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2020年9月25日金曜日

映画 「ダイヤルMを廻せ!」

1954年 アメリカ。






プロテニスの選手だった『トニー』(レイ・ミランド)は、美しい資産家の『マーゴ』(グレース・ケリー)と結婚して、イギリスで何不自由ない暮らしを手に入れていたのだが……



テニス・ツアーで留守がちになったトニーの目をぬすんで、マーゴはこっそり隠れて《浮気》をしてしまった。



そして、その《浮気》はいつしか《本気》になっていく。



そのくらい、浮気相手のアメリカ人で推理作家の『マーク・ハリディ』(ロバート・カミングス)は魅力的だったのだ。

若くてハンサム、理知的であり情熱家。



やがて、そんなマークは故郷アメリカに帰ってしまった。(仕事?)



だが、二人の間の情熱は冷めることなく……アメリカに帰っても、何通もの手紙がマークから送られて来る。

その手紙に、マーゴは励まされ喜んだ。(さすが小説家)



そして、夫トニーがテニスを引退して、マーゴの資産に頼って生活してくると、尚更マーゴの気持ちはトニーから離れていき、遠い場所にいるマークに気持ちは傾いていく。



だが、そんな素振りをおくびにも出さないように、夫トニーの前では、いつも笑顔でキスをするマーゴ。


(この気持ち……知られてはならない……)






1年ぶりにロンドンに来たマークは、すぐさまマーゴを訪ねた。


マークとマーゴ……二人は抱きあい、1年の空白を埋めるようにキスしあった。


だが、次の瞬間、マーゴの不安な顔。



「どうしたんだ?マーゴ」

「あなたから送られて来た手紙は、読むと全て燃やしたわ……証拠を残さないようにと……でも1通だけはどうしても燃やせなくて……」



その手紙はマーゴのハンドバックに入れられ、大切に、大事に持ち歩いていたのだが……ある日、ハンドバックごと盗まれてしまったのだ。



一回きりの脅迫状が送られてくると、マーゴは金を払った。

でも、それきり音沙汰なく、返ってこない手紙。



「もう、はっきりさせようじゃないか、マーゴ!トニーと離婚して僕と一緒に来てくれ!!」


「ええ……でも、もう少し待って」

夫トニーに、なんて言って切り出したらよいのか………迷うマーゴ。






だが、この《浮気》、夫のトニーはとっくにお見通しだったのだ。




もちろん、マーゴの手紙を盗んで脅迫状を送りつけたのも夫のトニー。

全てはマーゴの反応を見るためにした、トニーの作戦だったのだ。




そして、マーゴの気持ちが、すでにトニーになくて、マークに傾いている事を知ってしまうと、トニーは昼夜考え続けた。


(もしも、マーゴから離婚を切り出されたら自分は無一文で放り出されてしまう……今更、テニス選手に戻れる年齢でもないし………どうすればいい?)



狡猾で冷酷なトニーは、表立ってはマーゴの前では、何も知らない演技を続けながらも、ずっと思案していたのだ。




そうして、とうとう、ある《完璧な計画》を立てる。


それは、まさに今、実行されようとしていた。


「入りたまえ!」


マーゴの留守中、トニーに呼び出されてやって来た男は、不審そうにキョロキョロした目で、アパートに入って来ると、トニーのいる部屋のドアを開けた。


(『スワン』と名乗るこの男……この男を、まず陥落させて、私の思いのままに操り従わせなくては。)


トニーの計画が始まる………。





この時期、「もう、どんな映画を撮っていいのかわからない!」状態だったヒッチコック。



フレデリック・ノットの舞台劇である、この『ダイヤルMを廻せ!』は、当時、上演されてヒットしていたので、


「これを映画にすれば……まぁコケはしないだろう……」くらいの気持ちで映画化に乗り出した、というのは当人の弁。




でも、今となってはヒッチコックが、この『ダイヤルM…』に、フラフラ~と惹き付けられたのも、なんとなく分かるような気がする。



《トニーの仕事が元テニス・プレイヤー》


そして、《赤の他人『スワン』に妻殺しの話を持ちかけるトニー》



そう、これは、それ以前に大ヒットした自身の映画『見知らぬ乗客』に似ているワードが、かなり入っているのだ。


本人は気づいていたのだろうか?(気づいてなくて無意識な気もするが)






この『ダイヤルM…』も、昔、ヒッチコック熱にうかされていた自分は、その流れで、当然観たのだが、当時の感想が、


「ヒッチコック映画にしては、あんまりつまんないかも…」というような感想だった。





今回、30年ぶりに見直してみると、その理由も、ハッキリと分かる。



舞台劇は、限られた空間で、ほとんどセットが変わらない室内劇が多い。(セット・チェンジは膨大な予算がかさむから)


