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2023年7月21日金曜日

ドラマ 「白い闇」

 1980年 12月。(土曜ワイド劇場より~)




『小関信子』(音無美紀子)は、夫・『精一』(津川雅彦)、精一の母『初子』(賀原夏子)との3人暮らし。


もっとも精一の方は、不動産の仕事をしており、日本全国を忙しく飛びまわっていて、年中留守がち。


普段は、少々愚痴っぽい姑・初子と2人でいるのがほとんどである。


そんな精一がたまたま帰ってくると、従弟の『高瀬俊吉』(速水亮)を呼び寄せた。

「コイツに不動産のパンフレット作りを手伝ってもらうんだ!」


従弟とはいえ、俊吉には一見、何の得もない仕事だ。 

それでも俊吉には断れない事情がある。


なぜなら、

俊吉は、精一の妻・信子に横恋慕しているのだから!


こんな俊吉の様子は、鈍感そうな精一も重々承知しているし、信子の方もハンサムな俊吉が自分に好意的なのも分かっている感じだ。(俊吉にしたら《蛇の生殺し》状態だろうよ)


その夜、小関家に泊まった俊吉。

2階の夫婦部屋からは、妙な吐息がダダ漏れて、聴こえてくる。(これこそ、《生き地獄》だ(笑))


「もう、これ以上は堪えられない!」と、俊吉は家を抜け出し、馴染みのBARへ行って、やけ酒をかっくらった。


そこへ俊吉に気がある女がノコノコやって来る。(この女が、ドラマでは《いつも報われない女》の代表・池波志乃さんなので、やっぱり俊吉には歯牙にもかけられない、という悲惨さ(笑))


その頃、小関家では …… 精一が信子に対してトンデモない提案を言いだしていた。


「俺は見てのとおり、ガサツで学の無い男だ。仕事で留守がちにすることも多い。お前も …… その …… 寂しかったら《浮気》くらいしてもいいんだぞ」

「何をバカな事を!」

夫の真意が分からない信子は返答のしようがなかった。



次の日、精一は、またもや遠い北海道まで出張である。

駅まで見送りに来た信子は、今まで精一にずっと黙っていた秘密を、こっそり打ち明けた。


「私、《赤ちゃん》ができたのよ」

てっきり喜んでくれるかと思いきや、急に青ざめる精一。


「そうか …… よかった」

なんとかそれだけ言うと、精一は逃げるように列車に乗り込んで行ってしまった。


だが …… 

よもや、これが夫の姿を見た《最後》になろうとは ……



それから何週間経っても夫・精一は帰ってこないし、連絡さえも全くないのだ。


心労で気を揉んでいる信子を見かねて、俊吉はとうとう精一の《秘密》を打ち明ける事にした。

「精一さんには他に 女がいるんですよ!それも秋田に。もしかしたら、そこにいるのかも」

「あの人に女が …… 」


大ショックの信子。

だが、こんな事実を知ってしまえば、もはやジッとしているはずもなく、信子は早速秋田へ直行。


浮気相手のアパートを訪ねると、出てきたのは『田所常子』(横山リエ)という、陰気そうな女である。(精一の姿はなかった)


だが、この田所常子、開口一番、いきなり、こんな風に切り出してきたのだ。


「あの人と離婚してくださらない? 私の人生、今まで1つも良い事なんてなかったのよ。私は絶対に精一さんと別れませんから! それに貴女には《俊吉さん》がいるでしょ? あの人に聞いて知っているんだから。 奥さんの方も満更でもなさそうだって!!」

もう、信子は常子の一方的な迫力に押されっぱなし。


結局、夫の手がかりも得られないまま、帰ってくるしかなかったのだった。


そうして帰ってき早々、流産


嫁の流産やを、息子の失踪、信子と俊吉の態度でイライラ気味の姑・初子は、とうとう怒りを爆発させた。


「あんたら、二人して何をコソコソやってるのよ!」(俊吉にしたら、「全てはオマエのとこのバカ息子のせいなのに!」って気持ちだろうに)


もう、これ以上は隠し通せないと思った俊吉は全てを初子に話す。(初子、唖然呆然!(⁠´⁠⊙⁠ω⁠⊙⁠`⁠)⁠!)


