2023年5月3日水曜日

よもやま話 「サモ・ハン・キンポーの日本での悲劇」

 





近年では名前の『キンポー』を取ってしまい『サモ・ハン』に改名してしまったという。(知らんかったわ)


まぁ、我々世代には、いつまでもサモ・ハン・キンポーって事で。(ヨシとしときましょ)



幼い頃から京劇を学び、徐々に功夫(クンフー)映画の端役として出演しはじめたサモ・ハン・キンポーは、とうとう憧れのブルース・リーの映画『燃えよドラゴン(1973)』で端役とはいえ、共演をはたす。


《↑だいぶ感じが違う当時のサモ・ハン(丸っこいのは同じだけど)》
 


その後、ブルース・リーが亡くなり、功夫映画が、やや低迷してきた頃、尊敬するブルース・リーをオマージュにした映画『燃えよデブゴン(1978)』に主演。


この映画、ジャッキー人気の陰に隠れて、日本では公開当時、あんまりパッとしなかったようだ。(「どうせ『燃えよドラゴン』のバッタモンでしょ」って意見がほとんど。)


それでも観た一部の人からは、


「あんなに太っていて、よくもまぁ、あんなに動けるなぁ~」

と驚嘆させたそう。



それは地元、香港でも同じで、「あれだけ動いているのに、なぜ?痩せない?!」と、まで言われていたそうな。(余計なお世話(笑))


でも、その答えは簡単明白。


とにかく消費カロリーを上回るほど、

よく食っていたから!(肥る理由なんてコレ以外にないのだ)


一回の食事でも、ご飯🍚なら、おかわり杯なんてのを日常的にしていたそうだから、そりゃ、あの身体でも納得してしまうだろう。


何にせよ、《サモ・ハン・キンポー》=《動けるデブ》=《燃えよデブゴン》って名称は日本で認知されて、コレは徐々に世間的にも浸透されていく。


…… だが、これが 地獄への序章のはじまり。


映画『プロジェクトA』で、日本でも知名度が上がってきたサモ・ハン・キンポーの映画には、何でもかんでも【 燃えよデブゴン 】の冠がつけられるようになっていくのだ。


続編でもなければ、内容的にも全く無関係なのに。


サモ・ハンが出てるフジテレビが勝手に『燃えよデブゴン2、3、4 …… 』として放送するビデオ発売レンタル店へ(ビデオレンタル全盛期)が一連の流れとなる。


勝手に日本ではシリーズものとして扱われ、乱立されてきたサモ・ハン・キンポーの映画。


ココにその数がどんだけあるか記しておこう。



 ※太文字がテレビ放送時のタイトル、(括弧内)がビデオ及びDVDの変更後のタイトルである。



★燃えよデブゴン(燃えよデブゴン)…… 1978年。これが最初だし、まんまなのは納得。原題も《Enter the Fat Dragon》だしね。


★燃えよデブゴン2(燃えよデブゴン 正義への招待拳)…… 1980年。前作と無関係な続編のはじまりである。


★燃えよデブゴン3(燃えよデブゴン カエル拳対カニ拳) …… 1978年。《2》よりも年代的には前なのに《3》として放送。ここまでくると 内容だけでなく時系列も完全無視である。


★燃えよデブゴン4(燃えよデブゴン4 ピックポケット!) …… 1982年。


★燃えよデブゴン5(モンキー・フィスト 猿拳) …… 1979年。


★燃えよデブゴン6(燃えよデブゴン 豚(と)んだカップル拳) …… 1979年。改名後も、おふざけが過ぎる酷いタイトル。


★燃えよデブゴン7(燃えよデブゴン7 鉄の復讐拳) …… 1979年。


★燃えよデブゴン8 クンフー・ゴースト・バスターズ(妖術秘伝・鬼打鬼)…… 1980年。


★燃えよデブゴン9 (プロジェクトD) …… 1979年。もしかして改題の《D》は《デブゴン》の《D》って意味?


