2020年9月26日土曜日

映画 「ダイヤル M 」

1998年 アメリカ。






『スティーヴン・テイラー』(マイケル・ダグラス)は、若くて美しい資産家の妻『エミリー』(グウィネス・パルトロウ)と、マンハッタンで豪華な暮らしを満喫していた。


スティーヴンも実業家だったが、もっか経営は厳しい状態。



エミリーは資産家ながらも、国連で働いているバリバリのキャリア・ウーマンである。




そんなエミリー、仕事の合間に画家の『デイヴィッド』(ヴィゴ・モーテンセン)と知り合い、不倫関係に。



デイヴィッドのアトリエのロフトで、暇をみつけては密会を繰り返すエミリー。


高圧的なスティーヴンの性格に嫌気がさしていたエミリーは、デイヴィッドに会えば会うほど惹かれていく。


でも、そんなものをおくびにも出さず、冷静にふるまおうとするエミリー。




だが、夫スティーヴンは、どこまでも抜け目のない性格。



エミリーの不倫など、全てを知っていたのだ!



そして、エミリーの留守中に、スティーヴンは自宅に、ある男を呼ぶ。

「入りたまえ!」



何と!入って来たのは、エミリーの浮気相手のデイヴィッドじゃないか!!




いったい何の用で呼び出されてきたのか、訝(いぶか)しそうにしているデイヴィッドに、スティーヴンはいきなり核心をついてきて、

「君が妻のエミリーと《デキてる》事を知っている!」と言い放った。



そして、「君には妻のエミリーを殺してもらおうか!」と、とんでもない提案をしてきたのだ。


「はぁ、何で俺がエミリーを殺さなければならないんだ?それもあんたの為に?!気は確かか?」


そう言われても、全く動じないスティーヴンは、不適な笑みをたたえると、デイヴィッドのこれまでの過去を話しはじめた。



興信所で調べさせたデイヴィッドの過去。


ペテンや詐欺は当たり前、そして投獄までされていた写真……


「新進の画家だって?笑わせる。君は根っからの犯罪者じゃないか!」


図星なのか……もう、ぐうの音も出ないスティーヴン。


「そ、それでも、もし俺が、この話をエミリーに言ったらどうなる?」


「エミリーには、君の過去をじっくりみてもらって判断してもらうさ。それに、警察に私が行けば、君にはまだまだ捕まるような余罪があるんじゃないか?」



もう、八方塞がり。まさに出口なしのデイヴィッド。


デイヴィッドが次に発した言葉は、「どうすればいいんだ……」だった。


その言葉を聞いたスティーヴンは、ニヤリと笑うと、「なぁに、悪いようにはしないさ。計画とは……」と言って話し始めるのだった…………。





今回、この『ダイヤル M』を観たのは初めて。(当時、「また、ヒッチコックの下らないリメイクか…」とスルーしていたのだ)



観てみてビックリ!



良くできてるじゃないですか!!



なんなら、こっちの『ダイヤルM』の方が、完全にヒッチコックの『ダイヤルMを廻せ!』を上回っている出来栄えと言ってもいいくらいだ。




前回にも書いたように、あれほど、妻マーゴ殺しの為に、夫トニーが、悪党『スワン』を説得するためにダラダラした会話は、この映画ではコンパクトにまとめられている。


おかげで、サクサク進むし、何よりも『スワン』の存在を省略して、妻の愛人に殺しの依頼をさせるとは……もう、ビックリな改変である。


この後もビックリは続く。





アリバイ作りの為に、スティーヴンは仲間の集まる場所に出かけていき、深夜、妻エミリーは、侵入してきた黒いマスクの暴漢に襲われる。




そうして、エミリーは、やっと掴んだ先の尖った鋭利な温度計(多分、油の温度を計る温度計じゃないかな?)を犯人の首元に突き立てるのだ。


ピクリともせず、大量の血を流して倒れる犯人。



そこへ、タイミングをはかったように夫スティーヴンが電話をしてきた。


「スティーヴン、助けて!早く!早く帰ってきてちょうだい!!」


てっきり、暴漢役のデイヴィッドが出ると思っていた電話に、エミリーが出た事でスティーヴンもビックリ。




一目散にかけつけると、台所では黒いマスクの死体と、側で泣きじゃくっているエミリーの姿が……。


やがて、警察がかけつけて、現場は騒然としてくる。

そして、現場を捜査する『カラマン警部』(名探偵ポワロのデヴィッド・スーシェ)の登場。




カラマン警部と警察官が、死んでいる男の黒マスクをはぎとると、そこに現れた顔は………




誰だ?コイツは?!