そうして、初子、信子、俊吉の3人は話し合いの末、警察へ失踪届を出す事に決めたのだが ……



松本清張の同名短編小説のドラマ化で、現在(2023年)までに計8回ドラマ化されていて、コレは6回目のドラマ化である。


それだけ松本清張の原作の中でも人気な部類に入るので、このドラマのあらすじ自体は、かなり知っている人が多いかも。


古くは乙羽信子さんや吉永小百合さん、大竹しのぶさんなども演じていたヒロイン《小関信子》役。


このドラマでは、若き日の音無美紀子さんが、そのヒロインを演じているのだが …… なんせ天下の《土曜ワイド劇場》。

淫靡な匂いがプンプンである。


↑夫役の津川雅彦とのこんなシーンも




↑とうとう一線を超えてしまった速水亮さんとも(まぁ、失踪前に旦那が「浮気OK!」って言ってるし(笑))


想像をかきたてられるシーン続出である。(《畳にわざわざお布団》ってのが昭和のエロチシズム)



で、このドラマを観ながら段々と思い出してきた事もあった。


私、この当時の 津川雅彦が「大嫌い!」だったのだ!(全面的に)



真っ白な肌に、多少小太り気味の身体つき。

青々とした髭剃り跡に、対比したような 朱色の唇。


オマケに変な形の銀縁色眼鏡をいつも着用。

ファッションセンスなんてゼロに等しいような奇抜過ぎる服装。(こんな背広、当時も今も着ている人、見た事ないわ(笑))


そのインチキ臭い見た目だけで、こんな不動産屋には絶対に関わりたくない(笑)。


後、この人の癖なんだろうか …… 誰でも彼でも↑こうやって無意識に 人を指差すような悪い癖。


このドラマでも序盤しか登場はないものの、音無美紀子さんや速水亮さんを何度か指差してる。

《無礼》、《偉そう》、…… 本当に嫌いでした。(晩年はその印象も180度変わるのだが)



後半は、この人の登場で、ドラマの様相が一気に変わってくる。


下川辰平さん …… 真面目、誠実、勤勉さを絵に描いたようなお人である。


なんたって、『太陽にほえろ』では真面目な熱血刑事・長さん。

『スクール・ウォーズ』では不良にさえ愛情をそそぐ校長先生役で有名ですもの。

悪いイメージなんかは、ほとんど無い。(津川雅彦と違って(笑))



しばらくして、『田所常子』が秋田県・十和田湖の近くの雑木林の中で変死体として見つかった。(遺体からは青酸性の毒物が発見される)


その一報を聞いた信子と俊吉は、急いで警察へとかけつける。

そこにいたのが、田所常子の実兄である『白木純三』(下川辰平)。(奔放な妹は、昔、家を飛び出して苗字も変えていたらしい)


元宮城県警に勤めていたという白木純三は、パッと見、勤勉で本当に真面目そうである。

「妹は昔から男運がない女でした …… それが不憫で ……不憫で …… 」


真面目そうな白木に、信子も俊吉も、口うるさい初子さえも同情的になるものの …… ん?この白木さん、どっかおかしいぞ~!


あくまでも、元刑事 で、今は《一般人》なのに、わざわざ信子たちの家にまでやって来たり。

池波志乃のBARにまで信子を引っ張っていって、俊吉の悪い噂を教えてやったりして ……


それもそのはず、真犯人はこの《白木純三》なのでありました!(やっぱり!)


『精一』(津川雅彦)は十和田湖に呼び出されて、とっくに銃殺。

深い湖の底で眠っているのでした。(自殺した妹の復讐で)


そんな十和田湖への誘いに、まんまと引っかかってしまった信子と俊吉。

二人に全ての罪をなすりつけて殺すのが、白木純三の計画なのである。


《殺人犯》は、一度成功した手口を同じように繰り返す。


白い霧の中、広い湖のボートの上で絶体絶命の大ピンチ。


果たして二人の運命は …… (まぁ、ご想像どおりハッピーエンドなんだけどね(笑))



今回、最後までネタバレ的な書き方をしてみたけど、ま、いいか。(この原作、何度もドラマ化されているし)


音無美紀子さんの妖艶な演技や、速水亮さんのイケメン具合。(なんせ仮面ライダー出身)

善良なイメージを逆手にとった珍しい悪役の下川辰平さん。

当時、イヤ〜なイメージ通り(だいぶ私の偏見が入ってるが(笑))の津川雅彦の死。


キャスティングの素晴らしさで、中々の良作に仕上がってるんじゃないかな、このドラマ。

星☆☆☆☆。


※尚、この原作(1957年)が発表されてから、他の小説家たちも《十和田湖》を舞台にした小説を、続々書きだした。


笹沢左保西村京太郎内田康夫などなど ……

いずれも何本かはドラマ化されているモノもあるようで。


今や、十和田湖は《ミステリーの聖地》なのだ!


