2021年12月27日月曜日

人物 「野坂昭如」

 1930〜2015年(85歳没)。




年末に近づくと、どの局でもこぞって長時間歌番組をやってるのは、昔も今も変わらない恒例行事。


最近では、滅多にTVさえも観なけりゃ、歌番組さえも観ない自分なのだが、先日たまたまTVをつけていると………



流れてくるのは、どれもコレも同じようなモノばかりに、たちまちウンザリ。


いつのまにか、歌番組は《無個性な若い人たち》が、大勢出てきて占拠するという、《素人・歌の発表会》になっていたのでした。



コレに長時間付き合う気もなく、TVをそっと消した私。



「もう、歌番組はお終いかも……」と、何気に思った時、私の頭の中に、ある曲のフレーズが、いきなり飛び出してきて、勝手にリフレインしはじめた。


それが、野坂昭如(のさかあきゆき)が昔、歌っていた『マリリン・モンロー・ノー・リターン』って曲。



♪この世はもうじきおしまいだ〜……


♪マリリン・モンロー・ノー・リターン、ノー・リターン……



ものすごく悲観的でバカバカしい歌詞なんだけど、野坂昭如が繰り返し、このフレーズを歌ううちに妙な可笑しみが生まれてくるという、稀な珍曲である。



野坂昭如』……この人を思い浮かべる時に普通の人は何を思い浮かべるのだろう。



ジブリが映画化した悲壮な物語『火垂るの墓』の原作者?



それとも、舞台上で、大島渚に突然殴りかかった、あの伝説の名場面だろうか?


私、たまたまワイドショーで、この場面を観ていて、突然の変貌ぶりにド肝を抜かれた思い出がある。



《大島渚を祝う会》が行われ、壇上でニコヤカに挨拶する大島渚小山明子のおしどり夫婦。


そこへ野坂昭如がやって来て、隣で祝辞を読み上げるも、いきなり振り向いて大島渚の顔面に痛烈な右フック👊



(気がおかしくなった?)


怒りのスイッチが入った大島渚も、野坂昭如に掴みかかり、持っていたマイク🎤でボッコボコに殴りかかる。


「殴ることはないだろー!」頭から湯気💢が出る大島渚と、酒でヘベレケの野坂昭如の間に入って、小山明子が「まぁ、まぁ……」と笑顔で止めに入る。


関係者に壇上から引っ張っていかれる野坂昭如。

今、思い返しても壮絶な名場面である。


後日、野坂昭如の怒りの理由も分かるのだが……(気弱な野坂昭如は祝辞を考える為に前の晩から何度も書き直していたそうな。そして当日、待てど暮らせど自分の順番がまわってこなくて、とうとう酒をがぶ飲み。結果あの醜態である)



それにしても、大のオッサンたちの本気の殴り合いが、公共の電波で流される様子は、当時、中々のインパクトだった。


この件以来、すっかり《野坂昭如》=《アブナイ人》のイメージが定着してしまったと思う。


周りも「なるだけ関わらないでおこう……」と、大部分の人たちが、潮が引くように離れていったのかもしれない。



でも、当の本人は少しホッとした部分もあったのじゃないかな。


なにしろ、この見た目とは違って、気弱な性格ゆえに、頼まれると断れないのだから。(だから酒の力を借りるのだ)



小説家だけならまだしも、作詞家(童謡『おもちゃのチャチャチャ』)、政治家(参議院議員に当選)などなど……多岐な分野で活躍した野坂昭如だったけど、全てが自分の本意だったのか。


断れなくて、これらの活動も、イヤイヤこなしていたんじゃないのかな。


もちろん、歌手活動も……



前述の『マリリン・モンロー・ノー・リターン』にしてもだけど、まぁ、次々に名曲、珍曲を歌ってる野坂氏。


でも、それがなぜか?耳に残るようなモノばかりで、聴いてるとクセになり、困るんだけどね(笑) 。



ヴァージン・ブルース』(これもトンデモない歌詞。今じゃ、このキワドイ歌詞は放送コードに引っかかるはず。だけど後に戸川純がカヴァーしてます)


黒の舟唄』(名曲!「♪男と女のあいだには〜深くて暗い河があるぅ~……」の、有名なフレーズは誰でも1度は聴いた事があるはず)


チン●マケの唄』(けっして卑猥な唄じゃないのだけど……とにかく凄い歌。どうも反戦歌らしいのだが。「♪チーン、チーン、チンタ●ケ……」を連呼する度に複雑な笑いが…… (笑) )



CMソングでは、

「♪そ、そ、ソクラテスか、プラトンか〜、に、に、ニーチェか、サルトルか~♪」なんて歌もございました。(これも有名)



で、結局、ここまで書いてみて何が言いたいかというと、世の中は、いつの時代も、歌手とはかけ離れたような分野の《オッサン》が、突然現れて、珍妙な歌詞を歌うのを求めているのだ。(と、私は声を大にして言いたい!)



歌番組も、若者たちばかりが揃って同じような曲を歌ってたんじゃ、メリハリが無くて、《つまんない!》ってこと。



すき間、すき間に、そんなオッサンの珍曲が入るだけで歌番組は俄然盛り上がるし、他も引き立ってくるのである。(紅白はその辺りをまだ分かっていて、それを担うのが、今年は一人だけ奮闘する、松平健である)



歌うは《一時の恥》かもしれないけれど、作家でもいいし、中堅俳優でもいい。

それにスポーツ選手でもいいし、政治家だっていい。


野坂氏のように、恥をかなぐり捨てて、《一時の恥》をかいてみるような変なオッサンが現れないかなぁ~。


2022年は、歌謡界に、そんなオッサンの出現を期待したいと思う。



※アッ、そうそう、こんな野坂昭如でも、あるアイドルの前では、途端に借りてきた猫状態だったそうな。


それが、スーパーアイドル、山口百恵ちゃん。


百恵フアンの野坂氏は、百恵ちゃんを目の前にすると、終始デレデレ♥️。(この顔で)


「も、百恵さん……」(敬語?)


百恵ちゃんも苦笑い。


狂犬を手なづける百恵ちゃんは、猛獣つかいか、はたまた菩薩様か。

流石である!(笑)