2293年の、遠い未来。
今日も巨大な石像が、暗雲がながれる上空を、どこからともなく飛んでやってきた。
そして、それは大地にドスン!と音をたてて着地する。
『エクスターミネーター』と呼ばれる集団たちは、奴隷から収穫した農作物を持ち寄って、石像をぐるりと囲むように待ちかまえていた。
すると、石像は、いきなり口から大量の武器を吐き出した。
何千何万の数のピストルやライフルが、石像から雨が降るように吐き出される。
エクスターミネーターたちの仕事は、農作物の収穫だけでなく、反抗する奴隷たちの抹殺もあるのだ。
「皆よ、受けとるがいい!これを使って、増えすぎた『獣人』(奴隷)たちを殺すのだ!」
石像の名は『ザルドス』。
「ザルドス!ザルドス!」
歓喜の声をあげて叫ぶエクスターミネーターたち。
エクスターミネーターたちは、武器と引き換えに、ザルドスの口の中に大量の穀物や農作物を投げ入れた。
その時、一人の男が、こっそりと石像の中に紛れ込んで侵入した。
男の名は、『ゼッド』(ショーン・コネリー)。
ゼッドを乗せた石像ザルドスは、再び高く浮上すると、どこかへ向かいだした。
(いったいどこへ行くんだろう …… )
ゼッドは、しばらくして穀物から這い出ると、石像の中を探検し始めた。
その時、石像の物陰から一人の男が現れた。
反射的に手に持っていた銃で撃ち抜くゼッド。
男は胸を抑えながら、
「なぜ……私を撃った?、お前はきっと後悔するぞ…… 」と息絶え絶えに呟く。
そして、石像の口から男は、ゆっくりと下界に向けて落ちていった。
戸惑うゼッド。
ゼッドを乗せた石像は、雲をぬけると、緑豊かな楽園に降り立った。
そこは不老不死の楽園『ボルテックス』……
冒頭、こんな出だしを書けば、この後、さぞやハラハラする冒険や戦いが待っていると思うだろうが、期待なさるな。
全くそうはならない、これはトンデモなくシュールな映画なのである。
監督は『脱出』などで知られるジョン・プアマン。
この映画は、SF映画にも関わらず、わずか100万ドルの低予算で作られた。
そして、主演のショーン・コネリーのギャラが20万ドル。
これは100万ドルとは別に、ブアマン監督が自費で捻出したそうな。
そこまでして、この映画に命をかけていたのかねぇ~、プアマン監督。
ちょうど、007シリーズが終わり、この時期ショーン・コネリーもよっぽど仕事がなくて暇だったんだろうか………(何でもいいから仕事をくれぇ~!ギブ・ミー、仕事!って気分だったのか)
そうでなければ、こんなヘンテコな格好をさせられる映画なんて、20万ドルでも出るはずがない。
このショーン・コネリー扮するゼッドの格好が、なんてったってスゴイのだ。
着ているものといえば、素っ裸に赤いフンドシ一丁。
ゆえに、あのボーボーと栄えている草むらのような胸毛やヘソ毛が、始終あらわになっているのだ。
それに黒いSM嬢のようなロングブーツ。
口髭は、馬の蹄鉄のような形にきりそえられている。
とどめは、長いおさげ髪のかつら。
恥も何もかもかなぐり捨てて、仮装もここまでやりきれば、もう立派なもんである。
このお姿で、映画の冒頭から最後まで、あっちブラブラ、こっちブラブラしているショーン・コネリー。
こんな格好の男が、平和な国『ボルテックス』に降りたったから、さぁ、大変!
「お前はいったい何者なの?どこから来たの?!」
すぐに不審者扱いされて捕らえられてしまう。(そりゃ、そうだろ!)
『ボルテックス』に住むエターナル人には、一種の超能力が備わっているのだろうか……
こんなゴツいショーン・コネリーを簡単に眠らしてしまったり、テレパシーで他の者たちと会話したりもする。
変な部屋に連れてこられて、そんな場所に寝かされているゼッド(コネリー)
「この男の記憶を探ってみましょう」
エターナル人『メイ』という女性は、ゼッドに呼び掛けながら、過去の記憶を呼び戻させる。
すると周りのスクリーンに、ゼッドのこれまでの闘う姿が映像として映し出された。
「こんなのは、どうでもいいのよ!お前がどうやって、ここに来たのかを知りたいのよ!」
そこへ、「殺してしまいましょう」と言いながら別の女性がやってきた。
ヒラヒラ、透け透け衣装を着た『コンスエラ』(シャーロット・ランプリング)という女性である。(こんなヘンテコ映画に、またもやフランスの名女優ランプリングまでもが……(゚д゚) …)
「ダメよ」とメイ。
「じゃ、投票で決めましょうよ」
テレパシーで、他のエターナル人に交信しながら、奇妙な多数決をとりはじめる二人。
すると、多数決の結果、なんとかゼッドの命は3週間だけ延長される事になった。
そして、今度はなぜか?
ドスケベな女たちに囲まれながら、ゼッドの 興奮度チェックが始まる。(コレに何の意味があるのか?)
スクリーンに男根の形が映し出され、男性が勃起するメカニズムが詳しく解説される。
それを熱心に恍惚とした表情で聴き入る女性たち。(痴女?(笑))
「この男の興奮具合を検証したいわ」とメイ。
次から次に、スクリーンに全裸の女性の姿が映し出される。
それに無反応で、まるで知らん顔のゼッド。
「おかしいわね、全然興奮しないわね」とメイ。(いったい、なんやねん。この実験 (笑) )
そこへ再び、先程のコンスエラが現れた。
「あら、この男、あなたに対して興奮しだしたわよ♨」と、ゼッドの変化する下半身を見つめながら、メイが喜びだした。
困惑顔で、その場をそそくさと立ち去っていくコンスエラなのであった ………
本当に、こうして書き出しながらもヘンテコリンな映画である。
SFというジャンルを借りてきて、変態映画を作りたかったのかしら?プアマン監督は!?
あまりにもシュールさに、公開当時、観客たちも何がやりたいのか全く意味が理解できず、皆が首をかしげたという。
この後も、このボルテックスのヘンテコな習慣や決まり事などに、まるで『不思議の国のアリス』の世界に迷いこんだような気分にさせられてしまう。
ただ、この映画では、アリスが毛むくじゃらの中年ショーン・コネリーなのだけど。(笑)
そんな映画『ザルドス』であるが、DVDではプアマン監督の詳しい解説つきである。
いちいち、馬鹿みたいな場面を丁寧に解説してくれるプアマン監督。(懸命に話せば話すほど、ドツボにハマっていくような気もするがなぁ~)
イギリス人は、たま~に、こんな訳の分からない映画を撮るものである。
とにかく胸毛ボーボー、ヘソ毛ボーボーのショーン・コネリーの頑張りだけに星☆☆である。
※(プアマン監督の一生懸命な解説を聞いても、この印象しか残らない映画なので、観る方は、どうぞ、お覚悟くださいませ)
↓にしても、本当にスゲー格好だな~、オイ!