そんな十和田湖に「いつかは行ってみたいなぁ~」と思いをはせながら、長い話を終わりにしておく。



2023年7月5日水曜日

ドラマ 「《密会の宿》シリーズ 」

 1984年〜1993年。(土曜ワイド劇場より〜 全8作)




東京は新宿某所にあるという、連れ込み旅館《くわの》。


亡夫が残してくれた遺産ともいうべき、この旅館を一生懸命切り盛りするのが、美人女将・『桑野厚子』(松尾嘉代)である。


そんな《くわの》に居候を決めこんでいるのが亡夫の会社の後輩だった『久保隆』(森本レオ)だ。


目下、ノンフィクション大賞を目指し、コツコツ小説を書いてる日々なのだが …… この小説、いつになったら完成するのやら ……


暇さえあれば、旅館に泊まりにきた男女の営みを、秘密の隠し穴からこっそり覗き見👁️して楽しんでいるのだ。(亡夫もとんでもない仕掛けを作ったものよ)


「また覗いてる!」

厚子に咎められて、そそくさと小説を書くふりをはじめる隆。

そんな隆に呆れながらも、あまり怒ってはない様子の厚子。


この二人、いわば事実婚のようなもの。

ようするに、デキちゃってるのだ!


むしろベタ惚れなのは厚子の方である。(こんな男の、一体どこが良いのやら)


他人から見れば、ヒモ男を養ってるような、ただの都合の良い女である。(「余計なお世話!」とは厚子の弁明)


そんな《奇異》な関係の二人が住む、旅館《くわの》には、今日も曰く付きの男女がやって来て ……


原作はミステリー作家の重鎮・佐野洋(さの よう)さん。(徳間文庫から出ておりました)


ドラマ一作目は、『密会の宿 殺人事件』で(画質の悪さはあれど)今回、久しぶりに観れました。


そうして、(ああ、こんな感じ … )と段々思い出してきた。


このドラマの中の、森本レオの自堕落な《ヒモ生活》に憧れた時期もあったのだ。(いけないことだけど)


なんせ働かなくても、美人の『厚子』(松尾嘉代)が全て面倒みてくれる。

住まいを与えて、三度三度食事まで作ってくれて、お小遣いまでもらえちゃうのだ。


オマケに別の特別な欲求も厚子が満たしてくれて ……


世の男にとっては、まさに《パラダイス生活》じゃないか!


そういう所ばかりに感心していたので、肝心のドラマの内容なんてのはすっかり忘れておりました。


この第一作目は、旅館《くわの》の近所にある大手美容室が舞台となっている。(主人公・厚子も、ここの常連客)



美容サロン『ベル』を取り仕切るのは『牧村芳江』(吉行和子)。(夫・健介は病気の為、只今入院中)

そこで働くのが健介の実弟である『秀之』(荻島真一)と、その妻『絹子』(平淑恵)である。


この夫婦、借金まみれであちこちを逃げ回ったあげく、東京にいる兄・健介のところに転がり込んできたのだ。


温情ある健介は、借金を肩代わりしてくれて、それ以来、二人を住み込みで働かせてやっている。

「一生懸命、心を入れ替えて働きます!」


そんな宣言をしてから5年の歳月が経ち、店はなんとか繁盛してるものの ……


『秀之』(荻島真一)の方はというと、生粋の女ったらしで、今日も女性客とイチャイチャしてる。


仕事の合間にも(隙あらば … )と客の車の中で《やりだしたり》するのだからたまらない。(ちゃんと仕事せえよ(笑))



それに慌てて駆けつけてくる妻・『絹子』(平淑恵)。


そんな二人に、

「またやってるわ!全く、もうしょうがないわねぇ~ …… 」と義姉『芳江』(吉行和子)は、常連客の『厚子』(松尾嘉代)相手に愚痴がとまらない様子。



でも、数日後、

こんな芳江が義弟の秀之に誘われて、旅館《くわの》に客としてやって来たのだから、厚子はもうビックリ!仰天!!(⁠´⁠⊙⁠ω⁠⊙⁠`⁠)⁠!



