1980年 12月。(土曜ワイド劇場より~)
『小関信子』(音無美紀子)は、夫・『精一』(津川雅彦)、精一の母『初子』(賀原夏子)との3人暮らし。
もっとも精一の方は、不動産の仕事をしており、日本全国を忙しく飛びまわっていて、年中留守がち。
普段は、少々愚痴っぽい姑・初子と2人でいるのがほとんどである。
そんな精一がたまたま帰ってくると、従弟の『高瀬俊吉』(速水亮)を呼び寄せた。
「コイツに不動産のパンフレット作りを手伝ってもらうんだ!」
従弟とはいえ、俊吉には一見、何の得もない仕事だ。
それでも俊吉には断れない事情がある。
なぜなら、
俊吉は、精一の妻・信子に《横恋慕》しているのだから!
こんな俊吉の様子は、鈍感そうな精一も重々承知しているし、信子の方もハンサムな俊吉が自分に好意的なのも分かっている感じだ。(俊吉にしたら《蛇の生殺し》状態だろうよ)
その夜、小関家に泊まった俊吉。
2階の夫婦部屋からは、妙な吐息がダダ漏れて、聴こえてくる。(これこそ、《生き地獄》だ(笑))
「もう、これ以上は堪えられない!」と、俊吉は家を抜け出し、馴染みのBARへ行って、やけ酒をかっくらった。
そこへ俊吉に気がある女がノコノコやって来る。(この女が、ドラマでは《いつも報われない女》の代表・池波志乃さんなので、やっぱり俊吉には歯牙にもかけられない、という悲惨さ(笑))
その頃、小関家では …… 精一が信子に対してトンデモない提案を言いだしていた。
「俺は見てのとおり、ガサツで学の無い男だ。仕事で留守がちにすることも多い。お前も …… その …… 寂しかったら《浮気》くらいしてもいいんだぞ」
「何をバカな事を!」
夫の真意が分からない信子は返答のしようがなかった。
次の日、精一は、またもや遠い北海道まで出張である。
駅まで見送りに来た信子は、今まで精一にずっと黙っていた秘密を、こっそり打ち明けた。
「私、《赤ちゃん》ができたのよ」
てっきり喜んでくれるかと思いきや、急に青ざめる精一。
「そうか …… よかった」
なんとかそれだけ言うと、精一は逃げるように列車に乗り込んで行ってしまった。
だが ……
よもや、これが夫の姿を見た《最後》になろうとは ……
それから何週間経っても夫・精一は帰ってこないし、連絡さえも全くないのだ。
心労で気を揉んでいる信子を見かねて、俊吉はとうとう精一の《秘密》を打ち明ける事にした。
「精一さんには他に 女がいるんですよ!それも秋田に。もしかしたら、そこにいるのかも」
「あの人に女が …… 」
大ショックの信子。
だが、こんな事実を知ってしまえば、もはやジッとしているはずもなく、信子は早速秋田へ直行。
浮気相手のアパートを訪ねると、出てきたのは『田所常子』(横山リエ)という、陰気そうな女である。(精一の姿はなかった)
だが、この田所常子、開口一番、いきなり、こんな風に切り出してきたのだ。
「あの人と離婚してくださらない? 私の人生、今まで1つも良い事なんてなかったのよ。私は絶対に精一さんと別れませんから! それに貴女には《俊吉さん》がいるでしょ? あの人に聞いて知っているんだから。 奥さんの方も満更でもなさそうだって!!」
もう、信子は常子の一方的な迫力に押されっぱなし。
結局、夫の手がかりも得られないまま、帰ってくるしかなかったのだった。
そうして帰ってき早々、流産。
嫁の流産やを、息子の失踪、信子と俊吉の態度でイライラ気味の姑・初子は、とうとう怒りを爆発させた。
「あんたら、二人して何をコソコソやってるのよ!」(俊吉にしたら、「全てはオマエのとこのバカ息子のせいなのに!」って気持ちだろうに)
もう、これ以上は隠し通せないと思った俊吉は全てを初子に話す。(初子、唖然呆然!(´⊙ω⊙`)!)