全く知らない顔だ!!死んだのはデイヴィッドじゃないのか?!



「どうかなさいましたか?」驚愕しているスティーヴンの横で、カラマン警部が目を光らせながら訊ねると、

「いえ……何でもありません……」と、なんとか平静を装ってスティーヴンは応える。






後日、デイヴィッドと会ったスティーヴン。


「どういう事なんだ?あれは?!いったいあの男は誰なんだ!」



激昂するスティーヴンに、デイヴィッドは、この間の態度とは、うってかわって落ちついた様子。


「俺も汚れ仕事はやりたくないんでね。代わりにやってもらったのさ。昔、ちょっと知り合ったくらいの関係ない男さ」


スティーヴンは、このデイヴィッドを甘くみていた。しかも、この間の会話をデイヴィッドは、ちゃんとポケットの中で、テープに録音していたのだ。


(この男は………)


「なぁ、これからどうすればいい?」

屈託なく聞いてくるデイヴィッドに、スティーヴンは「しばらくは動けない……警察も目を光らせているだろうし……」と言って去ろうとする。



後ろからは聞こえるのは、とんでもないデイヴィッドの言葉。


「じゃ、俺、しばらくはあんたのカミサンと寝ていてもいいんだな?」だった。




夫スティーヴンもクズなら、愛人デイヴィッドも最低のクズ男……

二人のクズ男に、はさまれたエミリーの運命は……。





ここまで書き出してみても、まだ映画の中盤である。



この後も、二転三転の展開が待ち受けている。


時代を現代にアレンジして、ストーリーも大胆に改変しながらも、細部まで手をぬかず、無理なく辻褄があっている。


しかも、ちゃんと面白い作品になっているんだから、これはリメイクでも立派な成功例だろう。




この監督さんは、サスペンスの舞台劇を《映画にするにはどうすればいいか?》って事を、充分にわかってらっしゃるお方だ。

一旦、バラバラに分解して、考えながら、じっくりと積み上げていく、その作業は、まるで何層にも重なる積み木のようなモノだ。

少しの隙間もないように……。




こんな作品を作り上げた監督は誰だろう……気になった。


監督はアンドリュー・デイヴィス。


聞いた事もなかったが、作品を聞けば、どれもこれも、「あ~この作品観てるし、面白かった」というのがあって、またもや納得してしまう。


『刑事ニコ/法の死角』、『沈黙の戦艦』(スティーヴン・セガール)

『逃亡者』(テレビ逃亡者のリメイクね。主演はハリソン・フォード)

『守護神』(ケビン・コストナー)などなど………。

なぜか、どれもこれも観ている私。

こりゃ、いずれ、この監督の作品を、ここへ挙げていくのもいいかもしれない。




映画は星☆☆☆☆である。


冷酷なマイケル・ダグラスの演技はいいし、不倫をしていても下品にならないグウィネス・パルトロウの存在は貴重。


色男を気取っていても、どこか変態チックなヴィゴ・モーテンセンは、充分にマイケル・ダグラスに敵対している。(顔がなんせインパクト大。おしりのような割れたケツ顎をお持ちだもん(笑) )



ただ、ひとつだけ不満があるなら、もうちょっとだけ『カラマン警部』(デヴィッド・スーシェ)に活躍してほしかったかも。


スーシェ贔屓の自分は、このあたりが物足りなかった。よって星は4つにとどめておきたいと思う。

2020年9月25日金曜日

映画 「ダイヤルMを廻せ!」

1954年 アメリカ。






プロテニスの選手だった『トニー』(レイ・ミランド)は、美しい資産家の『マーゴ』(グレース・ケリー)と結婚して、イギリスで何不自由ない暮らしを手に入れていたのだが……



テニス・ツアーで留守がちになったトニーの目をぬすんで、マーゴはこっそり隠れて《浮気》をしてしまった。



そして、その《浮気》はいつしか《本気》になっていく。



そのくらい、浮気相手のアメリカ人で推理作家の『マーク・ハリディ』(ロバート・カミングス)は魅力的だったのだ。

若くてハンサム、理知的であり情熱家。



やがて、そんなマークは故郷アメリカに帰ってしまった。(仕事?)



