2021年9月11日土曜日

映画 「チェンジリング (1980) 」

 1980年  カナダ。






殺された魂は、その復讐をとげるまで、決して安らぐことはないのか………



この映画を観終わった後、すぐにこんなキャッチ・フレーズが浮かんできた。



この映画は、自分が偶然探し当てた映画としては、久しぶりの大当たりだった。(なんで当時この映画を観てなかったんだろう!バカ!バカ!)


そのくらい大傑作!(配役、演出、カメラ・アングル、ストーリー展開、謎解き、ラストに向けての恐怖感………ああ、何もかも自分好みだ。)




不慮の交通事故で、妻と一人娘を亡くしてしまった作曲家の『ジョン・ラッセル』(ジョージ・C・スコット)。


傷心のジョンは、妻子と暮らしたニューヨークを離れて、ひとりシアトルへ移ることにした。


とりあえずシアトルの大学で音楽の教鞭をとるを事になったジョン。


ジョンの名声の為か、講義を行えば、教室は受講生で入りきれないくらい満杯になる(大人気だ)


シアトルでは、歴史保存協会に勤めている親切で美人な女性『クレア・ノーマン』(トリッシュ・ヴァン・ディヴァー)を紹介された。


「とにかく住む所を決めないとね……」


音楽家のジョンはピアノを弾くので、騒音でご近所トラブルになるようなマンションには、とても住めない。


するとカーマイケル財団が所有する《チェスマン・ハウス》と呼ばれる屋敷が、運良く見つかった。


そこを借りてジョンは住むことになる。


何も問題のないような古びているが広々とした屋敷。


ただ、夜になれば、やっぱりジョンは亡くなった妻子を思い出して、シクシク枕を濡らす日々が続くのだが。(可哀想に)




そんな生活が始まって、しばらく経った頃、ジョンは、夜な夜な何かを叩く物音に気づき始める。


(配管の故障か?それとも、どこかの水漏れ?……)


業者に頼んで点検してもらうも、どこにも異常はない様子だ。



そうして、しばらくすると、今度はジョンの耳に聞こえはじめる奇妙な囁き声。


助けて………助けて………」


この屋敷には、確かに《何か》がいるぞ!(幽霊が!)


ジョンはクレアに相談するも、クレアは「そんなバカな!」と最初全く取り合わないのだが、この屋敷の不審な過去を調べはじめると、段々と信じるようになってくる。


「本当に何かいるのかも……」


そんな二人は霊媒師を招いて、屋敷の中で降霊会をはじめようとするのだが………





少しずつ静かに積み重ねていく恐怖に固唾を呑むばかり。


いつしか食い入るように最後まで観ておりました。(こんな体験も久しぶりだ)



降霊会で、霊媒師が口述速記で何十枚もの紙に鉛筆を走らせる場面なんてのは、中々の迫力だ。


「お前はいったい何者なの?」


超スビードで、紙の上に殴り書きで鉛筆をはしらせる霊媒師の紙を、ワンコそばの要領で、1枚、1枚抜き取る助手は、あ・うんの呼吸でアッパレの職人技。(もう、スゲー光景!ジョンも口あんぐり。)


紙には《ジョセフ》と書かれた名前が見えてくる。(同時にこの降霊会の録音もしてある)


やがて、足の悪い男の子『ジョセフ』が、屋根裏の部屋にあるバスタブで、父親に溺死させられて殺された、というショッキングな真相が判明する。(もう、この場面も残酷過ぎて微動だに出来ないくらい)


「助けて…お父さん……助けて……メダル……ぼくのメダル……」



《メダル》って何のことだ?


それにしても殺された男の子の名前が『ジョセフ』なんて、今現在、この町で猛威を振るっている大富豪で議員の『ジョセフ・カーマイケル』(メルヴィン・ダグラス)と同じ名前じゃないか!!



それに、この殺された男の子『ジョセフ』の遺体はどこにあるんだ?!



