2022年6月27日月曜日

映画 「あのアーミン毛皮の貴婦人」

 1948年  アメリカ。





その昔、ビリー・ワイルダー監督の映画に夢中になって、数々の作品を追いかけていくうちに、なにかにつけて、この名前を目にしたり、耳にしたりするようになってきた。


エルンスト・ルビッチ》……


エルンスト・ルビッチ監督》


まぁ〜、ワルそうな顔(笑)。(一見、『チキチキマシン猛レース』のケンケンにも見えてしまうルビッチ)


1918年にサイレント映画で監督デビューしてから、1947年に亡くなるまで、幾多のミュージカル映画やコメディー映画を撮ってヒットさせては、その道の《巨匠》とまで言われた、伝説のお方である。


この人の影響力はとにかく大きくて、後進で活躍した名だたる有名監督たちが、それを賛美し支持したのだという。(日本では、あの小津安二郎監督にも影響を与えたとか)


そんな、エルンスト・ルビッチ監督の家に住み込みで見習い弟子になっていたのが、まだまだ、当時無名だった『ビリー・ワイルダー監督』なのである。



こんな評判を知ってしまうと、ルビッチ映画を「俄然、観てみたい!」と思うのは当然の欲求で、私、晩年の監督作である『天国は待ってくれる(1943)』を、とうとうある日観たのだけど ……… コレがおっそろしく (ゴメンなさい)

ダメダメでした!


映画『天国は待ってくれる』》


主演が『ローラ殺人事件』や『幽霊と未亡人』で、私が御贔屓にしている有名女優、ジーン・ティアニーだし、珍しくカラー映画なので、コレを選んだのだけど、もう一人の主演男優であるドン・アメチーの役柄に最初から最後まで感情移入どころか、虫酸が走りっぱなし。(この話に共感する人がいるのか?)



(コレが《巨匠》とまで言われた人の作品 …… ?)

これまでの世間の評価を全て疑ったくらいだった。



でも、私のこんな勝手な感想でも、ルビッチの評価はあいも変わらず。


「おっかしいなぁ~」と思っていると、ルビッチ監督を、あのヒッチコック監督と同列にして書いている記事に、たまたま出くわしたのだった。


なるほど!それで合点がいった!


ヒッチコック映画も傑作もあれば、駄作、凡作も数多い。


ルビッチ映画も、

「出来が良いモノもあれば、悪いモノもあるはずだ!」

と、良心的にそう解釈したのだった。



で、今回取り上げるルビッチ監督の遺作が、『あのアーミン毛皮の貴婦人』なのだけど、コレもまたまた、曰(いわ)く付きの映画。



クレジットには、《監督 …… エルンスト・ルビッチ》の名前はあっても、ほぼ  監督していないのだった。


なぜなら、制作段階で エルンスト・ルビッチはとっくに《亡くなってしまった》からなのである。(あらら…)



どの写真でも、大きな葉巻きをプカプカ吸ってるルビッチ。(身体に悪そう)


それもあってか、ある夜、シャワーを浴びている時、あっけなく心臓発作で亡くなってしまう。(享年55歳没である)



もう、ほとんど準備万端で、後は撮影に入るだけだった映画『あのアーミン毛皮の貴婦人』。



さぁ、誰がそれを引き継ぐのか?


本来なら、一番弟子のビリー・ワイルダーが受け継いで完成させてもよさそうだが、1945年に『失われた週末』が話題になったとはいえ、まだまだ新人。



白羽の矢が立ったのは、既に『ローラ殺人事件(1944)』や『堕ちた天使(1945)』などを成功させていたオットー・プレミンジャー監督なのでありました。(後年、『悲しみよこんにちは』や『バニーレイクは行方不明』でも超有名)


オットー・プレミンジャー監督》


映画のクレジットには、プレミンジャーが遠慮したのか、その名前すら伺えないが、私はコレを《ルビッチの遺作》とは認めず。

オットー・プレミンジャー監督の作品だと認識している。


で、プレミンジャーが監督したとすれば、面白くならないはずがないじゃ〜ございませんか?


