1951年 イタリア、フランス合作。
『シスター・アンナ』(シルヴァーナ・マンガーノ)は、大病院で患者たちの為に看護師として懸命に働いていた。(※イタリアでは、修道院でお祈りを捧げるだけじゃなく、実際にこんな病院で、プロの看護師なみの役割を果たすシスターたちがいる事に、まず驚く(*゚Д゚*))
子供から年寄りまで、笑顔で接するアンナに、ドクターや他の看護師たちの信頼も厚い。
一刻も早く、本物のシスターになれるように、本部への修道誓願を希望するアンナ。(なんだ、まだシスター見習いか)
だが、修道院長からは厳しい言葉が、チクリとアンナの心を突き刺す。
「あなたの行動は、まだ、どこか世俗的すぎる。人間愛が、あまりにも強すぎるのよ。試練だと思って、当分はこの病院で患者の為に尽くしなさい!」
「分かりました…」
ガックリ気味のアンナである。
そんなアンナが病室を巡回していると、けたたましい救急車のサイレンの音が……。
(こんな夜半に急患……?)
血だらけで担架で運ばれてきたのは、車を猛スピードでとばしてきて、相手にぶつかって大怪我という、とんでもない(マヌケ)男。
(どれ、どんな様子か……)とアンナが顔を覗いてみると……
「アンドレア!!」
そう、昔、アンナが愛していた『アンドレア』(ラフ・ヴァローネ)なのだった。(なんか、この場面で竹内まりやの曲が、自然に頭に流れてしまう私 (笑) )
アンドレアの緊急手術が始まると、アンナは手術室の側で祈った。
「神様、アンドレアをお救いください!……」と。
そして、祈りながらも、アンナの意識は、数ヵ月前の苦い過去を回想していくのであった……(ポワ、ポワ、ポワァ~ン?ってな感じ)
以前、ここで挙げた『にがい米』で、すっかりシルヴァーナ・マンガーノ様の虜になってしまった私。
シルヴァーナ様の出演した映画を探してみると、日本で観れるような映画が、あまりDVD化されてないのだ。(頼みますよ、メーカー様!)
比較的、『にがい米』に近い年代の、この『アンナ』を観る事が、やっと出来た次第である。
で、観ていると、シルヴァーナ様はいきなりシスター姿。
充分、美しい尼僧姿のシルヴァーナ様なんだけど……地味過ぎて、ちとガックリ。
と、思っていたら、アンナの過去の回想シーンに場面が切り替わると、(デター!!)狂ったように歌い踊るシルヴァーナ様の姿が!!
腰を自在にひねり、華麗なステップをふみながら、歌い踊る『アンナ』(シルヴァーナ・マンガーノ)は、ナイトクラブの歌手兼ダンサー。
観客たちは見惚れていて、拍手喝采だ。(だろうな~)
そんなアンナに、これまたベタ惚れの、田舎に広大な住宅を構える金持ち紳士『アンドレア』(ラフ・ヴァローネ)は、「結婚しよう!結婚しよう!」と毎夜アンナを口説いていた。
「無理よ…」
アンナのツレない言葉にもアンドレアの気持ちは変わらず。
ナイトクラブからアンナの家までの送迎を、ひたすら続けるアンドレアなのである。(なんて健気な)
だが、アンドレアに送ってもらってアパートのベッドに入ると、アンナの何かが疼きはじめる。
フラフラ~と夜のアパートを抜け出すと、どこかに向かい出すアンナ。
合鍵で、ある部屋のドアを開けると、そこにはシャワーを浴びている一人の男の姿が。
そう、それは同じナイトクラブで働くウェイターの『ヴィットリオ』(ヴィットリオ・ガスマン)。
アンナはアンドレアに口説かれながらも、ヴィットリオとも関係を続けていたのだ!
気持ちはアンドレアに傾いても、身体はヴィットリオに溺れているアンナなのである。(なんかレディース・コミックの世界、そのまんま (笑) )
こんな事が、毎夜毎夜、繰り返されて、さすがに自分自身に嫌気がさしてくるアンナ。
そして、とうとう決心する。
「アンドレアと結婚して、田舎に行くんだ!そして真人間になろう!」
ヴィットリオのアパートの合鍵を道路の排水溝に捨てると、アンナはアンドレアの故郷に向かった。
そして、明日は結婚式という時、窓から外を見ると、あのヴィットリオがやってきたのだ!(ゲゲッ!)