だが、二人の間の情熱は冷めることなく……アメリカに帰っても、何通もの手紙がマークから送られて来る。

その手紙に、マーゴは励まされ喜んだ。(さすが小説家)



そして、夫トニーがテニスを引退して、マーゴの資産に頼って生活してくると、尚更マーゴの気持ちはトニーから離れていき、遠い場所にいるマークに気持ちは傾いていく。



だが、そんな素振りをおくびにも出さないように、夫トニーの前では、いつも笑顔でキスをするマーゴ。


(この気持ち……知られてはならない……)






1年ぶりにロンドンに来たマークは、すぐさまマーゴを訪ねた。


マークとマーゴ……二人は抱きあい、1年の空白を埋めるようにキスしあった。


だが、次の瞬間、マーゴの不安な顔。



「どうしたんだ?マーゴ」

「あなたから送られて来た手紙は、読むと全て燃やしたわ……証拠を残さないようにと……でも1通だけはどうしても燃やせなくて……」



その手紙はマーゴのハンドバックに入れられ、大切に、大事に持ち歩いていたのだが……ある日、ハンドバックごと盗まれてしまったのだ。



一回きりの脅迫状が送られてくると、マーゴは金を払った。

でも、それきり音沙汰なく、返ってこない手紙。



「もう、はっきりさせようじゃないか、マーゴ!トニーと離婚して僕と一緒に来てくれ!!」


「ええ……でも、もう少し待って」

夫トニーに、なんて言って切り出したらよいのか………迷うマーゴ。






だが、この《浮気》、夫のトニーはとっくにお見通しだったのだ。




もちろん、マーゴの手紙を盗んで脅迫状を送りつけたのも夫のトニー。

全てはマーゴの反応を見るためにした、トニーの作戦だったのだ。




そして、マーゴの気持ちが、すでにトニーになくて、マークに傾いている事を知ってしまうと、トニーは昼夜考え続けた。


(もしも、マーゴから離婚を切り出されたら自分は無一文で放り出されてしまう……今更、テニス選手に戻れる年齢でもないし………どうすればいい?)



狡猾で冷酷なトニーは、表立ってはマーゴの前では、何も知らない演技を続けながらも、ずっと思案していたのだ。




そうして、とうとう、ある《完璧な計画》を立てる。


それは、まさに今、実行されようとしていた。


「入りたまえ!」


マーゴの留守中、トニーに呼び出されてやって来た男は、不審そうにキョロキョロした目で、アパートに入って来ると、トニーのいる部屋のドアを開けた。


(『スワン』と名乗るこの男……この男を、まず陥落させて、私の思いのままに操り従わせなくては。)


トニーの計画が始まる………。





この時期、「もう、どんな映画を撮っていいのかわからない!」状態だったヒッチコック。



フレデリック・ノットの舞台劇である、この『ダイヤルMを廻せ!』は、当時、上演されてヒットしていたので、


「これを映画にすれば……まぁコケはしないだろう……」くらいの気持ちで映画化に乗り出した、というのは当人の弁。




でも、今となってはヒッチコックが、この『ダイヤルM…』に、フラフラ~と惹き付けられたのも、なんとなく分かるような気がする。



《トニーの仕事が元テニス・プレイヤー》


そして、《赤の他人『スワン』に妻殺しの話を持ちかけるトニー》



そう、これは、それ以前に大ヒットした自身の映画『見知らぬ乗客』に似ているワードが、かなり入っているのだ。


本人は気づいていたのだろうか?(気づいてなくて無意識な気もするが)






この『ダイヤルM…』も、昔、ヒッチコック熱にうかされていた自分は、その流れで、当然観たのだが、当時の感想が、


「ヒッチコック映画にしては、あんまりつまんないかも…」というような感想だった。





今回、30年ぶりに見直してみると、その理由も、ハッキリと分かる。



舞台劇は、限られた空間で、ほとんどセットが変わらない室内劇が多い。(セット・チェンジは膨大な予算がかさむから)


その中の登場人物たちは、セリフの応酬だけで、観客たちの意識を舞台につなぎとめようと必死になる。


そのため、セリフの量が半端なく多いのだ。





舞台なら、それで良いかもしれないが、映画には映画の手法がある。


これを映画にするなら、全てをバラバラに分解して、映画的手法に組み変えなければならないのだが、それがあまり上手くいってないような気がするのだ。





例えば、夫『トニー』が赤の他人『スワン』を自宅に呼び寄せるシーン。



このシーンが、とにかく長くて、映画としては一番退屈な部分なのである。


スワンが、

過去にど~した、こ~した。

こんな事件を引き起こした。

お前の弱味を俺は全て知ってる。

ゆえに、俺の言う事を聞いて、妻のマーゴを殺せ!