相変わらずの安定した出来栄えで、とっても面白かったです。(なんせ職人気質の監督さんですから)




舞台は、1861年、ヨーロッパは南東にある小さな国《ベルガモ公国》。


広い城内には、代々の君主たちの巨大な肖像画が幾つも壁を飾り、子孫たちを見守っている。


その中で、ひときわ目を惹かれるのが、300年前に国を統治していた《アーミン毛皮の貴婦人》、女伯爵『フランチェスカ』(ベティ・グレイブル)の肖像画だ。


白く大きな毛皮を纒ったフランチェスカの肖像画は、現在の女伯爵で、自分の姿に瓜二つな遠い子孫である『アンジェリーナ』(ベティ・グレイブル二役)に優しく微笑みかける。


(これからも《ベルガモ公国》に繁栄を …… )と ……


そんなフランチェスカの願いがアンジェリーナにも届いたのか …… 入り婿である『マリオ』(シーザー・ロメロ)を迎え入れると、屋敷では盛大な結婚式が執り行われた。


結婚式も無事に済んで、やっと二人きりのアンジェリーナとマリオ。

さて、いざ!初夜に挑もうという時、事件は起こる。


「大変です!ハンガリー軍が攻め入って来ました!」

執事『ルイージ』が血相を変えて、二人に報告しにやってきたのだ。



あたふた、オロオロする入り婿マリオは「ど、どうしよう…… 」と言いながら、アンジェリーナを置いてけぼりにして、とっとと一人だけ逃げ出していった。(あ〜情けなや)


それでもアンジェリーナ、毅然とした様子を崩さず。


(夫は、きっと兵を従えて戻ってくるはずだわ …… )と、どっからそんな自信が湧いてくるのか、慌てる様子もない。


そこへ、大勢の兵を従えたハンガリー軍がとうとう到着して、屋敷へとズカズカ乗り込んできた。



「この城は我々が制圧する!」

憮然とした表情で、ギロリと睨みをきかせているのは、軍の指揮官である『テグラッシュ大佐』(ダグラス・フェアバンクス・Jr.)である。


そんな大佐だが、壁に飾られているフランチェスカの肖像画を見た途端、一瞬で目がトロ〜ン。

心なしか、肖像画のフランチェスカはテグラッシュ大佐にウインクしているようである。


(あ〜、どうしたというんだ?オレは …… いかん!いかん!しっかりしなければ!!)


「ここの城主の元へ案内しろ!」

執事のルイージに伴われて、アンジェリーナの部屋へやってきた大佐。

そのアンジェリーナの姿を見て、大佐は、またもやビックリ。


(こ、これは!まるで絵から抜け出たように瓜二つじゃないか!!)


完全にアンジェリーナに一目惚れしてしまったテグラッシュ大佐。


もはや、アンジェリーナに対して、つとめて慇懃無礼に振る舞おうとしても、言葉の端々には好意的なモノがチラホラ見え隠れして、どうしようもない有り様である。


一方、アンジェリーナの方も結婚したばかりなのに、紳士的な大佐に心はユラユラ揺らいでいく。(乙女心は複雑なの)


その夜、皆が寝静まった頃、暗闇に包まれた屋敷では奇妙な話し声が ……


沢山の壁にかけられた肖像画の人物たちが、絵から抜け出てきて皆で会議をはじめたのだ!


もちろん、アーミン毛皮の貴婦人であるフランチェスカの姿も。


「あのハンガリー人の大佐をどうしてくれようか …… 」


歌い、騒ぎながら、ベルガモ公国の先祖たちの会議は深夜まで続いていく ………




こんな冒頭で始まる『あのアーミン毛皮の貴婦人』は、お察しどおり終始かる〜いノリ。

肩の力を抜いてご覧になれます。



『フランチェスカ / アンジェリーナ』役のベティ・グレイブルがチャーミングで良いねえ~♥


大佐の夢の中に現れて、とっちめてやろうとする『フランチェスカ』だけど、『テグラッシュ大佐』(ダグラス・フェアバンクス・Jr.)の魅力に負けて、逆にミイラ取りがミイラになってしまう。


しまいには、こんな風に大佐を自ら抱き寄せて「ブチュ〜♥」って激しく迫ってみたり。(アララ …… 珍しい女性優位のラブ・シーン)



大佐をお姫様抱っこしたまま、空中までフワフワ飛んだりしてしまうフランチェスカ。(スゲ~)


まぁ、あくまでも夢の中なんで、何でもありって事で(笑)。



一方、現実世界では、逃げ去ったはずの夫マリオが、ひょっこりと帰ってくる。


それも、仲間とはぐれた《ロマ(ジプシー)》の変装までしてきて。


本来なら、夫の帰還を喜ぶはずなのに、どこか一気に熱が冷めてしまうアンジェリーナ。(だろうな、こんなヘラヘラした男、ムリだっつーの!)


