2019年11月4日月曜日

映画 「ブリット」

1968年 アメリカ。






サンフランシスコ市警察に所属する『フランク・ブリット』(スティーブ・マックイーン)は、ある朝、仲間のテルゲッティー警部に叩きおこされた。



『チャルマース上院議員』(ロバート・ヴォーン)のご指名で、裁判の重要証人となる『ジョン・ロス』の護衛に任命されたのである。



『テルゲッティー警部』と、もう一人『スタントン警部』、それに『ブリット』の3人がかりで、ホテルに隔離されているジョン・ロスを交代で、裁判が始まるまでの40時間警備するのだ。



ジョン・ロスは、マフィアの組員らしくて、つねに殺し屋に狙われているらしい。




だが、スタントンが交代の時、当のジョン・ロスはドアをうっかり開けてしまい、謎の殺し屋に射たれてしまう。

スタントン警部も、足を撃たれて重症。




すぐさま、ブリットとテルゲッティーは救急車を呼んだ。



二人が一緒に病院の待合室にいると、例のチャルマース議員が血相を変えてやってくる。




「どういう事なんだ?!いったいどんな警備をしていたんだ!!」


ブリットを怒鳴り散らすチャルマース議員。


散々、無能呼ばわりしてイヤミを言うと、やっと清々したのか、チャルマース議員は帰っていった。(イヤな野郎だ)




だが、その病院にも殺し屋が、とどめをさしにやってくる。

追いかけるブリットだったが、すんでのところで、(アララ)またもや取り逃がし。




しかも、ジョン・ロスは集中治療室で治療のかいなくも、あっさり死亡してしまったのだった。



万事休す!

どうする?ブリット?!



ブリットは医者に、

「しばらくの間、ロスが死んだ事をふせてくれないか?」

と頼みこんだ。



犯人にも、警察の上層部にも、ジョン・ロスが既に死んでいる事をまだ知られたくない。



ブリットの懸命な頼みに医者もなんとか承諾してくれた。


そうして、ここから、ブリットの孤独な捜査がはじまるのである ………







今から50年以上前、スタジオセットを組まず、オールロケで、撮ったこの映画は、その後の刑事ドラマや映画の常識を根底から変えてしまった。



監督とマックイーンが目指したのは、徹底した《リアリティー》の追求。



マックイーン自ら、フォードマスタングGT390を操って、サンフランシスコの町中を猛スピードで疾走する。



殺し屋との、追いつ追われつのカースタントは迫力満点。



マックイーンの運転する車は、相手の車に体当たりする。


そうして殺し屋の乗った車は、そのままガソリンスタンドに突っ込んでいって大炎上!大爆発!!



マックイーンのマスタングは、反対車線に勢いよく飛び出しながらも、あわやのところで、スピンしながらも、なんとかギリギリセーフ!(今、観ても、なかなかのド大迫力である)




そんな爽快なカー・アクションがあるかと思えば、呼ばれもしないのに、いちいち現れる『チャルマース議員』(ロバート・ヴォーン)には、本当にイライラさせられる。



小姑みたいな性格で、ただ嫌味を言うためだけに頻繁に現れるこの人って …… いったい。(途中まで、「こいつが犯人でもいいんじゃないか?」と、思ったくらいだ。チョー憎たらしい)



でも、真犯人は別にいて、

突然現れた『レニック』という男。

で、本当のジョン・ロス。(いきなり誰?ってな感じ)




大金を渡して、ニセ者に『ジョン・ロス』を演じてもらっていたのだ。(それを知らないニセ者は、全くの殺され損)



自分自身は名前を変えて、サンフランシスコ空港から高飛びする計画だったのである。(手間のかかる事を………この辺がややこしくて、何度観てもこんがらがってくる)



このカラクリを解いたブリット。



空港に駆けつけると、やっと見つけた真犯人を追いかける。

空港の滑走路を、ジェット機を避けながら走る二人。(あぶねぇ~)




その後は、人混みのゲートに汗だくで紛れ込む真犯人。


ブリットの銃は、そこで犯人を捕らえると、やっとトドメの一撃を放つのであった ………



後年、次々作られるポリス映画に、影響をあたえたほどインパクトは大なのだが………やはり、今、観るとアクション以外の、ストーリー運びやドラマの部分が、ちょっと弱いかな。(特に真犯人の描き方も)