その中の登場人物たちは、セリフの応酬だけで、観客たちの意識を舞台につなぎとめようと必死になる。


そのため、セリフの量が半端なく多いのだ。





舞台なら、それで良いかもしれないが、映画には映画の手法がある。


これを映画にするなら、全てをバラバラに分解して、映画的手法に組み変えなければならないのだが、それがあまり上手くいってないような気がするのだ。





例えば、夫『トニー』が赤の他人『スワン』を自宅に呼び寄せるシーン。



このシーンが、とにかく長くて、映画としては一番退屈な部分なのである。


スワンが、

過去にど~した、こ~した。

こんな事件を引き起こした。

お前の弱味を俺は全て知ってる。

ゆえに、俺の言う事を聞いて、妻のマーゴを殺せ!

警察に行ってもお前の話は通用しないし、マーゴの手紙に触れたお前の指紋も、ちゃんとこうして証拠としておさえてある。



ゆえに、お前は俺の言う事を聞くしかないのだ。


………こんなクドイ場面が何分も続くのである。


そこまでかけて、『スワン』を説得まで持っていくまでの話が、まぁ~長くて退屈な事よ。




これを、全て、夫トニーのセリフでいちいち説明するのだから、辛抱して聞いてる方は、「いいかげん、まだ、終わらないのかよ。このシーン……」となってくるわけである。


この『スワン』の過去など途中から、「ど~でもいい」と思ってくるのだ。




これが、昔、この映画を「退屈」と感じた理由だったのか。





ただ、…………



この長ったらしくて、くどいシーンが終わると、段々とこの映画は、その様相が変わってくるような気がする。



ヒッチコックが撮影しながら、徐々に光を取り戻してゆくのだ。



それはカメラ越しに見る《グレース・ケリー》の姿……。




グレース・ケリーの美しさ、洗練された所作、ファッション・センス……


悪党スワンにストッキングで首を締め上げられながらも、懸命にあらがい、スワンの背中にハサミを突き立てるグレース・ケリー。



恐怖するグレース・ケリーの姿……




撮影を続けながら、グレース・ケリーに次第に魅力されていくヒッチコック。


その熱気やノリノリになってきている様子が、映画を観ているこちら側にも、充分に伝わってくるのだ。




映画の勘を取り戻しつつある……そんな期待を持たせて、映画は終わるのである。



この『ダイヤルM…』の公開と同じ、1954年に間髪を入れずに、傑作『裏窓』は作られている。


もちろん、主演女優はグレース・ケリー


まさに、グレース・ケリーはヒッチコックの窮地を救う為に現れた《女神》だったのだ。

星☆☆☆。

2019年1月5日土曜日

映画 「真昼の決闘」

1952年 アメリカ。





10時35分、丘の上に人相の悪そうな3人のガンマンたちが集まってきた。



3人は、集まると、ハドリーヴィルの町中を進んでいく。

その姿をみつけて、ざわつく町の人々。



ある者は、仕事を放り出して家に逃げ込み、道を通りすぎる老婆は、胸で十字をきる。

床屋は窓越しに、見える3人に震えあがる。



3人は、町外れの駅に向かった。

今日、3人の仲間で、一番の悪党であるフランクが釈放されて、正午の列車でやって来るのだ。



(見ていろよ……兄貴のフランクが戻ってきたら、町中で大暴れしてやる!)

フランクの弟、ベン・ミラーはニヤリと笑った。





ちょうどその頃、町の保安官『ウィル・ケーン』(ゲーリー・クーパー)は『エイミー・ファウラー』(グレース・ケリー)と、皆に祝福されて結婚式をあげていた。


保安官の任務も今日で終わり。いずれは、別の保安官がやって来てお役御免だ。




そこへ駅舎が駆け込んできた。



「フランク・ミラーが釈放されたぞ!」



その言葉にざわつく人々。


「それだけじゃないんだ!駅にフランクの弟のベン・ミラーと仲間たちがいるんだ! フランクが乗る列車が、12時に着くのを待っているんだ!」

駅舎は震えあがっている。




5年前にウィル・ケーンが逮捕した極悪人フランク・ミラー。

そのフランクが、なぜ釈放されたのだ?