「それに比べてテグラッシュ大佐の男らしい事よ ……」(もう、この辺りで恋のシーソーは、テグラッシュ大佐の方にググ〜ンと傾きかけている)


はてさて、アンジェリーナとテグラッシュ大佐の恋の行方は ……




なんか、久しぶりに日常のゴタゴタを一時でも忘れさせてくれて、楽しんだ一本でした。


もちろん恋の終幕は、皆が納得のハッピー・エンド。


結局、私の解釈は、テグラッシュ大佐に惚れてしまったフランチェスカの気持ちが、DNAとして深く刷り込まれてしまい、長い時をかけながら(ほぼ一瞬だけど)、アンジェリーナに受け継がれてしまった?のかな?(『時をかける少女』みたいな話だ)


芸達者なベティ・グレイブルとダグラス・フェアバンクス・Jr.。

それにオットー・プレミンジャー監督の職人技に感動して、星☆☆☆☆でございまする。



※そうそう、それと、エルンスト・ルビッチ監督については、今回もその真価をはかる事が出来ず。


いつかルビッチの映画で「面白い〜!」と言える日が来るのだろうか。


まぁ、それも慌てず騒がず …… 気長に観ていくとしましょうかね。


久しぶりの投稿で長くなりました。

オヤスミなさいませ~

2022年6月11日土曜日

ドラマ 「エアロビクス殺人事件 女の変身美容教室 “シェイプアップ!”」

 1983年  11月。




時空を歪めて …… 時間を超えて …… 


※世にも奇妙なインタビューを、ワタクシ、『ジェミニ(以下: 《 J 》 とする)』がしてみたいと思う。



《 J 》:「本日はお忙しい中、お越しくださいましてありがとうございます。 『花岡 愛 先生』(松尾嘉代)といえば美のカリスマで、まさに今や《時の人》。 ご自身が考案なされた《セックス体操》で世に出て、《エアロビクス》の第一人者となり、最近(1983年)では全国に40もの店舗をお構えになったとか …… 」


《花岡 愛》:「まぁ、そうね。 でも、たいした事ございません事よ、オーホホホー!」


《 J 》:「それにしても、凄いネーミング・センスですね。《セックス体操》なんて!」


《花岡 愛》:「あの〜、勘違いしてる人もいるかもしれないけど、別に《セックスしながら体操する》わけではないんですのよ(笑)。 いわば、女性たちの健康的な身体作りと申しますか ……… それを、ただ単に《セックス体操》と命名してるだけなんですから。 そして、そんなのを、さらに発展していったのが、今の《花岡流エアロビクス》ってところかしらね」


《 J 》:「その日々の研究や鍛錬が、今のような花岡さんの美しさを創り上げたんですね」


《花岡 愛》:「おだてるのが上手い方ね。 あなたみたいなタイプ、嫌いじゃないわ。フフッ。今晩、お暇かしら?」


《 J 》:(顔真っ赤)


《花岡 愛》:「冗談よ(笑)(ガクッ↷) アメリカでは女優のジェーン・フォンダが火付け役になってエアロビクスが一大ブームになったけれど、過剰なアップテンポのリズムに合わせて、激しく踊る《エアロビクス》は、逆に疲労骨折の原因になったりして、今や大きな社会問題になっているわ。 それを改良して、ジワジワと美しいボディー・ラインに仕上げていくのが《花岡流》ってところね」


《 J 》:「やっぱり、そんなエアロビクス教室の発展も、現在のマネージャーである『西木さん』(荻島真一)の手腕や、一番弟子の『柚原千晶(ゆずはら ちあき)さん』(佳那晃子)の助力が大きいんでしょうか?」




