2019年5月11日土曜日

映画 「カリフォルニア・ドールズ」

1981年 アメリカ。



町から町へ……。


ポンコツ車に乗りながら、旅する一人の中年男、そして美女2人。


女子プロレスラーのマネージメントを請け負う『ハリー』(ピーター・フォーク)。


『カリフォルニア・ドールズ』のコンビ名でタッグを組む、ブラウンヘアーの『アイリス』(ヴィッキー・フレデリック)とブロンドの『モリー』(ローレン・ランドン)。



3人の夢は大きく『世界チャンピオン』になってスターになる事だ!



今日もリングに上がると、日本女子レスラー相手に火花を散らす。


試合が終わった後、感心して観ていた日本人のプロモーターから名刺を渡されるハリー。



「あの子たちは日本に来たら、きっとスターになる!その時は連絡をどうぞ!」


ハリーは、二人を誉められルンルン気分。


ご機嫌で、今日の日雇いプロレスのギャラを貰いに、興行師のエディ・シスコ(バート・ヤング)の元を訪ねた。


用心棒に見守られながら、応接室では、エディが出張の美容師を呼んで髭剃り中だ。


「ギャラはそこにある」


目をつむりながら、気持ちよさそうに髭をあてられているエディは、ハリーの顔も見ずに呟いた。



ハリーが机の金を数えると20ドル足りない。

「タオル代を貰ったぜ、それを持って、とっとと出ていきな!」


エディが言う。



「あの子たちにとっては、20ドルは大金なんだ!ちゃんと払うものは払ってくれ!」

ハリーはカンカンだ。


だが、用心棒がハリーの前に立ち塞がった。悪党エディは続けて言う。


「俺はこの辺りの興行すべて、取り仕切ってるんだぜ!それで満足して、とっとと失せるんだな!」

ハリーは追い出された。



駐車場にハリーが行くと、ポンコツ車の前では、アイリスとモリーが待っていた。


「どうだった?ちゃんとギャラは貰えたの?ハリー?」

ハリーは二人の言葉に答えず、ポンコツ車からバットを取り出すと、辺りを見渡しながら、エディの車を探しだした。


そして、おもいっきりバットを振り上げると、エディの車をボッコボッコになるまで殴り続けた。


「何するのよ?!、ハリー!!」

アイリスとモリーが驚くが、ハリーは、今ので気が済んだのか、平然とした顔だ。


「乗れ!次の町に行くぞ!」


3人の旅は続く………。





ロバート・アルドリッチ監督の遺作。

それまで、ドロドロの愛憎劇「何がジェーンに起こったか?」とか、男の熱い戦い「北国の帝王」、「ロンゲスト・ヤード」を得意としてきたアルドリッチが、最後に選んで録ったのが、この「カリフォルニア・ドールズ」だったのに驚いた。


女子プロレスラーの世界とはいえ、ハートウォーミングな王道の青春映画とは……。



今では、すっかりプロレス人気も下降して廃れてしまったが、一時期は、日本でも熱狂的な人気で、試合という試合はゴールデンタイムで放送されていたものだ。(時代なのか……その証拠に、この映画でも日本人レスラー役で、ミミ萩原が出演していたりする。)


でも、私、この映画をプロレス映画とも、王道の青春映画とも考えず、別の事を考えながら観ておりました。



このハリー役のピーター・フォークは、役得だなぁ~、と思いながら……。



本当にモテること、モテること!(うらやまし~)


何でこんな中年がモテるの?

いったい秘密は何だろう?、と考えながら……。




旅先では、ゆきずりの女との一晩過ごしたり。

モーテルで、ハリー(ピーター・フォーク)の部屋をアイリスが訪ねると、バスルームからは、あっけらかんと金髪のお姉ちゃんが、素っ裸で出てくる始末。(「あ~ら、お邪魔さま」とからかいながら出ていくアイリス。)



でも、そんなアイリスの心は、とても複雑だ。


ハリーが、無理に決めてきた泥レスリングの試合に「嫌だ!嫌だ!」と言いながらも、相方のモリーと出演したりする。


泥にまみれながら、取っ組み合いをして、上に着ているものは破けて、裂けてしまう。


恥も何もかなぐり捨てて、観客の笑い声や冷やかしの言葉の中で、精一杯ファイトする。


でも、試合が終わった後、モーテルに帰りつくと、さっきの恥っさらしの光景が頭の中から離れない。



アイリスはハリーに当たり散らす。

「お客は皆、笑っていたわ!なんでこんな仕事をさせるのよ!みんな、みんな、あんたのせいよ!!男としてもマネージャーとしても最低!あんたなんて男のクズよ!クズ!クズ!クズ!」


泣きながらハリーに拳をあげ続けるアイリスに、ハリーの1発の平手うち(バチンッ!)


そして、ポカ~ンとしているアイリスを「わかったから……わかったから…」と言いながら、アイリスをおもいっきり、優しく抱き寄せて、キスをする。



アイリスの癇癪は一気に崩壊し、一瞬でハリーへの愛しさに変わり、涙、涙にくれながら、ハリーにしがみつくと、


「ハリー、昔からあんたの事が好きだったのよ!」

っとなるわけなのだ。(これを役得と言わず何と言うのか)




この女性を、その気にさせる手練手管は、どこかの女ったらしか、ジゴロ並みの凄技ある。



だからこそ、アイリスやらモリーも、この冴えない中年ハリーに文句を言いながらも付いていくのだ、と勝手に合点してしまった。



プロレスよりも、こんなシーンに、何だか、いちいち感心しながら、「フム、フム、男として勉強になるなぁ~」と思いながら観てしまった。


興業師のエディが言うのも分かる気がする。

「お前、若い女、丸め込むのは得意だろ!」

「このスケコマシ野郎が!」とか(いちいち納得である)




なんだか、自分の映画の見方が、すごく片寄っているような気もするが、…………それでも、中年の星ハリー(ピーター・フォーク)に女性の扱い方の指南術を学ぶのなら、この映画は最適かもしれない、と思うのである。



星☆☆☆

(気がつけば変な映画評である。あまり参考にならないので、初めて観る方はニュートラルな気持ちで観てくださいね。)