2019年6月11日火曜日

映画 「レモ / 第1の挑戦」

1985年 アメリカ。



その昔、こちらの映画も、何度も繰り返し、日曜洋画劇場で放映されていたものだ。



監督は、『007 ゴールド・フィンガー』でお馴染みのガイ・ハミルトン。


タイトルが、『レモ / 第1の挑戦』だけあって、シリーズ化する予定だったのだろうが……残念。これ一本で終わってしまった。



こんなに面白いんだけどなぁ~。







普通の中年警官『マキン』(フレッド・ウォード)は、夜間の勤務中、港にいたチンピラたちのいざこざ(どうでもいい)に巻き込まれてしまう。


それでも、チンピラたちを成敗し、ヘトヘトになりながらもパトカーに戻るマキン。


かじりかけの夜食のバーガーを手に取ったとき、パトカーに、いきなり衝撃が襲った。


後ろから、大型トラックが押してきたのだ。

(何だ?!何が起こったんだ?!)

マキンのパトカーは、そのまま海へ押し出され、ブクブクと沈んでいった……。





そして、ハタッ!と目が覚めたマキン。


いったい何日が過ぎたのか………マキンは病院のベットの上に寝かされていた。


起き上がり、そばの鏡を見ると、そこに映るのは、見たこともない別人の顔。


「何だこれは?これは俺の顔じゃない……」(いいじゃないか、前よりハンサムになってるんだから)





その時、戸口のドアから男が、颯爽と入ってきた。

「顔だけじゃない。指紋も変えてあるし、君は、完全に生まれ変わったんだ!」

その男、マクレリー(J・A・プレストン)は淡々と言い放った。


「マキンは死んだ。君は今日から『レモ・ウイリアムズ』と名乗り、我々の組織の為に働いてもらおう」


レモ・ウイリアムズ(同じフレッド・ウォード ……多分、マキンの役の時だけブサイクに変装してたんだろう)は、ポカ~ンとした顔をしている。(こんな人権無視な勝手な整形手術許されるの?)


あまりの状況の変化についていけないレモ。


それでも、そんな事はお構いなしに、マクレリーは、レモが退院すると、強引に(銃を押し付けながら)、組織の場所に連れていった。



そこは小さなオフィス。


ポツンと一人の老紳士『スミス』(ウィルフォード・プリムリー)がいるだけだった。


(これが組織?)


「いったい何人いるんです?ここの組織は?」

レモが聞くと、スミスは、しれ~として、「君を入れて、我々3人だけだが」と言うのだ。
(どんだけ、低予算の組織なのだ!)


こんな小規模の組織だが、大統領の直属で、法律で裁けない悪を替わって成敗する組織らしい。(ほんとかよ)



その暗殺者として『レモ=マキン』が選ばれたのだった。(まぁ、選考基準は、親類や家族がいないってだけだが…)


(ええい!こうなりゃ、ヤケクソよ!やったるわい!)、と思ったか、どうか分からないが、レモは、取りあえず引き受けた。


「さて…君に最初の任務だが……」






「ここだ。」


夜半、マクレリーの車に乗せられたレモは、あるアパートの前で降ろされた。


「ここにいる人物を殺してくるんだ。俺は車で待っている。」

マクレリーは、レモに銃を渡すと、さっさと行け!と、ばかりに、手を振って合図をした。



マクレリーを振り返り、振り返り、レモはアパートに入っていった。(トホホ…やっぱり気が進まないなぁ~)


ドアを開けると、目の前には、アジア人の老人が、ちょこんと座っている。



(なんだ、年寄りか。どうせ英語も分からないだろう……)


その年寄りを無視して、先の部屋の階段に進んでいくレモ。


そんなレモに、ドアのそばの年寄りが、
「どこへいく?」と声をかけた。(もちろん英語で)


(なんだ、言葉が分かるのかよ。)


「じいさんには関係ない!」レモは、そう言い捨てると、奥の部屋のドアに手をかけたが、老人はさらに続けて、こう、声をかけた。


「奥には誰もいやせん。このアパートには、わし一人だが」


(何?すると殺しのターゲットは、目の前の、このジジィなのか?)レモは、一瞬、躊躇したが、すぐに腹を決めた。


こんなヨボヨボのじいさん、片付けるなんて訳ない。楽勝な仕事だ。


「悪いが、じいさん死んでもらうぜ」

レモは銃を構えると、老人に向けて発砲した。


それをスルリとかわす老人。


2発目、3発目も、弾丸がスローモーションのように見えるのか、なんなくかわしていく老人。



やがて弾を撃ち尽くしたレモに、間合いをつめると、老人はレモの腕を、軽くひねり、力も入れないで投げ倒した。


何が起きたのか分からないレモだったが、それでも、老人に向かって体当たりしようとする。


それを、またもやスルリとかわされ、壁に激突。


まるで赤子のように扱われるレモ。



ドタバタ一人相撲で、(ゼイゼイ、ハァハァ)息がきれて、最後にはバッタリ、その場に倒れこんだレモ。




そこへ、しばらくして、マクレリーが現れた。

「どうですか?彼は?」


老人はこう言ったのだった。

「まるでノロマだ、反射神経が、まるでなっとらん!」

老人の名は『チュン』(ジョエル・グレイ)。


組織がレモを鍛えるために選ばれた指南役。武術の達人なのだった……。




ここから、師範代チュンの下でレモの修行の日々がはじまるのだが……。


『ベストキッド』やジャッキー・チェンの『酔拳』なんて、修行ものの好きな方はニヤリとするだろう。




アパートの屋上で、幅の狭い縁を走らされたり、(下を見れば一貫の終わり)

長い高さの棒の上を、順番に、ピョンピョン、飛び移りながら、昇っていく修行などなど。



回る観覧車に掴まりながら、昇り避けるなんて危険な事も。(CGもない時代ですぞ)



最後には、修復中で、頭上まで足場を組んだ『自由の女神』での修行なんてのもある。(高所恐怖症の方には、どれもこれも鳥肌ものである)




こんな、過酷な修行を続けるうちに、レモの身体能力も、ドンドン上がっていき、ずば抜けて成長していく。(一歩間違えれば死んでるのに、このレモも運がいいというか、相当タフだよ)




でも、チェン老人が教える『シナンジュ』という武術、現実には存在しません。


まったく架空の武術なのである。(だろうと思ったよ。こんな修行、見たことも聞いたこともないわ (笑) )


そして、アメリカで、のさばっているという巨悪へと向かっていくレモなのでした。





この『レモ』には原作が一応ある。



『デストロイヤー(殺人機械)シリーズ』という小説で、なんと150冊近くの長寿シリーズ。


だから、続けようと思えばシリーズは続くはずだった、が、残念!この映画はヒットしなかったのだ。



何でなんだろう?こんなに面白いのに……と、当時は思ったものだが、数十年ぶりに観て、その謎も解けた気がする。



音楽が、チョーダサいのだ!



監督も、演出も、脚本も、俳優たちも良いのに、バックで流れる音楽がダサすぎる!




まるで『特攻野郎Aチーム』を崩したような音楽で、それが、この映画に全然マッチしていない。


音楽だけを入れかえたら、多分、上質なエンターテイメントとしてヒットして、シリーズ化も夢じゃなかったと思うのである。



だから、残念でならない。


映画のできばえは、音楽を引いて、星☆☆☆☆の4つ星とさせていただきます。



それでも観る価値あり。


バカバカしい修行の数々も、これぞ80年代!って感じの雰囲気。(修行の成果で、固まってないコンクリートや水面を走れるようになるって! もう、どんな修行よ!(笑) )


どうぞ、御一見を!