私なら嫌味な議員『チャルマース』(ロバート・ヴォーン)を真犯人役にして、とっとと撃ち殺してしまいたいけどねぇ〜(笑)



今なら、マックイーンのプロモーションビデオくらいの気持ちで、軽〜く見てほしい映画だろうか。

星☆☆☆。

2019年11月3日日曜日

映画 「霧の中の戦慄」

1947年 イギリス。





大学の講堂で、一人の講師(ジェームズ・メイソン)が、犯罪心理学の講義をしている。

それを学生たちも熱心に聞き入っている。


彼は、ある普通の社会的地位をもつ男が犯罪を犯すまでの話をゆっくり始めた。(全て仮名として)


その男とは……





『マイケル・ジョイス』(ジェームズ・メイソン。一人二役)は高名な脳外科医である。(あらら、お話の中の人物もジェームズ・メイソンさんです)



だが、プライベートはとっくに破綻していて別居中の妻がいる身。

そして別れたくても離婚に応じない妻をもて余す毎日なのである。(厄介な状況)



それでもマイケルは、別に気にしなかった。

忙しく仕事に打ち込む事が、プライベートのゴタゴタを思い出す暇さえ与えなかったのだ。



そう、彼女が現れるまでは……




ある日、彼女、『エマ・ライト』(ロサムンド・ジョン)がマイケルの診療所を訪ねてきた。


ひとり娘のアンが、空襲の時に目を負傷して、失明寸前だったのだ。


「視神経網に異物が入り込んでいて、放置すれば見えなくなります。私が手術をすれば助かりますが…」


マイケルが言うと、エマは蒼白になった。



「主人は地質学者で外国にいるのです。私一人の判断で決められませんわ」

「それでは、ご主人がお帰りになってからでも…」

「主人が帰国するのは7ヶ月後なんです」

その頃には病状が進み、アンは失明している。


しばし考え込んでいたエマは、とうとう決心した。



「先生、よろしくお願いいたします」


数日後、マイケルは視神経の難しい手術を成功させる。(ブラックジャック並みの技術で)


「成功です!」

「ありがとうございます」

手術が成功しても、アンはしばらく入院しなければならない。



マイケルとエマの距離は少しずつ縮まっていった。

アンが無事に退院してからも、二人は逢瀬を重ねていく。



だが、マイケルには別居しているとはいえ妻がいる身。エマにも旦那がいる。


お互いに惹かれあいながらも、不倫の恋は泣く泣く終わりをつげたのだった。(マジメ〜な二人)





それでも、しばらくは放心状態の日々が続くマイケル。



あれから数日たっても、エマの事が頭から離れない。

そんな悶々とした日々を送るマイケルに、突然訃報の知らせがきた。


「死んだ?エマが?!」



エマが自宅の2階の窓から落ちて、亡くなったのだ!


……そんな、エマが死ぬはずがない!

事故?自殺?まさか?!



とりあえず形だけの審問が開かれるという。


マイケルが傍聴するために出かけていくと、まさにその最中であった。



義妹である『ケイト・ハワード』が証言している。


(ケイト… 確か離婚して、兄のやっかいになっている女だ。派手好きな女でエマと正反対の性格。エマにも高圧的だったはずだ ……)



「夕方の6時に邸を訪ねましたが、それ以降、会っていません」

ケイトはキッパリ証言すると席に戻った。



次に一人娘のアンが証言台に呼ばれた。


「夜、自分の部屋に戻った後、それっきり会ってません」

アンは、なんとか証言したが、チラチラとケイトを見ていて、その様子を伺う様子。



(なんだか……おかしい)マイケルは違和感を感じた。


簡単な審問は終わると、皆がぞろぞろ引き上げていく。



それでも、マイケルは何かひっかかるのか ……… 

しばらくして、ケイトの泊まっているホテルを訊ねた。



フロントの案内係にケイトの事を尋ねてみると、「パーティーの参加者ですか?」と
逆に聞かれてきた。


「パーティー???」マイケルは二の句がつげないくらい驚いた。



エマが亡くなって、たった今、裁判所で審問をしてきたばかりなのに、自分の部屋で大勢の客を招いてパーティーをしている?!