こんな疑問にぶち当たったジョンは、もはや知らん顔も出来ない。


助手としてクレアを伴って、素人探偵よろしく、事件の真相へと乗り出していくのである……。




私、この主演のジョージ・C・スコットトリッシュ・ヴァン・ディヴァーメルヴィン・ダグラス、監督のピーター・メダックに関する事を、まるで何も知らなかった。



大体、自分の好む映画の選び方ってのがあって、


「あの知ってる俳優さんが出ている」とか、


「あの監督が撮った他の作品は?」とか、なので、知らない監督や知らない俳優ばかりの映画なんてのは滅多に選ばない。(今まで大体失敗してるし、ある種冒険なのだ)



そんなのでず〜っと地続きで選んでいる中で、なぜか?この映画にはフラフラ〜と不思議に惹きつけられた。(こんな風に書くと、この映画のように不気味な感じがするだろうか (笑) )



とりあえず、この映画が、あまりにも自分好みの傑作だったので出演者や監督について多少調べたので、サクサクっと短く書いておこうと思う。



ジョージ・C・スコット……けっこう有名な俳優さんらしい。それに中々の変わり者。


なんせ、アカデミー賞で主演男優賞を受賞しても「別に要らない!」と辞退してるのだから。(相当な変わり者でしょ?)


それから何度もノミネートされても、アカデミー賞を無視、無視。


「あんなのくだらないお祭り騒ぎさ」(アカデミー賞の権威が廃れた今、この人先見の明があったのかしら?)



クレア役のトリッシュ・ヴァン・ディヴァーさんとは、1971年の映画『ラスト・ラン /殺しの一匹狼』で知り合い、ご結婚。


それからも夫婦二人で、この『チェンジリング』のように度々共演を重ねたようである。




メルヴィン・ダグラス……この映画では、すっかりヨボヨボおじいちゃんのダグラスさんだが、あのグレタ・ガルボジョーン・クロフォードのいた時代から共演して活躍していたらしい。(さすがにグレタ・ガルボは知っていても、あんまり作品は知らんわ)


この『チェンジリング』では、高圧的でふんぞりかえったジョセフ・カーマイケル議員役。(ほぼ晩年の作品である)



ピーター・メダック監督……90年代の珍作、レナ・オリンの『蜘蛛女』の監督だったらしい。(なんとなく覚えてるけど。相当変な映画だった記憶が……)


『スピーシーズ2』なんてのも撮ってるとか。(これも《2》まではさすがに観ていないかも)


謎の宇宙外生命体と人間のDNAを合体させて、特殊な第3の生命体を作りだす話じゃなかったかな?(なんか続々とシリーズが続いた記憶があって、根気のない自分は観る気が失せた)




こんな豆知識を調べてみて、いちいち「へ〜」、「ほ〜」なんて感心する私。


そんなのを知っても、この映画自体の評価は全く揺らぐ事はないのだけど。




映画の後半も、見せ場がたっぷり。


埋め立てられた古井戸から見つかった白骨遺体や、メダルの発見(教会での洗礼メダルだったらしい)。


本物とニセ物のジョセフ取り替え殺害の真相など、ハラハラ、ドキドキものである。



そうして真相に近づいたジョンに、ニセ者の《ジョセフ》である、カーマイケル議員は警察の力を借りて圧力をかけてくる。



「見つけたメダルを渡して貰おうか!」


カーマイケルの手先になって乗りこんできた警部に、断固「NO!」の返事で突っぱねるジョン。


「令状を持って家宅捜索するぞ!待ってろよ!」と息巻いて出ていく警部。



そうして、しばらくするとクレアから、家に居るジョンに電話が。


「さっきの警部さんの車が突然道端で横転したのよ!もちろん即死よ!」(ゲゲッ!何てこと!! これも霊の仕業なのか? どんだけ凄い事が出来るんじゃ、この霊は?!)




そうして、ジョンは今まで集めた証拠を持って、カーマイケル議員の屋敷へと乗り込んでいく…(最後の直接対決!)




もう、何から何まで、この映画に惚れ込んでしまった私。


怒涛のラストまで完璧である。



私の評価は、ここまで絶賛しているんですもん!もちろん星☆☆☆☆☆。


今の時点で、今年観たモノで一番かも。


オススメしておきます!(こんな映画を刑務所で見せればいいのに。きっと犯罪の再犯率も減るはずである)