警察に行ってもお前の話は通用しないし、マーゴの手紙に触れたお前の指紋も、ちゃんとこうして証拠としておさえてある。



ゆえに、お前は俺の言う事を聞くしかないのだ。


………こんなクドイ場面が何分も続くのである。


そこまでかけて、『スワン』を説得まで持っていくまでの話が、まぁ~長くて退屈な事よ。




これを、全て、夫トニーのセリフでいちいち説明するのだから、辛抱して聞いてる方は、「いいかげん、まだ、終わらないのかよ。このシーン……」となってくるわけである。


この『スワン』の過去など途中から、「ど~でもいい」と思ってくるのだ。




これが、昔、この映画を「退屈」と感じた理由だったのか。





ただ、…………



この長ったらしくて、くどいシーンが終わると、段々とこの映画は、その様相が変わってくるような気がする。



ヒッチコックが撮影しながら、徐々に光を取り戻してゆくのだ。



それはカメラ越しに見る《グレース・ケリー》の姿……。




グレース・ケリーの美しさ、洗練された所作、ファッション・センス……


悪党スワンにストッキングで首を締め上げられながらも、懸命にあらがい、スワンの背中にハサミを突き立てるグレース・ケリー。



恐怖するグレース・ケリーの姿……




撮影を続けながら、グレース・ケリーに次第に魅力されていくヒッチコック。


その熱気やノリノリになってきている様子が、映画を観ているこちら側にも、充分に伝わってくるのだ。




映画の勘を取り戻しつつある……そんな期待を持たせて、映画は終わるのである。



この『ダイヤルM…』の公開と同じ、1954年に間髪を入れずに、傑作『裏窓』は作られている。


もちろん、主演女優はグレース・ケリー


まさに、グレース・ケリーはヒッチコックの窮地を救う為に現れた《女神》だったのだ。

星☆☆☆。

2020年9月20日日曜日

映画 「殺意の香り」

1982年 アメリカ。






月あかりだけが照らす夜の暗闇。


車上あらしの男は、通りに停めてある車を、一台一台物色していた。そして……


(しめた!開いてるぞ!)


車のドアを開けると、ドサッ!と、なだれ込んでくる男の死体。

『ジョージ・バイナム』は滅多刺しにされて殺されていたのだった。





精神カウンセラーの『サム・ライス』(ロイ・シャイダー)は気が滅入っていた。


マンションの一室で、定期的に訪ねてくる患者のカウンセリングを、一人で細々と診療しているサム。


今も患者を悩みを聞きながらも、心は、まるで別の事に囚われていた。



(あのジョージ・バイナムがなぜ?殺されたんだ ……… ?!)



ジョージは高価な美術品を扱うオークション・ギャラリーで働いていた。

ジョージは週に2回、カウンセリングにやって来る《サムの患者》だったのだ。







患者が帰っていくと、ジョージのカウンセリング・ファイルを広げながら、またもや物思いにふけるサム………そこへ、


「すいません、ライス先生……少しよろしいでしょうか?」


一人の女が、おずおずとドアを開けて入ってきた。


金髪の若い女性だ。




女は『ブルック・レイノルズ』(メリル・ストリープ)と名乗ると、サムの真向かいの椅子に腰かけて、テーブルの上に腕時計を置いた。


「何ですか?これは?」


「先生に頼みたいんです……これを亡くなったジョージの奥さんに返してほしいの」


ブルックはジョージ・バイナムと【不倫関係】だったのだ。

もちろん、ジョージとのカウンセリングで、ブルックの事は何度も話題に出て知っていたサム。(守秘義務があるので他言はしないが)