どういう神経なんだ?

とても信じられない?!




そこに行くと確かにケイトがいた。

審問の時と同じ喪服姿で、皆と笑いながら酒を飲んでいる。



ケイトはマイケルの姿を見つけると喜び、色目をつかいながら、しなだれかかってきた。


アンの入院の時に、1度会ったマイケルに気がある様子なのだ。



(この女は私に気がある。そして この女がエマを殺したんじゃなのか?!


その日から、マイケルはケイトと付き合いながらも証拠を探そうとする。


そうして、調べれば調べるほどケイトへの疑いは深まるばかり。





犯人はこの女だ!!間違いない!!


この女は殺さなくてはならない!


ケイトが殺されたのと同じ方法で!




かくしてマイケルは復讐を計画した。


エマの屋敷の2階にケイトをたくみに誘い込むと、同じように突き落として殺したのである ……





「これで今日の講義は終わりだ、大分長くなったが、また来週に」講師が言うと、学生たちも立ち上がり始めた。



だが、一人の生徒が質問してきた。

「マイケルは、逮捕されたのですか?」

「いや、彼が犯行を行った証拠がなくて、捕まらなかった」


「でも、講師のあなたには告白してきたんですよね?」生徒が言う。



「異常者は喋らずにいられないんだ…」その生徒は、それだけ言うと立ち去っていった。



皆が引き上げて、ガランとした講堂。



講師も帰宅の準備をしだした。



そうして夕刻、走っている車を道端に突然停める。


そこへ、慌てて、一人の女がやってきた。



それは、あの《ケイトの顔》をした女である


意気揚々と、講師の車に乗り込んでくるケイトの顔の女。



そう、………


講師は、これから実行しようとする自分の計画を、全て名前を変えて、生徒たちに喋ってみせたのである!!




これから実行しようとする犯罪を、あえて過去形をつかって……。


(異常者は喋らずにいられない…)あの生徒の言葉は的を得ていたのだ。


講師=マイケルは、誰かに喋らずにいられなかったのである ………







初めて観た映画である。


ひと言でいうなら、本当にドヨヨ〜ンと落ち込むくらい、暗〜い話なのだ。(映画のラストも、本当に救いがない)



こりゃ、当時、観終わって映画館を出てきた観客たちなんて、皆が、お通夜の表情だったろうよ。(本当に暗い結末です。初めて観る方は、どうかお覚悟を!)



ジェームズ・メイソンの映画は、同じ1947年に、名作『邪魔者は殺せ』が公開されていて、こちらの方が超有名。(これも結末は悲惨だけど)





どちらも救いのないような悲劇を向かえるのだが、それでも自分としては、こちらの方が、ややマシかな。





それにしても、ジェームズ・メイソンが演じる、悲惨な役や非道な役の多さは、何なんだろうか?


自らが希望して出演したのだろうと思うのだが、あまりにも多すぎる。(そんな役ほど、またハマるのは分かるんだけど)



幾分、外斜視がかった目のせいなのか …… どこを見てるのか分からないような目つきは、観てる者の不安を掻き立てる。


太く響く声は、思い込んだら絶対に曲げないような意志の強さを感じさせる。




それらを上手に使いこなして、生前に出演した映画は100本以上だという。(ゲゲッ!こんなに多いの?!)



思えば、今回、この『霧の中の戦慄』の事を書きながら、これまで、自分が取り上げた映画を振り返ってみると、あちこちにジェームズ・メイソンが出てる、出てるわ。


改めてビックリしてしまった。



『シーラ号の謎』、『ザ・パッセージ』、『北北西に進路をとれ』、『夜の訪問者』、『マンディンゴ』…

来る仕事、拒まず主義だったのかしらん?