「なんでやって来たのよ?!」
「田舎で結婚だって?お前は俺が忘れられないはずだ!!思い出させてやる!!」
「やめてー!!」
近くの暗い石堂?で、アンナを押し倒すヴィットリオは、まるで獣。(「イヤよ!イヤよ!も好きのうちさ!」を地でいくようなヴィットリオさん)
そこへ通りかかったのは、あのアンドレア。
アンドレアとヴィットリオは激しい殴り合いになる。
「やめてー!!やめてー!!」(ここでも、なぜか?竹内まりやの曲が頭に浮かんでくる私。♪けんかをやめて~二人をとめて~♪)
ヴィットリオが取り出した銃の弾がアンナの肩をかすめる。
それを取り上げようとするアンドレアは揉み合いになるうちに、ついに……バキューン!!
銃口がヴィットリオの腹を向いた瞬間、それが発射されてしまったのだ。
腹から血を流して絶命するヴィットリオ。(アラアラ…)
呆然自失になっているアンドレアをおいて、アンナはフラフラと外に出て歩きだした。
(何もかも自分が蒔いたタネ……すべて私が悪いんだ………)
あてどもなく、さ迷い歩くアンナは、いつの間にか行き倒れて、親切な人に介抱されて、今いる病院に連れてこられたのだった。
そうして、傷が治ると、シスターへの道へ。
今に至るアンナなのである。
だが、運命は皮肉にも、またもやアンナをアンドレアと引き合わせた。
手術がすみ、傷が癒えてくるとアンドレアは再度求婚してくる。
「もう一度やり直したい!アンナ、結婚してくれ!!」
はてさて、アンナは尼僧の立場でどうするのか………
ここまで長々と書いたのは、ちゃんと理由がある。
この映画『アンナ』と『にがい米』を両方観た自分。
監督は違えど、どちらも、出演者はシルヴァーナ・マンガーノ、ラフ・ヴァローネ、ヴィットリオ・ガスマンが揃っている。(『にがい米』のドリス・ダウンリングがいないだけだ)
そして、『にがい米』、『アンナ』で演じている、それぞれの役の性格が、とても似かよっている事に、自分同様、両方を観ている人は、とっくに気づいたはずである。
シルヴァーナは踊りが好きで、後先をまるで考えていない、ただ欲望の為に突き進んでしまうような性格。
ラフ・ヴァローネは誠実で無骨な男。
ヴィットリオ・ガスマンは、女を虜にはしても、根っからのゲスなクズ男。(銃で死んでしまうのも、まるで一緒だ)
もう、役の名前と、話が違うだけで、同じ役者が同じキャラクターで、それぞれに存在しているのである。
なんだか不思議な感じ……
ジョジョのように、まるで世界が一巡して、同じ人間が、同じように再び出会ってしまったような……そんな錯覚さえ覚えてしまう。
あるいは、『にがい米』と、この『アンナ』は、同じような時間で、ソックリな人間たちが、決して交わる事のない、並行しているような世界を一緒に進んでいるのか?……そんな、まるでSFモドキの発想にまで、とんでしまうのだ。
もちろん、『にがい米』と『アンナ』では結末は違う。
『にがい米』では、ヴィットリオ・ガスマンに、たぶらかされて、騙されて、ガスマンを撃ち殺してしまい、自らも自害してしまうシルヴァーナ。
『アンナ』のシルヴァーナは生き残る。
それにしても……
分かれ道が二通りあるなら、右に進んで、死んでしまったのが『にがい米』のシルヴァーナ。
左に進んで、生き残ったのが、この『アンナ』のシルヴァーナ?(どっちでも死んでしまうヴィットリオ・ガスマンは憐れだが (笑) )
この、まるで《双子》のような対比の2本の映画、自分のように両方を観る事を、是非オススメしたいと思うのである。
とりあえず、『アンナ』、星☆☆☆☆。