当然、死刑になるはずだったのに………。




そして、帰ってきたフランクは、きっとウィルに復讐するつもりだろう。



「君たち二人は早く町を出るんだ!」

町の連中は、ウィルの身を案じて、結婚したばかりのエイミーと一緒に、追いたてるようにして、馬車で送り出した。




でも………。

(本当に、これでいいんだろうか)

ウィルは馬車を引き返した。




そして保安官事務所に帰ってくる。


「どうしたのよ?」エイミーは気が気じゃない。

「この町の人々を見殺しにできない」

納得できないエイミーは、懸命に説得するが、ウィルは頑として首を振らない。





たまらず、エイミーは、事務所を飛び出した。



(きっと、町の仲間たちが力を貸してくれて、皆で力を合わせれば、無法者たちを追い払える………)


ウィルは、そう思いこんでいるのだが……事は簡単には進まなかった。

極悪人を乗せた列車の到着まで、後、数分………。






監督はフレッド・ジンネマン。



劇中で流れる「ハイヌーン(原題)のテーマ」は心地よく響く。

アカデミー歌曲賞を受賞した。





そして、主演のゲーリー・クーパー(この時51歳)も見事、この作品で、2度目のアカデミー賞主演男優賞に輝いた。




ゲーリー・クーパー  ……身長は190cmの長身で若い頃(映画モロッコなど)は、超ハンサムだった。


さすがに50を過ぎて、少し枯れているが、眼光は鋭く渋みを増している。


ゲーリー・クーパーが演じたウィル・ケーンは、多少は頑固だが、情けなさもあり、時折《弱気》もみえるような中年の保安官だ。

そんなウィルの『弱気がみえる』のが、次のシーンである。





助っ人を当てにして戻ってきたウィルの願いは簡単に打ち砕かれた。

やはり世間は甘くなかった。




みんなが、みんな、「俺たちは関係ない!」を決めこんで知らぬ顔なのだ。


それほど、悪漢フランクの脅威は凄まじかったのだ。




判事は早々に町を逃げ出した。(バイバイ~後、ヨロシク!)

保安官助手にも。

知り合いを頼っていけば居留守扱い。(誰も居ませんよ~)




教会にまで乗りこんでいって、助っ人を募るが、集まった人たちは文句タラタラ。


あーだ、こーだ、逃げ口上ばかりである。






結局、誰一人味方を探せなかったのだったウィル。(やっぱりね、でもこのウィルも、いい歳をして考えが浅いというか)




ひとり淋しく、保安官事務所に帰ってきたウィルは遺書なんてのを書きはじめた。(あらら……そこまで?)



大の大人なのに、皆に見棄てられて、もう、今にも泣きそうである。(え~っ?泣くの?泣くの?クーパーが?でも、ウルウルしてます)



でも、でも、

「行かなければ!」


男の意地と、ありったけのかき集めた勇気で、人っ子ひとり居ない町中に出ていくウィル。


そこには、フランクを交えた悪党たち4人の姿が。


ボロボロになりながらの撃ち合い!



なんとか一人倒し、二人倒し……。

馬屋での銃撃戦の後、肩を撃たれて、絶体絶命のウィル。




そこへ助けに戻ってきたエイミー。
(見捨てられるものですか!)





そうして、あと一人、フランク・ミラーだけが残った。


フランクは隙をついてエイミーを人質にとる。


「出てこい!ウィル・ケーン!」

殺されると分かっていながらも、フランクの前に現れたウィル。


その時エイミーは、フランクの腕を咄嗟の機転で振りほどいた。


ウィルの銃は、その機を逃さずフランクを一発で仕留めたのだった!(カッコイイ!!)






極悪人たちが、全員倒されると、隠れていた人々が通りに出てきた。



「やったな、ウィル!」

「さすがだな、保安官!」

そんな群衆に厳しい目を向けるウィル。(こいつら、今頃ノコノコ出てきやがって……)



エイミーを抱えると、胸の保安官バッジを投げ捨てる。

そうして二人は、馬車に乗り込むと町を去って行くのだった……。(こんな町に2度と戻ってくるかー!)



で、映画は終わるのである。






この《弱気》をみせるシーンが、それまでの完全無欠のヒーロー像とは違って、どこにでもいる等身大のオジサンとして映り、我々、庶民にも親しみやすく感じたのだった。



アカデミー賞も納得の演技である。





それにしても、この最後のシーンに似た映画を思い出さないかな?


そう、『ダーティハリー』…。

ハリーが、最後、スコルピオン仕留めて、警察バッジを捨てるのは、この映画のオマージュである。


このように、この映画は、後年、様々な映画や俳優たちに、影響を与えたのだった。(特にクリント・イーストウッド)



そして、他にも探してみれば、似ている映画が見つかるかもしれない。


星☆☆☆☆☆です。

2018年11月7日水曜日

映画 「裏窓」

1954年 アメリカ。






クーラーもない、暑いときは、皆が、窓を開け、周りの目なんて気にしない、のどかな時代。




ニューヨークのアパートの一室で、ひとりの男が車椅子に乗ったまま寝ている。


写真家『L・B・ジェフリーズ』(ジェームズ・スチュワート)。※後記ジェフとする。


そばには、カーレースの写真があるところを見ると、それを撮ってる時に、たまたま事故にあったのか…………。


向かいにもアパートがあり、みんな窓を開けっぱなし。(現代じゃ考えられないくらい皆が明け透けです)