ジョージの仕事を手伝う助手のブルック。


神秘的なブルックと不倫関係になりながらも、どこか後ろめたさもあり、その悩みをジョージはカウンセリングに来る度に、サムだけに打ち明けて語っていたのだ。



そんな情報をすでに知っていても、目の前に突然現れたブルックの姿に、しばしサムは心奪われた。


「今更、私がノコノコ出ていくのもなんでしょうから……先生ならカウンセリングの時に置き忘れたとでも言えば怪しまれずにすむし ……… 」


「分かりました」



その時、隣のドアをノックする音が。

「すいません、ライス先生!警察ですが亡くなったジョージ・バイナムさんの事でお訊きしたい事があるのですが …… 」



警察の声にブルックはとびあがった。そしてビックリすると、おもわず手に当たったテーブルの置物が、倒れて壊れてしまった。


「ごめんなさい、すみません!あたし、どうしましょう …… こ、これで失礼します」


ただならぬ様子のブルックに、サムは別の戸口から、そっとブルックを返した。



そうして、しばらくして警察が帰っていくと、またもやサムはジョージ・バイナムのファイルを広げた。


ジョージは、カウンセリングに来ては奇妙な夢の話をしてくれた。



『夢診断』……… この夢に何か事件のヒントがあるかもしれぬ。



一人、考えを巡らすサム。


でも、一方では、先ほど訪ねてきたミステリアスな女性『ブルック』にも、ボンヤリと想いをはせるサムだったのである ……… (←あ、惚れたな(笑))







こんな感じでムード一杯に始まる『殺意の香り』。


この、ミステリアスな雰囲気を少しでも伝えたくて、少しだけ丁寧に書いてみた冒頭である。





前回、若い頃のグレン・クローズを書いたんだから、「やっぱりここは公平に若いメリル・ストリープを書かなくちゃ!」と思い、この映画を選んで、初めて観たんだけど ………



何だか、懐かしいような、この雰囲気 ………



そう!


どなたかも語っているが、まるで《ヒッチコックの映画》のような色合いやムード、雰囲気に満ち溢れているのだ、この映画は!



これまで、あんまり何とも思っていなかったロイ・シャイダーを初めて良いと思ってしまった。


ホッソリとしていてノッポで、どこか神経質そうなロイ・シャイダーは充分、精神カウンセラーに見えるし、これは充分にハマリ役だ。


それに、何だか、ロイ・シャイダーが演じるサムの性格も、いやがおうにも誰かさんを想像させてしまう。




頑固なほどの正義感や探求心……

そう、まるで、ヒッチコックの『裏窓』に出てくるようなジェームズ・スチュワートの性格にソックリではないか。




真相を知るためなら、母親『グレース』(ジェシカ・タンディ)が、いくらとめても、自ら突き進んでいく。



ここでのジェシカ・タンディ ……… この人の役割も、やはり、ヒッチコックの『裏窓』に出てくる、口うるさく助言する看護師のセルマ・リッターを想像してならない。






一方、メリル・ストリープ演じるブルックも、ヒッチコック映画に出てくるような数々のブロンド美女たちを思い出させる。


エレガントな佇まいで、着ている洋服もセンス抜群。


青いドレス姿なんて特に似合っている。(本当に光るブロンド・ヘアーには青いドレスが一番似合うと思ってる私。グレース・ケリーもそうだった)






監督は『クレイマー・クレイマー』で、メリル・ストリープとタッグを組んだロバート・ベントン。



このベントン氏、こりゃ絶対!計画的にヒッチコックを意識して、この映画を撮っているわ。





【夢診断】から、サムが導きだして、たどり着く真相や、真犯人には大して驚きはしなかった。(真犯人を知っても、「あぁ、ヤッパリ、この人しかいないだろうなぁ~」って感じ)




それでも、ヒッチコック映画のような雰囲気を思い出させてくれる、この映画は、充分に私を満足させてくれたと思う。



星☆☆☆☆であ~る。



※この映画でも、ラストは、すぐ真下に海が見渡せる断崖絶壁に建つ別荘である。

『恐怖のメロディー』にしろ、前回の『白と黒のナイフ』にしろ、海の別荘が出てくれば、やはり、いやがおうにもサスペンス映画は盛り上がるのだ。

2020年9月19日土曜日

映画 「白と黒のナイフ」

1985年 アメリカ。






原題は『 Jagged Edge 』、訳すと『ギザギザのエッジ』。

狩猟用ナイフの刃のギザギザ部分?(ん?)





