》?





そして、その夜は、エドワード医師の歓迎会が開かれる。


やっぱりコンスタンスはウットリ顔。


会話は、いつしか病院内に作られるプールの話になり、コンスタンスが説明しはじめた。

フォークでテーブルクロスの上に「こんな感じで……」と線を引くと、それを見たエドワード医師は急に不機嫌になる。


「やめてくれ!!」



(えっ?私、なにかいけない事した??)

訳のわからないコンスタンス。




次の日、それでも二人は昼休み、そろってピクニックにやって来た。


エドワード医師も、まんざら、コンスタンスが嫌いなわけじゃなさそうだ。



ドンドン縮まっていく二人の距離。


(こんな気持ち初めて………そう、これが恋なんだわ!!)



だが、コンスタンスの縞模様のガウンに、またもや、過剰な拒否反応を示すエドワード。


(なぜ?こうも《 縞模様 》を嫌うのかしら?………彼の過去にはいったい何が……)



そして、やがて分かる真実。


彼は本物のエドワード医師ではなく、記憶を失っていた、どこの誰だか分からない人間だったのだ。


「僕は自分が、いったい、どこの誰なのか全然分からないんだ! きっと本物のエドワードを殺したのは僕かもしれない………」


「嘘よ!あなたにそんな事が出来るものですか!!私がきっと真相を見つけてみせるわ!!」


恋した女の決意は固い。


(私が、この人を守ってみせるわ!!)

精神分析医としての力を借りて、コンスタンスは真相に迫っていく…………。





戦後、第1作目のヒッチコック映画。


ヒッチコックにしては珍しい精神分析サスペンスである。



以前、このblogに書いた『第七のヴェール』もだけど、この時代って、こんな心理分析やら、精神分析などが1種のブームだったのかねぇ~。

やたら、この手合いの映画が、この時代に集中している気もするのだが……。




主演は演技派イングリッド・バーグマン。


そして、相手役は前年にデビューしたばかりのグレゴリー・ペックである。


見ても分かるように、若い頃のグレゴリー・ペックは、もの凄いハンサムさんである。



1944年の映画デビューで、もう、最初から主役。


見た目の良さから、翌年には、こうしてヒッチコックの映画にも出ている。(この映画も、そこそこヒットしたみたい)




ただ、ねぇ~ ………。


とにかく、何を演じても真面目な役ばかりなんだよなぁ~、この人の映画って。



『紳士協定』、『アラバマ物語』、『パラダイン夫人の恋』、『アラベスク』、『ナバロンの要塞』、『ローマの休日』などなど……


いろんな映画を数多く観てもいるんだけど、全てが、善良な役ばっかり。


プレイボーイ役もできないしね。


悪役なんてのはトンでもない事だし、出来るはずもない。



あまりにもお堅くて真面目すぎるのだ。(このあたりがケーリー・グラントとの差だと思う)



それでも、この、《根っからの正直者さ》、《真面目さ》が、ピタリとハマった映画なら、それなりに良いのだけどね。




そして、この『白い恐怖』は、偶然にも、それがピタリ!とハマった映画。


『コンスタンス』(イングリッド・バーグマン)が、一目惚れするのも分かる。(何たって、こんだけハンサムなんだもんね)


『コンスタンス』が、「犯罪者なんかじゃない!!」と信じたい気持ちも分かる。(こんだけ真面目そうで、善良そうなんですもん。犯罪者になんか全然見えませんわ(笑))




この映画は、あくまでも、主人公『コンスタンス』の恋していく変化や、「恋人を救いたい!」と、孤軍奮闘する姿で進められていく話なので、演技派イングリッド・バーグマンに負う部分が、格別に大きい。

観ている人も、バーグマンの気持ちに同化しながら観るはずだ。




だから、相手役のグレゴリー・ペックは、そのまんまでいいのだ。(記憶喪失だろうと、なんだろうと)


ハンサムで、真面目で、善良そうに見えるのなら、それだけで充分。


デビューして2年目としては、上手い具合に当てはまるような配役をつかんだと思う。




そして、この手の精神分析モノでは、ヒッチコック先生も、なんとか手堅くまとめているんじゃないだろうか?

星☆☆☆である。