《花岡 愛》:「フフン、そうね~、二人とも、まぁまぁ良くやってくれてるわね。 でも、私あってこその《エアロビクス教室》だけどね」


《 J 》:「今度、横浜にボディー・メイクのビルを建てるとか …… 」


《花岡 愛》:「よくご存知ね。 そうよ!この《花岡愛》が、とうとう、大々的に飛躍するチャンスがやって来たのよ!!」


《 J 》:「そんな中、北川っていうお弟子さんが勝手に独立しようとするのを邪魔だてしたとかいう、噂もチラホラ …… 」



《花岡 愛》:「あれは ……… 誰がそんな事を言いふらしているのか知らないけど、根も葉もないただの噂話だわ!! あの子は単に実力不足でクビにしただけ。 妙な言いがかりをつけないで頂きたいわね!!💢


《 J 》:「すみません、それにこれも小耳に挟んだんですが、奥さんのいる運送会社の戸村社長とも、何やら親密なご関係だとか ……… この事、西木さんや柚原さんは知ってるでしょうかねぇ~ …… 」



《花岡愛》:「なんて失礼な!! いい加減にしてちょうだい!💢  褒めてくれるかと思えばゲスな質問ばかり。 も〜う、これ以上、こんな馬鹿馬鹿しいインタビューなんてうけてられないわ! とっとと帰らせてもらうわ!💢💢



プンプン怒り心頭で出ていく『花岡 愛』(松尾嘉代)。(あらあら …… )



だが、その1ヶ月後 ……… 

横浜のビルにある更衣室のロッカールームから、花岡 愛の《遺体》が出てきたのだ。



あちこちで怨みをかっていた花岡 愛。


『いったい、誰が《花岡 愛》を殺害したのだろうか?!』





たまたま観ることが叶った、松尾嘉代さんの傑作ミステリー『エアロビクス殺人事件』の感動が、誇大妄想狂の自分に、こんな世迷い言のような創作インタビューを書かせてしまった。(もちろん、全て私の勝手な創作です。本気にしないでくださいね(笑))



このドラマは珍しく変わった骨格をしていて、冒頭しばらくすると、いきなり主人公である『花岡 愛』(松尾嘉代)が、ご覧のような様相で殺されてしまうのだ。(ゲゲッ!)


『誰がいったい、何の為に《花岡 愛》を殺したのか?


その謎を残して、ドラマは殺される1か月前まで、過去にさかのぼり、そこから話が繰り広げられていく仕掛けになっている。(この方式はビリー・ワイルダー監督の『深夜の告白』に似ているかな〜)



そんな謎を追いかけながら視聴者は興味深く観ていくのだけど ………



それにしても、松尾嘉代さまの表情のひとつひとつがキラキラしていることよ


強欲で、ワンマンで、鼻持ちならない性格を演じさせたら天下一品である。



おまけに、尻軽でいて、色気ムンムン。

そんなのに、我々男どもは妙に惹きつけられてしまうのだ。(コレ、褒め言葉か?(笑))


こんなトンデモない性格は、現実なら厄介でも、松尾嘉代さまに限っては、ソレも《アリ》なのかもしれない。


だからこそ、こんな突飛な創作インタビューなんてのを書いてしまいました。(^∇^)←お許しを〜


これを、観られた幸運に感謝!

星☆☆☆☆。(面白かったです)



《※蛇足》

………… それにしても、なぜ?80年代に《エアロビクス》が、突然大ブームになったんだろう?


女性がレオタードを着て、楽しく踊る姿は目の保養になるし、充分に理解できる。


でも、アメリカでは、あろうことか筋骨隆々の男たちがピッチピチのレオタード着て、歯をむき出しにして笑いながら踊っている様子は、今観ても一種異様。


クェスチョン・マークが頭の中に、ズラズラズラ〜と並んでしまう。(????)



楽しいのか?

そうなのか?


