2023年3月1日水曜日

映画 「南北酔拳」

 1979年  香港。




重い腰を上げて、ようやっとコレを観たって感じである。


南北酔拳』…… 大ヒット作『ドランクモンキー  酔拳』の正当な続編。


ただし、ジャッキー・チェンは出演していない。(これが理由で中々食指が動かなかったのだ。)




その代わり、この『南北酔拳』では、『ドランクモンキー 酔拳』で活躍した他のキャストやスタッフたちが勢ぞろいしている。




赤鼻の酔拳師範代『ソー』(ユエン・シャオティエン)は、『ドランクモンキー 酔拳』で愛弟子『ウォン』(ジャッキー・チェン)の勝利を見届けた後、3年ぶりに妻が待つ村へと向かっていた。(このジーサン、てっきり宿無しのフーテンだと思っていたら、まさか結婚していたとは!(⁠´⁠⊙⁠ω⁠⊙⁠`⁠)⁠!)



そんな同時刻、不審な二人連れがソーを探して、村までやって来ていた。

北酔拳の遣い手『ソンツォ』(ウォン・チェンリー)と、その弟子である。



「我こそは酔拳最高の遣い手なり!南にいるという、酔拳師範代ソーを見事打ち負かして、名声を轟かせてやる!!」(なんだか『蛇拳』の時と同じような目的の敵である)


そんな肝心のソーはというと …… 途中立ち寄った食堂でアベックの詐欺師に、まんまと金を盗まれて踏んだり蹴ったり。


追いかけようとするも、勘違いした食堂で働く若者『ワンハン』(ユエン・シュンイー)に邪魔されて、アベックを取り逃してしまう。


意気消沈のソーが実家に戻ってくると、妻(リンダ・リー・イン)はカンカン!


「アンタ、今の今までいったいどこにいっていたのよぉー!連絡も全然しないで!!」(まぁ、3年もほっとかれりゃ、奥さんの怒りも分かるわな(笑))



先程、しつこい借金取りを追っ払ったばっかりで、それもあってか、奥さんの怒りは頂点だ。


二人がスッタモンダで喧嘩をしてると、そこへ割り込んで来た一人の男。


なんと!

あの食堂にいた、さっきの若い青年ではないか!



「母さんも、父さんも喧嘩をヤメてよ!」

「と、父さん?!」

見も知らない男に、突然《父さん》呼ばわりされてスーは驚いた。


「オマエという女は、俺の留守中に浮気をしていたのかー!」

スーの頭は混乱して、こんな言葉を投げつけると、呆れた妻からは、即座にこんな返答が。


「バカ!《養子》だよ!《養子》!!うちは子供がいないからね。あんたがいない間に養子をとったのさ!」


「養子ねぇ~ …… 」


先程の出会いが最悪すぎたのか、ソーがワンハンを見る目つきは、あんまり好ましくない。


「そうだ!アンタ、ワンハンに《酔拳》を教えてやりなよ!」

妻が突然、突飛な提案をした。



それにのっかってワンハンも「是非、ボクも習いたいです!」という始末。

「はぁ~、なんでワシがぁ〜?!…… 」

全く気乗りのしないスー。


そんな頃、敵となる北酔拳の二人連れは、すぐ側まで来ていて ……






この上記の男がユエン・シャオティエンの本当の実子であり(映画では養子だが)、監督のユエン・ウーピンの弟、《ユエン・シュンイー》である。


今回、ジャッキー不在の続編である『南北酔拳』で、このユエン・シュンイーが実質主役を担うのだが ……… 



まぁ、それにしても地味だ。

まるで 華がないわ~(笑)。


このユエン・シュンイーが前作の『酔拳』にも違う役で出ていたらしいのだが、まるで思いだせない。(そのくらい印象薄い顔なのだ)