バツの悪そうな芳江は厚子の顔をまともに見れやしない。

いつの間にか、芳江は義弟・秀之の手練手管ですっかり秀之の《情婦》になり下がっていたのだった。


最初は顔なじみの厚子に遠慮していたものの、一旦部屋に入ればこんなものである。(女は怖いねぇ~(笑))


そこへ、しばらくしてから、妻の絹子が怒鳴りこんできたから、またもや厚子は2度びっくり!



絹子は厚子の制止をふりきって、一目散に二階へと駆け上がっていった。


そこでは、たちまち修羅場!

絹子は、ポケットに忍ばせていたシザーズ(美容ハサミ)を、芳江めがけて思いっきり突き立てたのだ!



「ギャアアアーーーッ!!」

旅館中に鳴り響く大絶叫。


腰の抜けた秀之が降りてきて、旅館《くわの》はてんやわんや。

警察がすぐさまやって来て、絹子を逮捕していくと、今度は、噂を聴きつけたマスコミが大勢でやって来る。


こうして、普段ひっそりした《くわの》の静寂はやぶられたのだった。



だが、元来、人のよい厚子は逮捕された絹子にも同情的だ。

普段から真面目で仕事熱心だった絹子を信用しているのだ。


知り合いの弁護士を紹介してやったり、少しでも絹子の刑が軽くなるようにと、近所でも嘆願書を集めたりする。




「私が馬鹿だったんですぅー!許してくれ、絹子ぉぉーー!」

夫の秀之は、涙ながらに裁判で答弁したりする。(どうも演技過剰過ぎるが)




夫に裏切られた可哀想な妻 …… 

加害者・絹子には、世間もしだいに同情ムードになってきた。


…… そうして1年後の判決 ……

「主文、牧村絹子には懲役3年、執行猶予5年の刑を言い渡す」

裁判でも、服役しなくてすむような温情判決が出たのだ。



誰もが喜ぶ中、どうもスッキリしない顔をしている者が一人。

『久保隆』(森本レオ)である。


「どうして、《あの時》、秀之は内側からしっかり部屋の鍵をかけなかったんだろうか? …… 普通なら事におよぶ前に鍵をかけるはずなのに …… 」

「そういえば …… 」厚子も隆に諭(さと)されて、疑惑がモヤモヤと湧き上がってくる。


オマケに、この裁判中に病気で長い間入院していた兄の健介までもが亡くなっているのだ。


新宿の美容サロンのビルや遺産は、ざっと見積っても2億円 以上になるらしい。


芳江が殺されて、健介が亡くなり、それを相続するのは、ただ一人、不肖の弟 秀之なのだ!


これは最初から秀之・絹子夫婦が、旅館《くわの》を利用して企んだ 計画殺人じゃなかったのか?!


こんな結論に達した二人。



「それが本当だったら、とても許せないわ!」

この推理をぶつけるため、憤慨した厚子は釈放されたばかりの絹子を訪ねていくのだが ……




第一作目でコレなんだから、二作目、三作目以降はどうなっていくんだろう、このシリーズ!(全8作あります。早く配信でも、BOXでもいいから出してほしいわ)


面白かった。


この第一作目に関しては、松尾嘉代さんも、森本レオさんも、平淑恵さんにしても、皆さん充分に印象深いのだけど、やっぱ殊勲賞はこの方に差し上げたい。


👑荻島真一さん👑


スケコマシ顔から〜みっともない泣き顔、

オマケに、こんなヘナチョコ顔まで、よくもまぁ〜、自在に豹変できるわ!


この秀之役にしても、「ナンなんだ!コイツ!!」っていうような本当にクズ男の役である。


24時間 暴走・下半身男》とでも命名したいくらいだ。(大笑🤣)


この後も、秀之の下半身の暴走は、当然おさまらず ……


若手の女優と知り合っては、簡単に、こんな風になっております。


そうして、莫大な遺産を手に入れた秀之のセリフが、また凄い。


「美容師?あんな仕事もう、やりたくないねぇ~。あの仕事やってると、ずっと立ったまんまで腰が痛くなっちゃってさ~」


笑わせる。こんな秀之には逆に、こうツッコんでやりたい。


オマエは女と見れば、ずっと、おっ勃ったまんまで、腰はいつも動きっぱなしじゃないか!と。←お下品なツッコミ(笑)