まぁ、本人たちが楽しければ、これ以上何も言うまい。

世の中、自分の理解を超えたモノにも、寛容的な気持ちを持たなければね(笑)


どうもお粗末さま。


2022年6月6日月曜日

ドラマ 「香港迷宮行」

 1992年  7月。




『工藤麻砂美(まさみ)』(南野陽子)は、退屈な日々を過ごすだけの地味なOL。(最近、上司の金田明夫と酔った勢いで、一夜だけの不倫もあったが)




そんな麻砂美の元へ、香港から、手紙と一緒に《ハイネの詩集本》が送られてきた。


宛名は、昔別れた恋人『岩館(いわだて)』(山下真司)からである。


『昔、君に借りていた詩集本をお返しします。近く日本に帰ってきたら、また連絡します』


「やだ …… 」

《嫌だ》と言っても、麻砂美の心は弾んだ。

会社のお昼休み、屋上で、これまた地味〜にハイネ本を読んでいるような麻砂美に、優しく声をかけてくれたのが岩館だったのだ。(本当に地味だ(笑))


岩館の転勤で別れた二人だったが、今頃になって、どうして ……?


(とにかく、こうなりゃ香港へ、直接会いに行ってみよう!)


たまたま、香港へのパックツアーに空きを見つけた麻砂美は、めいいっぱいオシャレして、それに参加した。


香港ツアーは、現地の香港人『陳(ちん)』(平田満)がガイド役である。



他の参加者は、貫禄充分なマダム『小野田たま子』(二ノ宮さよ子)や派手な身なりの『柳田邦子』(村上麗奈)。



そして、会社の出張で安いパックツアーを利用してやってきたという『小原友成』(長谷川初範)など、見知らぬ面々が揃う。


ただ …… 調子の良さそうな男『小原』にだけは、どこかで見覚えがあるような気がする麻砂美なのだが ……


そして、ホテルにチェックインすると、即座に岩館に電話する麻砂美。(心はルンルン気分)


だが、電話を受けた岩館の方は、予期せぬ麻砂美の旅行に驚く。


「とにかく、今夜、そっちのホテルに行くよ」と約束するも、どうも様子がおかしいぞ。



妙なサングラスをかけた男たちに追われながら、香港中を逃げ回る岩館には、何か秘密がありそうだ。


それに加えて、ツアーの参加者たちも様子が、かなり変である。



その夜、参加者でテーブルを囲みながら食事をしていると、回転テーブルの上に酒のグラス🥃が載せられた。


小野田たま子の瞳がキラリと光る。


そのグラスの一つをとって、飲んだ小原が慌てて、ペッ!と吐き出した。


「何だ?!コリャ!変な味がする」

途端に気分が悪くなった小原は、ホテルへ駆け込んだ。


幸い助かった小原だが、なにやらグラスには《毒物☠️》みたいなモノが入れられたのか?



その夜、今度は、ガイドの陳(ちん)が、柳田邦子の部屋へと訪れた。

重厚な《ピストル》を邦子に押し付けてくる陳(ちん)。

「これで上手くやるんだ!」



そう、このツアーは、借金で首がまわらない者たちを集めて、人殺しをさせるという、殺人ツアーだったのだ。(ゲゲッ!)



報酬は、それぞれにかけられた保険金《三千万円》。


そんな陳(ちん)の計画につられて、小野田たま子も、柳田邦子もやってきたのである。(ドジな二人はことごとく失敗するが)




一方、麻砂美はなんとか岩館と会う事ができるのだが、後日トンデモない事を、ある女性から聞かされる。


『ジョイ』と名乗る香港女性が、いきなり来て、

「ワタシ、イワダテのオクサン。ハヤク、そのホン、ワタシにワタスね!そうしないとイワダテ、命がアブナイ!」


こんな事をいきなり聞かされて、麻砂美はビックリ仰天!目が点になる。(´⊙ω⊙`)!



なんと!岩館は、会社の裏金 10億円 を横領して貸金庫に隠していたのだ。


その金庫の鍵を《ハイネの詩集》本の背表紙に隠し、ほとぼりが冷めるまで日本にいる麻砂美に預ってもらおうと、送りつけてきたのだ。



誤算だったのは、そんな麻砂美が《ハイネの詩集》片手に、わざわざ香港までやってきてしまった事だ。



目の前にいる、妻と名乗るジョイの存在や、こんな事実を聞かされて、麻砂美はパニック。


いたたまれず、その場から逃げ出した。



だが、こんな大金の匂いに、金の亡者である悪党『陳(ちん)』(平田満)が気がつかないわけがない。



人里離れた廃屋に岩館とジョイを監禁すると、ホテルに戻った麻砂美に、陳が直接電話をしてきた。


「その《詩集》を、すぐに持ってくるんだ!!」


複雑な思いを抱えて麻砂美は指定の場所である廃屋へと、急いで駆け付けるのだが ………






一気にクライマックス近くまで書いてみた『香港迷宮行』。


原作は『花園の迷宮』で有名な山崎洋子さんであるのだが ……… (原作を読んだ事がある私は、この内容に「???」)


