2009年。
私は特別、安室奈美恵のフアンじゃないのだけど、この『BEST FICTION』に関してはCDもライブDVDも珍しく買っていた。
なぜなら、小室哲哉の楽曲が全て除外されていたからだ。
元々、小室哲哉が苦手であり、90年代はメディアでも街中でも、小室哲哉の作った曲が、歌い手を変えては毎日流れているという異常な有り様だった。
中には良い曲もあるのだが、一人の人間が作る曲だもの、似てしまうのは当たり前。
TMネットワーク(TMN)、globe、trf、dos、篠原涼子、華原朋美 …… 他にも単発を含めれば色々あるのだろうが、ほぼ、こんなラインナップ。
これが連日連夜、神経のように繰り返し放送されていたのだから、「ウンザリするな!」ってのが無理な話だろう。
そんな小室ブーム夜明け前、安室奈美恵もスーパー・モンキーズ(現∶MAX)を引っ提げてデビューする。当時、マハラジャやパラパラブームなども手伝って、5曲目の『TRY ME〜私を信じて〜』で、念願のブレイク。
やがて安室奈美恵の一枚看板になり、『Body Feels EXIT』から小室プロデュースに変わると次々ヒットを連発していったのは、皆様ご承知のとおりである。
でも、この小室哲哉が作る楽曲を歌いこなすのは、普通の歌手でも相当難しいんだよなぁ~。
華原朋美なんて、どこまでも高い↗キーを求められてぶっ倒れそうになるし、渡辺美里も若い時には、軽々『My Revolution』を歌っていたものの、後年ではサビの「♪走り出せる〜」の前に半拍空けて、そこで息継ぎしないと、もはや歌えなくなっている。
中森明菜の『愛撫』においては当時も、「♪Touch me、Touch me、 Touch me through the night〜」と、連続で続く、このサビ部分は、特に苦しそうで、本人も肩でゼーゼー息をしていたっけ。(小室哲哉の曲なんて、最初から止めときゃいいのに)
歌い手の事を考えないで作るのが小室流なのだ。
そんな小室哲哉の難曲を、安室奈美恵はパーフェクトに歌いながらも、激しく踊り続ける。(それも何曲も何曲も連続で …… )
『Chase the chance』や『You’re my sunshine』なんて、どんだけ激しいんだか。(どこで息継ぎしてるの?)
こんな曲を50歳や60歳まで延々と歌い続けられるわけがない。
そんなこんなで ……(その間、本人に数々起こったトラブルには触れないでおこう)
2度目の絶頂期を迎えるのが、この『BEST FICTION』というライブなのである。(もちろん、小室哲哉の曲は全く組み込まれていない)
あれだけ難易度の高い曲を今まで歌いこなしてきた安室奈美恵ですもん。
このライブでは、時折、笑顔さえ見せるほど、余裕灼灼(よゆうしゃくしゃく)である。
ライブでも1番を飾るのが『Do Me More』。(PVでは『不思議の国のアリス』のように幻想的だ)
『GIRL TALK』では、踊りながらも昔みたいに声を張り上げることもなく、サラッ〜と歌っている。
『NEW LOOK』では、ドデカいハイヒールをステージ場に持ち込んで、その中に階段を作って歌っておりました。
『Dr.』も本当にカッコいい曲。
最初、普通の精神科医に相談してる歌かと思いきや、ギリシャ神話に出てくる神・クロノスに祈願するような歌なのでした。(中々奥が深い歌詞)
メロディーラインが急に行進曲みたいにガラリと変わるのも面白い。
映画『フラッシュ・ダンス』の主題歌『WHAT A FEELING』は、大胆なアレンジ・カヴァー。(ほぼ別モノと言ってもよいかも。「♪WHAT A FEELING〜」って歌うところしか、もはや原型が残っていない)
どれもこれも見どころ満載。
一曲一曲が全力投球である。(しかもトーク一切無し)
この『BEST・FICTION』のライブは必聴である。(観たことが無い人は是非ご覧あれ)
そうして、そんなライブを続けていた安室奈美恵も40歳になると、ピタリと引退した。(2018年)
人によっては年齢と共に、振り付けを簡略化したり、キーを下げたり、テンポを緩やかにして乗り切る者もいるのにだ。(誰とは言わない)
それが出来ないほど、安室奈美恵という人は根っから、生真面目な性格だったのだろう。
引退後の情報は一切聞こえてこないが、山口百恵のように《キルト制作》など、別の生きがいを見つけていればよいのだが ……
このブログを書きながら、そんな要らぬお節介を考えてしまうオッサンなのでした。(長い間お疲れっす!)