そして亡くなるまで、なに1つ、賞をとれなかった無冠の名優である。




賞がとれなくても、あちこちでメイソンが残してくれた作品に、これからも触れる機会はたくさんあるだろう。


このブログでも、まだ挙げてない映画も山ほどある事だし……



星は、取り合えず☆☆☆とさせて頂きます。

とにかく《悲惨な役どころといえば、ジェームズ・メイソン》とインプットされた。(今のとこ、悲惨率70%以上)

2019年11月2日土曜日

映画 「見知らぬ乗客」

1951年 アメリカ。







「失礼ですが、『ガイ・ヘインズ』さんじゃございませんか?」



ワシントンから乗った列車の中で、『ガイ』(ファーリー・グレンジャー)は、見知らぬ男に、突然声をかけられた。


「私、あなたの大フアンでしてね、この間の試合で準優勝したでしょう?、観てましたよ」


「あぁ、ありがとう」

(また、この手の輩か…)ウンザリしながらも、ガイは調子を合わせた。


テニスプレーヤーで有名なガイには、こんなのは、日常茶飯事の出来事なのだ。



ペラペラとしゃべりかけるこの男は、聞かれもしないのに自己紹介でブルーノと名乗ってきた。



「煙草を吸っても?えっと…ライターはどこだったかな?」

『ブルーノ』(ロバート・ウォーカー)は、自分のポケットを探しまわっている。(この時代は、どこでも喫煙自由である)



「どうぞ」ガイは、自分のライターを差し出した。


(煙草でもくわえておけば、少しは静かになるだろう……)


だが、ガイの思惑は、見事に外れる。


お喋り好きの、この男の口を塞ぐ事は到底無理だった。



ガイに渡されたライターを見ると、今度は、それについて、立て板に水のごとく喋りだしたのだ。


「このライター、《A to G》って掘ってますね! 分かりますよ、この《A》は、『アン・モートン』の《A》だ! モートン上院議員の娘さんからの贈り物でしょう?!」

ブルーノは、嬉々として話している。



いらつくガイに、ブルーノはお構い無し。



有名人のゴシップ記事に精通しているブルーノは、何もかもを知っていた。



有名テニスプレーヤーのガイが、アン・モートンと付き合い、結婚したがっている事も。


だが、ガイは現在、別の女性『ミリアム』とすでに結婚していて、アン・モートンと結婚したくてもできない。


そして、現在の妻ミリアムが、身持ちが悪く、別の男性たちと、浮き名を流しまくっている事などなども……。




そんなブルーノに、とうとうブチ切れるガイ。


「君になんの関係があるんだ!!」


よどみなく話すブルーノに、痛いところをつかれたガイも、もう怒らずにはいられない。


「まあ、そう、怒りなさんな。、ひとつ私に提案があるんですよ」なだめるようにブルーノは言うと、次に自分の父親の話をし始めた。


嫌な父親で年中殺してやりたいぐらい、だと思っていると。

そして、ブルーノが次に言ったのは、とんでもない提案だった。


「どうです?あなたと私で、お互いに憎い相手を、取りかえて殺しませんか?《交換殺人》ですよ」


「何を言ってるんだ?!君は!!」ガイは、驚き、声をあげた。


「お互いに知り合いでもないし、行きずりの関係で、絶対に捕まる事もない!動機なき殺人をするんですよ!素晴らしいアイディアじゃないですか?!」

平然とブルーノは、話している。



「これ以上、こんな馬鹿な話には付き合っていられない!失礼する!」


列車が駅に、ちょうど着くと、ガイは、ブルーノに目もくれず降りていった。



ブルーノに渡した《A to G》のライターの事も忘れて……。




しばらくすると、ブルーノは、それを自分のポケットに、コッソリとしまいこんだ。


そして、その顔には、なにかを思いついたような不気味な笑みが浮かんでいるのだった………。







原作は、アラン・ドロンで有名な『太陽がいっぱい』のパトリシア・ハイスミス



それを『長いお別れ』で有名な小説家、レイモンド・チャンドラーが脚本を担当した。


だが、チャンドラー曰く、

「こんな馬鹿げた話が映画になるはずがない!」

と散々こきおろして、途中で降板したらしいが…一応は脚本家として名前が残っている。



そして、それをヒッチコックが監督すると映画は、とたんに傑作になってしまうのだから、アラ不思議だ。





ガイの愛するアン・モートンは、黒髪の美人さんで、気立てのいい性格。



一方、ガイの本妻のミリアムは、分厚いレンズの眼鏡をかけていて、見た目も悪けりゃ根性も腐っている、とことんイヤ~な女である。(本当に、よりによって何で、こんな女と結婚したんだろうね?)



ブスなのに(失礼!)他の男と浮気して、妊娠までしてしまう。


それでも、あくまでも強気のミリアムは、ガイとの離婚に応じる気もサラサラない。(どこからくるのか、この自信は?!)