原作では、登場人物は他にも出てくるし、主人公である麻砂美も《殺人ツアー》のゲームに参加してるのだ。(でも、これはこれでスッキリ改変されているし、まぁ良しとするかな)



脚本を担当するのはベテラン、土屋 斗紀雄さん。

『スケバン刑事』シリーズの脚本も書いている土屋 斗紀雄さんは、何かとナンノと縁があるようだ。



こんなナンノ目当てに観た『香港迷宮行』だったけれど …… 前述のあらすじを読んでも分かるとおり、登場人物たちのほとんどが、清々しいほどの クズっぷり!(笑)



マトモな人間なんて、主人公の『麻砂美』(南野陽子)と『小原友成』(長谷川初範)しかいやしません。




あ〜、そうそう、長谷川初範さんは、本社から横領の件で調査にやってきた調査員なのでした。(だから、なんとなく麻砂美も見覚えがあったのね)


でも、毒物を飲まされて殺されそうになったり、邦子の撃った銃が暴発して足をかすめたりと、もう散々な目に会う。(それでも死なないので、ある意味強運なのかも(笑))



私が、このドラマで一番注目したのは、(ナンノの可愛さは元よりだが)やっぱり 平田満(みつる)さん。


完全に現地の人にしか見えないほど、成り切っております。(元は日本人で中国残留孤児らしいが)


クライマックス、銃口を突きつけながら淡々と話す『陳(ちん)』の独白は、このドラマの最大の見せ場である。




中国人に育てられた『陳』と弟は、陳が16歳になった時、海を渡って香港に行く事にしたのだった。


だが、途中で弟は溺れ死に、残された『陳』だけが、命からがら香港へと辿り着いたのである。


でも、何のツテもない『陳』は、香港でもスラム街と呼ばれる『九龍城(クーロンじょう)』で暮らすしかなかったのだ。(薄汚れた廃屋のような狭小住宅地)


それでも10年かけて、必死にお金を貯めて、日本に戻ってきた『陳』もとい、本名『岡本康明(やすあき)』。


そんな日本では、既に実の両親は亡くなっており、親戚たちにも邪険にされてしまう始末。



「ワタシ、逃げるように《香港》に帰ってきたよ。でも《香港》、後5年で中国に返還されるね。ワタシ、また中国人にされてしまうのか?ワタシ真っ平よ!!」


自分が《何人》なのか …… 長年、流浪の旅を続けてきた『陳』。

そして、そんな『陳』が、もはや信用できるモノは、たった一つ。

莫大な《金》だけなのだ。




『陳』(平田満)の、こんな独白は、妙に鬼気迫るような説得力がある。



この迫力に、『麻砂美』(ナンノ)は、本気で震えあがっているようだ。(そりゃ、そうだ。これぞ名演技というものだろう)




渋々、麻砂美が鍵を渡すと、『陳』はそれを持って、喜び勇んで廃屋から出ていった。


残された岩館は「なぜ?鍵を渡したんだぁーー!」と絶叫する。(オマエが言うか?(笑))



その時、麻砂美が取り出したる 別の《》🗝️


《鍵》の存在に気づいていた麻砂美は、ココに来る前に、こっそりとすり替えていたのだ。


『陳』に渡したのは、只のコインロッカーの《鍵》なのでした。(機転がきくナンノ)



そんな『陳』は、香港マフィアに捕まり、嘘の鍵だとバレてしまうと ……… ああ、哀れ。


次の日、香港のゴミがプカプカ浮かんでいるようなドブ川に、遺体として流されていたのでした。(これをスタントじゃなく、本人、平田満さんが演じているとしたら、凄い役者根性である。)



散々、騙されてきた麻砂美は、岩館に怒りの平手打ちをすると、奥さんのジョイに鍵を渡して去っていった。



そうして、麻砂美が日本に帰国して数日後 ……



あのジョイから、麻砂美宛てに手紙と、例の《鍵》が同封されて送られてきたのだ。


手紙には、「その後、岩館が交通事故で呆気なく死んでしまった」ことが書かれていた。(ザマ〜みろ)



まさに《悪銭、身につかず!