でも、こんな秀之は、ある意味、世の男にとっては羨ましい存在なのかもしれない。


そうして、ココにも秀之に嫉妬する輩が一人いる。


「オタクの旦那さん、女優●●の家で、こっそり逢い引きしてますよ」

こんな要らぬ電話を妻の『絹子』(平淑恵)に、してしまう『久保隆』(森本レオ)。


こんなくだらない事してないで、アンタは家に帰って、とっとと小説を完成させなよ!(笑)


こんな余計な電話のせいで、またもや修羅場が待ち構えているのは、もはやお約束である。


酒を呑みながら、こんなドラマをツマミにして、大笑いする夜。


ん〜、やっぱり昭和のドラマは《格別》だわ〜。


感心したところで、星☆☆☆☆であ〜る。


※尚、この《密会の宿 シリーズ》は、配役を変えた岡江久美子東幹久版もあるのだが、私としては、ん〜、なんか違うんだよなぁ~。

淫靡(いんび)さや毒っ気を楽しむのなら、やっぱ、松尾嘉代森本レオ版に肩入れしてオススメしときます。

2022年9月19日月曜日

ドラマ 「鱶女」

 1980年  8月。





このタイトルの漢字が読めます?

私は読めなかった。


調べてみると、《魚》に《養う》と書いて、《鱶》(ふかと呼ぶのだそうだ。


で、その《鱶(ふか)》だが、

「普通サイズよりも、さらに巨大な大型鮫(サメ)」の事を意味するのだそう。(なら、タイトルの方も《鮫女(サメおんな)》で充分よさそうだけど)


あ、そうそう、食べ物の《フカヒレ》ってのがあるでしょう。

あの《フカ》だと覚えておけば良いかも。


そして、このドラマのタイトルが『鱶女(ふかおんな)』で、こんなオドロオドロしい副題がついていれば、お察しのとおり。




これは、夜ごと、鱶(ふか)に変身しては、人間を襲い続ける、鱶女の復讐劇。

ホラー・サスペンス・ドラマなのである。




一年前、思わぬ自動車事故で結婚間近だった恋人『今日子』(夏樹陽子)を亡くしてしまった『津川敏夫』(大和田獏)。



それからは空虚な日々だけが流れて ……


敏夫は今日子と二人で楽しく過ごした事のある想い出の漁港に、フラリやってきた。





母親と民宿を営んでいる『静香』(香野百合子)は、そんな敏夫に再び出会えて大喜び。


ちょうど、しつこい網元に言い寄られていてウンザリしていたのだ。(顔が怖いし(笑))





そんな折も折、漁港では大勢の人たちが集まって大騒ぎ。

無人の船が見つかり、乗っていた漁師の若者カツゾウの姿が見当たらないのだ。



「こりゃ、カツゾウの奴、海におちたんか」

「きっと鱶(ふか)にやられたんだ!」



町がそんな騒ぎになってるとは、露知らず。

敏夫は、想い出の離れ小島までモーターボートを走らせた。



小島に着いて短い洞穴を抜けると、砂浜には脚を怪我した一人の女性が横たわっている。


その顔を見て敏夫は驚いた。

(今日子、今日子の顔にそっくりじゃないか!!)




海女(あま)をしているという、その女(夏樹陽子・二役)は、死んだ恋人・今日子に瓜二つ。

まるで生まれ変わりというくらい、生き写しだったのだ。



元々、死んだ今日子が美人でスタイル抜群。

それと同じなら尚更。

敏夫はひと目見て、惚れた!♥(だろうな(笑))



それからも、あの美人の海女さん会いたさに、心配する民宿の静香の腕を振り切って、海に出ていく敏夫。


それを見て、勝手に勘違いして、嫉妬の炎をメラメラと燃やす網元の男。


「あのヤロー、静香に色目を使いやがってぇ~」(あぁ、とんだ勘違い)



その間も、次々、漁師の若者が、夜の海に響く謎の女の声に誘われて、恐ろしい鱶(ふか)の餌食で殺されていく ……



こんな状況下で、村の長老(加藤嘉(かとう よし))が、とうとう黙っておられず、ポツリ、ポツリと話だした。


「二ヶ月前、お前たちは入り江に舞い込んできたオスの鱶を殺しただろう。メスの鱶は痛手を負ったが逃してしまった。そのメスの鱶が人間の女に化けて復讐にやってきたのだ!」


トンデモない話に村の若い衆は、「何を馬鹿な事を …… 」と笑っているが、半端、長老の話を信じている。


「大昔にも同じような事があった。《鱶女》がやってきて村人を襲ったんだ。暗闇の中、異様に目を光らせて …… 」



もう、網元も他の男たちも、すっかり《鱶女》の存在を信じ込んだようである。(この人が話せば、こんなヘンテコな逸話でも妙に説得力があるのだ)