おまけに、妊娠して身重なのに二人の男と遊園地に遊びに行ったりもする。(ブスなのに、なんでこんなにモテモテなの?)



そんなミリアムの後を着けてきたのが、先程の、あのブルーノである。


まんまと殺されてしまうミリアム。



でも、そんな殺人現場の遊園地に、あの《A to G》のライターを、うっかり落としてしまう。



そうして、

「俺は、君の足枷になってる奥さんを殺してやったんだ。今度は君が私の願いを叶える番だ!」とガイにつめよる勝手なブルーノなのである。


こんな一方的に行われた殺人に、ガイにしたら「ハァ?」てなもの。(当たり前だ)


まともな人間が「はい、そうですか」と応えるはずもなく、ガイの返事は当然まともに「NO!」である。


「君は狂ってる!!」


「なんだとー!!」

交換殺人に応じないガイに、ブルーノは逆恨みして、とうとう逆ギレ。



そうして怒りを募らせていくと、今度はガイに自分が犯した殺人の汚名をきせようと考えはじめる。


「そうだ!あのライターだ!あのライターを使って、逆に奴をハメてやる!」



そんな邪悪な考えにとりつかれて、再び遊園地に現れて、無くしたライターをノコノコ探し回るブルーノなのだった。(ご苦労様です)




一方、そんなブルーノの邪悪な行動を一刻も阻止したいガイ。


だが、あいにく、その日は大事なテニスの試合の真っ最中だった。


「この試合を、さっさと終わらせなくては……」



サーブ、レシーブ、華麗なスマッシュを決めながらも、心穏やかでないガイのプレイも、少々乱れがち。



果たして、ガイは間に合うのか………





この映画も、ヒッチコックの初期の傑作のひとつといえるだろう。


でも、本当にレイモンド・チャンドラーが言うように、文章にしてみると「何だ?こりゃ?!」っていうような、ヘンテコリンなお話なのである。


それでも、映像でみると、何の違和感も感じないのだから、これが名監督の職人技なのだろう、と改めて感心してしまう。




列車に限らず、バスでも、見知らぬ乗客には、充分に気をつけてほしい。


ボ~ッとしてる貴方の隣、ブルーノのような男がいないとも限らないのだから……


星☆☆☆☆☆。


それにしても、映画の中とはいえ、ファーリー・グレンジャーのテニスの腕前は中々。


こんなにたっぷりテニスをしている映画も珍しいもので、見応えありですぞ。(カッコイイ~!)

2019年11月1日金曜日

映画 「トータル・リコール (1990年版)」

1990年 アメリカ。





『マーズ・アタック』にしろ、『レッド・プラネット』にしろ、アメリカ人ってのは火星にとかく惹かれるらしい。


この『トータル・リコール』もそう。




近未来、植民地化した火星では、空気が薄く、その為に奇形化したミュータントたちが、隅に追いやられて、細々と暮らしていた。



だが、そんな中でも反乱分子たちが結束して声をあげる。


「空気を、もっとよこせ!」と。


火星政府は、そんな反乱分子たちの内乱に警戒しながらも、あらゆる策を高じて応戦していた。




そんな同じ時期の遠く離れた地球。

『ダグラス・クエイド』(アーノルド・シュワルツェネッガー)は、遠い空を見ながら想いをはせる。


「火星に行きたい!」と。


地球で、地味~に、コツコツと建設作業員として働くクエイド。


火星になんか、今まで行った事もないのに、ここ最近は毎晩のように火星の夢をみていたからだ。


結婚して8年も一緒に暮らしている美人妻、『ローリー』(シャロン・ストーン)からは、

「はぁ?、何を夢みたいな事、言ってるの?馬鹿馬鹿しい」と一喝されるが……。



それでも、日増しに強くなっていく火星への憧れ。



そんなある日、列車の広告が目にはいったクエイド。


『旅行の記憶を売ります』と描かれた広告は、今、話題のリコール社の宣伝広告だった。


『どんな夢でも、お客様のご希望を叶えます』


夢の中で、旅行をしたように疑似体験をさせてくれるというのだ。



「やめとけ!あんな所に行ったら頭がおかしくなって帰ってくるぞ」

同じ建設現場で働く同僚のハリーは、反対するも、クエイドの火星への憧れは、もう止められない。



(『リコール社』に行ってみよう……それで多少は満足できるかもしれない……)