小原に鍵を返した麻砂美は晴れやかな笑顔。

こんな教訓を残して、ドラマはエンド・マークを迎えるのである ………



こんな『香港迷宮行』、面白かったー!



それに興味深く、色々と考えさせられてしまった。


と、いうのも、あれから数十年経った現在、《香港》の凋落ぶりを、何かにつけて我々は目にしてきたからなのだ。



《香港返還前》、富裕層の人々は、中国支配を怖れ、とっととアメリカや他の国へと逃げ出した。

あれだけ賑わした『香港映画』は廃れてゆき、ジャッキー・チェンや数々の著名人たちも、ハリウッドへ活路を見いだそうとして、去っていく。



そうして案の定、返還後は、映画を作ろうにも中国政府の厳しい検閲が始まる。


自由に映画なんて作られなくなってしまった現在の《香港》。(今でも細々と作られているらしいが、まるで話題にもなりゃしない)



日本からも《香港ツアー》なんて企画で、ジャンジャン旅行客が押し寄せていたけど、そんなモノさえ、最近じゃ聞かなくなってきた。




この『香港迷宮行』は、あのタイミングだからこそ、ギリギリ作る事が出来た奇跡の作品なのだ。(今じゃ、絶対無理だ)


そう考えると、2時間ドラマとはいえ、歴史的な希少価値。(凄い持ち上げよう)



星☆☆☆☆である。


あの頃の《香港》の風景も、一緒に楽しんで欲しいと思う。


長々、お粗末さまでした。

2022年6月1日水曜日

よもやま話 「五十路(いそぢ)を過ぎた《スケバン刑事》たち」


 



たまたま、こんなのを見つけちゃいました。


コレがサービス精神旺盛な芸能人の《性(さが)》なのかな?


それなら大感謝!


お三人方とも、それぞれ頑張ってくれております。



斉藤由貴

一時期太っていた斉藤由貴も11キロのダイエットに成功してからは、ここ数年、美貌の方は絶好調!(プライベートの方は山あり谷ありだけど)


今でも、嫌がらず、こんな《セーラー服姿》になってくれるんだから、案外、洒落っ気が通じる人なのかな?この人。


魔性の美貌を取り戻した斉藤由貴は、同世代の我々オッサンたちを悩ませて、今でも魅了する。



南野陽子


近年話題になった『ガキ使』より〜

まんま『スケバン刑事』を再現してくれたナンノにアッパレ。(これぞプロ根性!)


頑張ってくれております …… が、なんだかお顔が少しパンパンに腫れてるような ……(失礼(笑))


五十を過ぎたナンノは、「食べたいモノを我慢しないで食べる!」主義になったそうな。


特に《白米》が大好きなナンノは、ご飯も何度もおかわりするほど自由なのだとか。


まぁ、ほどほどにね(笑)。(でも健康そう)



浅香唯


この人も、近年、心機一転でダイエットに成功した一人。(ライザップで痩せてましたね)


それと同時に、長年、キャバ嬢みたいに伸ばしていた髪をバッサリ!(あんまり好きじゃなかった、あの髪型)


ショート・カットの可愛い、あの頃の浅香唯が帰ってきました。


こうして見ると、浅香唯が、一番、あの当時の『スケバン刑事』を上手く再現出来ているかも。(ある意味、驚異的なのだが)



それにしても、あれから30年以上過ぎて、お三人方が、こうして芸能界に残っている事が何よりの奇跡。


浮き沈みがある芸能界では、《引退》や、自然と《他の仕事》にシフト・チェンジしていく者も、けっこういるのに。


それだけ、メディアがこの三人を、今でも欲しているという事なのか。



まだまだ現役のお三人方。


『スケバン刑事』にハマっていた私は、この三人を時々見かければ安心し、ホッ!と胸をなでおろす。


当分は、オッサンの自分を楽しませてくれそうだ。


還暦を過ぎてからの《セーラー服姿》も、期待してまっせ~(無理かな?(笑))