夜半、海沿いに建てられた豪華な邸宅で、メイドが殺され、夫人『ペイジ・フォレスター』がナイフで滅多刺しにされて殺された。


そして、その夫『ジャック・フォレスター』(ジェフ・ブリッジス)はというと………自身も玄関先で、鈍器で頭を殴られるが、ほぼ軽傷。


一人、命をとりとめて助かったのだ。




(おかしい……)

地方検事『トーマス・クラズニー』(ピーター・コヨーテ)は、ジャック・フォレスターに疑念を持ち、部下に命じて徹底的に調べあげさせる。



大手の出版社、サンフランシスコ・タイムズの社長におさまっているジャックだったが、殺された妻ペイジの父親が大金持ちの出版王で、結婚と同時にその地位を得ていた。


オマケに資産家の妻が死んだ今、ジャックには莫大な財産が転がりこんでくる。


そして、ジャックの会社のロッカールームに、狩猟用のナイフがあったという目撃証言までとびだしてきたのだ。



もはや決定的!



「ジャック・フォレスター、君を逮捕する!」

「俺は妻を殺していない!」

地方検事クラズニーの言葉に叫ぶジャック。




ジャックの裁判の為に弁護士『テディ・バーンズ』(グレン・クローズ)が選出されるが……


「私は、もう刑事事件を扱いたくないの!」

と、あまり乗り気ではない。




夫と別れ、二人の子供を育てながら弁護士を続けているシングル・マザーのテディ。

テディは、以前、裁判で救えなかった無実の被告に対して、ずっと後ろめたさみたいなトラウマを抱えていたのだ。


そんな被告が、最近、獄中で自殺した話を聞き、地方検事クラズニーに挑発されると、テディの気持ちにも微妙に変化が表れる。



昔なじみの私立探偵『サム』(ロバート・ロッジア)に相談するも、「そんな事件なんてクソ喰らえだ!」と罵倒されるテディ。(でも、このサム、テディの頼みとあらば憎まれ口を言いながらも、渋々協力してしまう人の良いオジサン)


かくして、毒舌サムの協力を得て、ジャック・フォレスターの事件を引き受けたテディ。



そうして、容疑者ジャックに謁見すると …………






久しぶりに観た『白と黒のナイフ』。





若い~!グレン・クローズが!!(当たり前なんだけど)


そして、この映画のグレン・クローズは、格別に美人で可愛らしいのだ♥。





後の、恐ろしい迫力で圧倒する『危険な情事』や『ダメージ』などとは、まるで違う、180度真逆のイメージ。

恐ろしいグレン・クローズしか知らない人は、この映画を1度は観た方がいい。



こんな優しい顔をするグレン・クローズなんて貴重すぎるくらい貴重なんですから。





被告と弁護人の垣根をこえて、どんどんジャックに惹かれていくテディ。(なんせジェフ・ブリッジスが、惚れ惚れするくらいカッコイイもんね)



乗馬を楽しみ、スカッシュで汗をながして、そのまま二人はベッドへ……(あらあら)



「仕事は仕事、恋愛は恋愛!」なんて上手に線引きも出来ないテディは、本当に、か弱い一人の女性。



ジャックとの関係を続けながらも、一方ではジャックの弁護士として裁判に臨んでいく。


でも、裁判が進めば、どんどん明るみになっていくジャックの過去の浮気や不貞。



裁判所では気丈に耐えながらも、終わって一人になると、(ウルウル)涙を流してしまうテディ。(『だって女の子だもん、涙が出ちゃう~』アタックNo.1のセリフが浮かんでしまうワタクシ)




もう、こんな乙女チックなグレン・クローズなんですから、今現在とのギャップに、初めてこの映画を観た人は、ビックリするはずである。





サスペンス要素はあっても、こんな繊細で脆い女心を描いた傑作『白と黒のナイフ』。




監督は、最初に、あのブライアン・デ・パルマの名前が挙がっていたらしいが彼にならなくて本当によかった。(監督は『針の眼』のリチャード・マーカンド)





ストーリーは、よくある展開とは分かっていても、丁寧に描いていて好感がもてる。


そして、なにより、若くて可愛い気のあるグレン・クローズを愛でて楽しむ映画なのだ、これは!





映画のラスト、私立探偵サムの言葉がピシッ!と締めてくれて、また心地いい。

「忘れてしまえ、あんなクソ男!」



こんな優しい響きの毒舌もあるのだ。

星☆☆☆☆。

※ピーター・コヨーテ、最近観ないなぁ~。生きてる?(笑)