向かいの一階さんは、花壇に水をあげ、二階の老夫婦はベランダで寝て、籠に乗せた犬をロープで降ろしてる。


ダンサーらしい女性もクルクルと楽しそうに踊ってる。


作曲家らしい男が、ピアノを弾いてる(誰もウルサイとか文句も言わないし)


セールスマンらしい男と奥さんがケンカしてるのも筒抜けだ。





そんな、いつもと変わらない朝、看護師の『ステラ』(セルマ・リッター)が、ジェフのアパートを訪ねてきた。


床擦れ防止?のオイルを背中に塗りながら、マッサージをはじめると、それと同時にお説教。


「さっさと、恋人のリサと結婚しなさい!」

下着姿で踊るダンサーをチラチラ見るジェフに、半端呆れ顔。




「コラ!覗きは禁固半年の刑よ!」と釘をさして帰っていった。



そして日が沈み、再び夜。



車椅子に座ったまま、寝ぼけ眼のジェフの目の前に、絶世の美女。


噂の恋人『リサ』(グレース・ケリー)である。




恋人のリサはやさしくキスをして迫ってくる。(何でじゃ?)

どうもジェフにベタ惚れらしい(??)




ファッションモデルらしく着ている服も上等そう。

羽のようなふくらみスカートで、バッチリ着こなしている。



最初は、なごやかな夜だったが、ジェフにモデルの写真をすすめたあたりから、二人の会話は、ギクシャクして平行線。


美人のリサは、気落ちして帰っていった。(馬鹿なジェフ)





リサが帰ると、ジェフはアパートの車椅子で、再び独りぼっち。


やる事といったら、やっぱり窓の外を、眺めるしかないのだ。





そんなジェフが窓の外を見ていると、夜半、向かいのセールスマンが、雨の中、アパートから出ていった。

(こんな時間に何の用事だろう?………)



うとうとして、また目が覚めると、またセールスマンが、夜、出かけていく。




セールスマンの部屋の窓は閉めきったままだ。

奥さんのガミガミ声も、全く聞こえなくなった。



(どうしたんだろう………まさか?!)



次第に、ジェフはあらぬ想像を膨らませはじめる。



(もしや、あのセールスマン………口うるさい奥さんを殺してしまったのか?! )



セールスマンの動向が気になりはじめ、踏み込んではいけないと、知りつつも、双眼鏡で見張りを続けるジェフなのだが………。






何度、この映画を繰り返し観た事だろう……。


日曜洋画劇場で偶然観た、この映画で、ジェームズ・スチュワートを知り、グレース・ケリーを知り、監督のアルフレッド・ヒッチコックをはじめて知ったのだから。



グレイス・ケリーの美しさにウットリし、骨折して動けないジェームズ・スチュワートには、ハラハラさせられる。(動けないのに、犯人に気づかれるぞ、と)


看護師のステラ役のセルマ・リッターが、そんな二人の間に入って、気のきいた説教をしながらも、どこか面白味があって……。



『裏窓』は、完全に私を魅了した。




グレース・ケリーもジェームズ・スチュワートも、調べてみると、他のヒッチコック作品に出ているじゃないか!



それを知ると、今度はそれを追いかけはじめた。



次から次にと………時代は、レンタルビデオ店がアチコチに出来て、レンタル店の棚には、どこにでもヒッチコックの作品が、ズラ~と広い幅で占拠。(イギリス時代のサイレント映画まで置いてあったんだから。 本当に、まっこと良い時代でございました)



そうして、気がつけば、50本以上あるヒッチコックの映画を全て、完全視聴してしまったのだった!!(まぁ、中には多少駄作もあったけどね (笑) )



映画を観る楽しさを教えてくれたのは、『裏窓』。


偉大なヒッチコック作品の扉を開く、きっかけを与えてくれたのも、この『裏窓』だった。






最後は、ジェフが犯人に襲われて、窓から転落して、もう片方の足も骨折する。(それくらいですんだから良い方だ)


次の日、両足ギブスになったジェフ(トホホ……)の側で、優雅に足を組ながら、ファッション雑誌のページをめくるリサ。


そんなリサの、微笑む顔で映画は終わるのである。(この終わり方もオシャレ感半端ない)




今からヒッチコックを追いかける人には、まず入門編として『裏窓』をオススメします。



きっと気に入るはず。

そして、他の作品にも手を伸ばしてみようか……と、絶対に思うはずですから。




昔、自分が夢中になったように………。


星は☆☆☆☆☆です。