そうして、初子、信子、俊吉の3人は話し合いの末、警察へ失踪届を出す事に決めたのだが ……
松本清張の同名短編小説のドラマ化で、現在(2023年)までに計8回ドラマ化されていて、コレは6回目のドラマ化である。
それだけ松本清張の原作の中でも人気な部類に入るので、このドラマのあらすじ自体は、かなり知っている人が多いかも。
古くは乙羽信子さんや吉永小百合さん、大竹しのぶさんなども演じていたヒロイン《小関信子》役。
想像をかきたてられるシーン続出である。(《畳にわざわざお布団》ってのが昭和のエロチシズム)
そのインチキ臭い見た目だけで、こんな不動産屋には絶対に関わりたくない(笑)。
後、この人の癖なんだろうか …… 誰でも彼でも↑こうやって無意識に 人を指差すような悪い癖。
このドラマでも序盤しか登場はないものの、音無美紀子さんや速水亮さんを何度か指差してる。
《無礼》、《偉そう》、…… 本当に嫌いでした。(晩年はその印象も180度変わるのだが)
後半は、この人の登場で、ドラマの様相が一気に変わってくる。
下川辰平さん …… 真面目、誠実、勤勉さを絵に描いたようなお人である。
なんたって、『太陽にほえろ』では真面目な熱血刑事・長さん。
『スクール・ウォーズ』では不良にさえ愛情をそそぐ校長先生役で有名ですもの。
悪いイメージなんかは、ほとんど無い。(津川雅彦と違って(笑))
しばらくして、『田所常子』が秋田県・十和田湖の近くの雑木林の中で変死体として見つかった。(遺体からは青酸性の毒物が発見される)
その一報を聞いた信子と俊吉は、急いで警察へとかけつける。
そこにいたのが、田所常子の実兄である『白木純三』(下川辰平)。(奔放な妹は、昔、家を飛び出して苗字も変えていたらしい)
元宮城県警に勤めていたという白木純三は、パッと見、勤勉で本当に真面目そうである。
「妹は昔から男運がない女でした …… それが不憫で ……不憫で …… 」
真面目そうな白木に、信子も俊吉も、口うるさい初子さえも同情的になるものの …… ん?この白木さん、どっかおかしいぞ~!
あくまでも、元刑事 で、今は《一般人》なのに、わざわざ信子たちの家にまでやって来たり。
池波志乃のBARにまで信子を引っ張っていって、俊吉の悪い噂を教えてやったりして ……
それもそのはず、真犯人はこの《白木純三》なのでありました!(やっぱり!)
『精一』(津川雅彦)は十和田湖に呼び出されて、とっくに銃殺。
深い湖の底で眠っているのでした。(自殺した妹の復讐で)
そんな十和田湖への誘いに、まんまと引っかかってしまった信子と俊吉。
二人に全ての罪をなすりつけて殺すのが、白木純三の計画なのである。
《殺人犯》は、一度成功した手口を同じように繰り返す。
白い霧の中、広い湖のボートの上で絶体絶命の大ピンチ。
果たして二人の運命は …… (まぁ、ご想像どおりハッピーエンドなんだけどね(笑))
今回、最後までネタバレ的な書き方をしてみたけど、ま、いいか。(この原作、何度もドラマ化されているし)
音無美紀子さんの妖艶な演技や、速水亮さんのイケメン具合。(なんせ仮面ライダー出身)
善良なイメージを逆手にとった珍しい悪役の下川辰平さん。
当時、イヤ〜なイメージ通り(だいぶ私の偏見が入ってるが(笑))の津川雅彦の死。
キャスティングの素晴らしさで、中々の良作に仕上がってるんじゃないかな、このドラマ。
星☆☆☆☆。
※尚、この原作(1957年)が発表されてから、他の小説家たちも《十和田湖》を舞台にした小説を、続々書きだした。
笹沢左保、西村京太郎、内田康夫などなど ……
いずれも何本かはドラマ化されているモノもあるようで。
今や、十和田湖は《ミステリーの聖地》なのだ!
そんな十和田湖に「いつかは行ってみたいなぁ~」と思いをはせながら、長い話を終わりにしておく。