他の面々は即座に判別がついたのに。




★『蛇拳』や『酔拳』で宿敵を演じたウォン・チェンリーは、ここでも最大の敵役。


ただ、白髪の長いロン毛、口髭、眉毛の変装が邪魔そうで、『酔拳』の時よりも動きのキレは鈍そうに見えてしまう。





リンダ・リン・インさんは『酔拳』ではジャッキーの手強い叔母役だったが、ここでもやっぱり強いスー師範の妻役。


この垂直にピーン!と伸びる足上げは健在である。




★『酔拳』でジャッキーの兄弟子だったディーン・セキは、ここでもコメディーリリーフ。


小悪党の銀行頭取役を嬉々として演じておられます。




こんな面々が『酔拳』とは違う役で出ているのは、けっこう楽しい。




ただ、やっぱり残念なのは、この男(ユエン・シュンイー)が主役ってのがねぇ~
……




この後、スー師範はデタラメの修行をさせて、まるでやる気無し。(金が絡んでないからなのか?)


しまいには、

「オマエには酔拳の素質はゼロ!才能なし!」と冷たく突き放す。



それに ガ~ン!と大ショックを受けたワンハンは書き置きを残して家出。


《孤児の自分を養子にまでしてくれて、今までありがとうございました。さようなら …… 》(この置き手紙、案外ホロリとさせる)



で、普通なら後悔した『ソー師範』(ユエン・シャオティエン)がワンハンを追いかけていって、もう一度、酔拳の修行をさせると思いきや、この映画ではそうはならない。

トンデモない展開が待っているのだ。




ワンハンが偶然出会った、顔色の悪そうな、この怪しげな男↓



この男を師匠にして、病人拳なる拳法を学ぶ事になるのだ!(凄いネーミングの拳法だ)



それを会得するためにワンハンは修行、修行の毎日をおくりはじめる。(でも、「病人が修行して健康的に強くなるなんて、どんな理屈やねん!」って話だ(笑))



見事、《病人拳》を会得して、強くなったワンハンは、苦戦しているスー師範を助け出し、北酔拳の刺客二人を打ち負かした。



ただ、唯一の誤算は 本物の病人になってしまったこと。



北酔拳の最大の敵『ソンツォ』(ウォン・チェンリー)を倒した後も、誰も彼もがソンツォに見えてしまう幻覚がはじまるのだ。(こんなデメリットがあったとは)



錯乱状態のワンハンは、たまたま側に立っていた『スー師範』(ユエン・シャオティエン)に飛びかかって襲いはじめる。


「ま、待て!ワシだ!分からんのか?!ヒィーー!!」


ワンハンの攻撃から逃げまどうスー師範。

映画はここで《劇終》となる。………





全く酒の呑めないワンハン青年、それに《病人拳》なる珍拳法 ……



《酔拳》のタイトル、ほぼ関係ないじゃん!(笑)




こんな映画でも、前年の《ドランクモンキー 酔拳》の余波なのか、当時は興行収入ランキングで10位にくい込んだそうな。(あり得ない)



でも、私の感想は星☆☆。

『酔拳』を楽しめた人には、「こんな後日談がありましたよ」ってところで、大甘に見ても星☆☆☆。



つくづく「ジャッキー・チェンが出演出来てればなぁ~」と思わずにはいられない。(後年『酔拳2』なんて映画が作られるが、全然『ドランクモンキー 酔拳』の続編ではない)



でも、当時のジャッキーにユエン・ウーピン監督の映画に再び出る事は不可能だったのだ。(※詳しい事情は、2022年10月に、このblogで書いた《人物 「ロー・ウェイ」》を参照くだされませ)





尚、このユエン・シュンイーさんの主役はこれっきり。


後に見かけるのは、ユン・ピョウ主演の映画『ツーフィンガー鷹(1981)』。

こんな凶悪顔でお見かけする事になる。




華のない主役をつとめるよりも、印象的な悪役へと活路を見出したのだろうか。



本当に俳優さんたちの仕事も大変である。

長々、お粗末さま。(↓たった数年でいったい彼に何があったのだ。とにかくスゲ~顔だ(笑))