リコール社を、怖々訪ねたクエイドに係員が、クエイドの希望や女性の好みを聞いてきた。


「そうだな……女性の髪はブルネットがいい」

ブロンド妻ローリーとは、まるで真逆を選択するクエイド。


秘密諜報員として、好みの女性と恋をしながら、火星を探検するコースを選ぶと、係員は、

「それでは、お客様を素晴らしい旅にご案内します」と、頭の両サイドにある、耳に当てる機械を下ろす。


腰かけているリクライニングが倒されて、クエイドに麻酔針が打たれる。


「きっとご満足されるでしょう……」


係員の声が遠くなり、クエイドは深い眠りに堕ちていった…………。




この時期、絶好調のシュワルツェネッガーの映画である。



『ターミネーター』、『コマンドー』、『プレデター』、『ツインズ』……次々、量産されて公開されるシュワルツネッガーの映画。(まったく、いつ、どんなスケジュールで撮影しているんだろう?と思うくらい矢継ぎ早だった。)



でも、そのどれも、これもが大ヒット!



たちまちシュワルツェネッガーは、マネーメイキング・スターとして全米で1位になった。



それにしても、このアーノルド・シュワルツェネッガーの魅力は何だったんだろう。



特別に技巧を凝らした演技をするわけでもないのに、ただ、真面目に演じているだけなのに、どこか『おかしみ』が溢れ漏れてくる。



実は、この『おかしみ』こそが大事で、どんなに演技の習練を積んでも会得できない天性ものなのだ。



生まれついての『スター』にだけ与えられたギフトだと思っている。


本人が無理に意識していなくても、この『おかしみ』が自然に出せる俳優たちは、全ての万人に愛されるのである。




ケーリー・グラントも、そうだったが、この『おかしみ』が出せる俳優たちは何を演じてもいい。



確実にヒットする。

映画を観るお客は、ただ、その俳優会いたさに、劇場に足を運ぶからだ。




嫌われる要素や陰口を叩かれるなんて事も、一切ない。


マスコミも好意的になり、映画関係者たちにも、この『おかしみ』は愛され続ける。


そうして、その力は見えない力となり、本人の知らないところで、上へ上へと勝手に押し上げてくれるのだ。




この『トータル・リコール』でも、もちろん、その『おかしみ』はイキイキしている。



『ダグラス』(シュワルツェネッガー)が、リコール社で、『火星にいた時の記憶』を徐々に思い出した時に、監視役で嘘の妻役を演じていた『ローリー』(シャロン・ストーン)に襲われるシーン。

シュワルツェネッガーの股間を何度も、容赦なく蹴りあげるシャロン・ストーン。



悶絶するシュワルツェネッガーが、可笑しい。




鼻から発信器を取り出しながら、悶絶する表情のシュワルツェネッガーが、『可笑しい』。




火星に着いて、オバサンの変相を解いていく(左右に割れていくオバサンの顔)の中から、ヒョイと現れるシュワルツェネッガーが『可笑しい』。




こんな『可笑しさ』を次々、スクリーンで見せるシュワルツェネッガーの前では、股間キックのシャロン・ストーン以外の登場人物たちは、全て霞んでしまう。


火星の恋人役、『メリーナ』(レイチェル・ティコティン)も凡庸で地味目。(あんまり印象にない)

ミュータントたちも、それはそれで、奇抜で目をひくが、それだけの話。





やはり、「シュワルツェネッガー、ここにあり」の映画なのである。




2012年のリメイク版もあるが、この1990年版には、足元も及ばなかったらしい。



そりゃ、そうだろう。

コリン・ファレルが、たとえ良い役者でも、天性の『おかしみ』を武器に持つシュワルツェネッガーに敵うはずがない。



『トータル・リコール』、もちろん、星☆☆☆☆☆で、あ~る。


※当時、日本でシュワルツェネッガーのやかん体操なるCMが流れていた。

ただ、やかんを振り上げてまわすのだが、こんな『おかしみ』を出せるのもシュワルツェネッガーだけである。


本当に稀有なお人だ。