★燃えよデブゴン10 友情拳(同一) …… 1978年。


★燃えよデブゴン お助け拳 …… 1980年。カウント数字が無くなったものの、ビデオやDVDのソフト化すら、今だに無し。


★燃えよデブゴン 出世拳(デブゴンの太閤記) …… 1978年。


★燃えよデブゴン 地獄の危機一髪(斗(たたか)え!デブゴン) …… 1980年。


★デブゴンの怪盗紳士録(同一) …… 1984年。


★デブゴンの霊幻刑事(サモ・ハン・キンポーのオバケだよ全員集合!) …… 1986年。


★帰ってきたデブゴン 昇龍拳(ベティキャブ・ドライバー) ……  1989年。


★痩せ虎とデブゴン(ハチャメチャ刑事 マックとロン) …… 1990年。日本でDVDになったのは2015年。(約25年ぶりである)


★おじいちゃんはデブゴン(同一) …… 2016年。DVD化は翌年2017年。コレはレンタル店で最近見かけたものの、「また、デブゴンかよ …… 」とウンザリした記憶がある。




ざっと書いてみて、サモ・ハンの《デブゴン》はこんなところである。

他にも番外編としてドニー・イェンの《デブゴン》もあるらしいが、サモ・ハンは一切関係なし。


さらに調べてみると、〜デブゴン6まではフジテレビのゴールデン洋画劇場で放送されていて、デブゴン7〜以降は、フジテレビの深夜枠で、ご覧のような《デブゴン》表記で放送されていたそうな。(そりゃ、こんな安易なタイトルばかりではゴールデンの視聴率は稼げませんわ(笑))



それにしても、恐ろしきは、当時のフジテレビである。😱



映画の内容なんて 一切観ていない 担当者によって、勝手につけたタイトルで、何年も放送していくなんて …… (今なら放送事故、訴訟モノだろうよ)



なんで《観てもいない》って分かるか、って?



映画を観れば一目瞭然。




例えば『燃えよデブゴン5』なんてタイトルで放送されたモノなんて、監督や出演をサモ・ハン・キンポーがやっていても、この映画は ユン・ピョウが主役



サモ・ハンなんて映画の中盤過ぎまで姿を一切現さないのだ。



元々、俳優になるのには尻込みしていたユン・ピョウ

それを「お前は顔がいいんだから、絶対俳優を続けるべきだ!」と叱咤激励したのはサモ・ハン。


そうして自ら監督をして撮りあげた映画が『モンキー・フィスト 猿拳』で、コレはユン・ピョウにとっては、おめでたい初主演映画なのである。



それをフジテレビでは勝手に『燃えよデブゴン5』だなんて ……




後年、この映画は『デブゴン』の冠が取れて(当たり前だっつーの!)『モンキー・フィスト 猿拳』のタイトルでDVD化されているけど、マニアックなフアン以外には、ほとんど知られていないかもしれない。



私はコレを最近観た。(とても面白かった!)


後日、この映画に関してはキチンとした形でblogに取り上げるつもりである。





他にも、ズラズラあるが、これらのほとんどを私は観ていない。(全てが傑作とは思えないが、中には掘り出し物もあるかもしれないのにね)



まぁ、こんな阿呆タイトルばかりじゃ、観てこなかったのもしょうがないか。



ビデオレンタル時代には、こんなタイトルが並んで陳列されておりましたが、DVDに移行してからは、サモ・ハン・キンポーの主演映画は、パッタリと見かけなくなってしまいました。




日本においては、雑な扱いをされてきたサモ・ハン映画。



さすがに2000年代を過ぎれば、それもおさまるだろうと思っていたら、またもや『おじいちゃんはデブゴン』なんて糞タイトルを久しぶりに見た。(原題は《the bodyguard》)




何でもかんでも、デブゴンデブゴン …… 

明けても暮れても、デブゴンデブゴン …… (スティーブン・セガールに至っては、何でもかんでも『沈黙 … 』脱線した(笑))




担当者のやる気の無さ、

この映画を実際、ちゃんと観てもいないだろうし、本気で「売り出したい!」という気持ちすらも見えてこない。



邦題一つの付け方で、そんなモノが観る側にも、伝わってくるのだ。





近年、持病の糖尿病の悪化で車椅子姿のサモ・ハン・キンポー。


そうして、さらに激ヤセしたサモ・ハンの姿を見てしまった。



弱々しい姿のサモ・ハン・キンポー。



多分、『おじいちゃんはデブゴン』なんて悪題をつけられた映画が、最後の主演作になるかもしれない。



糖尿病になってしまったのは、昔からの暴食を続けた自己責任もあるだろうが、本人が健在のうちに、何とか良い作品だけでも、タイトルの是正をしていってほしいものである。




この人は俳優としてだけじゃなく、映画監督としても武術指導者としても、本来、もっと評価されてもいい人物なのだから。




以上、サモ・ハン擁護の為に、ちょこっと書いてみた一文でございました。