「こうなりゃ、《鱶女》を探しだして、ぶっ殺してやるんだ!」


一致団結、単純な若者たちをまとめあげて、単細胞の網元は《鱶女》探しに乗り出した。


「何日か前から、別荘に泊まっている《マヤ》って女が、どうも怪しいぜ」

誰かが言い出した。


どうもカツゾウや他の若者も、死ぬ以前に、そのマヤに誘惑されていたようなのだ。


網元と若い衆は、マヤの泊まっている別荘へと繰り出すのだが ………



随分思わせぶりで、突然現れてきた美女。

でも、勘の良い人なら、

「こんな女が《鱶女》であるはずがない!」と思うはず ………


案の定、

《鱶女(ふかおんな)》= 夏樹陽子から目を逸らすための、ただのフェイクの脇役でございました。(こんなのに騙されるのはドラマの中のアホな漁師たちだけだ)



謎の方は単純だが、このドラマの楽しみ方は、夏樹陽子の美貌やプロポーションを愛でること。


若き大和田獏が、モーターボートを自在に操り、美しい海で素潜りをしたり、スキューバダイビングしたりして、夏樹陽子と「キャッ!キャッ!」と戯れる様子に見入る事である。(今じゃ考えられないほど、けっこうアクティブな大和田獏にビックリする!(⁠´⁠⊙⁠ω⁠⊙⁠`⁠)⁠!)


もちろん、実際の鱶(ふか)が現れる場面は緊迫感があってゾワゾワするが、鱶女と敏夫の道ならぬ恋が、このドラマのメインテーマだろう。



でも、この1980年に、なぜ?これが突然映像化されたのか?


1975年にはスピルバーグが監督した『ジョーズ』が公開され、ちょいとした《ジョーズ・ブーム》が、日本にも到来する。(『ジョーズ』は案の定シリーズ化され、『2』、『3』、『4』と1987年まで続いてゆく)


この時期、土曜ワイド劇場では夏になると定期的にホラー・モノを必ずやっていた。


ならば、「日本でも《サメ》を題材にしたモノが作れないだろうか?」

な〜んて事を考える輩も出てくるのは、ごく自然なこと。


そうしたら、日本にも《サメ》を扱った小説が既にありましたがな!


それが、石原慎太郎が、大昔に短編小説として書いていた『鱶女(ふかおんな)』なのでした。


石原慎太郎氏》


若い人には、気難しそうな顔で雄弁と喋り倒す東京都知事の思い出しかないだろうが、この人は元々、小説家として世に出た人である。


こんな情報も、もはや私世代がギリギリ知っているか・いないか、なのかもしれない。(映画『太陽の季節』や弟・石原裕次郎主演の『狂った果実』は、この人の小説が原作)



それでも、この『鱶女』は意外だった。


(こんなホラー・モノも書いているのか …… 石原慎太郎 …… )


てっきり、弟・裕次郎が主演した映画、アウトローの青臭い青春小説みたいのばかりだと思っていた自分は、目から鱗。


ただ、このホラー・サスペンス『鱶女』でも、青春小説の香りは少しだけ残っている。



とうとう正体がバレて、『鱶女』(夏樹陽子)を岩場に追い詰めた網元や漁師たち。

必死に逃げる『鱶女』を庇いながら、「やめろー!」と、一人声を張り上げる『敏夫』(大和田獏)。


鱶女が海にダイブすると、そこをめがけて漁師たちが、何本もの銛(もり)を打ち込んでくる。


海面に漂ってくる真っ赤な鮮血。

「きっと、あの女、死んださ …… 」


皆が散り散りに引き上げていく中、敏夫だけは信じない。


(きっと …… きっと …… 生きている …… )


次の日から、深海を潜りながら『鱶女』を探してまわる敏夫。


広い海の中を、あてもなく、泳いでいる敏夫を映して、ドラマは《END》となる ……



なんか、ロマンチックな終わり方である。


こんなドラマを観てしまうと、石原慎太郎のイメージも180度変わってしまう。


生前、あんな気難しそうに思えたけど、この人、案外ロマンチストな人だったのかも …… と。


これも昭和が残した名作と言っていいんじゃないかな?


※それにしても、やっぱり夏樹陽子さんはお美しいわぁ~(デレ〜)